三日月

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仲間

高校生だったはずの|松本勇《まつもといさむ》は、人付き合いが苦手で友達仲間を作れないまま、自転車を走行中、スピード違反のトラックに跳ねられ死亡する。

ところが、次に目を覚ますと、松本勇は知らない場所にいて、鎧を着ていた。

よく分からないまま、草原らしきところを歩いていると村らしきところにやってきたので、ここが何処なのか尋ねることにした。

すると、何故か松本を見た村人達は歓喜の声を上げ、そして長老らしき人に連れられ、着いていくと、その家は長老の家らしく、その家でお・も・て・な・しされることになる。

暫くすると村人達がこの家に集まっていて、長老らしき人が話し始めた。

「勇者様、来て下さりありがとうございます」

「あの、勇者様とは!?」

「貴方様のことでございます。  腰に刀がおありですよね」

そう言われ確認すると、この村に来るまで何も無かった腰に刀がある。

「それで勇者様、西の大魔王とやらを倒してくださるとのことでありがとうございます」

長老らしき人がそう言うと、村人は皆頭を下げる。

「ちょっとそれは··········」

「明日出発でしたね、お仲間も次の村でお待ちかねですので、よろしくお願いします」

断ろうとしてるのに断れなかった。

仕方なく次の朝、次の村に向け出発をすることに。

どれくらい歩いただろうか、言われた通りの道をただひたすらに歩くと夜までに次の村に到着した。

仲間と言われても困るよなと松本が思っていると、到着した途端、村人人達がまた歓喜の声を上げ、そして仲間らしき人を三人連れてきたのである。

すると自己紹介が始まった。

「魔法使いの|松本薫《まつもとかおる》女です」

「弓使いの|松本浩一《まつもとこういち》男です」

と言ってきたので、松本勇も自己紹介をする。

「勇者の|松本勇《まつもといさむ》男です」

寄りにもよって皆松本とはどんなパーティーなのだろうか。

「では、明日出発しますので、ご飯を食べて今日のところは寝ましょう」

魔法使いの松本薫がそう言って、寝床として使わせてもらえる家に案内してもらう。

そして次の朝、松本パーティーは出発することになる。

ところが雑魚敵らしきスライムが出てきても、戦い方の分からない勇者松本は苦戦する。

何体も倒しながら進むものの、一人だけLvすら上がらないし、戦い方も上達していかない、それに話す内容も無いので会話も自分からは極力しない日々が続いていた。

ところが優秀な仲間のおかげで、寝床の確保と食事については何とかなったのである。

弓使いの松本浩一は釣り名人らしく、何匹もの魚を捕まえ調理してくれたからだ。

そして次の日も更に次の日も、西にある魔物を退治するべく松本パーティーは進んでいたのだけど!

「あの、申し訳ないけど、勇者松本勇をこのパーティーから追放します」

突然、ある日の朝魔法使いの松本薫がそう言った。

「今までありがとうございました」

次に弓使いの松本浩一に頭を下げられる。

「あの、何で突然追放なんですか?」

勇者松本勇は今の状況に対して訳が分からない。

「もう仲間ではないので自由にして下さい」

魔法使いの松本薫はそう言うと弓使いの松本浩一と二人で歩き出した。

このままでは生きていけそうにないと思った勇者松本勇は、二人を追いかけ、もう一度仲間に入れて欲しいと祈願することに。

「あのですね、一緒にいてもこのパーティーは魔王に勝てません!  勇者松本勇はLvもずっと1のまま、何のスキルも無いので戦いに向いてませんよ。  それに、仲間と思ったことありません」

はっきり弓使いの松本浩一に言われてしまった。

一体今までのはなんだったと言うのだろうか。

その後、勇者松本勇は勇者を辞めて村人になることにした。

コミュニケーション能力があれば、強くなる方法を仲間に聞いたり、どうやってスキルを手に入れるのか聞けたかもしれないのに…………。

元々、人付き合いの苦手な松本勇には村人の方が向いているということなのかもしれない。

こうして次の村に戻り勇者松本勇は勇者を辞めて村人の仲間に入れてもらった。

ところが松本勇には共に暮らす仲間すら出来ていない。

結局松本勇は何年経とうと仲間を作れないままのようであるが、それでも何とか幸せに暮らしているという。

元々のスキルがないと、何処に行っても仲間が作れないというのは本当らしい。

コミュニケーション能力は育ってきた養育環境で身につくものなので、松本勇の育った家庭環境はきちんと機能していなかったのだろう。

こうして松本勇の異世界での人生も幕を閉じた。

次生まれる時は機能している家に生まれることを願いたい。

12/10/2022, 12:01:28 PM