星乃 砂

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5/17/2024, 6:21:15 AM

【愛があれば何でもできる?】

 [愛を叫ぶ 続編]

登場人物
 剛志
 雅

「ただいま」と言ったところで返事が返ってくる訳でもない。
いつからこんな風になってしまったんだろう。

ボクと雅ちゃんは幼稚園の時に偶然知り合った。
運命的な出会いだった。
小中学校を一緒に通い
高校大学は別々になったが、ふたりの気持ちが変わる事はなかった。
雅ちゃんは短大を卒業すると、小さい頃からの夢だった保育士になった。
ボクも大学を卒業し、小さいながらもアットホームな会社に入った。
3年後、ボクたちは結婚をした。
雅ちゃんの為ならば、ボクは何だって頑張れる。
2年後、長女を授かった。
子供はあまり好きではなかったが、自分の子がこれ程までに可愛いなんて思いもしたかった。
ふたりの為ならと、仕事も人一倍頑張った。
そんな時、倒産する会社が相次ぐ中、人の良い社長が信頼していた人に騙され会社は窮地に立たされた。
この危機を乗り越える為、みんな必死に戦った。
次第に帰りが遅くなり、そのうち3日に一度帰るような生活になっていった。
‘家族の為にも頑張らなければ’
‘愛さえあれば何でもできる’
その思いで必死だった。

だが
悲劇は突然訪れた。
その日も夜遅くなったのだが、いつもは寝ているはずの雅ちゃんが起きて待っていてくれた。
「ただいま」
「おかえりなさい。大事な話があるの」
いきなり離婚届を見せられた。
「別れて下さい」
「どうして、ボク何か悪い事でもした?もしそうなら謝るから考え直して」
「剛志くんは私達の事を何だと思っているんですか?仕事が大変なのはわかります。私達の為に頑張ってくれているのもわかります。だから、剛志くんに負担をかけないように家事も、育児も私ひとりでやってきました。‘愛さえあれば何でもできる’と思いやってきたんです。でも、最近は剛志くんの愛が、私たちに届かないんです。届かない愛は、無いのと同じです。
サヨウナラ」
雅ちゃんは娘と共に家を後にした。
ボクは悲しみのあまり思い切り泣いた。
「わ〜!」
ボクは自分の声に驚き眼を覚ました。何だ夢だったのか。よかった。それにしてもリアルな夢だったな。まさか予知夢?
あの夢が現実にならない様に努力していこう。なにが雅ちゃんの為なのかを考えていこう。
ボクのお父さんもそうだ、家族の為に働いていると言っているけど、ボクとはちっとも遊んでくれない。そんなの家族の為じゃないと思う。いろいろと考えてるうちに学校に着いた。
「おはよう剛志くん」
そこには、あどけない小学1年生の雅ちゃんがいた。

           おわり

5/16/2024, 9:32:18 AM

【後悔】

 [風に身をまかせて 続編]

登場人物
 勇気(17)
 遥香(17)
 フーリン(123)

「おい、勇者ってのはお前か?」
「はい?」
「勇者はお前かって聞いてんだよ!」
「俺は、勇者じゃなくて勇気!高2の17才だ!って言うか、お前こそ誰だ?」
「17才?」
「なーに、どうしたの?」
「おぅ遥香、実はこの子が俺の事を勇者だって言うんだ」
「まぁ、可愛い、お嬢ちゃん何処から来たのお名前は、歳はいくつ?」
「ボクは、風の民の戦士フーリン123才だ」
「「はぁ?」」
「123才って、どっから見ても小学生だろ」
「フーリンちゃんはひとりでここに来たの」
「うん、そうだよ。お前は誰」
「私は遥香、勇気と同じ17才よ」
「そうか、コイツは勇者じゃないのか?」
「フーリンちゃんは勇者を探しているの?」
「そうだ」
「どうして?」
「この災いを止める為にだ。なぜ夜が明けないのか、お前知ってるか?」
遥香は魔族に“時の女神”を奪われて時が止まった事を話した。
「フーリンちゃんはどうしてここに勇者がいると思ったの?」
フーリンは自分が風の民の戦士で“風の鈴”に導かれここに来た事を話した。
「コイツは勇者なのか?」
「そうよ」遥香はあっさり答えた。
「何言ってるんだよ、俺は勇者なん...」ドスッ!遥香にヒジテツを食らった。
「今の話し聞いたでしょ。この子は導かれてここに来たのよ。戦えるのは勇気だけ、だから勇気が勇者なのよ」
「そんなムチャクチャな」
「こいつ本当に強いのか?」
「それが、まだ勇者に成りたてで弱いのよ。だから今特訓してる最中なの。フーリンちゃんは何が出来るの?」
「ボクは風を操れる。攻撃と言うより援護だ。相手を吹き飛ばす事は出来るが倒す事は出来ない。こんな感じだ」
フーリンは勇気に向かって三角帽子を振り下ろした。
「うわー!」勇気は10m程吹き飛ばされた。
「いきなり何すんだよ!」
「軽くやったのに、あんなのも避けられないのかよ。勇者が聞いて呆れる」
「うるさい、今のはイキナリだったから避けられなかったんだ」
「まあまあ、2人ともケンカしないで。仲間は多いほどいいでしょ」
「まあな」
「それより、その“風の鈴”を使って“時の女神”の場所も分かの?」
「分かるよ、ボクに付いて来て」
「すごーい、じゃあ直ぐ出発しましょう」
「もう行くのか?俺はまだ心の準備が出来てないんだけど」
「だって、早くこの暗闇を終わらせなきゃ」
「それはそうだけど、俺まだ弱いし...ってアイツどこ行った?」
「あら、居ないわね?」
「あれそうじゃないか、あの飛んでるの」
「ウソ、やだー、ひとりで行っちゃったの?」


  ーー魔物のアジトーー

「よし、着いたぞ」振り返ったが誰もいなかった。
「アイツら、何で付いて来ないんだ。しょうがない、ボク1人で“時の女神”を取り返してやる」

   ーー数時間後ーー

「あの子、どこ行っちゃったんだろう?」
「さあな、でも飛べるなんてさすが夢の世界だぜ」
「あっ、帰ってきてみたいよ」
フーリンはふたりのそばに着地した。
「何で付いて来ないんだ」
「オレ達は飛べないんだ」
「それより、どうしたの、キズだらけじゃないの」
「転んだ」
「どんな転び方をしたらこんなにキズだらけになるのよ。今、治してあげるからね」
「治せるのか?」
「私、ヒーラーだもん」
遥香はフーリンのキズを治してあげた。
「ありがとう」
「あら、素直じゃない。私達は仲間なんだから、もう単独行動はしないでね」
「うん、分かった」この女は信用できそうだ。ヒーラーだと分かっていたら、ひとりで魔物のアジトに突っ込むんじゃなかった。
フーリンは深く後悔した。

           つづく

5/15/2024, 10:49:17 AM

【風に身をまかせ】

 [失われた時間 続編]


「おい、勇者ってのはお前か?」
「はい?」

  ーー5日前に遡るーー

「よーいドン!」
青年たちは一斉に飛び出した。
くそ〜、やっぱりライラが先頭か。
今度こそ、絶対に負けない。
まずい、引き離されている。
スピードではライラにはかなわないか。
でも速い分コーナーでは大回りになる。
次のコーナーでインから抜いてやる。
「フーリン頑張ってー」
「ライラになんか負けるなよ」
みんなが応援してくれている、これで勝たなきゃ女じゃない。
「抜くのは今だ」
フーリンの奴こんなに速かったか?ヤバイ抜かれる。だが、最後の直線で抜き返してやる。
なぜだ、追い付けない、それどころか逆に離されていく。
その時、フーリンの体が輝きだした。
「何だ、あの光は?」
ライラや応援していた友達も、そして、その場に居たみんなが息を呑んでいる。
「ヤッター、初めてライラに勝ったぞ!」フーリンは大喜びで、友達の所へ向かった。
「どうしたの、みんな?そんな狐に摘まれたような顔して、ボクが勝ったからそんなにビックリしたの?」
「フーリン、今光ってなかったか?」
「エッ、何の事?」
「お前、体大丈夫か?」
「ヘッ、どうして?」
その時、後ろから声を掛けられた。「フーリン、長老がお呼びだ。来てくれ」
「エッ!」

「長老様、ボク何か悪いことしましたか?」
「フーリンよ、先程光輪(こうりん)した様じゃな。
「光輪て何ですか?」
「フーリンよ、よく聞くのじゃ、良いか」
「はい」
「遠い昔より、この地に伝え継がれた話しがある。」
『この世に災い降りかかる時、勇者現る。光輪すべき者勇者の元に集いこの災い討ち果たさん』
「フーリンよ、其方は選ばれし者じゃ、これより勇者の元へ赴き共に災いを討ち果たす使命を得た。今宵はゆっくり休み、来る日に備えよ」
「はい」とは言ったものの、何をどうすればいいのかサッパリわからない。考えててもしょうがないから寝よ。

 ーーそして運命の朝ーー
「これは、どうした事か、もう夜が明けていい時間なのに辺りはまだ真っ暗じゃないか」
里の人々が騒ぎはじめた。
「どうして、夜が明けないんだ」
「何か良くない事が起きたんじゃないのか」
「大変じゃ長老に相談しよう」
人々は長老の家に集まった。
「長老、これはどうした事でしょうか?」
「やはり、言い伝えは本当じゃったのか」長老は事の次第を皆に話した。
「フーリンを呼んで参れ」
慌ただしい中フーリンが呼ばれた。
「長老様、これはいったい?」
「既に災いは始まってしまったようじゃ、もはや一刻の猶予もない、すぐに勇者の元へ赴くのじゃ」
「でも、ボクに出来るんでしょうか?それに勇者がどこにいるか、わかりません」
「フーリンよ、其方は選ばれし者じゃ自信を持ちなさい。其方にこれを授けよう。これは“風の鈴”行くべき場所へ導いてくれる。さあ、行くが良い」
外に出ると皆が集まっていた。
「行くべき所を強く念じ、“風の鈴”を鳴らすのじゃ」
フーリンは言われた通りにした。すると、フッと、体が宙に浮いた
「そのまま、風に身をまかせて進が良い。さぁ行くのじゃ風の民の戦士よ」

「おい、勇者ってのはお前か?」

           つづく

5/14/2024, 11:26:50 AM

【失われた時間】

登場人物
 勇気(ゆうき17)
 遥香(はるか17)

「死ね〜‼️」
「ワァ〜‼️」
俺は大声をだして飛び起きた。
息は荒れ身体中から汗が吹き出している。
「はぁはぁはぁ、なんだ夢だったのか。よかったぁ」それにしても、なんでガイコツが刀振り回して俺を殺そうとするんだ。まるでゲームじゃないか。隣に誰か居た気がするするけど、顔まではわからなかったな。
俺は学校で幼馴染みの遥香に夢の話をした。
「やっぱり勇気だったの」
「えっ、何、どうした?顔が青いぞ。大丈夫か?」
「勇気もこっちの世界に来たんだ」
「何の話?」
「そのガイコツって目がないのに奥の方が紅く光ってて、ゆっくりと近づいて来るでしょ」
「どうして知ってるんだ!」
「私は1週間前からあの世界に行ってるのよ」
「お前、何の話してるんだ?」
「学校じゃ話せない。帰ったら勇気の家に行くから、その時話す」
「気になるから今教えろよ」
「無理、そんな単純な話じゃないの。この話し他の人にした?」
「いや、してないけど」
「誰にも話しちゃダメよ」
「どうして?」
「いいから絶対に話さないで!」
「わ、わかった」

夕方、遥香が家に来た。
「これから話すことは現実に起きている事なの。だからちゃんと聞いて」
遥香は真剣な顔をして話しだした。
「1週間前、私は夢を見たの。周りは山に囲まれてて川が流れログハウスみたいな家がいくつか建っていた」
「俺の夢といっしょだ」
「むらの人は布や毛皮を体に巻いているだけで、まるで原始人のような格好をしていたわ。なんか変な夢って思った。その時、子供が近づいてきたの」
〈お姉ちゃんも一緒に行こう〉
〈どこに行くの?〉
〈狩りだよ〉
「夢だと思っていた私は、面白そうだから付いて行ったの。森を進んで行くと、当然何かが現れた。顔はイノシシのようで竹槍を持って二本足で立っていたわ。まるでゲームの世界のオークのようだった。私達は必死で逃げたけど小さい女の子が転んで捕まってしまったの。私は無我夢中でオークに体当たりをした。運良くオークは足を滑らせ崖下に落ちていった。村に着くと親が子供たちを探し回っていた。
〈アンタ達どこに行ってたの〉
〈狩りだよ〉
〈子供だけで行ったらダメだって言っているでしょう〉
〈お姉ちゃんが一緒だから大丈夫だと思ったんだ〉
〈あなたは何で止めてくれなかったんですか〉
〈すいません〉
「変な夢だと思ったわ。でもそれだけじゃ終わらなかったの。次の日の夜もその村にいた。オークが村を襲っていて、村人は祠を守るために必至で戦っていたわ。その日は何とか祠を守ることができたけど、何人もケガをしてしまったの。
〈お姉ちゃん早くみんなを治してあげて〉
子供達に言われたけど、私にはどうすることも出来ない。
〈何やってるの、お姉ちゃんはヒーラーでしょ。早く治してあげてよ〉
〈何言ってるの、私はただの女子高生よ〉
〈何訳の分からないこと言ってるの、早く早く〉
「しかたなく、ゲームと同じように傷口に手を当て〈ヒール〉と唱えた。すると本当にキズが治ったのよ」
「まぁ、夢なら何でも出来るよな」
「茶化さないでちゃんと聞いて」
「はい」
「それから、村長さんの家で聞いたんだけど、あの祠の中には“時の女神”が祀られていて、魔物はそれを奪いに来たんだって」
「じゃあ、昨夜俺を襲ったヤツも」
「スケルトン、オークの手下よ。やつらは全力で奪いに来ている。今夜もきっと来るわ」
「マジか」
「だからお願い、力を貸して。一緒に戦って」
「そんな事言ったってどうやればあそこに行けるんだよ」
「勇気が選ばれし者なら大丈夫、眠るだけでいい」

その夜再び村は襲われた。
「どうして来ないのよあのバカ」
大変だ、祠の扉が破られる。

「ちょっと遅くなっちゃったかな。今は夜なのか。あれ?何か燃えてるぞ。行ってみそう」
近づいて見ると村が燃えている事に気付いた。
「なんかリアルな夢だなぁ、熱さまで感じるじゃないか」
「勇気、今まで何なってたのよ!」
「今日は友達とオンラインゲームするって約束してたから」
バシ〜❗️遥香におもいきれ平手打ちされた。
「イテー、マジで痛い」
「勇気のバカ、“時の女神”が奪われちゃったじゃないの。私の話しを信じてくれたんじゃなかったの」
俺は取り返しの付かない事をしてしまったのか。
「このままじゃ二度と夜が明けないわ」
「どうゆう事だ」
「村長さんに聞いたのよ。時の女神は文字通り時を司る神様なの。時の女神を祠に戻さないと時が止まったままになるらしいの」
「今が夜だからこのまま朝がこないってことか、大変じゃないか」
「誰のせいよ!」
「ゴメン、責任感じてる」
「こうなったら嫌でも付き合ってもらうからね」
「付き合って?こんな時にオレと付き合いたいって言われても」
ゴキン‼️今度はグーパンチを食らった。
「いい加減にして、私と一緒に“時の女神”を取り返しに行くのよ」
「一緒にって、お前戦えるのか?」
「戦えないわよ!ヒーラーだもん。勇気が闘うに決まってるでしょ」
「俺だって無理だよ」
「大丈夫、勇気は戦士だから」
「戦士?俺が?」
「自分の格好を見てみなさいよ。どっから見ても戦士でしょ」
俺はマジマジと自分の格好を見てみた。鎧を纏い、兜を被り、腰には剣を差している。確かに戦士の格好だ。
「でも剣なんて使った事ないよ」
「今から特訓するのよ」
「マジかー」
「返事は!」
「ハイ❗️」

           つづく

5/13/2024, 9:44:37 AM

子供のままで

「紳二、お前卒業したら働くって本当か?」
「あぁ、オレの家は母子家庭だからな、母さんにばかり苦労させられないからな」
「でも中卒だと就職も厳しいんじゃないか?」
「選り好みしなければ何とかなるさ。いや、何とかしなきゃ。」
「そっかー、お前とは高校でも一緒に野球やりたかったなー」
相棒にそう言われて‘オレだってそうさ’野球がやりたい。でも、いつまでも子供のままってわけにはいかないんだ。
父さんはオレがまだ小さい頃にケガをした。それ以来、軽作業の仕事しか出来なくなった。
それからは、母さんも働きに出ることになった。
オレには、5才年上の兄がいる。
兄は、高校を出ると働いだし家計を支えてくれた。
母さんの負担が減り、週3日のパートで済むようになった。
兄はいつも言っていた。「お前は好きな事をしろ。大学だってオレが行かせてやる」
ようやく人並みな生活が出来るようになったのに、悲劇は突然訪れた。
父は定期的に病院に通っていたのだが、その帰り兄の運転する車が事故にあった。相手の居眠り運転が原因である。
即死だった。
母はひとりで、オレを育てることになった。
もう、これ以上母さんに苦労はさせられない。

これから、三者面談がある。進路相談だ。その時、母さんにオレの気持ちをちゃんと伝えよう。
「それではお母さん、紳二君の進路ですが?」と先生が言う。
「進学です。」
「えっ!」思わず声が出た。
「紳二は進学させます。」母さんは何の迷いもなくそう告げた。
「なに言ってるんだ母さん、オレは就職するよ。これ以上、母さんに苦労させられないよ。オレだってもう子供じゃないんだ」
「苦労なもんかい。お前だってみんなと野球がやりたいんだろ。甲子園に行きたいんだろ。父さんや孝一だっていつも言っていたよ。
紳二には好きな事をさせてあげたいってね」
「母さん」胸が詰まり言葉が続かない。
「まだまだ、子供のままでいておくれ」

           おわり

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