星乃 砂

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【後悔】

 [風に身をまかせて 続編]

登場人物
 勇気(17)
 遥香(17)
 フーリン(123)

「おい、勇者ってのはお前か?」
「はい?」
「勇者はお前かって聞いてんだよ!」
「俺は、勇者じゃなくて勇気!高2の17才だ!って言うか、お前こそ誰だ?」
「17才?」
「なーに、どうしたの?」
「おぅ遥香、実はこの子が俺の事を勇者だって言うんだ」
「まぁ、可愛い、お嬢ちゃん何処から来たのお名前は、歳はいくつ?」
「ボクは、風の民の戦士フーリン123才だ」
「「はぁ?」」
「123才って、どっから見ても小学生だろ」
「フーリンちゃんはひとりでここに来たの」
「うん、そうだよ。お前は誰」
「私は遥香、勇気と同じ17才よ」
「そうか、コイツは勇者じゃないのか?」
「フーリンちゃんは勇者を探しているの?」
「そうだ」
「どうして?」
「この災いを止める為にだ。なぜ夜が明けないのか、お前知ってるか?」
遥香は魔族に“時の女神”を奪われて時が止まった事を話した。
「フーリンちゃんはどうしてここに勇者がいると思ったの?」
フーリンは自分が風の民の戦士で“風の鈴”に導かれここに来た事を話した。
「コイツは勇者なのか?」
「そうよ」遥香はあっさり答えた。
「何言ってるんだよ、俺は勇者なん...」ドスッ!遥香にヒジテツを食らった。
「今の話し聞いたでしょ。この子は導かれてここに来たのよ。戦えるのは勇気だけ、だから勇気が勇者なのよ」
「そんなムチャクチャな」
「こいつ本当に強いのか?」
「それが、まだ勇者に成りたてで弱いのよ。だから今特訓してる最中なの。フーリンちゃんは何が出来るの?」
「ボクは風を操れる。攻撃と言うより援護だ。相手を吹き飛ばす事は出来るが倒す事は出来ない。こんな感じだ」
フーリンは勇気に向かって三角帽子を振り下ろした。
「うわー!」勇気は10m程吹き飛ばされた。
「いきなり何すんだよ!」
「軽くやったのに、あんなのも避けられないのかよ。勇者が聞いて呆れる」
「うるさい、今のはイキナリだったから避けられなかったんだ」
「まあまあ、2人ともケンカしないで。仲間は多いほどいいでしょ」
「まあな」
「それより、その“風の鈴”を使って“時の女神”の場所も分かの?」
「分かるよ、ボクに付いて来て」
「すごーい、じゃあ直ぐ出発しましょう」
「もう行くのか?俺はまだ心の準備が出来てないんだけど」
「だって、早くこの暗闇を終わらせなきゃ」
「それはそうだけど、俺まだ弱いし...ってアイツどこ行った?」
「あら、居ないわね?」
「あれそうじゃないか、あの飛んでるの」
「ウソ、やだー、ひとりで行っちゃったの?」


  ーー魔物のアジトーー

「よし、着いたぞ」振り返ったが誰もいなかった。
「アイツら、何で付いて来ないんだ。しょうがない、ボク1人で“時の女神”を取り返してやる」

   ーー数時間後ーー

「あの子、どこ行っちゃったんだろう?」
「さあな、でも飛べるなんてさすが夢の世界だぜ」
「あっ、帰ってきてみたいよ」
フーリンはふたりのそばに着地した。
「何で付いて来ないんだ」
「オレ達は飛べないんだ」
「それより、どうしたの、キズだらけじゃないの」
「転んだ」
「どんな転び方をしたらこんなにキズだらけになるのよ。今、治してあげるからね」
「治せるのか?」
「私、ヒーラーだもん」
遥香はフーリンのキズを治してあげた。
「ありがとう」
「あら、素直じゃない。私達は仲間なんだから、もう単独行動はしないでね」
「うん、分かった」この女は信用できそうだ。ヒーラーだと分かっていたら、ひとりで魔物のアジトに突っ込むんじゃなかった。
フーリンは深く後悔した。

           つづく

5/16/2024, 9:32:18 AM