星乃 砂

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【失われた時間】

登場人物
 勇気(ゆうき17)
 遥香(はるか17)

「死ね〜‼️」
「ワァ〜‼️」
俺は大声をだして飛び起きた。
息は荒れ身体中から汗が吹き出している。
「はぁはぁはぁ、なんだ夢だったのか。よかったぁ」それにしても、なんでガイコツが刀振り回して俺を殺そうとするんだ。まるでゲームじゃないか。隣に誰か居た気がするするけど、顔まではわからなかったな。
俺は学校で幼馴染みの遥香に夢の話をした。
「やっぱり勇気だったの」
「えっ、何、どうした?顔が青いぞ。大丈夫か?」
「勇気もこっちの世界に来たんだ」
「何の話?」
「そのガイコツって目がないのに奥の方が紅く光ってて、ゆっくりと近づいて来るでしょ」
「どうして知ってるんだ!」
「私は1週間前からあの世界に行ってるのよ」
「お前、何の話してるんだ?」
「学校じゃ話せない。帰ったら勇気の家に行くから、その時話す」
「気になるから今教えろよ」
「無理、そんな単純な話じゃないの。この話し他の人にした?」
「いや、してないけど」
「誰にも話しちゃダメよ」
「どうして?」
「いいから絶対に話さないで!」
「わ、わかった」

夕方、遥香が家に来た。
「これから話すことは現実に起きている事なの。だからちゃんと聞いて」
遥香は真剣な顔をして話しだした。
「1週間前、私は夢を見たの。周りは山に囲まれてて川が流れログハウスみたいな家がいくつか建っていた」
「俺の夢といっしょだ」
「むらの人は布や毛皮を体に巻いているだけで、まるで原始人のような格好をしていたわ。なんか変な夢って思った。その時、子供が近づいてきたの」
〈お姉ちゃんも一緒に行こう〉
〈どこに行くの?〉
〈狩りだよ〉
「夢だと思っていた私は、面白そうだから付いて行ったの。森を進んで行くと、当然何かが現れた。顔はイノシシのようで竹槍を持って二本足で立っていたわ。まるでゲームの世界のオークのようだった。私達は必死で逃げたけど小さい女の子が転んで捕まってしまったの。私は無我夢中でオークに体当たりをした。運良くオークは足を滑らせ崖下に落ちていった。村に着くと親が子供たちを探し回っていた。
〈アンタ達どこに行ってたの〉
〈狩りだよ〉
〈子供だけで行ったらダメだって言っているでしょう〉
〈お姉ちゃんが一緒だから大丈夫だと思ったんだ〉
〈あなたは何で止めてくれなかったんですか〉
〈すいません〉
「変な夢だと思ったわ。でもそれだけじゃ終わらなかったの。次の日の夜もその村にいた。オークが村を襲っていて、村人は祠を守るために必至で戦っていたわ。その日は何とか祠を守ることができたけど、何人もケガをしてしまったの。
〈お姉ちゃん早くみんなを治してあげて〉
子供達に言われたけど、私にはどうすることも出来ない。
〈何やってるの、お姉ちゃんはヒーラーでしょ。早く治してあげてよ〉
〈何言ってるの、私はただの女子高生よ〉
〈何訳の分からないこと言ってるの、早く早く〉
「しかたなく、ゲームと同じように傷口に手を当て〈ヒール〉と唱えた。すると本当にキズが治ったのよ」
「まぁ、夢なら何でも出来るよな」
「茶化さないでちゃんと聞いて」
「はい」
「それから、村長さんの家で聞いたんだけど、あの祠の中には“時の女神”が祀られていて、魔物はそれを奪いに来たんだって」
「じゃあ、昨夜俺を襲ったヤツも」
「スケルトン、オークの手下よ。やつらは全力で奪いに来ている。今夜もきっと来るわ」
「マジか」
「だからお願い、力を貸して。一緒に戦って」
「そんな事言ったってどうやればあそこに行けるんだよ」
「勇気が選ばれし者なら大丈夫、眠るだけでいい」

その夜再び村は襲われた。
「どうして来ないのよあのバカ」
大変だ、祠の扉が破られる。

「ちょっと遅くなっちゃったかな。今は夜なのか。あれ?何か燃えてるぞ。行ってみそう」
近づいて見ると村が燃えている事に気付いた。
「なんかリアルな夢だなぁ、熱さまで感じるじゃないか」
「勇気、今まで何なってたのよ!」
「今日は友達とオンラインゲームするって約束してたから」
バシ〜❗️遥香におもいきれ平手打ちされた。
「イテー、マジで痛い」
「勇気のバカ、“時の女神”が奪われちゃったじゃないの。私の話しを信じてくれたんじゃなかったの」
俺は取り返しの付かない事をしてしまったのか。
「このままじゃ二度と夜が明けないわ」
「どうゆう事だ」
「村長さんに聞いたのよ。時の女神は文字通り時を司る神様なの。時の女神を祠に戻さないと時が止まったままになるらしいの」
「今が夜だからこのまま朝がこないってことか、大変じゃないか」
「誰のせいよ!」
「ゴメン、責任感じてる」
「こうなったら嫌でも付き合ってもらうからね」
「付き合って?こんな時にオレと付き合いたいって言われても」
ゴキン‼️今度はグーパンチを食らった。
「いい加減にして、私と一緒に“時の女神”を取り返しに行くのよ」
「一緒にって、お前戦えるのか?」
「戦えないわよ!ヒーラーだもん。勇気が闘うに決まってるでしょ」
「俺だって無理だよ」
「大丈夫、勇気は戦士だから」
「戦士?俺が?」
「自分の格好を見てみなさいよ。どっから見ても戦士でしょ」
俺はマジマジと自分の格好を見てみた。鎧を纏い、兜を被り、腰には剣を差している。確かに戦士の格好だ。
「でも剣なんて使った事ないよ」
「今から特訓するのよ」
「マジかー」
「返事は!」
「ハイ❗️」

           つづく

5/14/2024, 11:26:50 AM