星乃 砂

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5/12/2024, 9:31:27 AM

【愛を叫ぶ】

 [一年後 続編]

登場人物
 紬19 剛志6
優斗20 雅6

「お姉ちゃーん大変だー!」
「どうしたの剛志?あら、いらっしゃい雅ちゃん」
「あれ、お姉ちゃん驚かなの?」
「何を?それより、ふたりは同じクラスになれたの?」
「お姉ちゃんは雅ちゃんがボクの家の近くに越してくること知ってたの?」
「知ってたわよ。優斗さんから聞いてたもの。剛志には言ってなかったっけ?」
「そういう大事な事はちゃんと言ってよ」
 怒っていいのか、嬉しいのか、よくわからなかった。

ボクたちはいつも一緒にいた。
毎日が輝いていた。
嬉しくて、楽しくて大声で叫びたいくらいだった。

「お姉ちゃん、ボクたちは毎日会えるんだから、もう無理してあの男に会わなくてもいいよ」
「えっ、何言ってるの?」
「ボクたちのためにイヤイヤ会ってたんでしょ?」
「そんな事ないわよ」
「そうなの?でもお姉ちゃん、あんまり楽しそうじゃなかったから」
「そんな事ないわよ」剛志はどうしてそんなことを言うのかしら?
もしかしたら、優斗さんにもそんなふうに思われているのかしら。いままで男の人とお付き合いしたことがなかったからだわ。優斗さんに嫌われたら、どうしよう。
「もしかして、あの男が好きなの?」
剛志に言われて、やっと自分の気持ちに気付いた。私は優斗さんが好きなんだ。思わず体が熱くなった。
「お姉ちゃん、顔が赤いよ。熱でもあるの?」
「なっ、ないわよ。それから、あの男って言うな!」つい、照れ笑いならぬ、照れ怒りをしてしまった。

今日は1ヶ月ぶりに優斗さんに会える。嫌われないように、楽しそうに、そんな事ばかりを考えていた。
「紬さん、何かあったんですか?今日は様子が変ですよ?」
「いいえ、何もありません。ごめんなさい」まずい、このままじゃ嫌われてしまう。何とかしなければ、思えば思うほどぎこちなくなってしまう。
「紬さん、今日は大切な話しがあります」
「はい?」どうしよう。きっと、もう会わない終わりにしようって言われるんだ。
「僕たちも、出逢ってから1年になります」
「はい」どうしよう、どうしよう、終わってしまう。
「今まで、ちゃんと言ったことがなかったので」
「はい」ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ誰か助けて。
「僕と」
くる、クル、来る、くる。
「正式に、お付き合いして下さい」
「へっ、」
「好きです」
「え〜!€÷*〒♪%$〆...」
「お願いします」
「いえ、えーあーうー???」
「ダメですか?」
「いえ、あのーそのー、ごごごごゴメンナサイ!」
「やっぱり僕じゃダメですか。」
「ゴメンナサイ、?そそそそうじゃなくて、」ひゃーわたしテンパってる。
『わたしも、わたしも優斗さんが好きです‼️』思わず叫んでいた。

「剛志くん、うまくいったね」
「雅ちゃんが、お兄さんに話してくれたからだよ」
どうやら、この2人が愛のキューピットのようだ。

       つづく.....かも?

5/11/2024, 7:17:11 AM

【モンシロチョウ】

小さい頃、家の周りには何もなかった。
今のようにショッピングモールやファーストフード、ビデオ屋、バス停すらなかった。
ゲーム機や携帯電話もなかった。
それでも退屈なんてしなかった。
毎日、友達と日が暮れるまで遊びまわっていた。
鬼ごっこ、かくれんぼ、メンコやオハジキ、みんなで走り回っているだけで楽しかった。

春には、野原でチョウチョを追いかけた。

夏には、田んぼでカエル、山でカブトムシを捕まえた。

秋には、トンボと競争をした。

冬には、水たまりの氷を割り霜を踏んで足跡を付けた。

そんなことが楽しかった。

今は、家の周りには何でもある。

春でも夏でも秋でも冬でもなんでも遊べる。

楽しい?
本当に楽しいの?

小さい頃、家の周りには何もなかった?
そうじゃない、自然がいっぱいあったのだ。

野原、田んぼ、山、川、池。
そして、昆虫、魚、鳥。

こんどの休み、モンシロチョウを見つける旅に出よう。

10年後はどこまで行けば会えるのか?

30年後は、はたして.....

           おわり

5/10/2024, 10:43:00 AM

忘れられない、いつまでも

 【刹那 続編】

オヤジが亡くなってもうすぐ3回忌になる。
会社は、小さいながらも希望どうりエンジニアの職につけた。
幸い同僚にも恵まれ、学生時代から交際っている彼女とも大きなケンカもなく上手くいっている。
そんな彼女から言われた言葉が気になってしょうがない。
「何か心配事でもあるの?」
「いや、何もないよ。どうして?」
「最近、元気がないみたいだから仕事で何かあったのかなと思って」
「何もないよ。大丈夫だよ」
「そう、それならいいんだけど」
彼女には大丈夫だと言ったが、自分でも感じていたのだ。
 “何かが物足りない”と。
その夜、夢を見た。
誰かがこちらに向かって来る。ゆっくりとゆっくりと、まるで焦る事はないとでもいうように。
オヤジだ。
オヤジが優しく微笑みかけてくる。
「お前の人生はまだ長い、少しくらい遠回りをしたっていいじゃないか」
オレは、ゆっくりと目を覚ました。その視線の先には形見のカメラがあった。
その時、気付いたのだ。何が物足りないのか。忘れようとしていた。でも、忘れられないでいたファインダーを覗いている時の胸の高鳴り。
3回忌の朝再び、あの場所に立った。

5/9/2024, 12:46:04 PM

一年後

【君と出逢って 続編】

登場人物
 紬(つむぎ18) 蓮(れん10)
 剛志(たかし5)
 優斗(ゆうと19) 雅(みやび5)


家に帰ると、まだ熱のありそうな顔をした蓮が飛んできた。
「お姉ちゃん、お土産はなーに?」
「蓮ゴメン🙇‍♀️今日はいろいろとあって、気付いた時には帰りの電車の中でした。ごめんなさい」
「お姉ちゃんは男が出来...」
「わーわーレレレ蓮君、本当にごめんなさい」
優斗さんと一緒に居られて楽し過ぎて、お土産を忘れたなんてバレたら大変だ。ここは何とか剛志を黙らせて、乗り切るしかない。剛志に目配りをして分かってもらい、ここはひたすら謝るしかない。
「じぁ、風邪が治ったら映画に連れて行って、お昼のマック付きでね」
蓮はやっと納得してくれた。
ひと段落付いたところで考えてしまうのは、やっぱり優斗さんの事だ。
「お姉ちゃん何ニヤニヤしてるの」
気づくと剛志が私の顔をジーと覗いている。
「お姉ちゃん今度の日曜日もあの男とあうんだよね?」
「あの男なんて言わないでよ。優斗さんよ優斗さん!別にいいでしょ」
「ボクも行く」
「えっ、なに言ってるの?」
「ボクも一緒に行く」
「だめよ、今度は遊園地じゃないんだから、剛志を連れて行ったら優斗さんに悪いでしょ」
「雅ちゃんも一緒ならいいでしょ」
「でもなー、映画に行くことにしたのに、何て言えばいいだろう?」
「名探偵のアニメなら、みんなで楽しめるでしょ」
たまたま部屋の前を通りかかった蓮が、「名探偵のアニメ観に行くの、やったー!日曜日までに絶対カゼ治す。」
ヤバイ!蓮まで付いてくる。何とかしなければ。

なんのアイディアも浮かばずに土曜日の夜になった。
「お姉ちゃんあの男にボクが行くって連絡したの?」
「あの男って言うな!それがまだなのよ。なんせ、蓮も一緒だなんて言えないわよ」
「お兄ちゃんは、行かないよ」
「えっ、どうして?」
その時、優斗から連絡が入った。
「もしもし、紬です」
「もしもし、優斗です。実はお願いがあって連絡したのです」
「お願いって何ですか?」
「実は明日、雅も行くって言って聞かないんですよ」
「えっ、そうなんですか?剛志もなんです」
「そうだったんですか、よかった。それでは明日は、みんなで名探偵のアニメではどうでしょうか?」
「わたしも、そう思ってました」
「それでは、また明日」
「はい、お休みなさい」
安心したのも束の間
「あっ!いけない、蓮のこと言うのを忘れてた」
その時、蓮が部屋へ入って来た。
「お姉ちゃん明日すっごく楽しみだね。おやすみなさい」と言って出て行った。
「大丈夫だよ、お兄ちゃんは行かないよ。ボクに任せて」
自信たっぷりに言う剛志が怖くなった。

日曜日
蓮は、腹痛を起こして行けなくなった。
「剛志、蓮に何かしたの?」
剛志は不吉な笑みを浮かべた。
「ボクも、お兄ちゃんは来ない方がいいんだ。雅ちゃんはボクのものだ」
その時、紬は悪寒を感じた。

その後も、お姉ちゃん達が会う3回に1回はボク達も付いて行った。ボクと雅ちゃんの家は片道2時間かかるので2人で会う事は出来なかった。

時は流れて1年が経った3月末

「剛志君、アタシお引越しするの」
「えっ‼️雅ちゃん越しちゃうの⁉️」
「うん」
「どこに越すの?」
「わかんないけど、ちょっと遠い所なんだって」
ボクは目の前が真っ暗になり、泣きたくなったが、ボクは強い男だ泣いたりしない。
「手紙書くね、電話もするね」
「剛志くんは寂しくないの?」
「寂しいけど、大丈夫また絶対に会えるから。ボクを信じて」
その後は、涙を堪えるのに夢中で何を話したか覚えていない。

4月になり、ボクは小学1年生になった。初めての教室で、自分の名前が書かれた席に座っていると、
「おはよう、剛志くん」と声をかけられて振り返ると、そこにはピカピカの雅ちゃんがいた。

           おわり

5/8/2024, 11:23:02 AM

初恋の日

登場人物
 父 三ヶ月 流星
  (みかづき りゅうせい)
 母     美月(みづき)
 兄     飛鳥(あすか)
 妹     明里(あかり)

今日は珍しくお父さんが早く帰ってきたので、家族4人で夕食をした。
「飛鳥、学校は楽しいか?」
「うん、まあまあ楽しいよ」
「5年生ともなれば、好きな子がいるんじゃないのか?」
「何言ってるんでかお父さん、そう言う事はそっとしといてあげて下さいよ。飛鳥はもう思春期なんですから」
「そうか、お前も大きくなったんだな。そういえば、母さんと同じクラスになったのも5年生と時だつたな」
「そうですね、その時1度きりでしたね」
ボクは気になって聞いてみた。
「その時から好き同士だったの?」
「そうじゃないわよ。単なるクラスメイトよ」
「オレにとってはマドンナだったけどな」
「そうなんですか?初めて聞きましたよ」
「じゃあ、お父さんにとっては初恋の人だったんだね」
「そうとも、同じクラスになったその日が、父さんの初恋の日だ」
「まあ、嬉しいわ。さあ、そろそろお風呂に入るわよ明里」
「はーい」
明里は湯船に浸かりながらママに聞いてみた。「ママの初恋もパパなの?」
「いいえ、違うわよ。パパは最後の恋人よ」

           おわり

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