星乃 砂

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忘れられない、いつまでも

 【刹那 続編】

オヤジが亡くなってもうすぐ3回忌になる。
会社は、小さいながらも希望どうりエンジニアの職につけた。
幸い同僚にも恵まれ、学生時代から交際っている彼女とも大きなケンカもなく上手くいっている。
そんな彼女から言われた言葉が気になってしょうがない。
「何か心配事でもあるの?」
「いや、何もないよ。どうして?」
「最近、元気がないみたいだから仕事で何かあったのかなと思って」
「何もないよ。大丈夫だよ」
「そう、それならいいんだけど」
彼女には大丈夫だと言ったが、自分でも感じていたのだ。
 “何かが物足りない”と。
その夜、夢を見た。
誰かがこちらに向かって来る。ゆっくりとゆっくりと、まるで焦る事はないとでもいうように。
オヤジだ。
オヤジが優しく微笑みかけてくる。
「お前の人生はまだ長い、少しくらい遠回りをしたっていいじゃないか」
オレは、ゆっくりと目を覚ました。その視線の先には形見のカメラがあった。
その時、気付いたのだ。何が物足りないのか。忘れようとしていた。でも、忘れられないでいたファインダーを覗いている時の胸の高鳴り。
3回忌の朝再び、あの場所に立った。

5/10/2024, 10:43:00 AM