星乃 砂

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一年後

【君と出逢って 続編】

登場人物
 紬(つむぎ18) 蓮(れん10)
 剛志(たかし5)
 優斗(ゆうと19) 雅(みやび5)


家に帰ると、まだ熱のありそうな顔をした蓮が飛んできた。
「お姉ちゃん、お土産はなーに?」
「蓮ゴメン🙇‍♀️今日はいろいろとあって、気付いた時には帰りの電車の中でした。ごめんなさい」
「お姉ちゃんは男が出来...」
「わーわーレレレ蓮君、本当にごめんなさい」
優斗さんと一緒に居られて楽し過ぎて、お土産を忘れたなんてバレたら大変だ。ここは何とか剛志を黙らせて、乗り切るしかない。剛志に目配りをして分かってもらい、ここはひたすら謝るしかない。
「じぁ、風邪が治ったら映画に連れて行って、お昼のマック付きでね」
蓮はやっと納得してくれた。
ひと段落付いたところで考えてしまうのは、やっぱり優斗さんの事だ。
「お姉ちゃん何ニヤニヤしてるの」
気づくと剛志が私の顔をジーと覗いている。
「お姉ちゃん今度の日曜日もあの男とあうんだよね?」
「あの男なんて言わないでよ。優斗さんよ優斗さん!別にいいでしょ」
「ボクも行く」
「えっ、なに言ってるの?」
「ボクも一緒に行く」
「だめよ、今度は遊園地じゃないんだから、剛志を連れて行ったら優斗さんに悪いでしょ」
「雅ちゃんも一緒ならいいでしょ」
「でもなー、映画に行くことにしたのに、何て言えばいいだろう?」
「名探偵のアニメなら、みんなで楽しめるでしょ」
たまたま部屋の前を通りかかった蓮が、「名探偵のアニメ観に行くの、やったー!日曜日までに絶対カゼ治す。」
ヤバイ!蓮まで付いてくる。何とかしなければ。

なんのアイディアも浮かばずに土曜日の夜になった。
「お姉ちゃんあの男にボクが行くって連絡したの?」
「あの男って言うな!それがまだなのよ。なんせ、蓮も一緒だなんて言えないわよ」
「お兄ちゃんは、行かないよ」
「えっ、どうして?」
その時、優斗から連絡が入った。
「もしもし、紬です」
「もしもし、優斗です。実はお願いがあって連絡したのです」
「お願いって何ですか?」
「実は明日、雅も行くって言って聞かないんですよ」
「えっ、そうなんですか?剛志もなんです」
「そうだったんですか、よかった。それでは明日は、みんなで名探偵のアニメではどうでしょうか?」
「わたしも、そう思ってました」
「それでは、また明日」
「はい、お休みなさい」
安心したのも束の間
「あっ!いけない、蓮のこと言うのを忘れてた」
その時、蓮が部屋へ入って来た。
「お姉ちゃん明日すっごく楽しみだね。おやすみなさい」と言って出て行った。
「大丈夫だよ、お兄ちゃんは行かないよ。ボクに任せて」
自信たっぷりに言う剛志が怖くなった。

日曜日
蓮は、腹痛を起こして行けなくなった。
「剛志、蓮に何かしたの?」
剛志は不吉な笑みを浮かべた。
「ボクも、お兄ちゃんは来ない方がいいんだ。雅ちゃんはボクのものだ」
その時、紬は悪寒を感じた。

その後も、お姉ちゃん達が会う3回に1回はボク達も付いて行った。ボクと雅ちゃんの家は片道2時間かかるので2人で会う事は出来なかった。

時は流れて1年が経った3月末

「剛志君、アタシお引越しするの」
「えっ‼️雅ちゃん越しちゃうの⁉️」
「うん」
「どこに越すの?」
「わかんないけど、ちょっと遠い所なんだって」
ボクは目の前が真っ暗になり、泣きたくなったが、ボクは強い男だ泣いたりしない。
「手紙書くね、電話もするね」
「剛志くんは寂しくないの?」
「寂しいけど、大丈夫また絶対に会えるから。ボクを信じて」
その後は、涙を堪えるのに夢中で何を話したか覚えていない。

4月になり、ボクは小学1年生になった。初めての教室で、自分の名前が書かれた席に座っていると、
「おはよう、剛志くん」と声をかけられて振り返ると、そこにはピカピカの雅ちゃんがいた。

           おわり

5/9/2024, 12:46:04 PM