【愛があれば何でもできる?】
[愛を叫ぶ 続編]
登場人物
剛志
雅
「ただいま」と言ったところで返事が返ってくる訳でもない。
いつからこんな風になってしまったんだろう。
ボクと雅ちゃんは幼稚園の時に偶然知り合った。
運命的な出会いだった。
小中学校を一緒に通い
高校大学は別々になったが、ふたりの気持ちが変わる事はなかった。
雅ちゃんは短大を卒業すると、小さい頃からの夢だった保育士になった。
ボクも大学を卒業し、小さいながらもアットホームな会社に入った。
3年後、ボクたちは結婚をした。
雅ちゃんの為ならば、ボクは何だって頑張れる。
2年後、長女を授かった。
子供はあまり好きではなかったが、自分の子がこれ程までに可愛いなんて思いもしたかった。
ふたりの為ならと、仕事も人一倍頑張った。
そんな時、倒産する会社が相次ぐ中、人の良い社長が信頼していた人に騙され会社は窮地に立たされた。
この危機を乗り越える為、みんな必死に戦った。
次第に帰りが遅くなり、そのうち3日に一度帰るような生活になっていった。
‘家族の為にも頑張らなければ’
‘愛さえあれば何でもできる’
その思いで必死だった。
だが
悲劇は突然訪れた。
その日も夜遅くなったのだが、いつもは寝ているはずの雅ちゃんが起きて待っていてくれた。
「ただいま」
「おかえりなさい。大事な話があるの」
いきなり離婚届を見せられた。
「別れて下さい」
「どうして、ボク何か悪い事でもした?もしそうなら謝るから考え直して」
「剛志くんは私達の事を何だと思っているんですか?仕事が大変なのはわかります。私達の為に頑張ってくれているのもわかります。だから、剛志くんに負担をかけないように家事も、育児も私ひとりでやってきました。‘愛さえあれば何でもできる’と思いやってきたんです。でも、最近は剛志くんの愛が、私たちに届かないんです。届かない愛は、無いのと同じです。
サヨウナラ」
雅ちゃんは娘と共に家を後にした。
ボクは悲しみのあまり思い切り泣いた。
「わ〜!」
ボクは自分の声に驚き眼を覚ました。何だ夢だったのか。よかった。それにしてもリアルな夢だったな。まさか予知夢?
あの夢が現実にならない様に努力していこう。なにが雅ちゃんの為なのかを考えていこう。
ボクのお父さんもそうだ、家族の為に働いていると言っているけど、ボクとはちっとも遊んでくれない。そんなの家族の為じゃないと思う。いろいろと考えてるうちに学校に着いた。
「おはよう剛志くん」
そこには、あどけない小学1年生の雅ちゃんがいた。
おわり
5/17/2024, 6:21:15 AM