やあ、僕の名前はキャンドルマンさ。あたまが白いキャンドルの形をしていて、手と足は普通の人間さ。え、ただの被り物だろ?いや、違うよ。僕は生まれた時からこの容姿なんだ。頭にも火をつけられるよ。でも、みんな僕を怖がるんだよな。そりゃ、この見た目だから当然だけどさ。やっぱり、避けられるのは悲しいよね。何でこんな見た目なのかは自分にも分からないんだ。お父さんもお母さんも普通の人間で僕だけこんな形で生まれちゃった。最初は両親とも怖がってたらしいけど、受け入れてくれて、今も僕のことを大事にしてくれてるよ。大好きさ。
そんなある日のこと、僕に良いことがあったよ。それはね、僕の頭に火をつけてくれた子がいたんだ。頭に火がつくと心が安らぐんだよね。その子はマッチを売っててね、最初は僕をみて驚いていたけど、優しく僕のことを受け入れてくれた。寒かったらしくて、頭にも火をつけて良いよって言ったら喜んで火をつけてくれたよ。その子も温まって、僕の心も温まってすごく良い思い出なんだよね。あと、頭の揺れるキャンドルが綺麗とも言ってくれて嬉しかったな、見た目で褒められることなんてなかったから。お礼に一箱マッチを買ったよ。今度またあの子に会いたいな。
あ、そろそろ僕の話は終わるね。じゃあこの頭のキャンドルの火を消して。バイバイ!また会おうね。
歩く、歩く、歩く、歩く、私はひたすらにこの暗く終わりの見えない回廊を歩いている。終わりはいつなのだろう?どれくらい歩き続けているのだろう?いや、そもそも何でこんな所に私は居るのだろうか?わからない、記憶が曖昧で自分が誰なのかすらも覚えてないない。
そんな時ふと、どこからともなく声が聞こえる「、、さん」声が途切れて聞こえ辛い。しかし、私はその声にどこか聞き覚えがあるような気がした。そして、必死に耳を澄ませてみる。すると今度はハッキリと聞こえた。「お父さん!!」その声を聞いて全てを思い出した。私は帰らないければならない。ここから出なければならない。そう思うと、必死に回廊を走った。走る、走る、走る、走る。ただひたすらに。すると、今まで薄暗かった回廊に光がさしてきた。太陽の光?いや違う。今はそんな事考えずに必死にこの光の回廊を駆け抜ける。そして、その光の中、一際光っている出口のようなものが見える。私は迷わずそこに飛び込んだ。その時、私の意識は途切れた。
天井の蛍光灯に眩しさを感じつつ再び目を開ける。ピッピッピッ、一定のリズムで何か機械の音が聞こえる。ここはどこだろう?さっきまで変な所にいた気がするがあまり思い出せない。そんな事を考えていると、隣から大きな声が聞こえてきた。「お父さん!!目覚ました!!良かった、、、」涙を流して、安堵した表情の娘がそこに居た。そうか、私は帰って来れたんだな。「ただいま」そう一言、私が言うと、「遅いよ、バカ、、」と柔らかな表情で答えてくれた。
どうやら、私は娘の三者面談での帰り道に飲酒運転の車が歩道に突っ込んできたらしい。その時、咄嗟に娘を庇ったということ。幸い命に別条はなかったが、なぜか1週間ほど目を覚さなかった。事情を説明してくれた娘に「心配かけたな」と謝る。すると、「バカなんで謝るのよ、意識が戻って本当に良かった」と再び泣きそうな声が返ってくる。
今となっては、あの夢が何だったのか分からない。でも、娘に再び会えて良かったと、心から思っている。
昔おばあちゃんにリボンを貰った。ピンク色の可愛らしいリボンだ。しかし、そのリボンをくれた数日後、おばあちゃんが亡くなった。亡くなる前に「リボン大切してね」と話してくれたことを覚えている。今でも私の大切なリボンだ。テストの日や受験の時、大切な日は必ず付けている。なんだか、これを付けているとおばあちゃんが側で見守ってくれている気がする。
そんなある日、私が会社の面接に向かって歩いている途中のこと。私は例にも漏れずリボンを付けていた。しかし、その日はなぜかリボンがよく外れた。いつもと結び方を変えてないのによく外れるのだ。私は、面接の時間が迫ってる事もあって、その事に少し焦っていた。いっそ外して他のリボンに変えようかと考えたが、今まで大切な日に付けてきたリボンを外すのが嫌だったので、横断歩道の手前でそのまま結び直すことにした。その時のことである、大きなトラックが私の目の前を通り過ぎていったのだ。私は驚いて、信号を確認すると歩行者の信号は青だった。
その後、私は何事もなく面接に向かうことができた。不思議とリボンも外れなくなっていた。そして、無事面接を受けて採用してもらえる事になった。
あの時の事を今振り返ると、きっとおばあちゃんが助けてくれたんだと思う。あの日、私は横断歩道の前で「時を結んだ」。きっと、あの時リボンを結んでなかったら私は轢かれていた。だから、おばあちゃんが私の命を繋いでくれたのだと思う。
そして、今でもおばあちゃんがくれた「時を結ぶリボン」は大切に持っている。きっとおばあちゃんは今でも見守ってくれているのだろう。このリボンを通して。
俺には幼馴染がいる。泣き虫でとても心優しい男だ。高校1年生のある日、いつもの様に一緒に帰っていると、後ろから飲酒運転のトラックがぶつかってきた。俺は咄嗟に幼馴染を突き飛ばした。結果、俺だけが轢かれた。遠のく意識の中、幼馴染の泣き叫ぶ声が聞こえる。俺は命が途切れる事を悟り、意識を失った。そして、ふと気づくと身体が浮かんで周りには俺の事が見えなくなっていた。きっと幽霊というやつだろうか。
幼馴染は俺が轢かれた時に必死に声を掛けてくれた。でも、その声は俺の身体には届かない。すぐに救急車に運ばれたが、案の定亡くなっていた。幼馴染はその後、四六時中泣いてくれた。そして、自分自身の事を相当追い込んでいる様子だ。俺はそんなつもりで助けた訳じゃないが、確かに、幼馴染の性格を考えれば、分かることだ。だか、あの時の俺は後先考える前に身体が動いてしまっていた。それに、そうなる事を分かっていても、俺はきっと幼馴染を助けていただろう。
そして、俺が亡くなって一年が経った時のこと、俺はいまだに成仏出来ずにいた。それは、まだ幼馴染が俺の事を引きずっているからだ。いつまでも、自分のせいだと嘆いてる声が聞こえてくる。俺の事なんてもう、心の片隅にでも置いてくれれば良いのに、いつまでも悔やみ続ける。そんな幼馴染を観てるのが流石に辛くなってきた。そして、俺はある方法を思いついた。
昔聞いた事がある。死んだ人が夢に出て来るというもの、実際に出来るか分からない、それに、これが吉と出るか凶と出るかも分からないが、少しでも前向きになってくれる可能性があるなら、俺は試してみたいと思った。そして、幼馴染が眠りにつく頃、俺は枕元に立って必死に頭の中で念じた。すると不思議な空間に身体が移動する。そこは、薄暗く闇に包まれていた。まるで、幼馴染の心の中を映してるようだった。しばらく歩いてみると、幼馴染が膝をついてひたすらに謝っていた。「ごめん、ごめん、俺のせいで、俺が死んでいれば、、」と、俺はそんな幼馴染に声を掛ける。すると、目を丸くして俺の方を見る。「もう、悔やまないでくれ、お前に前を向いて生きてほしい」と真っ直ぐに伝えた。すると、幼馴染は号泣しながら「君にこんな事言わせてごめん、でも、努力してみる」と言った。そして、加えて「夢で会えて良かった」と話す。最後に見えたその顔はどこかいつもより穏やかなように見えた。
それから、幼馴染は少しは前に向いたように感じる。そして、俺の墓の前で「僕、ちゃんと前を向くから、もう心配しないでね」と一言伝えてくれた。その言葉を聞くと、俺の身体は形を留めなくなってきた。きっとこれが成仏ってやつなんだろう。俺は最後に幼馴染に一言伝える。「時々は心の片隅で思い出してくれよ」と、きっと聞こえてはないだろうが、幼馴染の心に届く事を信じて。
チリーン、チリーン!シャ!シャ!シャ!陽気な音楽と共にトライアングルを鳴らし、マラカスを振っている人間がいる。今日は特別な日なのだろうか?僕にはわからない。それより、とても寒い。雪が降っている。なのに、人間はなぜか沢山いる。でも、「ワン!ワン!」と僕が声を出しても誰も気にしない。陽気な音楽にかき消されているのか、皆んな僕の方を振り向きもしない。僕はその場が嫌になって、走る、走る、走る、とにかく遠くへ走る。でも、どんなに走っても寒いし、お腹も空いている。僕はこのまま死ぬのだろうか。雪の静寂に取り残されて。誰にも見つからず。嫌だなぁ、「クゥーン、、」と弱気な声をあげると、突然暖かい何かに抱き上げられる。「大丈夫?お腹空いてる?」と声をかけられる。人間だ。とても僕を心配してれてる目だ。そう思うと、安心して目を閉じる。これが、僕とご主人様の出会いだった。