“不完全な僕(私)”
私は気が利くし、育ちの良さから出る言葉の節々と、頭だって悪くない上に、メイクもして別に下の下な顔ではない。完全体とは思えないけれど、不完全ではない。、、自傷行為をしてしまうことや、あと、その…もう、一点を除いて。
そのもう一点とは、14歳も年上の教諭に恋をしてしまったことだ。付き合えないということよりも、彼の「子供たちに教育をする」という職業に対して、邪魔な感情を抱いてしまっていることが大罪なのだ。そして、恋をしてしまったあと気付いたのは、私は彼ほど気が利かないし、そもそも私の言葉が正しく綺麗なのかも不安になる、頭はもっと良くならないと彼の隣に並べないし、大人をよく知ってらっしゃる彼からしたら私はばぶ、つまり赤ちゃんに等しい、ということ。
こんな“不完全な私”を、彼は、…見ていてくださるのだろうか。
“香水”が強い人は嫌だ、好きじゃない。よほど自分に自信がないのだろう。どこかの柔軟剤の、素朴な匂いがいい。そして街中で誰かの匂いを感じた時、これ、彼の匂いに似てるって、思いたい。
つまり私は、日常のどこかで、いつも彼を感じていたいと思っているのだ。なによりも夢中にさせてくれるただひとりの彼を。では、そんな素敵な彼にはあと何年でもっと近づけるのだろうか?それは、ほぼ不可能な未来だろう。少しでもその可能性を上げる点に対して効果的なのは、私をもっと身近に感じてもらうことだろう。私の匂いをしっかりと覚え、日常のいろんなところで私を感じてもらう為、強く匂う“香水”をつけることだろう。
「言葉はいらない、ただ・・・」
そんな可愛い言葉、わたしには到底言えやしない。言葉でだって伝えてよ、そして行動で伝えて、思ってることも、全部教えて。
そしてそんな勇気のある言葉、わたしには到底言えやしない。だいすきな彼に向かって、丁寧語でも尊敬語でもない言葉をそのまま使ってしまうなんて。
けれど、少し納得できるところもある。彼と言葉を交わすとなると、緊張して頭が真っ白になって、口から言葉は出てくるものの頭の中はずっと「・・・」。このまま。なんだかわからないことも、ない。
ある物事において、何個か納得できない点があったとしても、ひとつ肯定できる点があると親近感を持つものだ。彼からして私は「14歳も上の教員に恋をしてしまう変な生徒」だと思うかもしれないけれど、テニスが好きという共通点があることで少しでも親近感を持ってくださるかもしれない。
全てにおいて、ただ・・・私は、彼のことがだいすきすぎる一心なのだけれどね。
“突然の君の訪問。”
担任でもない彼が、未来で突然訪問をしてくるだなんて、私はどんな失態を犯してしまったのだろうか。
長期にわたって学校を休む可能性は少ないし、家庭環境を悟られるわけもない。唯一可能性があるとすれば、私が自殺を試みたとか、未遂のまま終わってしまっただとか、そういう失態なのだろう。このまま人生が終わってしまうにはあまりももったいないけれど、このまま地獄のような日々を続けるよりは、いっそ、違う世界へダイブしてみたいと思ってしまう。彼が一生一緒に、そばにいてくれるのならば、それはそれは喜んで生きてゆきたい一心だけれども。
彼は、「逃れられない災いがあるのならば、納得してそのまま死ぬ」と言っていた。14歳も年上の教諭には、そんな心の余裕があるのかとも感心したけれども、そんなに簡単に諦めてしまう命ならば、私の命と一生一緒に、添い遂げてはくれないだろうか。
“雨に佇む”ように、彼に佇みたい。
私の中では、“雨に佇む”ことは自然なこと。なぜか落ち着くし、雨が強くなって雷が鳴っても、落ち着く。ずっとそこにいたいなと、思う。
彼に佇むことも、いつかは自然なこととなって欲しい。きっと彼の近くは落ち着くし、癒される。
ずっとそばにいさせて欲しいなと、思う。
いや…それは果たして本当だろうか?
先日彼が教卓に立って私たちに話をしてくれたが、その時でさえも緊張して手が震えた。言葉を、交わしたわけでもないのに。ただ私は、話を聞いていただけなのに。彼の近くにいると自然と癒されるのはその通りだと思うけれど、まだ、落ち着けるような関係では、全くないのだ。そしてここに、唯一どの条件でも否定できないことがある。それは、この教師と生徒という結ばれない関係であったとしても、ずっとそばにいさせて欲しいという、わたしの自分勝手なわがままだ。