ももく

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9/23/2024, 9:31:29 AM

 誰かに呼ばれている気がして、歩きだしてみた。
 ここがどういう所なのかも、どこまで広がっているのかも、何一つわからない。
 耳を澄ますと、かすかに水の音が聞こえてくる。
 それは草すら生えていない砂まみれのこの世界で、確かに生命が息づいている証拠だった。
 とても澄んだ、どこまでもきれいな水。
 この世界の生命は、自らの命を燃やし、代々この水を守ってきているのだろうか。
 自分たちがどれほど小さな存在なのか、見につまされる。
 この世に生まれてはいけないものなどないのだ。
 その意味が、それぞれによって違うだけで。


『声が聞こえる』

9/15/2024, 8:44:18 AM

 あの子とおれは、一心同体となっちまった。
 あの子がおれをあわれんだからなんだろうが、何でだろうな。おれを助けることにあの子の利点はなかったはずだ。同情されたからとて、あの子がおれにそこまでする必要はなかったはずなんだ。
 そのせいで、おれは囚われ、簡単には死ねなくなっちまったわけだ。
 そしてそれは、あの子にとっても同じこと。
 はたから見たら、面倒くさい関係だ。
 仕方ないから、しばらくの間はあの子に協力してやる。
 俺にかけられた呪いが解けるか、おれの命が燃え尽きるまで。



『命が燃え尽きるまで』

9/5/2024, 6:34:35 AM

 毎日、楽しいけれど、どこか何か足りないような気がしていた。
 それは、この年の子どもにはまったく似つかわしくないこと⸺つまり、わたしは可愛くない子どもだったのかもしれないと今では思う。

 しかしあの時あの場所で、わたしは何かに吸い寄せられ、そこへ向かったのだ。
 何かに呼ばれた、という感覚のほうが正しいのかもしれない。
 そこが水が流れる場所だというのは、少しオーバーサイズの靴がさらわれてから気がついた。
 お母さんに怒られる!
 幼いわたしは我にかえって、流れる靴を拾おうとした。

 ずっと忘れていたこと。
 ⸺思い出したこと。


『きらめき』

9/3/2024, 9:33:47 AM

 心に火がつくというのは、こういう感じを言うのだろうか。
 否、少し違うだろう。わたしが彼女と向き合ったときに感じたのは、例えるなら滝に打たれるだとか、大樹の前に立つだとか、そういったときに身を貫くような感情に近しいものだろう。
 しかし、以後、わたしの心は彼女らとの再会を望むように生にしがみつき始めた。
 これを火がつくと例えるのも妥当と思える。
 近いうちに必ずまた会える。
 わたしはそう確信している。


『心の灯火』

8/30/2024, 9:11:15 AM

 彼⸺彼女かもしれないし、そもそもそういう呼び方をするのは間違っているかもしれないが、ここでは彼としよう⸺は、初めから、恐らく招かれざる客である少女たちに対して、敵対する気はなかったのだろう。
 彼が少女たちを、墓標に案内したのは、彼女ら帰還者だと判断したためなのだろうか。
 彼は、たくさんいた仲間を少しずつ、少しずつ失いながら、ずっとこの場所を守ってきたのだ。
 あの墓は、ここで暮らしたすべての命のあるものたち墓であってほしい。
 少女たちが花を手向け、手を合わせることで、多くのものが救われることを願う。



『言葉はいらない、ただ…』

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