彼⸺彼女かもしれないし、そもそもそういう呼び方をするのは間違っているかもしれないが、ここでは彼としよう⸺は、初めから、恐らく招かれざる客である少女たちに対して、敵対する気はなかったのだろう。
彼が少女たちを、墓標に案内したのは、彼女ら帰還者だと判断したためなのだろうか。
彼は、たくさんいた仲間を少しずつ、少しずつ失いながら、ずっとこの場所を守ってきたのだ。
あの墓は、ここで暮らしたすべての命のあるものたち墓であってほしい。
少女たちが花を手向け、手を合わせることで、多くのものが救われることを願う。
『言葉はいらない、ただ…』
8/30/2024, 9:11:15 AM