たぬたぬちゃがま

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10/13/2025, 9:48:43 AM

「なんやかんやで追放されましたッ!!」
「雑なあらすじだ〜〜」
悪役令嬢です。こんにちは。
もともと斬首される予定でした。私が意地悪したからなんだって。死に戻ったからひっそりひっそり生きてたら婚約者の彼女が私に惚れたんだって。なんか話を聞いていたら前世?も彼女が私に惚れたから婚約者が嫉妬したんだって!あほらし!!
「今度は生きててよかったっすねえ」
「家名に泥どころかヘドロ撒き散らしたけど」
「居心地のいい家じゃなかったんだし、いいんじゃないっすか」
けろりと彼は言い放つ。こいつはなんでか私の従者としてずっと一緒にいた。なぜ。瀕死の妹を救ったとかそんなこともないのに。
「どこまでもお供するっすよ」
「よくわかんないけどありがとう」
彼が従う理由はわからないが、今の私は味方がいて自由なのは間違いない。淑女の頃はする発想もなかった、腕を上げてうーんと伸びをした。身体中が自由を喜んでいた。



【どこまでも】

10/10/2025, 9:03:04 AM

「焼き芋どうぞ」
「なんで?」
彼女から差し出された焼き芋はほくほくと白い湯気を発している。口に含むと甘みが広がって思わず顔が緩んだ。
「ちゃんと休ませたから甘いですよ」
「芋にも熟成って概念あるんだ……」
ほほー、と感心はしたが、そうじゃない。なんで彼女は俺に芋を渡してきたんだ。いや、美味しいけど。
「焚き火をしたんです」
彼女は見透かしてきたように呟く。
「で、あなたと食べたいなって、火を見ながら思ったんです」
えへへ、と笑う彼女の頬は赤く、紅葉のようで。
俺の顔はきっと、カラスウリのように真っ赤になっていたと思う。


【秋恋】

10/9/2025, 9:48:13 AM

絶対に離さないわ。
あなたは大切だもの。
ずっとそばにいて。
子供みたいだ、とあなたは笑うけれど。


「どうして」
離さないと言ったのに
大切だと言ったのに
君は離れてしまった
ぴしり、と水晶の音が鳴る
彼女は息もせずそこにいる
土には還せない
そばにいたい
それが彼女の望みだから

死者に囚われた男は、愛しい女をずっとそばに置いた。何年も何年も、飽きることなく。それが愛だと信じていたから。



【愛する、それ故に】

10/8/2025, 8:58:56 AM

洞窟内の冷たい空気の中、僕は1人いた。
きんとした空気が肺の中に入ってくる。
ほう、と息を吐くと、白い息が一瞬現れた。
目当てのものはいない。どこだろう。
奥へと進もうとした瞬間、ぼたりと奴が落ちてきた。

「先生いたぁああああ!!!」
ボタンを操作し、アイテムを投げつける。
「あ、こんなところにハチミツが」
「はよこい!!!」
目の前で呑気に採取を始めた彼女を怒鳴りつけながら、画面の向こうの竜に切り付ける。のんびりとした様子で現れたと思ったら慣れた手つきで切りつけた。
「今度こそ素材取れるかなあ」
「時間が溶ける溶ける」
先ほどまで冷たい空気を演出していた洞窟は戦いの場になった。2人のハンターが舞うようにダメージを与えていく。心踊るBGMなどない中、2つの刃は竜に傷を増やしていった。



【静寂の中心で】

10/7/2025, 9:38:22 AM

「いーしやぁーきいもー」
「やーきたてーえー」
「ぃやーきぃーもー」
最後の焼き芋は見事なユニゾンだった。田舎のばあちゃんちで庭を掃いていたら結構な量の落ち葉があったので、さつまいもをアルミホイルで包んで投入したのが先ほどの話。
田舎は距離が近いのか、芋をせっせと包んでいたら子供2人が寄ってきた。ランドセルを背負っており、さっき下校を知らせるチャイムもなっていたので、帰宅途中なんだろう。
そして、さも当然のように包むのを手伝い、投入し、火をつけ、2人して石焼き芋の歌を歌っている。
「まだかなー」
「まだかなー」
「まだまだ」
ほっといたら生芋のまま食べ出しそうな怪獣2匹を宥める。小学校の先生ってすごい。
ぱちぱちと音を立てて葉が燃える。一瞬光り、じんわりと赤くなり、そのまま黒くなっていく。なかなか芸術的じゃないか。
「まだー!?」
「まだー!?」
怪獣2匹に芸術はまだ早かったらしい。うるさい。
「ほら、火傷すんなよ」
火が通ったであろう芋を渡すと、はふはふ言いながら食べ始めた。
「にいちゃん、ありがとう」
「ありがとう、にいちゃん」
にっこりと笑う2人は可愛らしい怪獣だ。
「ところでな、私ねえちゃんなんだが」
にっこりと笑いかえすと、化粧しろよと即答された。
デコピンをお見舞いした。



【燃える葉】

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