眩しかったんだ。
きらきらとしたベールに身を包んで、エメラルドのような瞳を細めてこちらに微笑む。
あぁ、自分が隣に立つ人間でいいのだろうか、と。
とりたえて見栄えがいいわけでない。地位が高かったわけでもない。
ただ、がむしゃらに戦場に立っていたら武勲がついてきて、彼女も共につれてこられただけだ。
輝くあなたがいる寝室へ行くのはひどく緊張した。戦場の前線で走れと言われた方がマシなくらいだ。
「旦那様。」
ちりん、と鈴の鳴くような声が愛おしくて。
「靴とコルセット、脱いでもいいですか?」
鈴のような声で、とんでもないことを言い出した。
「つらかったー!!」
ガバッと外したかと思うと侍女が回収しやすいようにかカゴにポンポンといれ、ベッドにダイブした。最初の顔合わせの頃とずいぶん様子が違う。
「……元気ですね。」
「お父様に猫に猫を被って猫の真似をしろと言われたので。」
いそいそと掛け布団に潜ると幸せそうに顔を綻ばせる。肌触りが気に入ったようでよかったです。
「旦那様。」
猫が被り物を脱いでもやはり鈴の鳴声のような声で、自身の隣をポンポンと手のひらで叩く。
「いや、その、私たちは結婚したとはいえ……」
「私寒いの嫌いなんですよ。体温ください。」
ぐいっと引っ張られたと思ったら布団を被せられ、背中にピトッとくっついてきた。背中に2、3回頬擦りしたかと思うと寝息が聞こえてくる。
なんだこの娘は。一回りは下だからと割れ物に触るようにしていたらあっという間にペースに飲まれてしまった。
彼女の方を向けない。見てしまったら、眩しくて直視できる自信がなかったから。
【眩しくて】
8/1/2025, 4:30:49 AM