_落下_
"一目惚れ"、少女漫画じゃあるまいし一目惚れなんてこの世には存在しない、よくそう思っていた。私には無縁の話だ。
両親が離婚して、親1人で仕事しなくてはいけなくなり、
小3年から、学童に通うことになってしまった。宿題も1人、遊ぶのも1人…尚更寂しくて、毎日が退屈でしかなかった。
自分の事を、1人でもいいから大切にして欲しい、誰でもいいから…。
人見知りで初めの頃は他校の子が沢山通っていて、何度か話しかけられたけどなかなか仲良くなれず、とうとうひとりぼっちになってしまった。
月日が経ち、六年生になった私は、新学期お祝い会で学童の何らかのイベントパーティーみたいなものが開催された。
先生が子供達の班を作り、班のみんなと協力して学童中に散らばっているクイズを解く、いわゆるお楽しみ会的な。
班分けされて、キャッキャいう女子たち。私はどこの班か呼ばれるまで黙ってるだけ。つまらない子すぎる。
私の班には、一、二年生の子供と、四年生の大人しい子と
一つ年下のクールな男の子。…そして私が班長…。殺す気ですか?ただでさえ人見知りで、なんか班の空気悪いしぃーーー…。
先生「班のみんなで協力して班長中心にクイズ解いてこいー!」
「よ、よしっ…みんな、がんばるゾー」
「おー!」「ん…。」「はーい。」
…死にたい…(泣)
_____数時間後
「もうそろそろで、時間だね。」
皆んなに話しかけるが誰1人として返してくれない。…皆んなして陰キャかよ…。一、二年生除いて…。
すると1人の2年生の男の子が突然急に走り出して、
「僕、最後のクイズ見つけてくるねーー!」
と、言って何処かへ行ってしまった。
「え」
「…は?」
「…え」
全員一瞬体をピタッと止めて、すぐに我に返り2年生を追いかけた。
「ちょ、ちょっとまってよっ…。」
やばいよ、私班長失格やん…。みんなに迷惑かけるし、班の子達全然楽しそうにしてなかったし…。
気がつけば、本当に勝手に涙が出ていた。
あぁ、そうだ、私は1人ぼっちが怖いんだ。本当は嫌なんだ。皆んなともっと楽しい話をしてみたかったんだ…。
必死になって学童中を探し回っている後輩達の中で、一つ年下の男子が、私が泣いているのに気づいてしまった。
「っ?!…。」
一瞬戸惑ってから、すぐに私のもとへ駆け寄ってきて、私を心配する様子で伺っていた。
「大丈夫ですか?…すみません、先輩ばかりに任せてしまって、大変でしたよね…。」
なぜか謝られた。え、えなんで?
「う、ううん。違うよ…いや違くないけど…。私、私のせいで皆んなに迷惑かけちゃって、その…。」
涙を流しながら、情けない姿を見せて、なにをすればいいのかわからない。…最悪じゃん。
「全然迷惑なんかじゃないですよ。むしろ俺たちのために進めてくれてありがとうございます。なので泣かないでください…。」
今度は褒められた、思考がうまく回ってない。彼が私の顔を覗き込んでいて、慌てて顔を隠した。
その時、初めて彼の顔をしっかり見た。そういえば、人見知りすぎて皆んなの顔すら見てなかったな…。
ドキッ
…彼の表情はとても心配している様子で焦っていた。こんな私のために心配してくれている。
そう思った瞬間。突然体に電気が走ったように脈が速くなって、また彼の顔を見れなくなった。
「さ、速く2年野郎を捕まえに行きましょ。」
「あ、う、うん。」
その後無事、2年生の子を捕まえて、彼が私の代わりに優しく説教してくれた。説教しているその姿は、凄く可愛く見えた。
なぜ、そう思ったのか自分でもよく分からない。…彼にお礼を言いたいな…。
___
__________
「あ、あの…っ。」
私は勇気を振り絞って、初めて私から声をかけた。
「?、はい。」
「今日は、あ、ありがとう、ございました。」
凄くぎこちなくなってしまった…。
「いや、大丈夫ですよ。俺も、ありがとうございました。」
その言葉をかけられ、また私の顔が赤くなった。…さっきからどうしたんだろう、私。
…学童でこの人が初めて私に笑顔を向けてくれた人。もっと話していたい。まだ話したい。そんな考えが頭をよぎる。
気づいた時には遅かった。彼の仕草を行動を目にした瞬間、胸が高鳴るこの感覚。私は彼に堕ちていた。
優しくしてくれたんなら、最後まで優しくてしてよ…。
また、会いに行っていいですか?
_未来_
余命三ヶ月と宣告された。自分でもまだその事が理解できなかった。俺にはまだやらなきゃいけない事がある。まだ彼女と結婚してまもない。彼女を本当に幸せにしてあげられない。
いやだ、まだ死ねない…彼女を置いていけない…。
家族にはこの事を伝えたが、彼女にはどうしても言えなかった。言わなきゃいけないのに、彼女とは、普通の暮らしをしていきたい。そう思ってしまった。
勿論家族には反対された。帰ってきなさい、と。
それでも俺は残り少ない人生のうちで、家族に感謝を告げ、彼女を選んだ。
「最近、ボーっとしてるね。なにかあったの?」
「あ、いや…何でもないですよ。」
彼女に心配されると、余計心が重くなる。こんなに優しい彼女と、もういられなくなると思うと、自然と涙が出てきた。
「えっ…⁈ちょっ…だ、大丈夫なの、?なにか嫌なことでもあったの?」
俺の顔を見ては焦りまくる彼女。なにやってんだ、俺は。
余計心配かけてどうするんだ…。
「…ふふ、すみません。貴方がどうしても優しく、つい感情が表に出てしまいました…。」
「そ、そんなことは…疲れてるのかな…。今日はもう寝よっか。」
彼女がそういうと、俺と一緒に寝室に行き、2人で一緒に寝る準備をした。
あぁ、こんな時間も明日にはもうなくなっているのかもしれない、絶対にいやだ…。
…そんなこと考えたってどうしようもない。俺が言わないって決めたんだろ。泣いてたってどうしようもないはずだ。
「…貴方は俺と一緒に過ごした時間。幸せでしたか、?」
「えっ?」
唐突に質問したので、一瞬戸惑ってからすぐに答えてくれた。
「当たり前だよ。貴方と一緒にいられたから、私は優しくなれた、貴方が居るからこそ、今すっごく幸せだよ。」
そういう彼女は飛び切りの笑顔を俺に向けた。
「良かった…。俺も今凄く幸せです。愛してます。」
「ふふ、急にどうしたのよ〜。やっぱり疲れてるのかなぁ、早く寝よっか!」
「そうしましょう、おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。
」
この時間が、今一番大切な時間だ。俺は彼女と2人でベットに横になり、深い眠りについた。
_好きな本_
今日は彼と一緒に図書館へ行った。少し不思議な構造の建物。本が置いてある棚は何処となく散らばっているように見えて、まるで迷路みたいな、神秘的な場所。なのに凄く居心地がよく落ち着いた。
「ここはね、俺がよく通ってる図書館なんだ。本当に色々な本があってね___」
彼は夢中になって私にここの図書館の良さを教えてくれた。ずっと昔から本が好きだったもんね。
「こうやって、智也と図書館に来るとあの時のことを思い出すなぁ」
初めて貴方を知った日、貴方を好きになった日、貴方と仲良く慣れた日。全てがあの思い出のある図書室だった。
「あぁ、そうだね。毎日図書室利用してたなぁ」
「ふふ、まさか私に会うためじゃないよね」
いたずら気味に言うと、彼は少し目を逸らしてすぐに答えた。
「そうだけど。」
「…へ」
私、てっきり普通に本が好きできてたのかと…まぁ一時期もしかして私のために来てるかも…!って思った時もあったしな。
「ふふっ良くないヨォ?」
「え、何でだよ笑」
私たちの一番の共通点は本を読むことが大好きなこと。
これからは、私達の世界にたった一つしかない物語、これが私達にとって分厚い本になっていく。一番好きな物語。
_あじさい_
今日は彼と二人で紫陽花が沢山咲いている場所にデートしに行った。この間、大雨のせいで中止にされたデート。今日こそ彼とこの紫陽花を見に来ることができた。
「わぁ〜!凄く綺麗。」
「ですね、紫陽花はもちろん。今日は晴れて何よりです。」
「ね〜、晴れてよかったぁ、」
ヘナヘナとする私を彼は微笑ましく見ていた。紫陽花にも同じように、彼は優しい笑みを溢した。
紫陽花ロードを進んでいくと、紫に青、あたり一面紫陽花で埋め尽くされていた。
その後は紫陽花を鑑賞して、紫陽花のお土産スペースに寄った。可愛い紫陽花の柄のペンやポーチ、花束まであった。
並んでいる商品に見惚れていると彼に名前を呼ばれた。何か買ってきたようだった。
「これ、貴方に渡したくて。受け取ってくれますか?」
「えっ、いいの?嬉しい、ありがとう!」
私は満面の笑みを彼になげ、彼から可愛いピンク色のリボンがついた紫陽花を渡された。
「ふふ、白色の紫陽花の花束です。どうしても貴方にあげたいなと思ってつい。」
「へぇ〜、可愛いね。」
私は彼からもらった大切な紫陽花の花をリビングの机に飾った。
_好き嫌い_
「…もう貴方なんか大嫌いだよっ…!」
言ってしまった。もう駄目だ。
「…あぁ、そうですか……俺も貴方のことが嫌いです。」
彼は私に絞り出すような声で、でもそれは凄く静かに慎重にいっているようでもあった。
部屋の中は沈黙でただただ気まずい雰囲気が流れる。
私は居ても立っても居られなくなり、自分の部屋へ強引に入っていき、ドアを力強く閉めた。
彼と喧嘩なんていつぶりだろう。これまでは喧嘩をする理由がなかったから当然とっても仲が良かった。でも今日はとっても些細なことで、喧嘩になってしまった。今までそんな事一度も無かったのに…。
私は色んな感情が込み上げていき静かに泣いていた。本当は嫌いじゃない。本当は大好きな彼。なのに言ってしまった。大嫌いって。後悔と怒りと哀しみでまた泣き喚いた。
30分ぐらい部屋で自分の感情を落ち着つかせていると、彼のことが心配で堪らなくなってきた。けど、今行ったってまだ彼が怒っているかもしれない。いらない考えが次々と出てきてまた立ち止まる。早く彼に謝りたい。もう一度お話ししたい。私は決心し、そっとドアを開けてリビングに出た。
そこには、一人黙って下を向いて泣いている彼の姿があった。居てもたっても居られなくなり、私はそっとリビングの方へ行き、彼が座っていたソファーに腰掛けた。
彼は私の行動に凄く戸惑っていて、すぐにまた下を向いた。
「……」
「……」
本当は今すぐ謝りたい。けど、やっぱり何処か言葉が詰まり声が出なくなってしまう。この空気が耐えられなくて、私は静かに彼に抱きついた。
「…ごめんなさい。大嫌いって言ってごめんね。」
彼の顔が見れなくて抱きついたまま下を向いていると、頭の方でなにか優しいものが触れた。
「…俺もごめんなさい。貴方に嫌いって言われた瞬間、心に黒い穴が空いたように感じて、俺も咄嗟に貴方を嫌いと言ってしまいました。本当に情けないですよね…。」
「そんなことない…っ。悪いのは私。元を言えば喧嘩の理由も私だし…。」
「…貴方だけのせいじゃありません。俺の責任でもあります。…ふふ、お互い様ですかね。」
そういう彼に、いつもの優しい表情が戻ってきた。
「…うん。…大好きだよ、ずっとずっと。これからも変わらない.嫌いっていうのは嘘だよ。」
「俺も、嫌いだなんて事一切思ってません。大好きです。一生好きです、…愛してます。」
お互いに仲直りができて、本当の気持ちを伝えることがまたでき、そのあとは二人で一緒に仲良くベットで寝たとさ。