ミツ

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6/14/2024, 1:47:35 PM

「お兄ちゃんばっかりずるい!」

昔からずっと言ってきた言葉だ。

私には二つ年上の兄がいる。

不出来な兄だ。

私より地頭が良くて、両親の顔色をうかがってばかりの兄が。

おばあちゃんとおじいちゃんに愛されている兄が。

不憫な思いをして来た兄が。

兄は障害児だった。

とは言ってもパット見でわかるものではない。

だからいじめられた。

兄についていた人はいい人もいたし変な人もいた。

障害児に理解があるのか分からない人。

母いわく何度も教室に置き去りにしたりしていたらしい。

喋り方も兄が理解できるか分からない感じだったという。

小学一年生の頃、一度だけあった記憶がある。

何を言っていたかは全く覚えていない。

仕方ないのかもしれない。

ただ、はっきりと苦手だと思った。

今でもたまにそんな喋り方の人を見かける。

子供には聞き取りにくそうな高い声に早口。

何を言っているのか分からないだろうなとは思う。

でも、いい人もいた。

慣れてるんだろうなって感じの人。

優しそうな雰囲気があった。

まぁ、兄が小学校を卒業してからは全く話をしなくなった。

おまけに私が5年生の頃にはいなくなっていた。

兄は中学生に上がってからもっと大変そうだった。

居眠りや暴行の話まで来ていたようだ。

しかし、私は知っている。

今まで一度だって兄から手を出してきたことはないのだ。

私が泣く時も、怪我をする時も原因は私だった。

理解が無い人、立場だけあって分かってない人、知ったかぶり、嘘つき。

こういう人を見る度に心底腹が立つ。

でも多分それは私の身内に障害者がいたからだろう。

障害者の事を学ぶ機会があったからだろう。

兄がいなければ考えることすらしなかったかもしれない。

わからない事だらけで、少し知ってるくらいで鼻にかける嫌なやつになっていたかもしれない。

だから感謝をする。

少しだけ。

兄のせいで嫌なことだってあった。

独りで泣くことだっていっぱいあった。

死にたくなったことだってある。

苦しかった。

悲しかった。

痛かった。

だから何?って話なんだけど。

一つだけ、兄に聞きたかったことがあった。

私はずっと「ずるい」って言う立場だった。

だから、一度でも考えたことはなかった。

言われ続ける立場の事を。

気に病んだのだろうか。

面倒くさかったのだろうか。

同情したのだろうか。

気になって聞いてみた。

返事は「別に」。

何それ?

意味不すぎん?って感じだけどまぁ良い。

今までは「私可哀想」だったけど、これからは「普通だよな」って生きてく。

周りを見るって大事だって再認識した。

そう言えば、空っていつも曖昧そうだけど一番好きなのは夕焼けかな。

好きな色が詰め込まれてる感じ。

                            ーあいまいな空ー

5/31/2024, 11:22:46 AM

「あっ」

力を込めると潰れてしまう。

僕よりずっと小さい虫のように。

「ごめんね」

一言謝ってそれで終わり。

手についた虫の死骸を払う。

何事も無いように。

無かったように。

残酷だろう。

残酷なんだ。

でも僕はそんな事すら忘れる。

毎日何匹の蟻を踏んだのだろう。

毎日何匹の命を奪ったのだろう。

僕や、家族や友達の死しか興味が無い。

何匹殺していようが気にも止まらない。

僕にとってそれは生きている玩具。

道具でしか無い。

暇つぶし。

そんな常識が変わったのは授業での事。

花を見に行った。

つまらない。

様子を観察するより蟻をいじっていたほうがはるかに楽しい。

目の前を通る蟻の軍団から一匹を捕まえる。

いじっているうちに蟻の足が取れた。

「うわっ」

足を払い落とす。

蟻が逃げ出して手を這っていく。

何処かぎこちなくてついには転ぶ。

逃げた事に怒った僕は手を振り上げる。

同時に痛みが走った。

蟻に噛まれたのだ。

急いで振り払って手を見つめる。

足元で逃げようとする蟻を踏み潰した。

「こら!何やってるの?」

先生に見つかって事情を説明した。

僕は悪くない。

蟻が噛んできたから。

仕方がなかった。

「どんな理由があっても悪い事は悪いんだよ」

何だよそれ。

悪い事って何?

その日はむしゃくしゃして放課後何も殺さなかった。

親に相談した。

先生はおかしい。

そうでしょ?

「違う、先生は正しい。お前が間違っているんだ。辞めなさい」

何だよそれ。

揃いも揃って。

大人は何も分かってない。

楽しいからしてるんだ。

楽しんで何が悪い。

大人はおかしい。

次の日は友達に相談した。

「え、そんなことしてたの?辞めなよ」

女はこう言う。

「そうそう。俺もそう言われた。可笑しいよな〜」

男はこう言う。

な?

俺達が正しいんだ。

大人も女も間違ってる。

「クリスマスプレゼント!前から買いたいって言ってたでしょ?」

「ありがとう」

可愛い子犬がそこにいた。

抱き抱えようとして止められる。

「こうやって支えて」

「うーん」

案外重たくてビックリした。

毎日やってるうちに慣れてきて、楽しくなって。

「えさは俺がやる」

「出来るの?」

「出来るって」

それからはえさも俺がやった。

俺は成長した。

犬も成長した。

家を出ていく時犬を蹴った。

ウザかったから。

「辞めなさい!」

「大人はいつも綺麗事ばっかり。うんざりなんだよ」

「だからってこの子を蹴るのは違うでしょ?」

「この子って。気持ち悪い。人間じゃねーんだよ」

「ちょっと!待ちなさい!待ちなさい!!」

親の言うことは無視して家を出た。

何も知らなかった。

今の自分じゃ社会に受け入れられない事も。

信頼ってのは一回無くなったら終わりだってことも。

色んな考え方があるって事も。

全部、何も知らなかった。

自分が正しいと信じて来た。

小学5年生に上がってから何も言われなくなった。

俺が怖いから言ってこないんだって思ってた。

クラスメイトからは無視される。

先生からは何も言われない。

自由だけど窮屈で。

見えない鎖で繋がれているみたいだった。

人間関係に信頼ってのは必要不可欠で。

それを失った俺は何もできない事を。

知った。

分かって。

初めて。

自分が。

どれだけ。

どれだけ愚かだったかを知った。

どんな輪にも入れない。

無理矢理入ろうとしても繋がれた手はそう簡単に離れない。

離れた所で俺とは手さえ繋いでくれない。

孤独何て気にして無かった。

それよりも他にキラキラしたものがいっぱいあって。

目移りしていた。

必要な物はすぐそこにあったのに。

昔の俺は自分を真っ直ぐ信じてた。

良くも悪くもそれが俺の個性だった。

前だけ向いてやってきた。

どれだけ分かれ道があっても真ん中だけを突き進んだ。

無垢とはどれだけ尊いのかを学んだ。

無垢とはどれだけ愚かなのか学んだ。

無垢とはどれだけ真っ直ぐなのか。

やり直せはしない。

戻りたいなんて思わない。

思ってないようで望んでる。

心の底からあの頃に戻りたいと。


                               ー無垢ー

5/27/2024, 7:14:16 AM

「月が綺麗ですね」

伝わるかわからなかった

伝わってほしかった。

伝わってほしくなかった。

こんな言い回しにしたのは振られるのが怖かったから。

誤魔化せると思ったから。

言い訳ができるから。

僕は案外ロマンチストなんだ。

君になら伝わると思ったから。

素直に伝えるのが恥ずかしかったから。

「ふふっ、私は太陽の方が好きです」

伝わった?

伝わった。

伝わったけど。

期待してた。

君が、思わせぶりな態度を取るから。

君のせいにしている訳じゃ無い。

でも、じゃあ、あれは?

何だったんだろう。

どうして。

期待しちゃうじゃないか。

両思いだと思うじゃないか。

怒ってはいない。

悲しくなった。

僕の片思いだったってこと?

何でこんなに勇気を出して。

告白ってのはひどく緊張するものだった。

振られた時のショックはでかい。

神様。

何で。

願いを。

どれだけ。

叶えて。

どうして。

僕は。

いない。

告白。

どうか。

頭の中がぐちゃぐちゃになって。

上手くまとまらない。

月の明かりで足元が照らされている。

夜だと言うのに見えやすかった。

改めて見た彼女の横顔にまた、恋をした。

神様。

貴方はどれだけ残酷なんだ。

これ以上好きになれないくらい好きなのに。

もっともっと好きになった。

僕の限界を超えさせた。

月が、見ている。

暖かく、優しく。

もしも、月にすがっていいなら。

どうか、僕のこの恋心を消して下さい。



                             ー月に願いをー

私は太陽のほうが好きです:貴方ではなく別の人を愛しています

5/25/2024, 11:23:31 AM

「絶対来てね」

初めての友達と言える存在と約束をした。

「分かってる、そっちこそちゃんと来いよ」

相手にとっては軽い約束だったのかもしれない。

でも、俺にとってはとてつもなく大切な約束だった。

なんせ初めての友達と初めての花見だ。

まだ一週間も先だと言うのに既に興奮して寝付けなかった。

毎日布団の下で喜びを噛み締めた。

そんな俺の状態に興味も示さない冷めた親。

今日もリビングに千円札が置かれており、しばらく帰らないと書いた置き手紙があった。

しばらくというのは大体一週間くらい。

両親共々浮気性で帰ってくる時は大体知らない大人が一緒だ。

知らない大人はいつも千円くらい俺にくれる。

そこは嬉しい。


今日はおにぎり一個。

御馳走だ。

食べられないことなんてザラにある。

真っ暗な部屋。

空き缶や吸い殻が散乱している。

だから臭い。

服にも匂いがつくから落ち着けない。

でも、少し安心もする。

家の匂い。

そんな匂いがしない部屋が二部屋ある。

それは両親の寝室と風呂場。

まぁ、風呂なんて一週間に一回くらいしか入らないから対して気にならない。

両親の寝室には一度も入ったことがない。

入ろうとして両親から同時に暴力を振るわれて以来近づきさえしなくなっていた。

少しのトラウマになっている。

そんな寝室からは両親が帰ってきた時だけ喘ぎ声が聞こえてくる。

煩くて夜は一向に寝付けない。


結局、来なかった。

翌日約束の時間1時間前に待ち合わせ場所で待っていたのに現れなかった。

寝坊でもしたのか、来たくなくなったのか。

連絡手段がなかった為、確認はできなかった。

嘘つきなんて怒る資格は俺には無い。

約束なんて一回破られたくらいで凹んでたら駄目だ。

そう思ってなんとか涙を我慢した。

それから幾度も約束をしては破られ耐えてきた。

問い詰めなかったし相手もなにか言ってくる事は無かった。

そうやって何となく疎遠になっていって初めての友達とはあっけなく終わった。

高校行って卒業して就職して。

何となく過ごしていたらあっという間に20歳になって。

成人式で久々に顔を合わせた友達だった相手は嬉しそうに笑っていて、何も無かったかのように。

聞いてしまった。

「しっかし、あいつ何も変わってないのな。なんか可哀想〜」

「また、ドタキャンしてあげたら?きっと喜ぶよ」 

「ブッ、アハハハ」

酷い。

別に良かった。

分かってた。

遊ばれてるんだろうなって。

でも、本当だったらって僅かな希望を胸に待っていた。

だけど、彼のだけの意思じゃ無いんだって今初めて知って。

悲しかった。

何で悲しくなったのかは分からない。

とにかく悲しかった。

成人式が終わった時には手のひらは真っ白になっていて、離した時すごく痛かった。

外は雨が降っていた。

傘を置き忘れた事に気がついて、戻る気にもなれなくて、雨が止むのを待った。

その間、涙が溢れないように耐えた。

昔と同じで耐えることしか出来ない自分に嫌気が差した。

そんな事を思って余計に悲しくなって、結局涙が出てきた。

もう良いや、何もかも面倒くさくなって。

無駄なプライドだけはあるから、雨の中に突っ込んで。

カモフラージュと言って良いものか。

どうせ誰も気にしてないのに、分かっているけどもしかしたらって思ってしまって。

雨は、俺の心の中を現しているみたいにそれから3日、止むことはなかった。


                            ー降り止まない雨ー

意味わかんない感じになってすいません。

伝わってほしい。

5/24/2024, 12:05:55 PM

※不快になるような発言が入っている可能性があります
あくまで個人の見解です

「じゃあ、今日は「あの頃の私へ」という題材で手紙を書いてみて下さい!」

学校の授業はいつも退屈。

だって、楽しくないんだから。

先生はいつも真面目。

当たり前か。

「書き終わったら持ってきてね」

「先生〜、どれくらい書くんですか?」

「今、作文用紙配るからそれの両面びっしり。最低でも一枚は書いて」

「え〜」

不満の声が挙がる。

黙ってろよ。

わざわざ声に出す必要が何処にある。

本当嫌になる。

馬鹿ばっか。

うざいんだよ。

「どうする?」

そんな事も一人で決められないとか可笑しいでしょ。

可哀想。

いい加減他人に依存するのやめたらいいのに。

「ん〜、昔の事とか覚えてないし、4年の頃に向けて書くわ」

「私もそうする」

まるで、寄生虫みたい。


「はい、皆さん書けましたか?目を通した中で優秀だったものは凛(りん)さんのものです。皆も頑張ってね」

「流石凛ちゃん」

「いいなぁ~」

煩い。

作文の出来が良いくらいで騒ぐな。

これだから猿は困るんだよ。


「美桜(みお)さん。どうしたの?まだ何も書けてないじゃない」

良いだろ。

別に。

関係ない。

「悩んじゃったのかな?何でも良いから何歳の自分になにか言いたい事があった書いてみたら?」

「無いです」

「…先生、心配何だよね。周りと距離がある気がして馴染めて無いんじゃないかな」

「別に、普通に喋ってますけど」

「そっか。本当、なんかあったら言ってね」

「はい」

面倒くさい。

介入してきてほしくないのに。


「どうだった?」

私はいつも、顔も知らない男の子と会話をする。

と言ってもチャットで何だけど。

その日にあった事とか、ストレスになってる事とか。

家族とかよりも自然に吐き出せる。

ここだけが唯一、私の拠り所。

「つまんなかった」

「まぁ、そうだよね。そう言えば今日嫌なことがあってつい言っちゃった事があるんだけど」

「なんて言ったの?」

「何か、勉強したくねぇ、とか言う人がいて気に止めてもなかったんだど

授業の妨害してきて全然進まなくて」

「酷いね」

「学校は勉強する所で勉強しに来てるんだから勉強しろよって言ったの

そしたら相手も何で勉強する訳?義務教育って何でやるのって」

「うん」

「最低限の知識身につけて就職する為に決まってんだろって言ったんだよね」

「そっか」

「どう思う?相手の方は黙っちゃって授業は再開したんだけど、その後先生に呼び出されてあんなに言わなくて良かったって」

「先生も酷いね、何か腐ってそう」

「そうなんだよね」

「笑」

「親に呼ばれたわ、また明日」

「うん」

PCの電源を落とした。

途端にやることがなくなる。

宿題まだあったかな。

ランドセルに目を落とすと作文用紙が出しっぱなしになっている事に気がついた。

「書くかぁ〜」

家で書いてこいと渡された作文用紙。

ペンを握るもやる気が起きない。

書くことが無い。

この作文用紙を埋めるには、変わっていないでは駄目なのだ。

何か、私が変わっていないといけない。

駄目だなぁ。

何も変わってないなんてそんな事、無いと思うけど。

思いつかない。

取り敢えず題名だけでも。


                              あの頃の私へ
                                                           齋藤 美桜
私は、


「私は、変わっていません。」

「何一つ成長していません。」

「虚しい…」

これを読んで過去の私が考える事も今の私と同じです。

私は人と接する事が苦手です。

相手の駄目ところを探ってしまう。

自分のだめなところを見せようとする。

変わっていないんです。

だから、恥ずかしいとか、可笑しいとか、バカとか、出てこないんです。

他人の事はいくらでも罵れるのに。

自分の事は罵れ無いんです。

酷いですよね。

私は、人に見限られるのが怖い。

限界を知られるのが怖い。

バカにされて、笑われるのが怖い。

過去の私は今の私が何でこんな事を書いているのかわからないですか?

それとも、全てわかってしまいますか?

私が敬語を使っている理由も分かってしまいますか?

何か、一つでも考え方が変わっていたら、過去の私には今の私の考え方がわから無いと思うんです。

探して下さい。

探す事は得意でしょ?



「ふぅ~」

ここまで書いてもまだ原稿用紙は埋まらなかった。




「そうそう、こんな事を書いてたんだけ」

「なんか、無茶振り」

「そうかな?」

「しっかし、昔はこんな風に思ってたんだ」

「うん、自分に自信が持てなかった」

「だから、あんなアプリ使って僕と話してたの?」

「そうだけど、違うの?」

「違うね、僕は逆に自信がありすぎて悩んでたんだ」

「あはは、そっか」
         
あの頃の私へ。

変わったよ。

驚く程に。

大丈夫。

だけど、今すぐ前を向けって言ってる訳じゃない。

そうやって挫折して今の私があるから。

いっぱい挫折して、最後は思いっきり楽しんだら良いよ。

ね?

昔の私はこんな考え方出来なかったでしょ?       


                             ーあの頃の私へー

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