「お兄ちゃんばっかりずるい!」
昔からずっと言ってきた言葉だ。
私には二つ年上の兄がいる。
不出来な兄だ。
私より地頭が良くて、両親の顔色をうかがってばかりの兄が。
おばあちゃんとおじいちゃんに愛されている兄が。
不憫な思いをして来た兄が。
兄は障害児だった。
とは言ってもパット見でわかるものではない。
だからいじめられた。
兄についていた人はいい人もいたし変な人もいた。
障害児に理解があるのか分からない人。
母いわく何度も教室に置き去りにしたりしていたらしい。
喋り方も兄が理解できるか分からない感じだったという。
小学一年生の頃、一度だけあった記憶がある。
何を言っていたかは全く覚えていない。
仕方ないのかもしれない。
ただ、はっきりと苦手だと思った。
今でもたまにそんな喋り方の人を見かける。
子供には聞き取りにくそうな高い声に早口。
何を言っているのか分からないだろうなとは思う。
でも、いい人もいた。
慣れてるんだろうなって感じの人。
優しそうな雰囲気があった。
まぁ、兄が小学校を卒業してからは全く話をしなくなった。
おまけに私が5年生の頃にはいなくなっていた。
兄は中学生に上がってからもっと大変そうだった。
居眠りや暴行の話まで来ていたようだ。
しかし、私は知っている。
今まで一度だって兄から手を出してきたことはないのだ。
私が泣く時も、怪我をする時も原因は私だった。
理解が無い人、立場だけあって分かってない人、知ったかぶり、嘘つき。
こういう人を見る度に心底腹が立つ。
でも多分それは私の身内に障害者がいたからだろう。
障害者の事を学ぶ機会があったからだろう。
兄がいなければ考えることすらしなかったかもしれない。
わからない事だらけで、少し知ってるくらいで鼻にかける嫌なやつになっていたかもしれない。
だから感謝をする。
少しだけ。
兄のせいで嫌なことだってあった。
独りで泣くことだっていっぱいあった。
死にたくなったことだってある。
苦しかった。
悲しかった。
痛かった。
だから何?って話なんだけど。
一つだけ、兄に聞きたかったことがあった。
私はずっと「ずるい」って言う立場だった。
だから、一度でも考えたことはなかった。
言われ続ける立場の事を。
気に病んだのだろうか。
面倒くさかったのだろうか。
同情したのだろうか。
気になって聞いてみた。
返事は「別に」。
何それ?
意味不すぎん?って感じだけどまぁ良い。
今までは「私可哀想」だったけど、これからは「普通だよな」って生きてく。
周りを見るって大事だって再認識した。
そう言えば、空っていつも曖昧そうだけど一番好きなのは夕焼けかな。
好きな色が詰め込まれてる感じ。
ーあいまいな空ー
6/14/2024, 1:47:35 PM