ハクメイ

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2/5/2026, 11:32:29 AM

言葉じゃ言い表せない高揚感
動きじゃ収まらない罪悪感
それでも溢れ、高ぶる想い。

僕は、何をしているのだろうか。
あの子に告白して、振られたから?
それで夜の街に繰り出して…誰かに話しかけられて…
思い出せない。いや、思い出さなくてもいいか。
今はこの気持ちに浸っていたい。幸せなんだ、とても。
だから、邪魔をしないでくれ!


「こちらα、現場に到着。
目標の狂者を発見。駆除を開始する」
無機質な音と共に、複数の天使達が武器を構える。
そこは左右に、ネオン輝くビルが立ち並んでいた。
ビルにはたくさんの光る看板がかけられ、綺麗なドレスをきた者達が、心配そうに覗いている。
その道のど真ん中で、往来を邪魔するように、ビルの半分ぐらいの大きさをした、獣が立っていた。

巨大な羊が、二足歩行をしたような姿だった。
口から涎を垂らし、服は千切れ、全身の赤い羊毛が刺々しく生えている。
戦隊モノの悪役のように、赤黒いオーラを放っている。
目は焦点が定まっておらず、天使達の忠告が、耳に入っていないようだった。

「あーあ、あれは助からないね」
真の黒幕のように、嘲笑うかのように。
ビルの上で、騒動を見下ろす誰かが、そう言った。


お題『溢れる気持ち』

2/4/2026, 10:54:03 AM

そこは、地獄だった。
比喩ではなく、言葉の通り。
蘇ることができなかった者達が、最終的に辿り着くこの世の果て。
血のような川が流れ、怨嗟の声が延々と聞こえる。

一人の女性が、そんな川のほとりを歩いていた。
裸足で、服がボロボロで、髪はパサパサで。
女性はうわごとのように、何かを呟き続けている。

「あなた、あなた、あなた、あなた」
「あなたあなたあなたあなたあなたあなたあなたあな」

それは呪言となって、川をさらに汚していた。
口が止まることはなく、永遠に続く川のように、永遠とその口から言葉が放り出されていた。

もしかしたら、真実のキス。なんてロマンチックなことをしたら、この未練は消えるのかもしれない。
だが、後ろからそんな人は追いかけてこなかった。

お題『Kiss』

2/3/2026, 10:30:16 AM

「1000年先も、一緒に遊ぼうね!」
ピンクのランドセルを背負った君が、そう言った。
桃色の目で、眼差しを向けた。
僕は、うん。と返して、ゆびきりげんまんをした。

1年後
君は進級して、中学校に通い始めた。
会うことはぐっと少なくなったけど
それでも僕達は、休日に遊びに出かけた。

10年後
僕達は大人になった 付き合った
君は大学に入学して 僕は働いた
会う時間は増えた 同じ家だったから
これからどうしようかと、たくさん未来を話し合った。

100年後
君は死んだ 僕も死んだ
だけど僕は、思者(死者)として蘇ってしまった。
君の体を取り込んで、『約束』の想いだけが、心臓として体を動かし続けた。

1000年後
世界はあっという間に変わった
他人と話すことも無くなった。一人旅を続けていた
自分自身の体を抱きしめる 君を、抱きしめる。
誰も覚えていない歌を歌った 授業で歌ったあの曲を
遊ぶように、体を動かしたくなるように、元気に。

これで、約束を叶えられたのだろうか。
誰も答えてくれやしない 求めても、いない。
ただ、僕が。
君を1000年覚えている者として、死にたかっただけだ。

お題『1000年先も』

2/2/2026, 10:58:54 AM

そこは、花畑だった。
青空の下に咲き誇った、小さくて、色とりどりの花々。
そこに立っていたのは、一人の少女だった。
白紙のような髪の毛を足まで伸ばし、下に咲く花のような目を、空に向けている。

「私は誰?」
「私はなんでここにいるの?」
「私は…私は」

誰も、その言葉に返事をしてはくれなかった。
花も、空も、少女の視界に映る全てが、無視を決め込んでいた。

そんな少女を、双眼鏡で見つめている誰かがいた。
「少女の様子は」
双眼鏡で見つめていたその人物は、隣にいる者の質問に答える。
「おそらく、成功しています。記憶はないかと」
「だろうな。彼女の記憶は全て、花にさせたからな。
あの花畑は、計画の成功を表している。」

まるで自分の功績を、吟遊詩人に語っているかのように、そいつは詳しく喋った。
双眼鏡を持つ男性は、不満を言葉にせず、ただ息を吐き、もう一度少女を双眼鏡で見る。
そこには、立ち尽くす少女と、花畑だけが残っていた。

お題『勿忘草』

2/1/2026, 12:52:33 PM

「あれが、例のやつか」
とても幼く、拙い少女の声が聞こえた。
「そうだ、会話は不可能らしい」
貫禄のある、渋い男性の声が聞こえた。

近くのブランコが、風に揺られて軋んだ音を出す。
土を踏み締める、足音が鳴り響く。
ごくりと喉唾を飲み込む音が聞こえた
何かを構えた、金属音も聞こえた。

一つの足音がこちらに近づき
「大丈夫だ。そのまま目を瞑っていてくれ」
と、男性の声がそう語りかけた。

「さて、やるか。課長?」
「年上には敬語を使って欲しい物だがな。まぁいい、
戦闘開始だ!」
少女が合図を出したのと同時に、奥から、何かの咆哮が聞こえた。
それはまるで、水に溺れたような叫び声だった。

破裂音が聞こえ、何かを切る音が聞こえ始める。
それと同時に、まるで水風船が割れたような、そんな音が聞こえ続けた。
いっとう激しい音を皮切りに、戦闘音は止まる。

「まだ目は閉じててくれ!まだ…見なくていい」
男性の声が、少し遠くから聞こえた。
「心海警部?民間人の保護は任せたぞ」
幼い声がそう言った。
男性の声が近づき、この体を持ち上げる。
大丈夫だ、と言われるまで目を閉じ続けていた。

お題『ブランコ』×『水売り』

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