ハクメイ

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そこは、花畑だった。
青空の下に咲き誇った、小さくて、色とりどりの花々。
そこに立っていたのは、一人の少女だった。
白紙のような髪の毛を足まで伸ばし、下に咲く花のような目を、空に向けている。

「私は誰?」
「私はなんでここにいるの?」
「私は…私は」

誰も、その言葉に返事をしてはくれなかった。
花も、空も、少女の視界に映る全てが、無視を決め込んでいた。

そんな少女を、双眼鏡で見つめている誰かがいた。
「少女の様子は」
双眼鏡で見つめていたその人物は、隣にいる者の質問に答える。
「おそらく、成功しています。記憶はないかと」
「だろうな。彼女の記憶は全て、花にさせたからな。
あの花畑は、計画の成功を表している。」

まるで自分の功績を、吟遊詩人に語っているかのように、そいつは詳しく喋った。
双眼鏡を持つ男性は、不満を言葉にせず、ただ息を吐き、もう一度少女を双眼鏡で見る。
そこには、立ち尽くす少女と、花畑だけが残っていた。

お題『勿忘草』

2/2/2026, 10:58:54 AM