小絲さなこ

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12/24/2024, 7:48:52 AM

「欲しいものに限って手に入らない」


本当に欲しいものは自分の力で手に入れたい。
だから「何がほしい?」と訊かれても無難なものしか答えられなかったりする。


「ほんっとうにごめん!」
土下座して平謝りする彼。
今年のクリスマスも、また一緒に過ごせない。
仕方ない。そういう仕事だ。そしてそれをわかっていながら彼を選んだのは私。

仕事の都合で私の誕生日デートは前日夜遅くにキャンセルだった。
彼の誕生日の時は当日朝のキャンセルだったから、まだマシか。
いやマシではない?
一週間前だし、マシだよね?
……もしかして、私の感覚がおかしくなってる?


「いいよ、仕事だし。仕方ないよ。落ち着いてからまた改めて、で」
「本当にごめん。そうしてくれると助かる」


欲しいものは自分で手に入れる。
ずっとそうしてきたし、これからもそれは変わらないと思う。

だけどこればかりは、私がどんなに頑張って働いても手に入れることができない。
お代はいくらでも払うのに、どこにも売ってない。

彼とふたりで静かに過ごす時間がほしい。

こんなにシンプルなこと、きっと他にないのに。


────プレゼント

12/23/2024, 7:42:54 AM


「柚子味噌の焼きおにぎり」

先日、柚子をたくさん頂きました。
有難い。

昨日、何個かジャムにして、一瓶は柚子を頂いたお礼として贈った。

柚子はお風呂に入れたり、ジャムにするだけではない。

柚子味噌も良いものです。

そんなわけで、今日は柚子味噌の焼きおにぎりを作ります。

まずは柚子味噌作りから。

材料は、柚子の搾り汁、すりおろした柚子の皮。白味噌、みりん、砂糖。
鍋に味噌と砂糖、みりんを入れて火にかけて練り練り。
ツヤツヤしてきたら、柚子の皮と搾り汁を入れて混ぜ混ぜ。
柚子味噌完成!

おにぎりを握る。
ガスコンロの魚焼きグリルの網にアルミホイルを敷く。
おにぎりの片面に柚子味噌をたっぷりつけて焼く。
いい感じに焼けたら裏返して柚子味噌を付けて焼く。
焦げやすいから要注意!
追い柚子味噌しても良いかって?
もちろんですとも!
何度か返したり追い柚子味噌したりして、好みの焼き加減になったら完成!

はー……
これは危険な焼きおにぎりですね。

明日は、柚子の搾り汁と焼酎の素敵なマリアージュを楽しみたいと思います。ごきげんよう!

────ゆずの香り

12/22/2024, 9:59:51 AM

「いつも見上げている」


海、山、街。
空は同じはずなのに、違うように見える。
それがなぜなのか、子供の頃からずっと疑問だった。

海に投げるのは、心の叫び。
山で投げるのは、挨拶と喜び。

空に投げるものは?
それは、希望だったり、不安だったり。


川に沿って下って歩いていると、ビルが増え駅に近づいているのだと実感する。
そして、狭くなっていく。
視野と、空と……もうひとつ。


それでもいつも空を見上げている。
どこかに繋がっているはずだから、と言い聞かせながら。

────大空

12/21/2024, 6:22:01 AM


「サンタは捕まる」



二学期の期末試験の最終日。
開放感を抱えながら、いつものメンバー四人でだらだらと歩く。

「鈴の音って邪気を払うっていうじゃん。ということはさ、サンタが来る時のあの音もそうなのかな」

悪友のひとりがまたわけのわからないことを言い出した。

「あれ鈴の音なのか」
「トナカイの首についてるアレだろ。だったら浄化じゃねぇと思うけど」
「じゃあなんなんだよ」
「飼い猫の首輪の鈴のようなもんだろ」
「飼いトナカイ?」
「トナカイペットじゃねーし。あれ馬みたいなもんだろ。馬に鈴ってつけるか?」
「ていうか、結構大きな音出してるよな」
「あれだ、車とかバイクの排気音をうるさくするのと同じなんじゃね?」
「暴走サンタ」
「イキリサンタ」
「捕まるだろ」
「あいつら不法侵入するしな。煙突から」
「うち煙突ないけどサンタ来るぞ、毎年」
「それは……」

言いかけて、やめる。
まさかとは思うが、高校生にもなって……いや、こいつならありえる。
俺以外のふたりもそう思っているようで、顔を見合わせた。

「え、俺変なこと言った?」
「いや……」
「お前はそのまま綺麗な心のままでいろよ……」
「いつも変だから気にするな」

────ベルの音

12/20/2024, 6:50:17 AM

「あの子のいちばん」


ひとり教室の隅で本を読んでいたあの子に声をかけたのは、時々見せる横顔が寂しそうだったから。

はじめは遠慮していたけど、だんだんと心を開いてくれて、それがとても嬉しかった。

一見おとなしいけど、将来の夢に向かって努力していたり、実は曲がったことが嫌いだったり……

あの子のいいところを一番知ってるのは私──そう思っていたんだ、と気づく。


「誰にも言わないから」
約束して明かした、好きなひと。
応援して、励まして、男友達も巻き込んで、あの子の初恋が実ったあとに残ったのは、ほんの少しの寂しさ。

友達をやめたわけではなくて、むしろ一番の友達だと、これからもずっと友達でいてほしいと言われた。
嬉しかったけれど、あの子の一番は、私がよかった。


────寂しさ

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