小絲さなこ

Open App

「欲しいものに限って手に入らない」


本当に欲しいものは自分の力で手に入れたい。
だから「何がほしい?」と訊かれても無難なものしか答えられなかったりする。


「ほんっとうにごめん!」
土下座して平謝りする彼。
今年のクリスマスも、また一緒に過ごせない。
仕方ない。そういう仕事だ。そしてそれをわかっていながら彼を選んだのは私。

仕事の都合で私の誕生日デートは前日夜遅くにキャンセルだった。
彼の誕生日の時は当日朝のキャンセルだったから、まだマシか。
いやマシではない?
一週間前だし、マシだよね?
……もしかして、私の感覚がおかしくなってる?


「いいよ、仕事だし。仕方ないよ。落ち着いてからまた改めて、で」
「本当にごめん。そうしてくれると助かる」


欲しいものは自分で手に入れる。
ずっとそうしてきたし、これからもそれは変わらないと思う。

だけどこればかりは、私がどんなに頑張って働いても手に入れることができない。
お代はいくらでも払うのに、どこにも売ってない。

彼とふたりで静かに過ごす時間がほしい。

こんなにシンプルなこと、きっと他にないのに。


────プレゼント

12/24/2024, 7:48:52 AM