森瀬 まお

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2/22/2023, 10:20:32 PM

──麻美は、太陽みたいな人だね。
優子はいつも私にそう、言ってくれていた。


私はいじめられっ子で、泣き虫で、みんなから嫌われていた。
でも、ただ一人、嫌わないでいてくれた子がいた。
優子ちゃんだ。
私がいじめられていると、「やめて!」って、私を助けてくれた。
傷の手当てもしてくれた。
そしていつしか、私はいじめられなくなった。
毎日、笑顔で過ごせるようになった。
全部、優子ちゃんのおかげだ。

──全部、私のせいだ。

私が、いじめられなくなって、三年たったある日。
ふと、優子がこんなことを聞いてきた。
「麻美は、いじめられている時、辛かった?」
「そりゃぁ、辛かったけど・・・。」
「そっか、そうだよね。何年くらい続いたの?」
「うーん、ざっと、七年くらい?優子が来るまでずっとだったよ。」
「そっか、こんなに辛いのを七年か・・・。麻美はすごいね。耐え続けて。」
「そうかな?泣いてばっかりだったけど。」
「それでも、生きているだけで凄い。」
優子がこんなに私の事をべた褒めするのは初めてだったから、ちょっと照れた。
「私、人の事をたくさんほめられる優子が大好き!」
私はそう言った。
「麻美は、太陽みたいな人だね。」
優子は笑顔でそう言った。

次の日、優子は交通事故で亡くなった。
でも、私は気づいてしまった。
遅すぎた。
もっとはやく気づいてあげたかった。
──いじめの標的が、優子に変わっていたことに。
優子のおかげで、いじめがなくなったんっじゃない。
私がいじめられないように、優子がいじめられていたんだ。
私が毎日、泣いていたあの辛さを、優子は泣きもせず、ただひたすらに耐えていたんだ。
私の笑顔と引き換えに。

「なんで、言ってくれなかったの?」
私のせいだ、私が毎日耐え続けられていたら。
”そんなこと無いよ“
「優子!?」
”私は、生きようとしてたよ。死を考えたこともあった。でも、麻美が 大好き って言ってくれたから、私は、この人のために生きようって思えた。麻美のおかげだよ。私もずっとずっと大好きだからね。”

「はぁ・・・」
もう、違う世界にいる人のことまで気を配るってどんだけ優しいんだよっ!!!!!
──麻美は、太陽みたいな人だね。
優子はいつも私にそう、言ってくれていた。
私にとっては、あなたが太陽でした。



















#太陽のような

12/9/2022, 10:52:27 AM

「みんなが手を繋いで助け合ったら、この世の中は、どれだけ素敵なものになるだろう、と私は思います。」
いつか彼女がそう言っていた。

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俺は、この辺りの総長だ。
この辺りは治安が悪くて、なにかを守りたければ強くなるしかなかった。
どれだけ嫌でも戦って強くなければならなかった。
だから、俺はあれだけ嫌い喧嘩をまるで機械のようにこなし、この辺りで一番強い人間になった。

ある日俺は、いかにもお嬢様そうな奴に喧嘩を吹っ掛けてカツアゲしようとした。
いつもと同じように、
わざと肩をぶつけて、いちゃもんを付け、カツアゲまで持っていく。
そこまでは良かった。
でもその女は最後に
「大丈夫ですか?」
と、俺に言ったのだ。
最初は意味が分からなかった。
自分を殴ったり、蹴ったり、挙げ句の果てにカツアゲまでしたような人間に、大丈夫ですかなんて普通聞かない。
でも俺は気づいた。
こいつと俺は住む世界が違うことに。
「お前に心配される義理はねぇ。」
俺は、ぶっきらぼうに言ってその場から立ち去ろうとした。
でもその女は、話を始めた。
「一般的な考え方でいくと、私っておかしな奴に見えますよね。自分でも自覚しています。」
そう言ってその女は自嘲気味に笑った。
「でも、それは一般的な考え方です。多数派の意見がいつも正しいとは限りません。現に今も、誰かの個性を消そうとしているのですから。」
そう言ってその女はこちらを見た。
「もちろん、一般論が間違っているとは言っていません。ただ、人間は群がりたい生き物です。一人一人の個性があっても、目の前に大群があったら。その中に呑まれてしまうのです。」
彼女の話す一音一音が頭に響いて離れなかった。
始めて聞く内容なのに、なぜか知っている気がしたのはなぜだろうか。
「なにも群がるなとは言っていません。群がって互いに知恵を出し合って協力するのは大切です。だけど、今のままの形態で群がっていると、結局誰かが呑まれしまうでしょう。
だから、」
とそこまで言って彼女は言葉を一度切った。
そして、もう一度
「だから、横一列にみんなで並んで、
みんなで手を繋いで助け合ったら、この世の中はどれだけ素敵なものになるだろう、と私は思うのです。」

************************

いつか彼女がそう言っていた。
あの彼女は今、どこで何をしているだろう。
わからない。
でも、俺は彼女に救われた。
これだけは事実なのだ。


















#てを繋いで

12/2/2022, 12:00:08 PM

今日は一段と月が綺麗だった。
地面は暗くて、よく見えない。
僕はそこに、ストンと腰を下ろした。
あの日も今日と同じように星が見えないほど月が明るかった。

************************

「すぅ、はぁ~」
僕には、お気に入りの公園があった。
公園といっても遊具なんて無くて、パッと見は空き地だ。
でも、ここには、家や学校の狭っ苦しい空気感が無くて、ただ、ゆっくりと今が流れている感じがして、
テストの点が悪かったり、親や先生に怒られた後なんかに、よく来ていた。
ここからは、綺麗に月が見える。
月は、いつ見ても綺麗なものだけれど、ここから見る月は、やけに不思議に見えた。
何て言うか、ちょっとだけ神秘的な感じ。
特に今日は、一段と月が綺麗だった。
なぜだろう。
ただ単に、月が明るいだけなのか。
それとも、僕が、それだけ大きなショックを受けているのか。
「すぅ、はぁ~」
僕はもう一度、深呼吸した。

************************

「すぅ、はぁ~」
あのとき、僕は光と闇の狭間で、何を考えていたのだろうか。
ふっ、あれから、まだそんなに経っていないのに、もう忘れてる。
今の自分に辛いことも時が経てば忘れられるんだろうか。
いつか、辛くなくなるんだろうか。
そんなことを思いながら、
僕は
光と闇の狭間で
秘かに泣いた。
今日は一段と月が綺麗だった。

















#光と闇の狭間で

11/26/2022, 10:51:15 PM

ん?体がだるい・・・・・・?
「熱は・・・37.6、微熱ね。このご時世だから、念のため学校休んどけば?」
「うん、じゃぁそうする。」
「じゃ、父と母は会社行ってくるから。何かあったら電話して」
「うん、いってらっしゃい」
「いってきまーす」
ガチャリ
父と母がいなくなるとだいぶ静かになった。
そりゃそうだ、私しかいないのだから。
とりあえず、寝るか


ふあぁ、よく寝た
もう、こんな時間か。
ピーンポーン
誰だろう
ガチャリ
「な、名音くん?!」
「先輩、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だけど、名音くんこそ部活大丈夫なの?大会近いのに。」
名音くんは、私が部長を務める卓球部の後輩だ。
「先輩がいないとダブルスの練習ができないから、監督に先輩の様子見てこいって言われたんです。」
「あ、そうなんだ。」
「でも、元気そうでよかったです。」
「うん、もう熱も下がったから明日からは学校行けるよ!心配してくれてありがとう。」
「じゃ、僕はこれで。」
「あ、ちょっと待って。」
「なんですか?」
「あの~、ずうずうしいんですけど、チャーハン作ってもらえませんか?」
「え?」
「あ~、今日朝からなんにも食べてなくて、名音くんが前作ってくれたすごく美味しかったから、たべたいな~、なんて。」
「いいですけど、」
「やったー!」
私は思わず、その場でジャンプしてしまった。
「っ、キッチン貸してください。」
名音くんはそう言って、さくさくとキッチンで料理を始めた。
そして、十分もしないうちに、
「できましたよ」
と言われた。
「すごーい。いや、私、料理苦手だから助かったよ。
ありがとう!」
「よかったです。じゃ、僕はこれで。」
「あ、うん、ありがとう」
「先輩、」
「ん?」
「ほいほいと、自分の部屋に男入れちゃだめですよ。先輩、美人なんだから気を付けてくださいね。」
「大丈夫だよ、名音くんは信頼してるから。」
「それって、僕は恋愛対象外ってことですか?」
「ふぇ?」
「じゃ、また明日」
ガチャリ
名音くんがいなくなったのに、部屋はうるさくなった。
私の心音はバックバクだ。
「不意打ちはずるいだろっ。」


















#微熱

11/25/2022, 11:32:34 AM

私には、好きな人がいます。
二個上の先輩で姉の友達・・・です。
でも彼が好きなのは、私・・・の姉です。
姉もその人が気になっているようですが、私に気遣って、そんな素振りを見せないようにがんばっている感じがします。
気にしなくて良いのに。
私の事なんて、気にしないで。
私は、彼が幸せなら、良いの。
だから、気にしないで。

そして、とうとう昨日、二人は付き合ってしまいました。
知ってたよ、お姉ちゃんが彼を好きなことも、彼が姉を好きなことも、、、っ知ってたよっ、、、
末永く、、、お幸せに、、、っ
末、永く、、、っ
私は涙が止まりませんでした
こうなることも知ってたし、、、覚悟っ、、、してたのに、、、っ
私の涙は止まりませんでした。

ピーンポーン
誰だろう、こんな酷い顔見せらんないな、、、っ
ピーンポーンピッピッピッピピピーンポーン
ちっ、誰だよ、人が辛いときに
私は苛立ちながら、玄関の扉を開けた。
「た、太陽?!」
私は驚いた
そこには幼馴染みの太陽が居たのだ。
「お前、すごい鼻声だな。さては、一日中泣いてたな?」
太陽はいつもより少し、テンションが高い気がした。
たぶん、私を励まそうとしてくれてるんだよね。
変な気を遣わなくても良いもに。
私はわざと元気なふりをすることにした。
「いやー、覚悟、してたんだけどなー。意外とダメージ受けててさぁ、自分でもビックリs・・・」
気が付いたら私は太陽の腕の中に居た。
「無理して笑うなっ。こっちまで辛くなるだろっ。」
太陽の声は変声期の安定しない声だった。
でも、太陽の声で安心した。
「、、、っうぅ、ぅうううううう!!!!!!!!」
私は何年ぶりに声をあげて泣いた。
しばらく、ずっと太陽の腕の中で泣いていた。


しばらくして、私はふと思った。
「太陽ってすごい。なんか、私がしてもらいたかったことを本当にしてくれる。本当、太陽みたい。」
「ふっ、お前は月だからな。太陽は照らしたくなるよ。」
「え?どういうこと?」
すると、太陽は少し顔を赤らめながら、こっちを見た。
「俺が、お前をずっと一番輝かせられる奴でいたい。
太陽の下でずっと笑っていてほしい。
                って、こと!!!!!!!!」
・・・・・・・・・・・・?はっ?・・・・・・・・・・・え?!
それって、プ、プ、プロポーズ?!
「え、ちょ、のぉ、ぇ?それっ、え?」
「動揺しすぎ、つか、鈍感すぎ、
    まぁ、そういうところが好きなんだけど。」
太陽がチラっとこちらを見た。
きっと私の顔は真っ赤だろう。
こんな酷い顔見せらんないなっ\\\\\\\\


私には好きな人がいます。


















#太陽の下

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