森瀬 まお

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11/23/2022, 8:51:09 AM

あるところに、小さな娘がいた。
ある日、その子はお母さんに聞いた。
「夫婦の定義って、なに?」
と。
するとお母さんは言いました。
「結婚したら、夫婦なんじゃない?」
しかし、娘は納得がいきません。
(結婚したら、夫婦になるの?
そもそも、結婚ってなに?
婚姻届けを出したら結婚したことになるの?
紙一枚で?
なんか、違う気がする・・・・・・。)
そこで、今度はお父さんに聞いてみることにしました。
「ねぇ、お父さん、夫婦の定義ってなんだと思う?」
すると、お父さんは
「夫婦の定義?ずいぶん難しいことをかんがえているんだね。うぅん・・・・・・、一緒にいて楽しかったら夫婦なんじゃないかい?」
と、言いました。
しかし、娘は納得がいきません。
(一緒にいて楽しい人と夫婦なのだとしたら、友達や、先生とも夫婦になってしまうわ。
なんか違う・・・・・・。)
なので今度は、花屋のおばさんに聞きました。
すると、
「うぅん・・・・・・、花を大切にできる人と夫婦になりたいわ!」
と、願望を言われました。
娘は次に、肉屋のおじさん、野菜屋さん、文房具屋の店長、魚屋さん・・・・・・、いろいろな人に聞きましたが、どれもなんだか違う気がするようです。
(どの人の答えもとてもすてきだけど、なんか違うのよね・・・・・・。)
そろそろ、日が暮れそうです。
娘は最後に、物知りおばさんのところへ行くことにしました。
「ねぇ、おばさん、夫婦の定義って、なんだと思う?」
すると
「う~ん・・・・・・、難しくてわからないわ。」
といいました。
娘は驚きました。
「え~、おばさんでも分からない事ってあるんだ。」
「そんなの沢山あるわ。そもそも夫婦のあり方なんて、十人十色だもの。みんな違うんだからわかりっこないわ。」
(???????????)
「つまり、生きていくなかで、夫婦のあり方を探れば良いってことよ。」




十年後

今日は、私の結婚式。
夫婦の定義については、未だによくわからないけれど、
それぞれに、素敵な夫婦のあり方があって、どれも、とても素敵なことだけはあの日からちょっとだけ、分かった気がするよ。
私もいつか見つけられるといいな。


















#夫婦

11/19/2022, 1:09:20 PM

今日の学校からの帰り道。
「俺さ、キャンドルが苦手なんだよね。」
私は幼馴染みに唐突にそう言われた。
別にそこにキャンドルが置いてあった訳でも、キャンドルの話しになった訳でもなかったのに、急にそう言われた。
私は反応に困って、
「そうなんだ。何か嫌な思い出でもあるの?」
と、深く考えもせず聞いた。
すると、幼馴染みは少し、恥ずかしそうな顔をした。
・・・・・・もしかして、答えにくい質問をしてしまったのだろうか。
私はハッとして、話題を変えようとテンパった。
「あ、あの、っ今日の給食美味しかったね。」
「・・・・・・今日、給食、お前の嫌いなキノコ尽くしのメニューだったぞ。」
「・・・・・・。」
「ふっ」
・・・・・・あぁー、私のバカ!!もうちょっと、マシな会話出来ないの??幼馴染みも鼻で笑っちゃてるよ・・・。
「あぁ、もう!!」
急に幼馴染みが、大きな声を出した。
・・・・・・なんか、怒らせた?!ど、どうしよう・・・・・・
「あのさ、今から話すこと、内容理解したら、すぐ忘れろよ。」
また、唐突に幼馴染みが言った。
「いい?」
「う、うん・・・・・・?」
私が状況を理解しないまま、幼馴染みは話を始めた。

「昔、お前の母親が入院したかなんかで俺んちで預かってたことあったろ」
「うん。」
「そのときに、一緒にキャンドル作っただろ」
「そうだっけ?」
「覚えてないのかよっ」
「・・・ごめん。」
「まぁ、良いんだけど。そのときに、作ったキャンドルを交換したんだよ」
「そう言われてみればそんなことをしたような?」
「で、そん時、凄い幸せだった」
「ん?じゃぁ、なんで苦手になったの?」
「なんかさ、キャンドルに火を着けたら、その想い出も一緒に溶けちゃうような気がして、怖くなった。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・俺、お前が大好きだからさっ。」
「そりゃ、どーも。私も大好きだよ。っていうか幼馴染みだから、嫌いなわけないんだけどね。」
幼馴染みは、呆けた顔をした。
「いや、あの、そういうことじゃ・・・・・・」
「ん?じゃぁ、どういうこと?」
ずいっと幼馴染みに近づくと、幼馴染みは顔を真っ赤にした。
「・・・・・・気づけよ、バーカ!!!!!!!!」
幼馴染みはそういって、すたすた歩いていってしまった。
「・・・・・・」
覚えてるよ、バーカ!!!!!!!!
大好きな人の背中を見ながら、私は密かに想うのであった。
「その苦手は、一生克服、しないでねっ。」


















#キャンドル

11/14/2022, 12:37:56 PM

さぁーっとひんやりとした風が吹いた。
「寒っ」
私は思わず身震いした。
もう、秋か・・・・・・
ふと、悲しくなった。
なぜだろう、秋になると何かが終わってしまったような、失くなってような喪失感に駆られる。
ただ単に、夏が終わって熱さが恋しいのだろうか。
──違う。
確かに、それも、ない・・・・わけじゃない。
でも、何か違う。
納得のいく理由が見つからない。
それが、なんだか、もどかしい・・・・・・。

「おはよう。」
「おはようって、もう、夕方でしょ。」
えっ・・・・・・、
 私は誰と話しているの?
この人、誰?
「僕らにとっての夕方は、どっかの国の朝なんだから、いいんだよ。」
「本当、好きだよね。その【どっかの国では】って理屈。」
く、口が勝手にしゃべるぅ・・・・
どういう事?!
「ミカのツッコミも衰えることを知らないよね。」
・・・・・・ミカ?
私は、ミカじゃない・・・・。
ミカって、私だよね・・・・?
ミカ、ミカ、ミ・・・カ?

次の日
「珍しいなぁ、ユウキが集合時間に遅れるなんて。」
とりあえず、家行くか・・・・・・。
************************
「え・・・・・・家がない!?」
・・・・・・あぁ、これは
「ユウキ? ユウキ?? ユウキ???」 
「ユウキ!!!!!!!!」
ユウキ・・・ユウキ・・・ュウキ・・・ゥキ・・・キ・・・
エコーだけが寂しく響いた。
秋風が、音もなく私の横を通り過ぎた。
・・・・・・あぁ、この記憶は

「はぁっ!」
あの記憶は
たぶん、
──私の前世の記憶だ。
私が秋が来ると寂しくなるのは、
昔の私の大好きだった人が
私の前を去った季節だからだ。

言葉にしないと秋風のように、音もなく私の横を通り過ぎてしまうんだ。
私は、秋風には、なりたくない。
















#秋風

11/12/2022, 10:58:30 PM

僕は想大。スリルをできる限り回避していきることが人生のスローガンだ。
僕のクラスには、ちょっと変わった不思議ちゃんがいる。
不思議ちゃんはよくスリルにはしる人だ。
例えば、数学の時間に発言を求められれば、誰よりも早くてをあげる。
でも、その答えがいつも
「えっと・・・、12さんと、23さんは足し算で仲良し状態なので、答えは35さんになると思います。」
みたいな、いかにも不思議ちゃんって感じの解答だった。
モブ男の僕には、なんでそんなスリルまんてんな答え方ができるのか分からなかった。
でも、成績は常に上位だったし、不思議な説明ではあるけど、内容はきちんと合っていて分かりやすいと、
人望もかなり厚かった。

そんなある日、学級委員を決めることになった。
学級委員とは、各クラス男女一名ずつのクラスの代表のことだ。
女子はもちろん、満場一致で不思議ちゃんに決まった。
男子は、立候補者がおらず、推薦で決めようということになった。
男子には押し付け合いの雰囲気が漂っている。
女子は固まって相談をしている。
「女子でまとまった意見です。」
書記係の愛夏さんが意見を発表し始めた。
「女子で話し合った結果、満場一致で想大くんが良いという意見になりました。」
「えぇ?!」
男子全員が、意外という目で僕を見てくる。
そんな僕が一番びっくりしている。
想大とは、紛れもなく僕なのだ。
「じゃ、男子は想大で・・・」
先生が勝手に決めようとしている。
「ちょっと、待ってください!!!!!!!!
 無理です!そんなスリルまんてんみたいな仕事任されたら、僕の心臓がもちませんよ!!」
「それが面白いんじゃん!」
いつもより明るい不思議ちゃんの声が聞こえた。
「スリルってのは、チャレンジした人にしかわからない、森のクマさんがはちみつをみつけた気分なんだよ!
 それに、女子に満場一致で選ばれたのに、それを断る方が、よっぽどリスキーなんじゃ・・・?」
ぐっ・・・、痛いところをついてくる・・・・
不思議ちゃん、そういうところあるんだよな・・・
「想大くん、困ってるとすぐ助けてくれるし」
「まわりがよく見えているし」
「仕事も頼んだら、すぐやってきてくれるし」
周りの女子が口々に言い出した。
──スリルってのは、チャレンジした人にしかわからない、森のクマさんがはちみつをみつけた気分なんだよ。
スリルはチャレンジした人にしかわからない・・・・か。
たまにはやってみるか!

このとき、僕の人生のスローガンが変わった。
スリルよ、どんと来い!!!

















#スリル

11/12/2022, 5:15:23 AM

「才能という名の翼があるのに、それで飛べないんじゃ、翼がないのとおんなじよ。」

僕は、三年前に他界した母にそう言われて育った。
確かに僕は他の人より絵が上手く描ける。
絵画コンクールでよく入賞していたし、文化祭の絵も任されることがあった。
すると、みんな僕に聞くんだ。
「この絵に、どんな思いを込めましたか」って。
でも、決まって僕はその絵の説明ができなかった。
だから、次第に絵に関する依頼は拒否するようになった。

そんなある日、僕は先生に職員室呼び出された。
「今年の文化祭の絵を頼めないかしら。」
先生は僕が職員室に入るなりそう言った。
「いやです。」
僕は真顔で断った。
先生は想定の範囲内という顔をしていた。
周りの先生からはあきれたような空気が感じられる。
その呆れが僕に対するものなのか、先生に対するものなのか・・・
どちらにしても依頼を引き受けるつもりはない。
先生は少し悲しそうに僕の目を見た。
「なんで、そんなに絵が上手いのに絵を描かないの」
「翼がないから」
「え?」

「僕は母に、
  才能という名の翼があるのに、それで飛べないんじゃ、翼がないのとおんなじよ
  って言われて育ってきたんです。僕は、作品の説明が上手くできません。それじゃ、作品は伝わらない。
──飛べない翼は、翼がないのとおんなじなんです。」
先生の目の色が、悲しさから驚きに変わった。
そして、先生は優しい目をして僕に言った。
「翼は単品じゃ飛べないよ。翼は鳥がいるから飛べるんだよ。
 才能もそれだけじゃ飛べないよ。誰かに助けてもらわなきゃ。飛べない翼は、飛べるように工夫すればいいんだよ。
──飛べない翼は、翼がないわけじゃない。」

その一言で僕の人生は大きく変わった。
──飛べない翼は、翼がないわけじゃない。











#飛べない翼

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