森瀬 まお

Open App

さぁーっとひんやりとした風が吹いた。
「寒っ」
私は思わず身震いした。
もう、秋か・・・・・・
ふと、悲しくなった。
なぜだろう、秋になると何かが終わってしまったような、失くなってような喪失感に駆られる。
ただ単に、夏が終わって熱さが恋しいのだろうか。
──違う。
確かに、それも、ない・・・・わけじゃない。
でも、何か違う。
納得のいく理由が見つからない。
それが、なんだか、もどかしい・・・・・・。

「おはよう。」
「おはようって、もう、夕方でしょ。」
えっ・・・・・・、
 私は誰と話しているの?
この人、誰?
「僕らにとっての夕方は、どっかの国の朝なんだから、いいんだよ。」
「本当、好きだよね。その【どっかの国では】って理屈。」
く、口が勝手にしゃべるぅ・・・・
どういう事?!
「ミカのツッコミも衰えることを知らないよね。」
・・・・・・ミカ?
私は、ミカじゃない・・・・。
ミカって、私だよね・・・・?
ミカ、ミカ、ミ・・・カ?

次の日
「珍しいなぁ、ユウキが集合時間に遅れるなんて。」
とりあえず、家行くか・・・・・・。
************************
「え・・・・・・家がない!?」
・・・・・・あぁ、これは
「ユウキ? ユウキ?? ユウキ???」 
「ユウキ!!!!!!!!」
ユウキ・・・ユウキ・・・ュウキ・・・ゥキ・・・キ・・・
エコーだけが寂しく響いた。
秋風が、音もなく私の横を通り過ぎた。
・・・・・・あぁ、この記憶は

「はぁっ!」
あの記憶は
たぶん、
──私の前世の記憶だ。
私が秋が来ると寂しくなるのは、
昔の私の大好きだった人が
私の前を去った季節だからだ。

言葉にしないと秋風のように、音もなく私の横を通り過ぎてしまうんだ。
私は、秋風には、なりたくない。
















#秋風

11/14/2022, 12:37:56 PM