かたいなか

Open App
3/17/2026, 6:46:18 AM

霊感ナシのおかげで、特におっかない体験談は持ち合わせが無い物書きです。
部活の合宿で集まって、怪談話をしている最中、ホラーの頂点で、頭に乗っけたペットボトルを落として部員を絶叫させたのは良い思い出。
良い子は多分真似してはならぬのです。
というハナシは置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。

最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内にある不思議な稲荷神社に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、偉大な御狐、善良な化け狐となるべく、絶賛修行中。
今年の3月から頑張りを認められまして、
「ここ」ではないどこか、別の世界の世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織にゆきました
が、

なにやら子狐、今週に入ってからというもの、
自分宛ての手紙に尻尾をピタッと隠して、内容を理解するとホッとしてを、繰り返しています。
明らかに手紙を怖がっておるのです。

「どうした。何を怖がっている」
修行先の管理局の、子狐の責任者をしてくれている法務部の、特殊即応部門長さんが、
子狐があんまり手紙を怖がりますので、子狐に優しく、ワケを聞きました。
「こわくない!キツネ、こわくない!」
強がってはいますが、子狐の尻尾はピタッ!
おなかにガッツリくっついています。

「コレですね」
今朝いちばんに届いた手紙を見て副部長、すべてを理解して言いました。
「明日だそうですよ」
明日?明日、何があるって?
副部長さんが見ている手紙を受け取って、部長さんも文字に目を通しますと、

「『狂犬病ワクチン』?」
「1年に1回、人間たちのペットへの接種に先駆けて、3月から特定の動物病院で」
「この子狐が?」
「狂犬病に罹患した狐は普通に居るそうですよ」

ちゅーしゃ!ちゅーしゃヤダ!ギャンギャン!
部長さんと副部長さんの声が聞こえたのでしょう、コンコン子狐は怖がって、ばびゅん!
オフィスの端っこの隙間に、頭と体を押し込んで、お手々とあんよを突っ張っています。
よほど注射に対して、怖がりな様子です。

「こぎつね」
「ヤダ!やだ!キツネ、ちゅーしゃ、しない!」
「子狐」
「やだやだやだ!キツネ、いたいのキライ!
あっちいけ!あっちいけ!キツネいたいのキライ」

あーあー、あーあー。
部長さんと副部長さん、隙間にスッポリの子狐を、どうしようかと悩んでいます。
しゃーないっちゃ、しゃーないのです。
注射が痛いのは事実ですが、
自分が致死性の病にかからないように、人間に致死性の病をうつさないように、
皆みんな、注射をしなければならぬのです。

なんて理屈を子供の狐がちゃんと理解して、了解して、了承するハズもなく。

「どうします?」
副部長さん言いました。
「うん」
部長さんも部長さんで、腕を組んでため息吐いて、
どうしようなと十数分、考え込んでおったとさ。

3/16/2026, 7:13:13 AM

前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
ここの収蔵部のドワーフホトお嬢さんと、経理部のエンジニア・スフィンクスは、大の仲良し。
このたび前回投稿分で、ふたりが出会った年のお酒が手に入りましたので、
おいしい料理やお菓子と一緒に、それを楽しむことにしたのでした。

「金箔と、銀箔が入ってるぅ」
お酒のボトルをゆっくり、ゆっくり、ドワーフホトお嬢さんが揺らします。
かつて昔の栄華の表現か、現地で見られる星海の表現か、中は食用金箔と銀箔が、比較的たっぷり。
「金は知ってたけど、銀箔も食用ってあるんだな」
スフィンクスも揺れる金銀を、お嬢さんと一緒になって、仲良く眺めます。

ゆっくり、ゆっくり、ゆらりゆらり。
ドワーフホトとスフィンクスが友達になって、ミカンを食べてコタツに入って、
そして一緒に美味しいごはんを食べて寝て、同じ職場で仕事をしている間と同じ期間、
キラキラ金箔と銀箔は、ひとつ同じボトルの中に、ずっと一緒に居たのです。
それはまるで、ドワーフホトとスフィンクスのモチーフだの、象徴だののようです。

ところで
ドワーフホトとスフィンクスが2人で2人の世界を懐かしんでいる間
食いしん坊子狐とナッツ大好きハムスターが
カシャカシャかちゃかちゃ床に爪を断続接触させまくって緊急突撃を決行せんとしていますが
無粋なコンコンとチューチューに対する防波堤を見事に勤め上げておるのが
前回投稿分でお題回収役を勤めた野郎でして。

「ほら。いれるぞ」
コプコプとぷタプタプタプちゃぱぱぱ。
薄琥珀色のお酒がサッパリ柑橘の香りと一緒にグラスに落ちて、金箔銀箔を巻き上げます。
「お星様だぁ」
星が溢れるグラスの景色に、ドワーフホトお嬢さんはうっとり。芸術を静かに見つめます。

おほしさま!おほしさま!カシャカシャカシャ!
コンボルギーニが相変わらず床を爪で引っ掻いて、狐エアドリフトをかましています。
ドワーフホトとスフィンクスの2人の世界ゼッタイ守るマンにポンポンおなかを確保されておるので、ぜったい発車できないのに、ご苦労なことです。

「キレイだねぇ」
星が溢れる柑橘香のワインを、ドワーフホトは数分、じっと見つめておりました。
「そーだな」
ドワーフホトお嬢さんの大親友・スフィンクスもまた、ワインを穏やかな瞳で見つめておりました。
ふたりの記念の年のお酒は1杯2杯、ちびちび少しずつ量が減って、
夜空から星が消えるころ、一緒に1本、すっからかんになりましたとさ。

3/15/2026, 5:52:59 AM

「安らかな瞳」ってどんな瞳だよって、鏡を見てそれっぽい表情をしようとして、
結果として、自分の顔に轟沈した物書きです。
自分の顔って、自分で見るモンじゃねえな、というハナシは置いときまして、
今回のおはなしの始まり始まり。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
今回のお題回収役は管理局法務部の野郎、
ビジネスネームをカモといいます。

カモには生涯の忠誠を誓った収蔵部局員がおって、
それはすなわち、ドワーフホトのお嬢さん。
去年お嬢さんは無償の慈愛と慈悲でもって、負傷したカモをかくまって、助けてくれたのです。

おお、ホト様、心魂美しきひと、
私は今まで貴女と敵対する組織に居たが、
これから私は心を入れ替えて貴女のために働き、一生かけて恩返しをしましょう!
カモはドワーフホトのお嬢さんと出会ったその日から、お嬢さん専属のハイスペ執事となりました。

で、先月14日、お嬢さん推しの野郎・カモ、
お嬢さんからこれまでの純粋な感謝として、
一点ものの、『いつもありがとう』と手書きで書かれたチョコを貰いまして。
カモとしてはもう感謝カンゲキ雨あられ。その日の夕暮れはチョコを管理局の夕日に掲げて、
安らかな瞳で、涙などちょちょ切れておりました
(お題回収前編)

ところで3月14日は
このチョコのお返しに丁度良い頃合いですが
なんということでしょう、
ドワーフホトのお嬢さんには、カモがハイスペ執事として恩返しを開始するよりずっとずっと前から
スフィンクスという、心と心、魂と魂で繋がった、
彼女たち2人の間に誰か他人が挟まる余地などナノもピコもフェムトも無いような、
切っても切れない、大親友がおりまして。

「つまり俺はホト様を敬愛してるけど、
ホト様にはもうスフィンクス様がいて、
だが俺はホト様に恩返しをしたくて、
んんん……。そこからのチョコのお礼なんだよな」

何だろう、何だ、既にカップリングが確固として互いの間に確立しているその片方への贈り物?
カモはドワーフホトのお嬢さんと、お嬢さんの大親友を思い浮かべて、西へ東へ。

「そういえばスフィ様は」
スフィンクス様はミカンが好きだ。
さっそく最高級ミカンを段ボールボックスで仕入れようとW歌山県へ。
しかしミカン農家さん、言いました。
「もう晩生も最晩生も、収穫は終わってるよ」
あっ。そうなんですね。
ここでカモは1敗。
取り敢えず、和風オレンジチキンの素なる2袋だけ貰って次へ向かいました。

「そういえばホト様は」
ドワーフホト様はスフィンクス様と一緒に、どこかの世界のピラミッドの映画を観るのが好きだ。
さっそくこっちの世界のピラミッドがある国の土産物を仕入れようとEジプトへ。
しかしエジプトの土産屋さん、言いました。「أقترح عليك هدية من المشروباتالكحولية.」
あっ。そうなんですね。
翻訳器を忘れたカモはここで2敗。
取り敢えず、ピラミッドぱんつなるネタ土産だけ2枚貰って次へ向かいました。

そういえばエジプトのお土産屋さん
なにか美しい装飾のついたボトルを持ってました。
「そうか、酒だ!」

コミュスキルと翻訳器とを駆使して野郎・カモは、
ピラミッド映画の舞台の、オレンジワインを取り扱っているお店を歩いて歩いて、
「見つけた。やっと、みつけたぞ」
ドワーフホトとその大親友、スフィンクスが管理局で初めて出会ったそのとき、その年に、仕込まれたボトルを4本、手に入れたのでした。

「これで良い」
丁寧に梱包してもらう作業の手際を、野郎・カモは安らかな瞳で見守りました
(お題回収後編)

ドワーフホトとスフィンクスが出会った年のオレンジワインを貰ったお嬢さんは、大歓喜!
さっそく1本を大親友に届けて、もう2本を自分で大事に保管して、
最後に残った1本に、最高の料理と場所と景色とを添えて、1杯、2杯。
さっそく友人と2人、それからもちろんカモも連れて、ディナーを楽しみましたとさ。

3/14/2026, 3:44:23 AM

前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
都内在住の稲荷子狐が今月から、ここに週休完全2日制で修行に来ておりました。

前回投稿分で子狐、甘いあまいナッツソース+アイスクリームと苦いコーヒーを合体させた、大人の飲み物を知りまして、
どうやらそれを教えてくれた人間は、管理局の法務部に所属している野郎で、
ビジネスネームをツバメと言うようでした。

このツバメにくっついて居れば更なる料理に出会えるかもしれません(お題回収開始)

コンコン子狐はもぐもぐもぐ、全部の美味しいお昼ご飯を食べ終えますと、
姿勢を低くして、局員ツバメにバレないように、スサスサスサと高速忍び足からの、んばっ。
ツバメがぼっちでコーヒーを飲みながら、緊急性も守秘性も無い書類を見ておる隣に陣取ります。

「わっ?!」
野郎ツバメ、子狐を何かと勘違いしたようです。
ドチャクソにビックリして、文字通り飛び上がって、子狐が子狐と気付きますと、
大きな、長いため息を吐きました。
「なんだ。きみか」

コンコン子狐はツバメのテーブルを見渡しました。
あるのは書類とコーヒーだけです。
再度見渡しても、あるのは書類とコーヒーです。
アイスとコーヒーの混ぜもののような、子狐にとっての新しい料理は、どこにもありません。

「たべもの、ない」
「そりゃあ、食べ終わりましたから」
「なんで、たべて、たべて」
「だから、もう食べ終わりましたよ」

パタパタパタ、ぱたぱたぱた。
子狐はまさしくお題のとおり、
ずっと隣でツバメのことを、じーっと見ています。
「面白いものは何も無いよ」
野郎ツバメは、子狐をノールックなでなでしてくれますが、特に何か、新しい料理は頼みません。

「!」
子供のコンコン子狐は、突然、気付きました。
この人間は子狐に、子狐の知らない美味しいものを子狐自身に取られたくないから、
きっと、美味しいものを頼むのを、我慢しているに違いありません!
「いや、そうじゃなくて本当に満腹でだね?」
そうです。ゼッタイ、そうなのです。
「こぎつね??」
こうなったら子狐は、ずっとずっと、ずーっと、
今日はずっと隣で、ツバメのシークレットご馳走を、調査するべきです。

しゃーないのです。
子供というのは、そういうものです。

ぶんぶんぶん、ブンブンブン!
コンコン子狐はツバメが我慢してるであろう、シークレットご馳走を想像して、尻尾が高速回転!
子供の狐の尻尾というのは、幸福な興奮が最高潮に達しますと、「振る」というより「回る」ように見えることが、往々にしてあるのです。

「キツネ、まつ!キツネだまされない」
「弱ったなぁ……」

コンコン子狐は、ずっと隣です。
いっちょまえに狐らしい執着を発揮して、むっ!
ツバメが「いつか頼むだろう美味」を待ちます。
子狐は信じているのです。

「まだ?」
「食べないよ」

「まだ?」
「だから、食べないよ」

「まだ。」
「待ってても何もありませんよ。
向こうで遊んでおいで」

コンコン。こんこん。
子狐はその後10分くらいツバメの隣に居ました。
だけど最後までツバメが何も、本当に何も食べないので、子狐の方が根負けしてしょんぼり。
「けち」
テイクアウトに美味しいお餅とお肉を持って、お昼寝場所へ戻ってゆきましたとさ。

3/13/2026, 3:38:37 AM

前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
都内在住の稲荷子狐が今月から、ここに週休完全2日制で修行に来ておりました。

前回投稿分で子狐、管理局の総合窓口の仕事を見学しまして、無事、昼休憩に突入です。
「ごはん!ごはん!」
食べ盛りの子狐は美味しいものが大好き!
今日も今日とて管理局の、局員専用食堂に一番乗り。お揚げさんにお肉にお米、調理員さんが作る渾身の美味を片っ端から、
「ごは、

……ごはん、どうやって、つくってるんだろ」

片っ端から頼んで作ってもらった料理を、
席について、あらためて、じーっとよく、
匂いをかいでカジカジ噛んでみて、再度匂いをかいで、丁寧に調査してみました。
「おにく、おあげさん、おにく」
というのもコンコン子狐、もともと管理局に来る前から、稲荷の御利益たっぷりなお餅をぺったんぺったん、作って売っておったのです。
「アイス……」

食後のデザートならぬ、食前のデザートとして頼んだバニラアイスを目の前に、
しかしそのアイスは子狐が知らない茶色のソースがかかっておりまして、
くんかくんか、くんくんくん。
子狐は丁寧に茶色の香りをかいで、
それがどうも、アーモンドかクルミのような、ナッツの香りを、よくよく漂わせておるのでした。

子狐はナッツのソースを、ぺろり舐めてみました。
ソースは、ドチャクソに甘いソースでした。
「うべっ」
子狐は甘いものが大好きでしたが、
これはちょっと、甘すぎたのでした。

コンコン子狐は丹念に匂いをかぎ、調査しました。
先日、子狐が「使って良いよ」と言われた局員用の、個室寮の部屋に出た幽霊が、
自分以外の、別の料理人の視点を見つけてごらんと、餅売り子狐にアドバイスしたのでした。
ひょっとしたらこのバチクソに甘いソースも、
子狐がたんまり持ってきたお肉も、
子狐の知らないアプローチで、子狐の知らない調理方法で、料理されているかもしれません。

「もっと、もっと」
くんかくんか、くんくんくん。
コンコン子狐は何度も何度も調べました。
「もっと、もっと知りたい!」
そしてコンコン子狐は、調べて考えたこと、感じたこと、理解したこと、分かったことを、
スケッチブックに大好きな色のクレヨンで、ぐりぐりぐり。メモしたのでした。

ところで
その間に
バチクソ甘いソースが絡んだアイスは
デロンデロンのドゥルンドゥルンのトロットロに
溶けてしまったのですがどうしましょう。
「うべべ、べっべ」
コンコン子狐、アイスソースを舐めてみましたが、
甘いあまいソースが見事に甘いアイスに絡んで、
更に、甘くなってしまっておりました。

そこに助け舟を出したのが、子狐の大好きなお姉さん、管理局収蔵部のドワーフホトお嬢さん。
子狐が甘いあまいソースに苦しんでおるところに、ちょうどランチを持って到着です。
「だいじょ〜ぶ!あたしに任せなさぁい」

子狐から経緯を聞きますと、
隣の隣の隣の斜め隣あたりのテーブルで昼食をとっておった人間男性のところへ言って、
なにやら話して、その男性が、指さした先にあるドリンクバーから、
温かい、1杯のコーヒーを持ってきました。

そうです。
既にアイスは溶けてしまっていますが、いわゆるアフォガードや、コーヒーフロートの要領です。
「これで少し、甘さが抑えられるぅ」

さあ、どうぞ。
甘味と苦味をよく混ぜて、ドワーフホトお嬢さんが子狐に、アフォガードモドキを提供しました。
子狐がそれをくんくん、丹念に調べて舐めますと、
「!!」
なんということでしょう、ナッツの風味とソースの甘味、それからアイスのクリーミーが、
コーヒーの苦味とマッチして、非常に大人な良い味に大変身しています!
「おいしい!おいしい!」

不思議だ!不思議だ!子狐は思いました。
もっと知りたいと思った子狐は、それから数分ほど、アフォガードモドキの大人な香りを、
くんくん、調べておったとさ。

Next