一気にガソリン価格が上昇したり、海峡閉鎖がトレンドに食い込んだり、一気に日常に影の出てきた感がある昨今です。
「平穏な日常」をお題として、こんなおはなしをご用意しました。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
都内在住の稲荷子狐が今月から、ここに週休完全2日制で修行に来ておりました。
その日のコンコン子狐は、修行出向先たる環境整備部でお手伝いできることが無かったので、
修行受け入れ親であるところの法務部執行課の提案で、ちょっと管理部の受付業務を見学中。
所属が法務、法務から出向のカタチで別部署へ。
なんだか地味にリアルっぽい勤務体系ですが、
まぁまぁ、細かいことや背景なんかは気にしない。
「最近はなかなかに、平穏な日々だよ」
…––さて。
別世界への観光渡航許可を申請しに来た宇宙タコが、4本の腕で必要手続きをこなしつつ、
窓口のひとつにちょこん、お座りしている子狐を、別の4本の腕で撫で回します。
「妙なテロも、事件も少ない。管理局が悪いやつらを、ちゃんと取り締まってるおかげだ」
ふーん。そーなんだ。子狐は首をかっくん。
ところでこのタコ、頭に何かキラキラした、美しい頭飾りかティアラのような宝石を付けています。
なんだろう。気になるなぁ。
「あっ。こら。コレは取ってはいけないよ。
これは自動翻訳器なんだ。外したら言葉が分からなくなってしまう。 こらこら。こら」
別世界への渡航手続きを済ませたタコは、期間限定子狐を気に入った様子で、にこにこ。
平穏かつ上機嫌に、帰ってゆきました。
…––『・ω・) 確かに最近は平穏な日々だと思う』
観光渡航許可を終えた宇宙タコの次に管理局の総合窓口に来たのは、深淵スライムの幼体です。
発声器官を持たないスライムは、ひんやり触腕を意思疎通用タブレットにビタ付け。
どうやら故郷とは違う世界で、商売をしたい様子。
別世界で商売をするにあたっての、審査と検査を受けに来たそうです。
『ノ∀`) いつだったかな。やたらこの管理局を、襲撃しまくって返り討ちに遭ってた組織が云々』
ふーん。そうなんだ。子狐は首をかっくん。
視線を外すと、深淵スライムの背後でゾロゾロと、拘束を受けた妙な人物が連行されてゆきます。
なんだろう。気になるなぁ。
『*´ω`*) 気にしてはいけない。
アレだよ。悪いことして捕まったんだろうよ』
別世界での商業申請を済ませたスライムは、別の優しそうな局員に案内されて、ぽよぽよ。
平穏かつ慣れた様子で、法務部に向かいました。
…––「あら!コンちゃん!コンちゃんだ!」
法務部に向かった深淵スライムの次に管理局の総合窓口に来たのは、子狐のよく知る人間です。
たしか、黄色い花の大好きな女性です。
元々知らない世界から来て東京で仕事をしておった、心の優しいひとでしたが、
去年の3月頃から管理局に転職して、都内の某不思議な私立図書館に、出向しておるところなのです。
「ここに居たのね。藤森さん、心配してたよ」
ふーん。そうなんだ。子狐は首をかっくん……
あれ。その藤森という名字は、子狐知っています。
子狐が作る、稲荷の御利益たっぷりな、1個200円のお餅を3年買い続けてくれるお得意様です。
「そうそう。不思議なコンちゃんから不思議なお餅を買うのが、もう自分の平穏になってたって」
早めにお手紙、出してあげてね。
窓口で手続きを済ませた人間は、子狐の頭をポンポン、首のあたりをナデナデ。
平穏かつ静かに、帰ってゆきました。
その後も、子狐の窓口見学は続きまして、気がつけばもう、美味しいごはんの待つ昼休憩。
コンコン稲荷子狐は尻尾をフリフリ、食堂に突っ走ってゆきましたとさ。
前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
都内在住の稲荷子狐が今月から、ここに週休完全2日制で修行に来ておりました。
「世界線管理局は、世界の安全安定に関する様々な仕事をしているメ」
その日、コンコン子狐は、局内の環境整備部・空間管理課なる部署を見学中。
「世界と世界を繋ぐ航路を作ったり、作った航路の見回りとか取り締まりとかをしたり、
それから、滅んだ世界からこぼれ落ちた生命体とか、アイテムとかを、回収する仕事もしてるメ」
コーロとかセーメータイとか、子狐には少し難しい言葉が乱立しますが、まぁまぁ、気にしません。
ビジネスネーム・アルパイン、通称「白ヤギ」と
同じくアングロヌビアン、通称「黒ヤギ」に、
あっちの部署、そっちのブースを軽く回りながら、子狐は環境整備部の案内を受けておりました。
「メ。白ヤギ、良い加減にするメ。子狐くんにも、ちゃんと自分の足で、歩かせるメ」
「Oh, マイスィート!マイラブ!!
このモフモフ、小さきモノ、たまりまセーン。黒ヤギも、抱っこしてみれば分かりマース!」
マイエンジェル!私の愛!私の平和!
白ヤギはまさしく今回のお題、愛と平和とを連呼して、愛らしい子狐を撫で回します。
愛と平和の象徴にされた稲荷子狐は、最初こそ大人しく抱っこされて、ラブ&ピースのキュートラッシュを受けておりましたが、
途中から自分で歩きたくなってきまして、うんうんうん、えいえいえい。
白ヤギの抱っこから脱出して、とてとてチテチテ、自分で歩き始めました。
「Oh マイラブ、マイピース……」
「子狐は、歩きたいんだメ。歩かせてやるメ」
さて。
愛&平和ラッシュから脱して、自分で歩き始めた稲荷子狐と、子狐を先導する白黒タッグは、
ひととおりの環境整備部巡回を終えて、最後の案内場所に到着しました。
とても広い部屋の中で、無機質ながらもシンプルに洗練されたデザインの大きな機械が、
静かに、ただただ静かに、稼働しておりました。
「これは、保存空間発生装置という、自由に自分の好きな空間を生成して保存できる装置だメ」
黒ヤギが言いました。
「去年ようやく最終試作機から、セキュリティーの問題が解決して、正式運用が始まったメ」
設定次第でどんな空間も、「本当」に「どんな空間」も生成できてしまうから、
使用者には、必ず平和的な目的で生成するように、最初に契約が結ばれるんだメ。
黒ヤギはこの機械の責任者なので、自信と誇りをもって説明しますが、
サイシューシサクキだのセーシキウンヨだの、
やっぱりコンコン子狐には、言葉が難しくてよく分かりませんから、気にしません。
「子狐、公開が許可されてる空間、見てみるメ?」
「コーカイガキョカって、なぁに」
「ナルホドそこからだメ。よしわかったメ。
子狐、ひとまず子狐用にサンプル空間を作っといてたから、そこを紹介するメ。
油揚げとお餅で満たされたグルメ空間だメ」
「おあげさん!おあげさん!」
はやく!はやく!おもち!おあげさん!
コンコン稲荷子狐は、尻尾を振って大興奮!
難しい言葉は知りませんが、要するに美味しいお揚げさんとお餅さんは、ラブ&ピースなのです。
「おもち、おもち、おあげさん」
「はいはい。ちょっと待つメ。まず必要書類だメ」
それからコンコン子狐は、なんやかんやドンドコドン、同意確認だの合意書だのを通り抜けて、
じっくり1時間、めくるめくグルメの愛空間を、平和に堪能しましたとさ。
前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
都内在住の稲荷子狐が、週休完全2日制でもって、ここに修行に来ておりました。
元々子狐は東京で、稲荷の御利益たっぷりのお餅を作って売って、人間社会を学んでおりましたが、
去年の夏だか秋のころ、頑張りが認められたので、今月1日から管理局の仕事を手伝っておる次第。
そんなコンコン稲荷子狐ですが、
前回投稿分で「自分以外の料理人の視点」という新しい価値観を見出して、
ちょっと、感動などしておったところ。
新しい就業場所、新しい世界に来たならば、新しい調理方法やアプローチに出会って吸収して、
そして、新しい稲荷餅を発明しても良いでしょう。
「べつの、りょうり!べつのシテン!」
元々子狐は子狐なので、好奇心は旺盛です。
子狐は今日1日のお手伝いを終えますと、
スケッチブックとお気に入りの桔梗色のクレヨンを持ちまして、とってって、ちってって!
管理局の中で子狐の世話などしてくれる優しい局員たちのハナシを、聞きに行くことにしました。
「キツネ、べつのシテン、さがす!」
まず最初に話を聞きに行ったのは、管理局の局員たちに美味しい食事を提供している食堂です。
「りょうり、りょうり!おはなし教えてください」
「なんだぬ?料理のハナシだぬ?」
緑のエプロンした料理人もとい料理タヌキは、子狐の一生懸命なインタビューに対して、
自分の下積み時代に作ったまかない料理の数々を、
懐かしみながら、語りました。
「まかない料理は、食うにしても作るにしても、良い刺激になるモンだぬ。
余った食材で何を作るか、他のやつなら何を作ったか、いっぱいいっぱい、経験できるだぬ。
子狐。過ぎ去った日々は、経験になるんだぬ」
そうか。マカナイリョーリなるものは、良いケイケンなのだ。 コンコン子狐はぐりぐり。
スケッチブックにメモしました。
『マカナイリョーリはケイケン』
次に話を聞きに行ったのは、管理局が保護している「滅んだ世界から来た難民」たちに美味しい料理を提供してくれるカフェです。
「りょうり、りょうり!おはなし教えてください」
「あらまぁ可愛らし。お茶がよろしい?ホットミルクがよろしい?コーヒー?」
赤いスカーフした料理人もとい料理キツネは、子狐の一生懸命なインタビューに対して、
自分がそのカフェの先代から受け継いだ1皿の肉料理を、京都弁モドキでもって語りました。
「この煮込み肉はね、私の先代の、先代の先代の、そのまた先代の先代、3代目の店主の頃から、みーんなが守って、受け継いできたの。
もう3代目も4代目も、5代目も6代目も居らっしゃらんけど、煮込みを食べれば、いつでも会える。
子狐ちゃん。過ぎ去った日々はね、戻れるんよ」
そうか。料理を伝え続ければ、昔々の料理人と今でも会えるんだ。 コンコン子狐はぐりぐり。
スケッチブックにメモしました。
『スギサッタカコはアエル』
経験と、戻れる過去。
ふたつの価値観を見比べて、子狐はちょっと偉くなった気分になって、尻尾がパタパタぶんぶん。
更なるハナシを聞くために、移動します。
それから1時間2時間くらい、あっちこっちにインタビューして、いろんな過去を聞いて、
その日の子狐はぐっすり、よく眠れましたとさ。
前回投稿分から続くおはなし。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
都内在住の稲荷子狐が、週休完全2日制で、ここに修行に出されておりました。
前回投稿分でコンコン稲荷子狐は、優しい管理局員に連れられて、
月夜グリルなるレストランで、美味しいディナーをたっぷり堪能。
全部ぜんぶ、子狐が本来住まう方の世界とは違うアプローチで調理されておったので、
好奇心旺盛な子狐は、終始、尻尾ビタンビタンのブンブンブンであったのでした。
ところでこの稲荷子狐
ちょうど修行の一環として、
餅売りなどもしておりまして。
「つ き よ、 つーきーよ、 グ リ ル」
月夜グリルから貰ってきたクリスタルタブレットに、グリルのパンフレットが映し出されます。
知らない世界の技術が使われておるらしく、
パンフレットは子狐でも読める文字、すなわち日本のひらがなと、カタカナと、
それから、分かりやすい言葉で表示されています。
稲荷子狐はコンコンコン、月夜グリルで食べた新しい食べ物の、極上の香りも至高の味も、
それはそれは、もう、たいそう気に入ったので、
パンフレットをスワイプしてスワイプして、料理の画像と3D映像と、それから説明とを楽しみます。
もはや別世界レストラン・月夜グリルのパンフレットは、子狐にとっての新しい絵本です。
知らない料理 知らない調理 知らないアプローチ
餅売り稲荷子狐の、自分とは違う料理人が持つ視点によって作られた美味は、
子狐に良い刺激を、もたらしたのでした。
「!!」
はっ! と子狐、まんまるお目々を光らせて、顔を上げました––
まさしくこのこと、「自分以外の料理人の視点」の大事さを、先日誰かに言われたのです!
メタいハナシをするなら、すなわち過去作3月6日投稿分あたりで!
なにやらミカン、特に文旦、水晶文旦あたりの香りがするオジ幽霊から!
『オジっ……まぁ、オジ……いやお兄さん……』
子狐がパックリおくちを開けて、いわゆるワカッタ体験の余韻に浸っておりますと、
もわもわドロン、例のオジ幽霊、自認お兄さん幽霊が、子狐に貸与された部屋へ入ってきました。
『月夜グリルへ、行ってきたんだね』
なんでもこの幽霊、子狐がここを貸与されるずっとずっと前に、ここに住んでおったとのこと。
料理が趣味だったそうです。
『自分ひとりじゃ思いつかない調理法と、いっぱい、出会えただろう?』
優しい笑顔でオジ幽霊が、子狐に言いました。
『いっぱいいっぱい、いろんな経験をするんだよ。
経験は、お金より大事なもの。
お金だけじゃ得られない、貴重なものなんだから』
「けーけん、 けーけん」
子狐は貰った言葉を繰り返しました。
「経験」
3月から修行に来ておった子狐は、その日ひとつ、修行の結果として偉くなった気がしました。
『ということで子狐くん。せっかくだし僕の料理も、経験として食べてm』
「ありがとオッサンあそんであげる」
『やめて待ってやめて、おしり噛まないでまってやmぶんぶんしないで!振り回さないで!!
おねがホントにまっおねgあふん。』
経験はお金より大事なものになる、可能性がある。
コンコン子狐はそれっぽい言葉を、ぐりぐり。
修行用のスケッチブックにお気に入りのクレヨンで、メモしておきましたとさ。
前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
局内に作られた地球規模に広い難民シェルターの、
幅広く膨大に存在する様々な世界の飲食店の中の、
「月夜グリル」なる店は、
その区域の難民たちから、大事なイベントのときに行きたい高級店として愛されておりました。
「ようコそ、ようコそ。こんばンは」
月夜グリルの営業日と営業時間は、「月夜」グリルの名前らしく、月が見える夜の間。
予約必須のお店のドアを開けると、かつて昔に滅んだ世界からの難民宇宙アンモナイトが、満月の貝殻を光らせて、お客さんを迎えます。
「コードを拝見いタします。
はい、はい。結構デござイます。
初めてゴ来店の、ドワーふホと様」
さぁさぁどうぞ、こちらです。
不思議なチカラで浮く宇宙アンモナイトの、案内のとおりに進みますと、
予約した種族それぞれの「快適」に調節された個室に通されて、
そこは誰にとっても、暑過ぎず、寒過ぎず、丁度良い環境なのでした。
「おお。さすが月夜グリル。寒くない」
3人1匹で1組のお客様、規格外な寒がりさんが、防寒装備を全部取っ払います。
「ね〜。便利便利ぃ」
予約で名前を使ったお嬢さんも大満足。
扉の前に控えて周囲を警戒したがる彼女の専属執事を引っ張って、席に座らせます。
唯一1匹だけ獣の稲荷子狐は、寒がりさんにナプキンスカーフを結んでもらって、ご機嫌。
尻尾をぶんぶんぶん、超絶高速回転です。
予約の個室に到着して、お客が席についたら、宇宙アンモナイトのお仕事はそこで終了。
あとはその個室のルームマスター兼ルームシェフ、宇宙タコと交代です。
「今夜の料理は、ワタクシたちいわゆる宇宙軟体頭足類宇宙タコが客をもてなすときに振る舞う伝統料理を、アレンジしてご用意いたしました」
満月の頭を光らせる宇宙タコです。
タコだけに、ウデには自信があるそうです。
「もちろん、フォークもナイフも、スプーンもスティックスも用意はございますが、
我々宇宙タコは、料理の香りや味だけでなく、手触りも温度も楽しむ種族。
ご不快でなければ、手づかみでのご飲食も、ぜひ一度お試しください」
ではどうぞ。ごゆっくり。
大きく豪華なサーブワゴンでもって、いろんなご馳走がテーブルに、ところ狭しと並びまして、
ようやく、月夜グリルのディナータイム。
「パンが温かぁい」
「少し裂いて袋にして、具材詰めて食うらしいぜ。
俺様が入れてやるよ どれ詰める」
ナンに似た丸パンモドキを手にとって、パンナイフでモフモフ切れ目を入れたら、
あっちのチキン、こっちのディップ、そっちの謎花に不明野菜を挟んで、いただきます。
前菜サラダパンは、前菜のわりにボリューミーで、
ドワーフホトのお嬢さんも、食べ盛りの稲荷子狐も、もぐもぐ大満足!
なにより人間の料理と違う不思議な美味で、好奇心も一緒に満たされます。
「おいしい。おいしい」
「ね〜コンちゃん。おいしいねぇ」
「おい、このワゴン果実酒完備だぜ。ミカンの酒ねぇかなミカンの酒」
「おさけキツネものむ おさけちょうだい」
「おめぇは多分飲んじゃダメだろ」
「やだのむキツネおさけのむおさけ!ちょうだい」
「成人っつーか成獣になるまで我慢しろ」
「……」
「祟るな。 パンを油揚げにするな。 こら。
コンコンじゃねえわい。ダーメ。」
コンコンこやこや。ダメったらダメ。
月夜グリルの月夜ディナーは、明るく楽しくなごやかに、2時間くらい続きました。
「まタのお越しヲお待ちしてヲりまス」
稲荷子狐もお嬢さんも、寒がりさんも、おなかいっぱい––
ところでお嬢さんの専属執事が見当たりませんが、
そのへんはお題とは無関係なので、まぁまぁ、
次回のお題で明かされるか、ずっと放っとかれるか、気にしない、気にしない。 おしまい。