かたいなか

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前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
都内在住の稲荷子狐が今月から、ここに週休完全2日制で修行に来ておりました。

「世界線管理局は、世界の安全安定に関する様々な仕事をしているメ」
その日、コンコン子狐は、局内の環境整備部・空間管理課なる部署を見学中。
「世界と世界を繋ぐ航路を作ったり、作った航路の見回りとか取り締まりとかをしたり、
それから、滅んだ世界からこぼれ落ちた生命体とか、アイテムとかを、回収する仕事もしてるメ」

コーロとかセーメータイとか、子狐には少し難しい言葉が乱立しますが、まぁまぁ、気にしません。
ビジネスネーム・アルパイン、通称「白ヤギ」と
同じくアングロヌビアン、通称「黒ヤギ」に、
あっちの部署、そっちのブースを軽く回りながら、子狐は環境整備部の案内を受けておりました。

「メ。白ヤギ、良い加減にするメ。子狐くんにも、ちゃんと自分の足で、歩かせるメ」
「Oh, マイスィート!マイラブ!!
このモフモフ、小さきモノ、たまりまセーン。黒ヤギも、抱っこしてみれば分かりマース!」

マイエンジェル!私の愛!私の平和!
白ヤギはまさしく今回のお題、愛と平和とを連呼して、愛らしい子狐を撫で回します。

愛と平和の象徴にされた稲荷子狐は、最初こそ大人しく抱っこされて、ラブ&ピースのキュートラッシュを受けておりましたが、
途中から自分で歩きたくなってきまして、うんうんうん、えいえいえい。
白ヤギの抱っこから脱出して、とてとてチテチテ、自分で歩き始めました。

「Oh マイラブ、マイピース……」
「子狐は、歩きたいんだメ。歩かせてやるメ」

さて。
愛&平和ラッシュから脱して、自分で歩き始めた稲荷子狐と、子狐を先導する白黒タッグは、
ひととおりの環境整備部巡回を終えて、最後の案内場所に到着しました。

とても広い部屋の中で、無機質ながらもシンプルに洗練されたデザインの大きな機械が、
静かに、ただただ静かに、稼働しておりました。

「これは、保存空間発生装置という、自由に自分の好きな空間を生成して保存できる装置だメ」
黒ヤギが言いました。
「去年ようやく最終試作機から、セキュリティーの問題が解決して、正式運用が始まったメ」

設定次第でどんな空間も、「本当」に「どんな空間」も生成できてしまうから、
使用者には、必ず平和的な目的で生成するように、最初に契約が結ばれるんだメ。
黒ヤギはこの機械の責任者なので、自信と誇りをもって説明しますが、
サイシューシサクキだのセーシキウンヨだの、
やっぱりコンコン子狐には、言葉が難しくてよく分かりませんから、気にしません。

「子狐、公開が許可されてる空間、見てみるメ?」
「コーカイガキョカって、なぁに」
「ナルホドそこからだメ。よしわかったメ。
子狐、ひとまず子狐用にサンプル空間を作っといてたから、そこを紹介するメ。

油揚げとお餅で満たされたグルメ空間だメ」
「おあげさん!おあげさん!」

はやく!はやく!おもち!おあげさん!
コンコン稲荷子狐は、尻尾を振って大興奮!
難しい言葉は知りませんが、要するに美味しいお揚げさんとお餅さんは、ラブ&ピースなのです。
「おもち、おもち、おあげさん」
「はいはい。ちょっと待つメ。まず必要書類だメ」
それからコンコン子狐は、なんやかんやドンドコドン、同意確認だの合意書だのを通り抜けて、
じっくり1時間、めくるめくグルメの愛空間を、平和に堪能しましたとさ。

3/11/2026, 4:30:47 AM