前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
局内に作られた地球規模に広い難民シェルターの、
幅広く膨大に存在する様々な世界の飲食店の中の、
「月夜グリル」なる店は、
その区域の難民たちから、大事なイベントのときに行きたい高級店として愛されておりました。
「ようコそ、ようコそ。こんばンは」
月夜グリルの営業日と営業時間は、「月夜」グリルの名前らしく、月が見える夜の間。
予約必須のお店のドアを開けると、かつて昔に滅んだ世界からの難民宇宙アンモナイトが、満月の貝殻を光らせて、お客さんを迎えます。
「コードを拝見いタします。
はい、はい。結構デござイます。
初めてゴ来店の、ドワーふホと様」
さぁさぁどうぞ、こちらです。
不思議なチカラで浮く宇宙アンモナイトの、案内のとおりに進みますと、
予約した種族それぞれの「快適」に調節された個室に通されて、
そこは誰にとっても、暑過ぎず、寒過ぎず、丁度良い環境なのでした。
「おお。さすが月夜グリル。寒くない」
3人1匹で1組のお客様、規格外な寒がりさんが、防寒装備を全部取っ払います。
「ね〜。便利便利ぃ」
予約で名前を使ったお嬢さんも大満足。
扉の前に控えて周囲を警戒したがる彼女の専属執事を引っ張って、席に座らせます。
唯一1匹だけ獣の稲荷子狐は、寒がりさんにナプキンスカーフを結んでもらって、ご機嫌。
尻尾をぶんぶんぶん、超絶高速回転です。
予約の個室に到着して、お客が席についたら、宇宙アンモナイトのお仕事はそこで終了。
あとはその個室のルームマスター兼ルームシェフ、宇宙タコと交代です。
「今夜の料理は、ワタクシたちいわゆる宇宙軟体頭足類宇宙タコが客をもてなすときに振る舞う伝統料理を、アレンジしてご用意いたしました」
満月の頭を光らせる宇宙タコです。
タコだけに、ウデには自信があるそうです。
「もちろん、フォークもナイフも、スプーンもスティックスも用意はございますが、
我々宇宙タコは、料理の香りや味だけでなく、手触りも温度も楽しむ種族。
ご不快でなければ、手づかみでのご飲食も、ぜひ一度お試しください」
ではどうぞ。ごゆっくり。
大きく豪華なサーブワゴンでもって、いろんなご馳走がテーブルに、ところ狭しと並びまして、
ようやく、月夜グリルのディナータイム。
「パンが温かぁい」
「少し裂いて袋にして、具材詰めて食うらしいぜ。
俺様が入れてやるよ どれ詰める」
ナンに似た丸パンモドキを手にとって、パンナイフでモフモフ切れ目を入れたら、
あっちのチキン、こっちのディップ、そっちの謎花に不明野菜を挟んで、いただきます。
前菜サラダパンは、前菜のわりにボリューミーで、
ドワーフホトのお嬢さんも、食べ盛りの稲荷子狐も、もぐもぐ大満足!
なにより人間の料理と違う不思議な美味で、好奇心も一緒に満たされます。
「おいしい。おいしい」
「ね〜コンちゃん。おいしいねぇ」
「おい、このワゴン果実酒完備だぜ。ミカンの酒ねぇかなミカンの酒」
「おさけキツネものむ おさけちょうだい」
「おめぇは多分飲んじゃダメだろ」
「やだのむキツネおさけのむおさけ!ちょうだい」
「成人っつーか成獣になるまで我慢しろ」
「……」
「祟るな。 パンを油揚げにするな。 こら。
コンコンじゃねえわい。ダーメ。」
コンコンこやこや。ダメったらダメ。
月夜グリルの月夜ディナーは、明るく楽しくなごやかに、2時間くらい続きました。
「まタのお越しヲお待ちしてヲりまス」
稲荷子狐もお嬢さんも、寒がりさんも、おなかいっぱい––
ところでお嬢さんの専属執事が見当たりませんが、
そのへんはお題とは無関係なので、まぁまぁ、
次回のお題で明かされるか、ずっと放っとかれるか、気にしない、気にしない。 おしまい。
3/8/2026, 8:32:18 AM