かたいなか

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前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
都内在住の稲荷子狐が、週休完全2日制でもって、ここに修行に来ておりました。

元々子狐は東京で、稲荷の御利益たっぷりのお餅を作って売って、人間社会を学んでおりましたが、
去年の夏だか秋のころ、頑張りが認められたので、今月1日から管理局の仕事を手伝っておる次第。

そんなコンコン稲荷子狐ですが、
前回投稿分で「自分以外の料理人の視点」という新しい価値観を見出して、
ちょっと、感動などしておったところ。
新しい就業場所、新しい世界に来たならば、新しい調理方法やアプローチに出会って吸収して、
そして、新しい稲荷餅を発明しても良いでしょう。

「べつの、りょうり!べつのシテン!」
元々子狐は子狐なので、好奇心は旺盛です。
子狐は今日1日のお手伝いを終えますと、
スケッチブックとお気に入りの桔梗色のクレヨンを持ちまして、とってって、ちってって!
管理局の中で子狐の世話などしてくれる優しい局員たちのハナシを、聞きに行くことにしました。
「キツネ、べつのシテン、さがす!」

まず最初に話を聞きに行ったのは、管理局の局員たちに美味しい食事を提供している食堂です。
「りょうり、りょうり!おはなし教えてください」

「なんだぬ?料理のハナシだぬ?」
緑のエプロンした料理人もとい料理タヌキは、子狐の一生懸命なインタビューに対して、
自分の下積み時代に作ったまかない料理の数々を、
懐かしみながら、語りました。
「まかない料理は、食うにしても作るにしても、良い刺激になるモンだぬ。
余った食材で何を作るか、他のやつなら何を作ったか、いっぱいいっぱい、経験できるだぬ。

子狐。過ぎ去った日々は、経験になるんだぬ」

そうか。マカナイリョーリなるものは、良いケイケンなのだ。 コンコン子狐はぐりぐり。
スケッチブックにメモしました。
『マカナイリョーリはケイケン』

次に話を聞きに行ったのは、管理局が保護している「滅んだ世界から来た難民」たちに美味しい料理を提供してくれるカフェです。
「りょうり、りょうり!おはなし教えてください」

「あらまぁ可愛らし。お茶がよろしい?ホットミルクがよろしい?コーヒー?」
赤いスカーフした料理人もとい料理キツネは、子狐の一生懸命なインタビューに対して、
自分がそのカフェの先代から受け継いだ1皿の肉料理を、京都弁モドキでもって語りました。
「この煮込み肉はね、私の先代の、先代の先代の、そのまた先代の先代、3代目の店主の頃から、みーんなが守って、受け継いできたの。
もう3代目も4代目も、5代目も6代目も居らっしゃらんけど、煮込みを食べれば、いつでも会える。

子狐ちゃん。過ぎ去った日々はね、戻れるんよ」

そうか。料理を伝え続ければ、昔々の料理人と今でも会えるんだ。 コンコン子狐はぐりぐり。
スケッチブックにメモしました。
『スギサッタカコはアエル』

経験と、戻れる過去。
ふたつの価値観を見比べて、子狐はちょっと偉くなった気分になって、尻尾がパタパタぶんぶん。
更なるハナシを聞くために、移動します。
それから1時間2時間くらい、あっちこっちにインタビューして、いろんな過去を聞いて、
その日の子狐はぐっすり、よく眠れましたとさ。

3/10/2026, 6:47:01 AM