かたいなか

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霊感ナシのおかげで、特におっかない体験談は持ち合わせが無い物書きです。
部活の合宿で集まって、怪談話をしている最中、ホラーの頂点で、頭に乗っけたペットボトルを落として部員を絶叫させたのは良い思い出。
良い子は多分真似してはならぬのです。
というハナシは置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。

最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内にある不思議な稲荷神社に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、偉大な御狐、善良な化け狐となるべく、絶賛修行中。
今年の3月から頑張りを認められまして、
「ここ」ではないどこか、別の世界の世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織にゆきました
が、

なにやら子狐、今週に入ってからというもの、
自分宛ての手紙に尻尾をピタッと隠して、内容を理解するとホッとしてを、繰り返しています。
明らかに手紙を怖がっておるのです。

「どうした。何を怖がっている」
修行先の管理局の、子狐の責任者をしてくれている法務部の、特殊即応部門長さんが、
子狐があんまり手紙を怖がりますので、子狐に優しく、ワケを聞きました。
「こわくない!キツネ、こわくない!」
強がってはいますが、子狐の尻尾はピタッ!
おなかにガッツリくっついています。

「コレですね」
今朝いちばんに届いた手紙を見て副部長、すべてを理解して言いました。
「明日だそうですよ」
明日?明日、何があるって?
副部長さんが見ている手紙を受け取って、部長さんも文字に目を通しますと、

「『狂犬病ワクチン』?」
「1年に1回、人間たちのペットへの接種に先駆けて、3月から特定の動物病院で」
「この子狐が?」
「狂犬病に罹患した狐は普通に居るそうですよ」

ちゅーしゃ!ちゅーしゃヤダ!ギャンギャン!
部長さんと副部長さんの声が聞こえたのでしょう、コンコン子狐は怖がって、ばびゅん!
オフィスの端っこの隙間に、頭と体を押し込んで、お手々とあんよを突っ張っています。
よほど注射に対して、怖がりな様子です。

「こぎつね」
「ヤダ!やだ!キツネ、ちゅーしゃ、しない!」
「子狐」
「やだやだやだ!キツネ、いたいのキライ!
あっちいけ!あっちいけ!キツネいたいのキライ」

あーあー、あーあー。
部長さんと副部長さん、隙間にスッポリの子狐を、どうしようかと悩んでいます。
しゃーないっちゃ、しゃーないのです。
注射が痛いのは事実ですが、
自分が致死性の病にかからないように、人間に致死性の病をうつさないように、
皆みんな、注射をしなければならぬのです。

なんて理屈を子供の狐がちゃんと理解して、了解して、了承するハズもなく。

「どうします?」
副部長さん言いました。
「うん」
部長さんも部長さんで、腕を組んでため息吐いて、
どうしようなと十数分、考え込んでおったとさ。

3/17/2026, 6:46:18 AM