去年12月の「光と闇の狭間で」、
今年4月の「影絵」、
そして、同年5月の「光り輝け、暗闇で」。
光と影と闇のお題も、これで4回目。
今回は「光と影」とのことで、こんなおはなしをご用意しました。
前回投稿分からの続き物。
雨のハロウィンの都内某所、本物の魔女のおばあちゃんが店主をつとめる某喫茶店に、
本物の魔女と、魔法使いと、
それから別世界から仕事に来ていたドラゴンが、
それぞれで、それぞれのハロウィンナイトを穏やかに過ごしておったのですが、
どうやらマナーとして人間に変身して、あんまり場所を取り過ぎないようテーブルに収まっておった世界線管理局勤務のドラゴン「ルリビタキ」、
喫茶店に来る前に、ひとエピソードあったそうで。
というのも
辛味料理を求めて雪国にちょっと行ってきたら
どちゃくそスイーツでメルティージャリジャリなバターシュガーサンドに
見事、一発で、がっつりブチ当たったのです。
ルリビタキは昔々の諸事情で、甘過ぎスイーツ、甘過ぎパン、甘過ぎ以下略はこりごりでした。
「これだ」
喫茶店でドラゴン・ルリビタキ、袋に入った地域限定バターシュガーサンドを取り出しました。
「こいつが、カロリーボムのシュガーサンドだ」
それは、1袋1個で糖質約50g。
モチモチ食パンでバターと砂糖を挟んだ地域食。
一部の雪国では知らぬ者の居ない——食ったことのない者も居ないであろう、ソウルフード。
再度明示しますが、ルリビタキは昔々の諸事情によって、甘過ぎスイーツはこりごりなのです。
でもひとり、それを愛おしい目で見るだろう個人、もとい故人を、ひとり知っていました。
そしてその故人は、ルリビタキの恩人でした。
「俺はこいつを、そなえに行ってくる」
ハロウィンだものね、ちょうど故人さんも「向こう」から、現世に顔を出してるかもね。
店内の魔女や魔法使いは穏やかな顔で見送り。
ルリビタキが恩人の墓参りに行くのを、静かに見守って、それぞれのハロウィンタイムに戻ります
が、
「コンちゃん、聞いちゃったね〜」
ルリビタキと同じ職場に勤務してる可愛らしいお嬢さん、ドワーフホトが影からひょっこり!
「きいた、きいた、キツネも、きいた!」
そして、ドワーフホトの隣から、食いしん坊な稲荷子狐も一緒にぴょっこり!
そうです。カロリーボムです。カロリーとはすなわち、美味の指標であり、幸福の係数です。
「よぉし。コンちゃん隊員、尾行開始だよぉ!」
「びこー、びこー!おねえちゃんタイチョウ、尾行カイシであります!」
「ルリビタキ部長さんを追いかけてぇ、カロリーボムパンの秘密を、解明するぞ〜!」
「おう! おう!」
そろりそろり、とてとてとて!
ドラゴン・ルリビタキにバレないように、光と影を行き来して、たまに戻って飛び込んで、
ドワーフホトと稲荷子狐、彼の墓参りの尾行です。
「どこのパンだろねぇ」
「なにも、いってなかった。つきとめる!」
ソロリソロリ、ちてちてちて!
ドラゴン・ルリビタキにバレないように、光と影を見極めて、あっちに隠れてそっちに潜って、
ドワーフホトと稲荷子狐、美味の秘密の追跡です。
「ん?」
ところでルリビタキは感覚のとても優れたドラゴンなので、ドワーフホトと子狐の尾行はバレバレ。
「うん」
でも彼等が楽しそうに尾行ごっこしてるので、
光が揺らごうと、影が大きくなろうと、光と影の間で何か特に1人と1匹が飛んで跳ねてしようと、
見てません、知りません、気にしません。
構わず恩人の墓参りに直行です。
やがてドラゴンのルリビタキは、自分の職場に併設されている施設の法務部用フロア、
自分の前に「ルリビタキ」のビジネスネームを使っていた先代の墓碑に、辿り着きました。
「土産を持ってきた」
光と影どころか自分の後ろに張り付いている子狐とドワーフホトですが、ルリビタキ、気にしません。
「おまえ、好きだろう」
墓前にはルリビタキが、ついさっき持ってきたカロリーボムシュガーサンドと、それから花束。
墓碑にはこんなことが書かれていました。
『彼を起こさないでください。
この墓碑の前で、空腹を申告しないでください。
我々は彼の、あたたかく優しく仲間思いに溢れたカロリーボムで、これ以上太りたくないのです。
——法務部執行課 実動班特殊即応部門 一同』
「先代さんのお墓だぁ」
光と影がどうでも良くなったドワーフホト、先代ルリビタキのためのエピタフを見て、言いました。
「お供え物見せて、みせて〜」
おい。光と影の尾行ごっこはどうした。
ルリビタキは短いため息を吐きますが、
まぁまぁ、ドワーフホトも子狐も楽しそうなので、
見てません、知りません、気にしません。
「おおおー!シュガーと、マーガリン!
これはゼッタイ、ぜったい、美味しいよぉー」
ドワーフホトがメモをとるのも、写真をとるのも、お供え物を開けてみたくてウズウズしてるのも、
全部全部構わず、ちょっと古くなった花束だけ取り替えて、帰路につきましたとさ。
「そして、」がお題のおはなし。小ちゃな3個のエピソードを「そして、」で繋げて、ご紹介です。
夜にガッツリ雨予報のハロウィン。都内某所、某本物の魔女が店主をしている喫茶店。
外にちらほらコスプレさんが普通におりますので、
ハロウィンの間はバレないでしょと、東京に住まう本物の魔女、本物の魔法使いたちが、
魔女の喫茶店で、穏やかに交流しています。
大釜からパンプキンのベーススープを1杯貰って、
そこにそれぞれ、お気に入りのカスタマイズ。
パンプキンカレースープを楽しむ魔女もいれば、
パンプキンビーフシチューにする魔女もいます。
トマトスープと混ぜて、パンプキンミネストローネを楽しむのは、海外出身の魔法使いです。
「酷い目に遭った」
一味と唐辛子と少しの味噌を混ぜて、和風ピリ辛パンプキンスープを楽しむのは、別世界のドラゴン。
ドレスコードとして人間に変身して、ちゃぷ、ちゃぷ。ピリ辛を堪能しています。
「俺はてっきり、寒ければ寒いほど、北に行けば行くほど、辛い料理が増えるものだとばかり」
はいはい。大変でしたね。
隣で背中をポンするのはドラゴンの部下の人間。
『わかりやすい! 日本の郷土料理図鑑』なる書籍をテーブルに置いています。
「何かあったの?」
人語を話すハムスターが、カボチャの種の海でカボチャパーティーしながら聞きました。
「うん……うん。 実はですね……」
そして、部下さんが口を開きました。
そして、部下さんは上司ドラゴンのだいたい24時間程度を、語りだしました。
そして、 そして、 そして……
…——要するに、こういうことでした。
背景としてこのドラゴン、元々自分の心を静めるために、唐辛子の痛覚、すなわち辛味成分を●●年前から利用しておったのですが、
段々ピリ辛という概念を学習してきまして、
「こっち」の世界に仕事に来てからというもの、一味と七味と柚子胡椒を、覚えたのでした。
高い標高の雪国・長野県で大辛一味を知って、
深い豪雪の雪国・新潟県で鬼殺し飴を知って、
そして、ドラゴン、推測しました。
『つまりこの世界は雪国に辛味料理が多いのでは』
ちょうどドラゴン、東京での仕事が一段落。
雪国出身の藤森という人間のアパートで、鶏軟骨とワサビモドキ、もとい柚子胡椒をきかせた海苔茶漬けを食っておったところ、
藤森がなんとなく付けておったテレビに、青森県の3文字が、映っておったのでした。
そうです例の県民番組です。●ン●ンショーです。
『青森は、雪国か』
別世界から来たドラゴン、藤森に聞きました。
『本州最北端。冬は平地で長野と同程度の最低気温になる、新潟程度に積雪の多い雪国です』
ドラゴンにお茶漬けの2杯目をよそってやりながら、雪国出身の藤森、答えました。
『遠いのか?』
『東京からは700キロ程度離れていますね』
『長野より、新潟より、寒いのか?』
『長野の方が寒い場合もあります。あそこは標高が、本当に高いので』
『そうか』
しゃぶしゃぶ、しゃぶしゃぶ。
ピリ辛海苔茶漬けを幸福にかき込んで、ドラゴン思いました——青森にも激辛料理があるに違いない。
『今日も美味かった。礼を言う』
代金のピン札柴三郎さんを1枚置いて、ドラゴンは夜空の闇にまぎれて、完全に溶け込んで、
そして、ドラゴンの翼で青森へ、びゅん!
行ってしまったのでした。
そして、ドラゴンは砂糖爆弾と出会いました。
そして、ドラゴンは諸事情で、甘いものは当分だいたい100年くらい、こりごりでした。
そして、そんなに甘いなんてドラゴン知りませんでしたので、つい、砂糖爆弾を買って食べました。
そうです。例のバターシュガーサンドです。
某じゃりじゃり英国サンドを食べた途端、
ドラゴンは「諸事情」をハッキリと、鮮明に、諸事情の人物の声まで思い出しました。
それはドラゴンを今の職場に引っこ抜いてきて、ドラゴンに大量のスイーツを食べさせて、
そして、ドラゴンに当分スイーツはこりごりな気分にさせた、張本人の声でした。
【ひもじい思いをしてきたんだね。
お菓子を食べる余裕も無いくらい、異世界移民を相手に戦って、傷ついて、心と魂を汚されて】
【もう大丈夫だ。これからは、美味いものをたくさん食おう。 さぁ。 お食べ。 お食べ……】
あの日、ドラゴンは大量のホイップクリームだの、ケーキだの、キャンディーだのを詰め込まれて、
口の中から、甘味意外が消え去ったのでした。
そして、ドラゴンは虚無目でスイーツを、口から胃袋へ流し込んでおったのでした……
それをドラゴン、青森のバターサンドでカッと思い出しましたので、もう条件反射で、
そして、東京にとんぼ返り、してきたのでした。
そして、 そして、 そして……
…——「と、いうことがあってだな」
最後に舞台は、魔女の喫茶店に戻ってきました。
「なぜだ、雪国には、激辛料理が多いのでは、ないのか、なぜだ、何故だ……」
ドラゴンはちゃぷちゃぷ、唐辛子と少しの味噌がきいた和風パンプキンスープを堪能しています。
「んんー、青森にも、清水森ナンバっていう、緑色の唐辛子があるらしいけどねぇ」
ま、僕は食べないけど。ハムスターは言いました。
「しみずもり、なんば」
「買ってこなかったの?ザンネンだったね」
「とうがらし……」
そうか、そうか。ドラゴンはしょんぼり。
ドラゴンの部下がポンポン、背中を叩きます。
そして、 そして、 おやおや、
その会話を、特に糖質爆弾サンドの絶品の話を、
聞いておった女性が、近くにひとり……
そこから先は、文字数、文字数。 おしまい。
「小さい」を表す英単語は複数存在しておって、
Smallは主観的な小ささを、
Littleは客観的な小ささとかわいらしさを、
Tinyはともかく非常に小さいことを、
ネット情報によれば、それぞれ表しているとか。
なお「tiny love」は同名の、赤ちゃん用知育玩具メーカーが、海外に存在しているとか。
と、いうハナシは置いといて、今回の「tiny love」なおはなしのはじまり、はじまり。
最近最近のおはなしです。
都内某所には本物の魔女のおばあちゃんが切り盛りする、不思議で素敵な喫茶店がありまして、
来る31日のハロウィンに向けて、コトコトコト。
大きな魔女の大釜で、パンプキンのベーススープをじっくり、煮込んでおりました。
「このベースを1杯と、それから追加で好きな味を入れて、色々な味のスープにするのよ」
魔女のおばあちゃん、アンゴラが言いました。
「ハロウィンの時期は、私のような本物の魔女や魔法使いが店に来るから、
使い魔のための、肉のパンプキンスープとか、ナッツのパンプキンスープとか、そういうのも作るわ」
コトコト、ことこと。tiny love。
ハロウィンは本物の魔女たちが、コスプレ魔女に紛れて本性をさらけ出せる貴重な夜です。
コトコト、ことこと。tiny love。
ハロウィンは小さな使い魔ネズミ、使い魔猫、使い魔カラスに使い魔チョウチョたちが、
一時的に「里帰り」してきた亡霊たちの「小さな愛」を、小さな伝言を、あるいは小さな謝罪を、
お小遣い稼ぎのために、生者に伝えて回る夜です。
ところでそのアンゴラの喫茶店にハイテク機器をくくり付けられて不機嫌なtiny love、
小ちゃな小ちゃなハムスターが1匹。
「そりゃ不機嫌にもなるよ!まったく!」
ぷんすか!チューチュー!
不思議なちっぽけハムスターは、アンゴラの店のミックスナッツを食べながら、猛抗議。
「ハロウィンの非日常に乗じて、『世界多様性機構』の『領事館』が、妙なことを計画してないか情報収集してこいって言われてさ、
そりゃ、僕は特殊情報部門だから、情報収集が仕事だけどさ、だけどさ!
その領事館に!この小さい新作カメラを背負って!
潜入したら領事館に子狐が居たんだぞ!!
そりゃもう必死に逃げたよ!追いつかれたよ!
寿命減ったよキツネパンチだぞ!!ちゅー!!」
ちょっとアンゴラ!ナッツ足りない!おかわり!
不思議ハムスターは相当にご立腹。
ハムが勤務している組織の、ハムが勤務している部署宛ての領収書を切ってもらって、
出張費としてナッツをカリカリ、かりかり!
「当然だよ!僕は決死の死地に潜入したんだぞ!
これくらいの手当て、あって然るべきだよ」
おかわり、おかわり! ハムは魔女のアンゴラに、再度、ナッツのおかわりを注文しました。
「ねぇカナリア、おちびさん、ちょっと良い?」
「なんだよアンゴラ!僕は今怒ってるんだぞ!」
「このままじゃ、ミックスナッツの在庫が、あなたに全部食い尽くされてしまうわ。それでね」
「ちゅー!ちゅー!」
「このパンプキンベーススープを作るにあたっていっぱい残ってるフレッシュなカボチャの種がね」
「ふれっしゅな、かぼちゃのたね、」
「どっさり、あるんだけど」
「たべる!!」
ぷいぷい、ぷくぷく、ちゅー!
小ちゃな小ちゃなtiny love、不思議な不思議なハムスターは、魔女から緑色のカボチャの種の山盛りを貰って途端に大満足!
「はぁ、はぁッ!最高だ!最高に新鮮な種だ」
ぷいぷい、ぷくぷく、ちゅー!
幸福な幸福なtiny love、言葉を話す小さなハムスターは、カボチャの種の海にダイブして、種のひとつを取り、香りを深く吸い込んで、
「んんん、おいしい、おいしい……」
食欲のおもむくままに、全部を堪能しましたとさ。
気温の乱高下のせいで、いつの間にか秋が来て、いつの間にか秋が終わる気がする昨今です。
なお東京の週間予報によれば、11月の最初頃に、まさかの夏日数歩手前の最高気温という予想。
今年も重ね着による管理テクが試されそうです。
さてそんな最近最近の都内某所、某不思議な稲荷神社は、そこそこ涼しくて良い天気。
稲荷神社に住まう稲荷狐の一家の中の、銀色に輝く2本尻尾のおばあちゃん狐が、
若くて美しい巫女の姿に化けて、抹茶一服。
狐千家の流派でもって、茶会を開いておりました。
そうです。おもてなしです。
おばあちゃん狐が昔勤務しておった「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織に、
世界と世界を繋ぐ航路上の交通事故ということで宇宙イカが搬送されて、治療を受けて、
そろそろ帰るそうなので、
宇宙イカの盟友たる宇宙タコ——世界線管理局法務部のトップが、最後のおもてなしとして、宇宙イカを「こっち」の世界に呼んだのです。
タコとイカが狐の茶会に招かれるってシュール。
はい、細かいことは、気にしてはなりません。
なおタコイカに同行して、別世界出身の人間と、人間に変身したドラゴン部門長も居ます。
更にシュール。はい、気にしてはなりません。
「ああ、なんて静かで、落ち着く空間かしら」
うにょんうにょん。3個くらい前のお題「揺れる羽根」の関係で、有翼種族な宇宙イカです。
「これがこの世界の、ワビサビという空間なのね」
どうやら一服貰う前から、静寂に整えられた空間を気に入った様子。
すべてを記憶に残すべく、足を広げてあっちこっち、おばあちゃん狐の邪魔にならない程度に、
正座の真似事しつつ、観測しておりました。
ところでドラゴン、正座なんて文化、ありません。
人間に変身したからって、正座も長時間耐えられるってワケじゃ、ないのです。
「……」
両足がピリピリ痺れておるのを、別世界出身人間に視線でチラリ、伝えます。
人間はすました顔して、穏やかにニッコリ。
事前に、藤森なる雪国出身者と高葉井なる東京都民から、正座のコツを聞いておったのです。
「なるほど。これが、抹茶」
うにょんうにょん、うにょんうにょん。
おばあちゃん狐から渡された、美しいキツネ色のお椀を2本の触腕で大事に持って、
おもてなしを受けた宇宙イカは、抹茶をよくよく観察します。抹茶を摂取するのは初めてなのです。
「この体で飲むのは、ちょっと、難しいわねぇ」
うにょんうにょん、うにょんうにょん。
おばあちゃん狐からおもてなしを受けた宇宙イカ、
お椀をどうやって口に持ってって、抹茶をどうやって摂取しようか、ひとしきり考えて考えて、
最終的に人間っぽいナニカに化けて、「よしよし。これで、良いわ」。
世界線管理局で治療を受けて、帰るまでの最後の思い出として、抹茶をよくよく、堪能しました。
「面白い……おもしろいわ。これが、この世界」
うにょうにょ宇宙イカ、よほど抹茶のおもてなしがお気に召したのか、シモベみたいな【みょんみょん】を周囲に召喚して大満足。
【ぎょんぎょん】は宇宙イカの周囲でピョコピョコ踊って、宇宙イカをたたえ、抹茶をたたえます。
「そんなに気に入ったんなら、そのお椀と茶菓子セット、記念の土産にもっておいき」
おばあちゃん狐が言いますと、宇宙イカの満足と幸福は最高潮!【うにょにょん】も光り輝きます。
「感謝します稲荷狐。ワタクシは今日のおもてなしを、決して、けっして忘れないでしょう」
「アンタ、世界と世界、普通に行き来できるんだろう?また飲みたくなったら、予約するんだよ。
その時は金額に応じて、良い茶を出してやるから」
うにょうにょ、コンコン。
それからだいたい1時間か2時間くらい、不思議なお茶会は続きまして、おもてなしも大成功。
宇宙イカは大満足で帰ってゆきましたが、
「ぐ……ぅうッ! ぐあぁ!!」
「駄目です部長、無理に立とうとしたら、」
「くぅうぅぅ!!」
正座にちっとも慣れてないドラゴン部門長は、足がすっかり痺れてしまって、コロン。
当分、立てませんでしたとさ。
消えない焔のおはなしです。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこには、あらゆる知識と情報と、それから技術と法則とが収蔵された、大きな図書館があります。
その図書館の中央に、あらゆる記録と現在と可能性を映し出す、物語の焚き火があるのです。
それは、滅んだ世界の過去と、
生存している世界の現在、
やがて生まれる世界の可能性がすべて、
ごっちゃごちゃに混じり合って不思議な魔法の焔を燃やす、「どこかの事実」、物語の神様の焚き火。
名前は、タキビ・フシギ・ナンヤーカンヤー。
この焚き火こそ、「消えない焔」なのです。
で、そんな「消えない焔」が、図書室のド真ん中でパチパチぱきん、静かに燃えておりますと、
一部の世界線管理局員が考えるのは以下略。
そうです。レジャーです。
焼き魚はさすがに匂いがしますので、
焼きマシュマロに直火コーヒー、茶の焙煎です。
なんなら熱でドライフルーツの乾燥もできます。
消えない焔って便利ですね。
「ほーんと、便利、べんり〜ぃ」
んんー、おいしい!
魔法の焚き火でドライフルーツを熱風乾燥しておった管理局員が、
ひとつ、トパーズの乾燥リンゴをチョコのポットにくぐらせて、ふーふー、ぱくり!
味見をしてニッコリ、幸福に笑いました。
「魔法の焚き火のチカラかなぁ、この焚き火で乾かしたり、温めたりすると、他のより美味しいよぉ」
チチッ、ギーギー、ちゅーちゅー!
局員が「消えない焔」を使って、図書室でドライフルーツの乾燥などしておるので、
図書室で働く魔法のカピバラや機械仕掛けのハタネズミ、宝石でできた木ネズミ等々が、
羽ぼうきなり乾拭き雑巾なり、パタパタ振って局員に、猛抗議などしています。
ギャッギャ!ギーギー!
図書室は飲食禁止じゃい!出てけ出てけ!
魔法銀の針を広げているのはヤマアラシ。
ちゅーちゅー、ちゅーちゅー!
いい加減にしろ!これで何度目だと思ってる!
一生懸命鳴いているのは大理石のチンチラ。
ところで真面目な彼等に隠れて、魔法のリスがちゃっかりと、ワイロのキノコなど貰っています。
チチッ、チチチ、
へへっ、ありがてぇありがてぇ。
良さげに温かく、良さげに旨味と食感と【人間にはちょっとアブナイもの】が凝縮したキノコは、
数秒で、リスの頬袋の中に収納されました。
「あれぇ、ナッツ、いいの?ナッツあるよぉ?」
チチチ、チチチ。
「キノコで良いの?そーお?カナリアさんとか、ヒクイドリさんとかに、あげちゃうよ?」
チチチ、チチチ。
「チーチーされても分かんないよぉ。食べるー?」
ちゅー。
そんなこんなで今日も今日とて、消えない焔の魔法の焚き火の周囲はにぎやか。
完成したドライフルーツを焙煎したてのコーヒーと交換したり、ココアと交換したり。
そのたび、
真面目なげっ歯類に、ちゃっかりげっ歯類、それぞれがそれぞれチューチューぎーぎーして、
その近くで魔法のカピバラは、パチパチ暖をとって、局員渾身の干し芋を、もしゃもしゃ。
全部ぜんぶ、キレイに食べておったとさ。