かたいなか

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10/27/2025, 9:53:22 AM

「終わらない問い」がお題とのこと。
前回投稿分と同じ職場、ちょっと別の場所を舞台に、こんなおはなしをご用意しました。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこでは世界と世界を繋ぐ航路を敷設したり、
航路の安全を保全したり、違反を取り締まったり、
あるいは、滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムを、他の世界に流れ着く前に回収したり。
まぁまぁ、いろいろ、仕事をしておりました。

前回投稿分では、どうやら取り締まりをしておった航路の中に、違法に交差点が作られて、
そのせいで宇宙イカが、ぬぞぞぞ、交通事故。
決裁も申請も全部飛ばして即時対応する部署、法務部の特殊即応部門と特殊情報部門が、
それぞれ、調査に乗り出しました。

で、すったもんだの管理局です。
事故って局内に搬送された宇宙イカは、ぬぞぞぞ、すぐに回復して元気になりまして、
管理局の中に作られた難民用のシェルターで、滅んだ世界から収容されてきた子どもたちの、遊びの相手をしてやっておったのでした。

「イカさんフカフカ!イカさんの滑り台!」
「イカさんリフトも、たのしい」
「イカさんもっとやって、もっと高い高いして」

うにょんうにょん、ぬぞんぬぞん、
有翼宇宙イカは大きくて、子どもたちにしてみれば、良い滑り台だしアスレチックだし、
なにより、宇宙イカのゲソ、もとい、足にしっかり掴まって、上下してもらうのが楽しい様子。

「イカさん、いつまで居るの!」
「イカさん、いつまでイカさんと遊べるの!」

難民シェルターの子どもたちの一部は、
有翼宇宙イカにお題回収、「終わらない問い」を何度も何度も、投げておったのですが、
「いつまでって、ワタクシ、いつまでかしらねぇ」
ぶっちゃけ、いつまで管理局内で療養すべきか、
宇宙イカ自身も、きかされていなかったのでした。

「イカさん、なんでイカなのに羽根あるの」
「あらぁ、イカが美しい翼を持ってちゃダメ?」
「イカさん、イカさんの下でなんかギョンギョンしてる!アレなあに?」
「アンタたちは生成しないの?不便ねぇ」

「イカメシさーん」
「誰よワタクシをイカメシ呼ばわりしたの」

うぞうぞ、ぬぞぬぞ。
管理局に搬送された宇宙イカは、まぁまぁ、リハビリの意味もあったのでしょう、
子どもたちのナンデナンデシャワー、終わらない問いを浴びながら、たっぷり遊んでやりました。

ところでその宇宙イカの近くで、もう1匹。
子どもたちからナンデナンデシャワーを食らっておったドラゴンが、昼寝をしたがっておりまして。

ドラゴンは子どもたちから「悪い竜神さま」、
わりゅーじんさまと、よばれておりました。

「わりゅーじんさま!わりゅーじんさま!」
「ねぇわりゅーじんさま、あのイカ、なぁに」
「あのイカ、わりゅーじんさまのお友達?」
「ねーねーわりゅーじんさま」

宇宙イカが怖かったり、宇宙イカよりドラゴンの方が好きだったり、ドラゴンの隣が落ち着いたり。
そんな子どもたちがドラゴンの、背中に登ったり尻尾に乗っかったりしています。
「わりゅーじんさま、ねぇわりゅーじんさま」
「わりゅーじんさまあのイカおいしい?」
「あのイカいつ食べるの?」
「わりゅーじんさまいつ遊ぶのー」

『しらん。分からん。寝かせてくれ』
「悪い竜神さま」と呼ばれているわりに、ドラゴンはちっとも怖くなくて、子どもたちにも大人気。
『そこのイカのことはイカに聞いてくれ』
おやおや、ドラゴンがあんまりおとなしいので、2人くらいの子供がドラゴンの尻尾を、枯れ葉を集めて埋めています。「だって寒そうだもん」

『何をしている』
「わりゅーじんさま、服着てないのに寒くない?」
『なんだって?』
「だって、わりゅーじんさま、すっぽんぽんだもん。葉っぱの布団をかぶせてあげるの」
『んん、……あのな??』

「わりゅーじんさまスッポンなの?!」
『スッポン??』
「わりゅーじんさまカメだったんだ……?」
『待て何がどうなって俺がカメだって?』

わいのわいの、やんややんや。
ドラゴンと子どもたちも、終わらない問いで賑やかに、数時間たっぷり遊びましたとさ。

10/26/2025, 6:49:43 AM

「書く習慣」と同じ運営がリリースしている交流アプリに、焚き火のアプリがありまして、
スレッド主の文章書き込み中を表すエフェクトが、そのまま「揺れる羽根」だったのを、
今更、なんとなく思い出した物書きです。
今回は羽根のお題ということで、こんな厨二ふぁんたじーのおはなしをご用意しました。

「こっち」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこでは世界と世界を繋ぐ航路を敷設したり整備したり、時には航路を封鎖したり、
滅んでしまった世界からこぼれ落ちたチートアイテムなんかが悪さをせぬよう収蔵保管したり、
ともかく、いろんな仕事をしておりました。

その日の管理局は大忙しで、
なんでも勝手に、違法に誰かが敷設した、航路と航路の不法不明交差点のせいで、
安全航行をつとめておったハズの宇宙イカが、密航船と正面衝突をカマしたとのこと。

そういえばこのアカウント、過去投稿分にオネェな宇宙タコがどこぞで大活躍してましたね。

「あらヤダちょっと!アンタ管理局の法務部?!」
まさかの打ち身で済んだっぽい宇宙イカです。
管理局内の医療機関に搬送されて、そこで宇宙タコと再会して、まさかの感動の対面です。
「何千年ぶりかしら、ちょっと、ちょっと!
覚えてる?!有翼のワタクシと無毛のアンタ!どっちがより美しいかでケンカしてたわ!」
なんということでしょう。この宇宙イカ、お題がお題なので、どうやら羽が映えている様子。
あんまり動くので抜けた羽根が、揺れる、ゆれる。

「忘れるもんですか!ああ、なんてこと!
種族の違いを超えて、アタクシと美の果てを追求した体に、こんなに傷が付いちゃって」
オネェの管理局法務部長、オネェ宇宙タコが宇宙イカの痛ましいタンコブに、涙を流します。
「処置が終わったら、アタシに連絡してちょうだい。久しぶりに思い出話しましょう、あぁああ……」

うねうね、うぞうぞ、みょんみょん、
シチュエーションだけ見れば、揺れる羽根が抜けて舞い踊る美しい場面なのですが、
なんせ、有翼宇宙イカと無毛宇宙タコです。
しかも双方、オネェです。
申し訳程度に踊り揺れる羽根だけが、今回のお題が「揺れる羽根」だと教えてくれます。

で、このオネェ宇宙タコ、管理局の法務部長が、
【ゴニョゴニョ】年ぶり盟友との再会を喜んでいる間、部下の皆様は何をしているかというと。

「時を殴るフライパン??」
「あのねー、イカさんの事故現場に、落ちてたぁ」

管理局法務部の、執行課実動班、特殊即応部門では、宇宙イカの交通事故に関する検証と調査が急ピッチで、為されておったのですが、
事故現場には密航船から落っこちた、とある滅亡世界のチートアイテムがひとつ。
それを収蔵部が回収して、調べてみたところ「時を殴るフライパン」と判明しました。

どういうことでしょう。
細かいことを気にしちゃいけません。

「温度と勢いで、時を進めたり戻したりするのぉ」
フライパンをぶんぶん!収蔵部から来たお嬢さんが、遺留品の説明をします。
「温めたフライパンで殴れば、熱と勢いを足した結果の分だけ時間を進めてー、
冷やしたフライパンで殴れば、冷気と勢いを足した結果の分だけ、時を戻すんだよー」

そ〜ぉれっ、えぃやー!
振りかぶってコォン!!氷水から出したフライパンをミトン手袋で強く握って、
ほくほくフライドチキン1ピースを、チカラいっぱい振り抜くと、コケェッ!!
滅亡世界の不思議パワーと不思議理論により、フライドチキンから黄金の、メスのニワトリが一羽。

「どういう原理だコレ」
「細かいことは、気にしちゃダメだよー」

コケコッコ、コケコッコ!
今回のお題に従って、管理局内で暴れるニワトリ。
飛んで跳ねて、揺れる羽根が舞い落ちて、
殴るチカラが不十分だったのか、フライパンの冷やしが足りなかったのか、
たった20分程度でニワトリ、羽根を残して1ピース、ほくほくのフライドチキンに戻ります。

「……どういう原理なんだコレ」
「だから、細かいことは、気にしちゃダメだよー」

ゆらゆら、ゆらゆら。揺れる羽根が舞い落ちます。
「時間制限があるのか?」
「単純に、エネルギー不足だった可能性もあるぅ」
法務部長がうねうねしている裏で、法務部の部下と収蔵部の教員は、フライパンを熱したり冷ましたり、ドラゴン種のパワーで振り抜いたり。
いろいろ、試しておったとさ。

10/25/2025, 7:30:35 AM

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、キレイな物が大好き!

光るもの、輝くもの、それから美しいお花等々を、
秘密の箱、宝箱の中に詰めて、
時折それを開けて眺めては、楽しんでいました。

前回投稿分でコンコン子狐、無人島でジャーキー食べて焚き火して、キレイな石ころなんか見つけて、
たくさんたくさん、宝物を増やしてご満悦。
子狐の秘密の箱の中も、だいぶ充実してパンパンに
なったのはそれで良かったのですが、

「んーん」
ここで子狐、秘密の箱に問題が発生したのです。
「たからもの、ギッチギチ」
子狐が宝物を、あんまりいっぱい増やしたので、
秘密の箱の空き容量が、ほぼゼロになったのです。
「なやむ」

コンコン子狐は選択に迫られます。
今まで、大事な宝物は、全部ぜんぶ1個の秘密の箱の中。それで十分でありました。
だけど子狐、無人島で焚き火して、ジャーキー食べて、キレイな石ころなんか見つけて、
秘密の箱の中身が一気に増えてしまったので、
秘密の箱をもう1個増やすか、
秘密の箱の中身を整理するか、
秘密の箱をもっと大きいものに変更するか、
そろそろ、決断しなければなりません。

「オッサン!」
子狐は1匹の相談役に思い至りました。
「オッサンに、そーだん、行こう!」
子狐は先週、いや今週の最初だったかしら、
お母さん狐に絵本を読んでもらいました。
その絵本には強くて大きなドラゴンが描かれており、そのドラゴンは金銀財宝、たくさんの宝物と宝箱と、それから魔法の秘密の箱を、
洞窟に隠して、守っていました。

そういえばコンコン子狐、そこそこ優しいドラゴンのオッサンを知っておるのです。

「オッサン、オッサン!そーだん、行こう!」
子狐は尻尾をブンブン振って、宝物の箱を宝物のクロネコリュックに大事に入れて、
ドラゴンのオッサンが居るであろう世界の某草原に、とってって、ちってって、向かいました。
「オッサン、オッサン、いっしょに、かんがえて」

…——で、相談相手に選ばれたオッサンです。
『はぁ、それで、俺が大量の宝物のやりくりと保管をどうしてるか、聞きたいと?』
子狐がコンコン、増えた自分の宝物の整理方法について聞いてきましたので、
昼寝しておったのを起きてアクビして、ちょっと子狐の毛づくろいをしてやって、
そして、相談に乗ってやったのですが、

『たしかに俺にも、思い出の品への執着とか、所有意識とかってのは、無いこともないんだが、
おまえが絵本で見たっていうドラゴンほど、財宝の所有欲も収集欲もだな……』

多分俺より鬼畜猫のやつに、
ミカンの10でも20でも握らせて、便利で新しい宝箱を新調してもらった方が早く解決するぞ。
ドラゴンは言いました。
このドラゴンは財宝の強奪も収集も、保管も独占もしてないらしく、おとなしいドラゴンでした。

「オッサン、ひみつのばしょに、たからもの、かくしてるんだ。だから言えないんだ」
『そうじゃなくてだな。確かに隠しているものはあるが、特にそのお前が絵本で見たようなだな』
「オッサン、おしえてよ、たからもののベンリなかたづけかた、おしえてよ」
『時々整理整頓したらどうだ。要らないものを』
「やだ!たからもの、すてない!」

『なら宝物用の部屋を作るとか、宝箱を増やすとか、宝箱自体をデカいものにするとか』
「そのそーだん、したいの。オッサン、おしえて」
『それはお前次第だろう……』

オッサンいっしょに考えて。
コンコン子狐は尻尾を振って、ドラゴンのオッサンに秘密の箱を見せます。
一緒に考えてもらう報酬のつもりか、子狐の前には美味しそうな、稲荷寿司が5個ほど並んでいます。

『あのな子狐?』
「おねがい、おねがい!オッサンそーだんのって」
『こぎつね』

どうしたモンかなぁ。
ドラゴンは子狐に頼まれて、難しい顔して尻尾をゆっくりパタンぱたん。長考中。
けっきょくドラゴン1匹じゃどうにもならなかったので、ドラゴンと同じ職場の局員を何人か呼んで、
そして、子狐の相談に、律儀に乗ってやりました。

最終的に子狐の、宝物を入れる秘密の箱は、
応急処置でもう少し大きな箱に収容されて、
後日、再度相談会が為されることになったとさ。

10/24/2025, 9:59:18 AM

無人島に行くなら、ひとまずキャンプ道具を一式と、それから食材にポータブル保冷庫等々、
ともかく抜かり無く、持っていきたい物書きです。
今回は不思議な稲荷子狐が、無人島モドキへ遊びに行くおはなしをご用意しました。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムを回収して、適切な方法で収蔵したり、活用したり。
それから、世界と世界を繋ぐ航路の敷設と運営なんかもしている大きい組織なのでした。

この管理局が収蔵するアイテムには、とっても大きな機械も多数収蔵されておりまして、
その中に、いろんな空間を生成して保存しておける、夢のようなチートマシンもありました。
その名も「保存空間生成装置」。
世界線管理局員は、事前に申請書類を書いて提出して、それが空間管理課の審査に通れば、
2年ごとの更新制で、自分だけの空間を持つことが、できるのでした。

ところでそんな便利な保存空間は、
3年に一度、契約更新されずに放ったらかされた空間を、削除したり他の局員に譲渡したりと、
一斉に大規模整理するウィークがありまして。
今回、お題回収役の稲荷子狐は、この大規模整理ウィークのイベントに、招待されたのでした。

というのも子狐と仲の良い局員が、無人島同然の保存空間を見事に競り落としたそうで。
一緒にキャンプをしようとのお誘いなのです。

コンコン子狐、尻尾をブンブンびたびた振り回し、
お仲間局員、ドワーフホトとの待ち合わせ場所へ。
ドワーフホトに縫ってもらったクロネコリュックに、稲荷寿司やおにぎり、おもち、それからお揚げさんもたんと詰めて、
ドワーフホトとの待ち合わせ場所へ、とててて、ちててて!文字通り跳んでゆきました。

「むじんと!むじんと!」
無人島に行くならば、美味しいごはんに美味しいおかず、美味しいおやつも持ちましょう。
「むじんと!むじんと!」
無人島に行くならば、美味しいお水と美味しいお茶っ葉で、美味しいお茶も淹れましょう。

「コンちゃぁん!待ってたよー!」
保存空間を管理している大きな部屋で、ドワーフホトが親友のスフィンクスと一緒に、
先に来て、子狐のことを待っておりました。

「無人島!早く無人島行こうぜ、ホト!」
無人島に行くならば、仲の良い友達と仲の良い友達の友達も、連れてゆきましょう。
「待って待ってぇ、スフィちゃん、白ヤギさんと黒ヤギさんの手続き、もちょっとかかるぅ」
無人島に行くならば、楽しい気持ちと楽しい思い出も、持っていきましょう。

「メ、ドワーフホトさん、譲渡手続きが完了しましたですメ。今日からこちらの保存空間は、ドワーフホトさん所有の保存空間となりますメ」
コンコン子狐が自分のリュックを、スフィンクスに見せびらかしておると、
黒いヤギ獣人の管理局員、通称黒ヤギさん(もしくは✕の方)が、書類一式持って、やってきました。

「Oh!ホトサーン、さっそくご友人と無人島パーリデースカ?楽しんできてクーダサァィ」
コンコン子狐が白ヤギさんの、手の匂いをくんくんペロペロしておると、
白いヤギ獣人の管理局員、通称白ヤギさん(もしくはOの方)も、鍵ひとつ持って、やってきました。

彼等こそいわゆる◯✕コンビ、白黒コンビ。
空間管理局の保存空間生成装置の責任者でした。

「よぉし!行こう!」
白ヤギさんから鍵を受け取って、さっそく子狐とドワーフホトと、それからスフィンクスは無人島へ。
ただ、無人島は無人島でも、ちゃんと植物は育っておっても、魚や果物は無かったので、
自分たちで持ち込んだ食材でもって、パーティーを楽しんだとさ。

10/23/2025, 9:57:18 AM

秋風で秋の風邪をひいた、ドラゴンのおはなし。

最近最近の都内某所、某不思議な稲荷神社で、
キングサイズの毛布と布団の下に潜り込んで、
隠れたつもりのドラゴンが、ぎゃお、ぎゃお!
自分に近づく全部のものに、ガチの目をして威嚇して、尻尾も丸め込んでおりました。

というのもこのドラゴン、
秋風による秋風邪で、食欲不振と胃の不調と、
それから薬膳の消化不良を起こしまして。
「なんでも良いから早く治してほしい」と、漢方医の稲荷狐に頼んだところ、
ここから先のハナシが面倒なのなんのと。

漢方医のお父さん狐が提案して
ドラゴンの部下が結果的に薬茶を買いに行って
茶っ葉屋のお母さん狐が丁寧に薬茶を煎じて
保温ポットに入れたお茶を子狐が届けて
本来ならば1日3回に分けて飲ませるべきそれを、コンコン子狐、ぜーんぶ一気にドラゴンの口に、
ざぶん!流し込んだのです。

血行促進に胃もたれ改善、食欲増進と整腸作用、
ドラゴンの秋風邪の症状に全部対応できるお茶を
人間は「センブリ茶」と言います。

そうです。あの、罰ゲームの常連です。

別の世界から来たドラゴンは、センブリの苦さを知りませんし、センブリ茶の飲み方も分かりません。
ただ秋風の入らぬポカポカの部屋に、フカフカモフモフのシーツと毛布を引いてもらって、
そこで大人しく、穏やかに待っておったところ、
子狐が尻尾振って、水筒をさげて来たのです。

『おくすり!おくすり!』
きゅぽん!
お医者さんごっこのつもりなのでしょう、
子狐は子供用の白衣を引きずって、おもちゃの聴診器を首にかけて、
それから、800mLサイズの保温ポットを開け、
『おくすり、どうぞ、どうぞ!』

おとなしく従うドラゴンの喉に、コンコン子狐、
丁寧に煮出されて
正しく薬効成分の抽出された
苦味の極地とも言うべき
「良薬口に苦し」のセンブリ茶の
3回分を、一気に、ざぶん!流し込んで、
ドラゴンが吐き出さないように強制的に、ドラゴンの口を狐の秘術で数秒閉めさせたのです。

ぐぐ!!ぐぐぐ!!ぐっぐ!!
ずっと穏やかでおとなしくて、優しかったドラゴンは、センブリ茶の3回分を入れられてビックリ!
だって、ドラゴンは人間より感覚が優れているので、人間以上に苦さを感じておるのです。
まさかの薬茶でSAN値チェックです。かわいそうに、見事にファンブルをブチ抜いたのです。

体全体で苦さに抵抗して、抵抗しきれなくて、
薬茶を飲み込むまで解除されない秘術のせいで、アルティメット劇物を吐き出すこともできません。
ぎゃお!!ぎゃお!!ぎゃおおう!!
秋風邪ひいてることも忘れて、秋風入らぬポカポカの部屋の片隅で、ぼふん!
ドラゴンは毛布と布団の下に籠城して、
小ちゃく、なるべく小ちゃく、尻尾も丸めて、
そして目つきが完全に変わってしまいました。

ドチャクソに苦かったのです。
毒を飲まされたと思ったのです。
だって、この世の全部の「苦い」の平均値を100倍したような液体を大量に流し込まれたのです。
ドラゴンはこれ以上、自分の体に毒が入りこまないように、もう完全にパニックの状態で、
近づくすべてに、ぎゃお!ぎゃお!!
ガチの目で、牙を見せて、威嚇しました。

あんまりパニックになってしまったので、威嚇しても近づいてくるものがあれば、
猫パンチならぬドラゴンパンチの仕草でもって、更に威嚇の姿勢を見せるドラゴンです。
タシタシ!ぎゃおぎゃお!!
ドラゴンにしてみれば、必死なのです。
1時間ほど経過して様子を見に来たお父さん狐とドラゴンの部下の人間はびっくりです。

「部長、えっ、ぶちょう?」
ぎゃお!!ぎゃおおぅ!!
「いったい、何があったんです??」
ぎゃおぎゃお!!ぎゃおう!!
「私です部長、ツバメです、部長」
ぐおおう!!ぐぎゃおおう!!ぎゃおぎゃお!!
「部長……??」

秋風入らぬポカポカ部屋で、秋風邪ひいたドラゴンとドラゴンの部下は、
ドラゴン側が正気を取り戻すまでずっとずっと、
互いにはてなマークを出したり威嚇したり、
ずっとずっと、忙しくしておったとさ。
お大事に、お大事に。

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