かたいなか

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前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、キレイな物が大好き!

光るもの、輝くもの、それから美しいお花等々を、
秘密の箱、宝箱の中に詰めて、
時折それを開けて眺めては、楽しんでいました。

前回投稿分でコンコン子狐、無人島でジャーキー食べて焚き火して、キレイな石ころなんか見つけて、
たくさんたくさん、宝物を増やしてご満悦。
子狐の秘密の箱の中も、だいぶ充実してパンパンに
なったのはそれで良かったのですが、

「んーん」
ここで子狐、秘密の箱に問題が発生したのです。
「たからもの、ギッチギチ」
子狐が宝物を、あんまりいっぱい増やしたので、
秘密の箱の空き容量が、ほぼゼロになったのです。
「なやむ」

コンコン子狐は選択に迫られます。
今まで、大事な宝物は、全部ぜんぶ1個の秘密の箱の中。それで十分でありました。
だけど子狐、無人島で焚き火して、ジャーキー食べて、キレイな石ころなんか見つけて、
秘密の箱の中身が一気に増えてしまったので、
秘密の箱をもう1個増やすか、
秘密の箱の中身を整理するか、
秘密の箱をもっと大きいものに変更するか、
そろそろ、決断しなければなりません。

「オッサン!」
子狐は1匹の相談役に思い至りました。
「オッサンに、そーだん、行こう!」
子狐は先週、いや今週の最初だったかしら、
お母さん狐に絵本を読んでもらいました。
その絵本には強くて大きなドラゴンが描かれており、そのドラゴンは金銀財宝、たくさんの宝物と宝箱と、それから魔法の秘密の箱を、
洞窟に隠して、守っていました。

そういえばコンコン子狐、そこそこ優しいドラゴンのオッサンを知っておるのです。

「オッサン、オッサン!そーだん、行こう!」
子狐は尻尾をブンブン振って、宝物の箱を宝物のクロネコリュックに大事に入れて、
ドラゴンのオッサンが居るであろう世界の某草原に、とってって、ちってって、向かいました。
「オッサン、オッサン、いっしょに、かんがえて」

…——で、相談相手に選ばれたオッサンです。
『はぁ、それで、俺が大量の宝物のやりくりと保管をどうしてるか、聞きたいと?』
子狐がコンコン、増えた自分の宝物の整理方法について聞いてきましたので、
昼寝しておったのを起きてアクビして、ちょっと子狐の毛づくろいをしてやって、
そして、相談に乗ってやったのですが、

『たしかに俺にも、思い出の品への執着とか、所有意識とかってのは、無いこともないんだが、
おまえが絵本で見たっていうドラゴンほど、財宝の所有欲も収集欲もだな……』

多分俺より鬼畜猫のやつに、
ミカンの10でも20でも握らせて、便利で新しい宝箱を新調してもらった方が早く解決するぞ。
ドラゴンは言いました。
このドラゴンは財宝の強奪も収集も、保管も独占もしてないらしく、おとなしいドラゴンでした。

「オッサン、ひみつのばしょに、たからもの、かくしてるんだ。だから言えないんだ」
『そうじゃなくてだな。確かに隠しているものはあるが、特にそのお前が絵本で見たようなだな』
「オッサン、おしえてよ、たからもののベンリなかたづけかた、おしえてよ」
『時々整理整頓したらどうだ。要らないものを』
「やだ!たからもの、すてない!」

『なら宝物用の部屋を作るとか、宝箱を増やすとか、宝箱自体をデカいものにするとか』
「そのそーだん、したいの。オッサン、おしえて」
『それはお前次第だろう……』

オッサンいっしょに考えて。
コンコン子狐は尻尾を振って、ドラゴンのオッサンに秘密の箱を見せます。
一緒に考えてもらう報酬のつもりか、子狐の前には美味しそうな、稲荷寿司が5個ほど並んでいます。

『あのな子狐?』
「おねがい、おねがい!オッサンそーだんのって」
『こぎつね』

どうしたモンかなぁ。
ドラゴンは子狐に頼まれて、難しい顔して尻尾をゆっくりパタンぱたん。長考中。
けっきょくドラゴン1匹じゃどうにもならなかったので、ドラゴンと同じ職場の局員を何人か呼んで、
そして、子狐の相談に、律儀に乗ってやりました。

最終的に子狐の、宝物を入れる秘密の箱は、
応急処置でもう少し大きな箱に収容されて、
後日、再度相談会が為されることになったとさ。

10/25/2025, 7:30:35 AM