かたいなか

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「終わらない問い」がお題とのこと。
前回投稿分と同じ職場、ちょっと別の場所を舞台に、こんなおはなしをご用意しました。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこでは世界と世界を繋ぐ航路を敷設したり、
航路の安全を保全したり、違反を取り締まったり、
あるいは、滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムを、他の世界に流れ着く前に回収したり。
まぁまぁ、いろいろ、仕事をしておりました。

前回投稿分では、どうやら取り締まりをしておった航路の中に、違法に交差点が作られて、
そのせいで宇宙イカが、ぬぞぞぞ、交通事故。
決裁も申請も全部飛ばして即時対応する部署、法務部の特殊即応部門と特殊情報部門が、
それぞれ、調査に乗り出しました。

で、すったもんだの管理局です。
事故って局内に搬送された宇宙イカは、ぬぞぞぞ、すぐに回復して元気になりまして、
管理局の中に作られた難民用のシェルターで、滅んだ世界から収容されてきた子どもたちの、遊びの相手をしてやっておったのでした。

「イカさんフカフカ!イカさんの滑り台!」
「イカさんリフトも、たのしい」
「イカさんもっとやって、もっと高い高いして」

うにょんうにょん、ぬぞんぬぞん、
有翼宇宙イカは大きくて、子どもたちにしてみれば、良い滑り台だしアスレチックだし、
なにより、宇宙イカのゲソ、もとい、足にしっかり掴まって、上下してもらうのが楽しい様子。

「イカさん、いつまで居るの!」
「イカさん、いつまでイカさんと遊べるの!」

難民シェルターの子どもたちの一部は、
有翼宇宙イカにお題回収、「終わらない問い」を何度も何度も、投げておったのですが、
「いつまでって、ワタクシ、いつまでかしらねぇ」
ぶっちゃけ、いつまで管理局内で療養すべきか、
宇宙イカ自身も、きかされていなかったのでした。

「イカさん、なんでイカなのに羽根あるの」
「あらぁ、イカが美しい翼を持ってちゃダメ?」
「イカさん、イカさんの下でなんかギョンギョンしてる!アレなあに?」
「アンタたちは生成しないの?不便ねぇ」

「イカメシさーん」
「誰よワタクシをイカメシ呼ばわりしたの」

うぞうぞ、ぬぞぬぞ。
管理局に搬送された宇宙イカは、まぁまぁ、リハビリの意味もあったのでしょう、
子どもたちのナンデナンデシャワー、終わらない問いを浴びながら、たっぷり遊んでやりました。

ところでその宇宙イカの近くで、もう1匹。
子どもたちからナンデナンデシャワーを食らっておったドラゴンが、昼寝をしたがっておりまして。

ドラゴンは子どもたちから「悪い竜神さま」、
わりゅーじんさまと、よばれておりました。

「わりゅーじんさま!わりゅーじんさま!」
「ねぇわりゅーじんさま、あのイカ、なぁに」
「あのイカ、わりゅーじんさまのお友達?」
「ねーねーわりゅーじんさま」

宇宙イカが怖かったり、宇宙イカよりドラゴンの方が好きだったり、ドラゴンの隣が落ち着いたり。
そんな子どもたちがドラゴンの、背中に登ったり尻尾に乗っかったりしています。
「わりゅーじんさま、ねぇわりゅーじんさま」
「わりゅーじんさまあのイカおいしい?」
「あのイカいつ食べるの?」
「わりゅーじんさまいつ遊ぶのー」

『しらん。分からん。寝かせてくれ』
「悪い竜神さま」と呼ばれているわりに、ドラゴンはちっとも怖くなくて、子どもたちにも大人気。
『そこのイカのことはイカに聞いてくれ』
おやおや、ドラゴンがあんまりおとなしいので、2人くらいの子供がドラゴンの尻尾を、枯れ葉を集めて埋めています。「だって寒そうだもん」

『何をしている』
「わりゅーじんさま、服着てないのに寒くない?」
『なんだって?』
「だって、わりゅーじんさま、すっぽんぽんだもん。葉っぱの布団をかぶせてあげるの」
『んん、……あのな??』

「わりゅーじんさまスッポンなの?!」
『スッポン??』
「わりゅーじんさまカメだったんだ……?」
『待て何がどうなって俺がカメだって?』

わいのわいの、やんややんや。
ドラゴンと子どもたちも、終わらない問いで賑やかに、数時間たっぷり遊びましたとさ。

10/27/2025, 9:53:22 AM