消えない焔のおはなしです。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこには、あらゆる知識と情報と、それから技術と法則とが収蔵された、大きな図書館があります。
その図書館の中央に、あらゆる記録と現在と可能性を映し出す、物語の焚き火があるのです。
それは、滅んだ世界の過去と、
生存している世界の現在、
やがて生まれる世界の可能性がすべて、
ごっちゃごちゃに混じり合って不思議な魔法の焔を燃やす、「どこかの事実」、物語の神様の焚き火。
名前は、タキビ・フシギ・ナンヤーカンヤー。
この焚き火こそ、「消えない焔」なのです。
で、そんな「消えない焔」が、図書室のド真ん中でパチパチぱきん、静かに燃えておりますと、
一部の世界線管理局員が考えるのは以下略。
そうです。レジャーです。
焼き魚はさすがに匂いがしますので、
焼きマシュマロに直火コーヒー、茶の焙煎です。
なんなら熱でドライフルーツの乾燥もできます。
消えない焔って便利ですね。
「ほーんと、便利、べんり〜ぃ」
んんー、おいしい!
魔法の焚き火でドライフルーツを熱風乾燥しておった管理局員が、
ひとつ、トパーズの乾燥リンゴをチョコのポットにくぐらせて、ふーふー、ぱくり!
味見をしてニッコリ、幸福に笑いました。
「魔法の焚き火のチカラかなぁ、この焚き火で乾かしたり、温めたりすると、他のより美味しいよぉ」
チチッ、ギーギー、ちゅーちゅー!
局員が「消えない焔」を使って、図書室でドライフルーツの乾燥などしておるので、
図書室で働く魔法のカピバラや機械仕掛けのハタネズミ、宝石でできた木ネズミ等々が、
羽ぼうきなり乾拭き雑巾なり、パタパタ振って局員に、猛抗議などしています。
ギャッギャ!ギーギー!
図書室は飲食禁止じゃい!出てけ出てけ!
魔法銀の針を広げているのはヤマアラシ。
ちゅーちゅー、ちゅーちゅー!
いい加減にしろ!これで何度目だと思ってる!
一生懸命鳴いているのは大理石のチンチラ。
ところで真面目な彼等に隠れて、魔法のリスがちゃっかりと、ワイロのキノコなど貰っています。
チチッ、チチチ、
へへっ、ありがてぇありがてぇ。
良さげに温かく、良さげに旨味と食感と【人間にはちょっとアブナイもの】が凝縮したキノコは、
数秒で、リスの頬袋の中に収納されました。
「あれぇ、ナッツ、いいの?ナッツあるよぉ?」
チチチ、チチチ。
「キノコで良いの?そーお?カナリアさんとか、ヒクイドリさんとかに、あげちゃうよ?」
チチチ、チチチ。
「チーチーされても分かんないよぉ。食べるー?」
ちゅー。
そんなこんなで今日も今日とて、消えない焔の魔法の焚き火の周囲はにぎやか。
完成したドライフルーツを焙煎したてのコーヒーと交換したり、ココアと交換したり。
そのたび、
真面目なげっ歯類に、ちゃっかりげっ歯類、それぞれがそれぞれチューチューぎーぎーして、
その近くで魔法のカピバラは、パチパチ暖をとって、局員渾身の干し芋を、もしゃもしゃ。
全部ぜんぶ、キレイに食べておったとさ。
10/28/2025, 9:57:22 AM