「『君と見た虹』『君と見た景色』『世界の終わりに君と』『君と出逢って』『君と一緒に』。
『君』『と』、だけでも5個以上は、過去のお題で書いてきたわな。今回は『君と』か」
君「に」とか君「へ」も含めれば、きっと10は超すだろう。某所在住物書きは過去のお題を検索しながら、スワイプ、スワイプ。
過去投稿分を懐かしんでいる。
最初の「君と」は一昨年の5月。「君と出会ってから、私は…」だったと記憶している。
「このアプリと出会ってから、っつったら、まぁまぁ、俺はだいぶストレスフリーにハナシを投稿できるようになったわな」
なんてったって、荒らしが起きづらいから。
物書きは大きな、長いため息を吐いた。
これで広告削除オプションさえあれば……
――――――
前回投稿分から続くおはなし。
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某アパートの一室の、部屋の主を藤森といいまして、久しぶりに会った「お隣さん」に、晩飯を有償提供している最中。
「同じ職場の仲間から、隠れている最中だ」
お隣さんは、「条志」と名乗りました。
「俺をしこたま追い回して、『ラクして痩せる秘密を教えろ』と。まったく酷い目に遭った」
はぁ、そうですか。 藤森は条志の背景を知らんので、ただ、あいづちだけ。
仲間から隠れて安心したので腹が減った、という条志に、彼が好きな柚子胡椒入りの、ちょっとピリ辛な海苔茶漬け(鶏軟骨入り)を、
コトコト、ことこと、小さなぼっち鍋からよそって、出してやりました。
え?「前回投稿分で痩せる秘密のために追っかけ回されてたのは人間じゃなくてドラゴン」?
そうです。この条志と名乗る男こそ、
世界線管理局法務部、特殊即応部門の部門長にしてドラゴン!ルリビタキなのです。
と、いうハナシはこの際置いといて。
「うまい」
「それは良かった」
「あいつもお前の、このメシだけ食っていれば、それほど太らないだろうに」
「ボディーラインを気にしてらっしゃる方なのか」
「単純に食うのが好きなヤツだ」
「あなたと同じくらい?」
「ん?」
「えっ?」
「んん、……うん? うん」
君と同じくらいの食いしん坊か
と聞いて、 まさか条志に自覚が無くて、はてなマークで返されるとは思っていなかった藤森。
条志を追い回した「仲間」について、納得します。
なるほど。無自覚な食いしん坊ならば、無自覚に食い過ぎてしまうかもしれない。
であれば、摂取する糖質の絶対量さえ減らせば、少しは体重も減るのではと。
「低塩分低糖質の料理を少し知っている」
お人好しの藤森、チカラになれるかもしれないと、条志に提案してみました。
「どうだろう、私がレシピを提供することで、」
レシピを提供することで、なにか役に立てないだろうか。そこまで言い終える前に、
「多分どうにもならん」
お茶漬けをキレイに食べ終えた条志、言いました。
「低塩分低糖質をどんぶり2杯も食えば一緒だ」
「その、えぇと、」
「俺の仲間?」
「そう、仲間さん、あなたより食うのか。それともあなたと、同じくらい食うのか」
「俺はそれほど食い物を必要としない」
「えっ?」
「ん?」
「え、……え?」
「うん」
食い物に関して君と話すと、なにやら色々、認識の行き違いというか何というか。
藤森は頭をこっくり、小さく傾けます。
藤森は条志を普通の食いしん坊と認識しています。
だけど条志は、「自分はそれほど食い物を必要としない」と主張します。
そして条志のハナシを聞く限りでは、「条志の仲間」は条志と同じか、それ以上の食いしん坊です。
しかも、条志以上に無自覚かもしれません。
「あの。 条志さん」
うーん、ううーん。藤森はよくよく考えて、スマホの電卓機能を呼び出して、
「……いや。すいません。なんでもない」
条志の仲間さんの、BMI値を算出して、場合によってはガチで減量を手伝おうと思いましたが、
それはきっと、仲間さん本人がイチバン理解していて、イチバン触れてほしくない話題なので、
「茶漬け、おかわりは」
条志にお茶漬けのおかわりを聞いて、おかわりをよそって、それで話題をごまかしましたとさ。
「空!エア!エ◯ライド!
3月30日のお題が『はるかぜとともに』!!
なんだよ先月のお題、タイミングがガチャの確定演出か何かも同然だろ!!ふぅぉおおおお」
空っつったらシティードライブだろ!昨日の今日で完全にお祭り状態の某所在住物書きである。
空の高度限界に向かって、飛行特化の機体で飛び続けていたあのゲーム。22年前とのこと。
完全に懐かしく、完全に青春。ワゴンをゆるすな。
「カネ貯めるぅ……」
節約。5万。プラスゲームソフト代。
物書きは今後の質素倹約を空に向かって誓った。
――――――
前回では「ここ」ではないどこかの世界、どこかの厨二ふぁんたじー組織の、当時の部門長さんが、
職場内にこっそり仕込んだ冷蔵庫とキッチンのおはなしをご紹介しました。
今回はお題が「空に向かって」ということで、こんなおはなしをご用意です。
最近最近のおはなしです。
「ここ」ではないどこかの世界に「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの難民シェルターは、滅んだ世界からこぼれ落ちて難民となった異世界人のための、終の住処。
拡張空間の技術でもって、どこまでも広く、どこまでも自然風。人工太陽が正確な運行スケジュールで難民たちを照らし、朝夕を感じさせてくれます。
特に最近は環境整備部空間管理課の電設担当さん、
通称「デンセツのカモシカさん」が、
異世界技術と電気設備を合体させて、5日限定、春夜の空間照明イベントを開催中。
難民シェルターの舗装された夜道を、薄桃色や薄黄色、淡い水色の花びらが、淡く光って空に向かって、ぽつぽつ、ゆらゆら。周囲を照らします。
「きれいだなぁ〜」
難民シェルターは「シェルター」といいながら、
拡張空間の技術でもって、広さは地球3個分。
雨雲から降った雨が山に流れて滝になり、川として流れて海に下り、空に向かって雨雲となります。
「照明イベント見ながらホットココア。
照明イベント見ながらジンジャークッキー。
う〜ん。最高だよぉ」
難民シェルターは管理局の局員にも開放されておりまして、デンセツのカモシカさんの空間照明イベントは、難民にも局員にも好評。
管理局の異世界アイテム収蔵部署、収蔵部収蔵課のビジネスネーム「ドワーフホト」も、難民シェルターに作られた公園で、光のダンスを鑑賞です。
ぽつぽつ、ゆらゆら。 ぽつぽつ、ゆらゆら。
目に痛くない、眩しくない光量の花びらが、ゆっくりゆっくり上がっていく光景は、管理局での仕事の疲れを溶かしてゆきます。
「毎日やってくれても良いのにぃ」
難民シェルター内のカカオ畑で収穫され、加工されたホットココアを飲みながら、
ドワーフホトは眠くなるまで、光の花びらを、
「あれ、」
見ていようと思ったのですが、
「特殊即応部門の部長さんだ」
ところで公園の花畑で、ぐーすぴ、かーすぴ、寝ているドラゴンが1匹おります。
法務部執行課、特殊即応部門の部門長を、先代から受け継いだドラゴンです。ビジネスネームを「ルリビタキ」といいます。
ドラゴンはドワーフホトから少し離れた花畑で、ぐーすぴ、かーすぴ。ぐーすぴ、かーすぴ。
ほのかな、とてもわずかな光を発して寝ています。
ドラゴンから光を受け取った花たちは、
弱った花も、病んだ花も、だんだん元気になってきて、葉っぱをピンと上に向けます。
「ふしぎー」
ドワーフホトがドラゴンの光を観察しておると、ドワーフホトの友人がやってきて言いました。
「アレのおかげであいつ、太らないんだぜ」
「え。どゆことぉ」
「あいつの生態っつーか、習性だよ。
日の光からエネルギーを作り出して、食い物からもエネルギーを作り出して。余剰分が出るだろ」
「ふーん」
「俺等なら余剰分は贅肉になるだろ」
「うん」
「ならねーの」
「んー。 うん?」
「ならねーの。
ああやって寝てる間に、余剰分を草だの花だの、土だの水だのに、分けてやってんの。
だからあいつは太らねぇし、あいつの周囲の土地は肥沃になるし、ゆたかになる」
「ふとらない」
「そ。太らない。ゼッタイ太らない」
「ふとらない……」
「絶対太らない」。ここで最後の「空に向かって」が始まります。だって、絶対太らないのです。
「部長さん!ぶちょーさぁん!
太らない秘密、あたしにも教えてぇ!!」
『うおっ?!なんだ!なんだ!?』
とてとてとて、ぱたぱたぱた!
お手軽ダイエットの究極を自分も手に入れたくて、
ドワーフホト、ドラゴンを起こして交渉です!
美味しいものが大好きなドワーフホトとして、「絶対太らない」は夢なのです!
「おねがい!カンタンに痩せたいぃ!おしえてッ」
『痩せたいなら食うな!動け!俺に頼るな!』
「ぶちょーさぁぁぁん!」
わーわー、ぎゃーぎゃー!
ドラゴンとドワーフホトの追いかけっこは続いて続いて、最終的にドラゴンが、空に向かって逃げまして、大きな大きな木の上に避難して終了。
それから約20時間、ドワーフホトのホットミルクに記憶消去の薬が仕込まれるまで、
ずっと、ずーっと、下に降りてこなかったとさ。
「2023年3月から投稿をはじめまして、このアカウントも2年1ヶ月。3周年突破です。
はじめましての方はこんにちは、前々から見てくれてる方はいつもお世話になってます。
……っていうハナシも書こうと思えば書けるわな」
諸事情から二次創作の故郷を捨てて、「書く習慣」での一次創作投稿に「はじめまして」。
以降だいたい750日程度、ずっと物語を投稿し続けてきた某所在住物書きである。
先月「終わり、また初まる、」なるお題は配信されたが、それとは少々違うだろう。
「はじめましてか」
かきり、カキリ。物書きは小首を鳴らす。
連載の執筆は、いくつのはじめましてを前回投稿分と繋げられるかの連続だ。 今回はどうだろう?
――――――
前回投稿分で、うやむやにしていたおはなし。
昔々、だいたい十数年前のおはなしです。
「ここ」ではないどこかの世界に「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの法務部執行課の、「特殊即応部門」という部署の部門長さんが、
それはそれは美味い料理を、どっさり、しこたま、作る部門長さんでありました。
当時付いていたあだ名が「カロリーボマー」、
亡くなってから付いたのが「おたべおたべオバケ」、または「おたべの方のルリビタキ」、
あるいは「オカン部長」。
要するに美味しい料理を、どっさり、しこたま、部下に食わせる部門長さんでありました。
で、実はその特殊即応部門の部門長、
法務部内にこっそり、即応部門長専用の隠しキッチンと隠し冷蔵庫を仕込んでおったのですが、
このたび、全■ヶ所仕込んである隠しキッチンの中の3個が、部門長の上司にガッツリとバレまして。
隠し冷蔵庫だけでなく……もとい、
『隠し冷蔵庫はじめ、ましてキッチンまで』!
はい。無理矢理お題回収です。
こっそり法務部内に隠しキッチンを仕込んでいた部門長、上司の法務部長に大目玉です。
「アンタねぇ!ホンットいい加減になさいよ!!」
うぞぞぞ、ぬぞぞぞぞ!
管理局の法務部長、宇宙タコのオネェが怒りで腕をクネクネさせながら、即応部門長に言いました。
「アンタが法務部内に隠し冷蔵庫を仕込んでたのは報告で知ってたわよ!!その隠し冷蔵庫はじめ、まして今度は隠しキッチンまで!!
法務部は法務部であって飲食店じゃないのよ!!」
「だってウチは、特応は、早朝だろうと深夜だろうと、必要であれば緊急出動していく部署だぞ」
オネェ宇宙タコな法務部長に、当時の特殊即応部門長、一生懸命反論します。
「場合によっては、朝飯も食わず緊急出動で出ていって、昼飯抜きで、夜に帰還してくる局員だっている。そういう部下にだな……」
そういう部下に、上司としてメシを作って、仕事をねぎらってやるのは、大事だと思うんだ。
即応部門長がそう続けようとすると、
「その疲れてヘトヘトなときに!
アンタが『お食べ お食べ』って出してくるカロリーボムな爆盛り料理なんか!
食べ切れるワケないでしょって言ってんのよ!!」
うぞぞ!ぬぞぞぞ!
オネェ宇宙タコ法務部長、とうとうガチギレ!
「ともかく!アンタが隠してるキッチン!
見つけ次第1個だけ残して撤去するから!」
勿論撤去費用はアンタの給料から天引きよ!
ぷんぷん、ぷんすか!
オネェ宇宙タコ法務部長はそう言い捨てると、法務部長の執務室に帰って行きます。
「待て!まってくれ!キッチンを撤去?!」
ぬずぬずプンプン!執務室に戻る宇宙タコの、プニプニな足の1本にしがみつき、
特殊即応部門長、必死に泣きつきます。
「やめてくれ!隠しキッチンの設置代と整備費、全部僕の自腹だったんだぞ!」
それを自腹で撤去させられるなんて、あんまりだ!
あんまりだよぉぉ!!
即応部門長はそのまま、オネェ宇宙タコ法務部長の腕にしがみついて、結果として引きずられてって、
それからだいたい数時間、具体的には2〜3時間、
特殊即応部門に帰ってきませんでした。
「くそぅッ!こうなったら、冷蔵庫の方だけでも、ぜったいバレないようにしてやるぅッ!!」
――これが十数年前のおはなしでした。
それが、前回投稿分に続くおはなしでした。
「みつけた……コレが、七不思議に伝わる『隠し冷蔵庫』に違いないよぉ……!」
当時の特殊即応部門長が亡くなった現在、
法務部のあっちこっちに仕込まれていた隠しキッチンは、現在の特殊即応部門長たちによって、
多分全部発見されて、多分全部撤去されて、
「昔こういうのがあったらしい」というウワサと跡地しか残っていません。
ただ「隠し冷蔵庫」の方だけは、冷蔵庫の主な亡くなった現在も、ひっそり残っておりまして。
「はじめまして、隠し冷蔵庫さぁん!」
この冷蔵庫を引き継いだのが、まさしく前回投稿分で登場した、例の収蔵部局員さんだったとさ。
「『砂の器』でカメダと間違われたのはカマタね!
犯人を捕まえるための道具はさすまたね!
『私というものがありながら』な昼ドラ展開は、そう、ふたまたね!
……っていう抜け道は、いくつか探したんだわ」
シャチの別名は「さかまた」らしい。某所在住物書きは「またで終わる言葉」を検索して、スワイプして、ぽつり、ぽつり。
他にも「猫又」、「あまた」、「オートマタ」。
探して結局、投稿は「またね」に落ち着いた。
ふたまたで物語を投稿など、泥々展開しか考えつかないが実際どうなるものか。
「過去のお題では『また明日』とか、『また会いましょう』とかなら、書いたけどな」
全選択、コピー、貼り付け。下書きを「書く習慣」に投稿して、広告は強制終了。
次のお題投稿まで、またね、またね。
――――――
最近最近のおはなしです。
「ここ」ではないどこか別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこではたとえば、滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムが別の世界で悪さをしないように、回収して適切に保管したり、
あるいは、光と自然のゆたかな世界から、悪しき異世界人が資源を根こそぎ奪ってしまわぬように、異世界間の密航を取り締まったり。
色々、あれこれ、「その世界の独立性・独自性」のために、仕事をしておったのでした。
あっちの世界に密航者です。
はい、確保しに行きましょう。
そっちの世界が異世界から侵略を受けています。
はい、ただちに急行しましょう。
こっちの世界から渡航申請、
向こうの世界から観光用渡航ゲートの設置報告。
はい、はい。こちらへどうぞ。
書類を書いて、説明受けて、はい以上。またね!
世界線管理局はその世界が、その世界として在り続けられるように、他の世界から不当な侵略・過開発・植民地化を受けないように。
「その世界の独立性・独自性」のために、仕事をしておったのでした。
そんな世界線管理局には、
あんな異世界アイテム、こんな異世界アイテム。
色々、どこそこ、活用されておりまして。
「わぁ、これは、良いよ、いいよぉ……!」
その日、管理局の異世界アイテム管理部門、「収蔵部」に収容されてきたのは、
あらゆる食べ残しを原子レベルまで分解して、そこから窒素と酸素、水素と炭素を取り出し、
それらによって食料の冷蔵も冷凍も加熱もできる、空間書き換え式のコンパクトキッチン。
これを開発したのは、デジタルとネットと科学に技術が全振り、一点突破された世界。
あらゆるものを電力に変換して、近隣の星々も電力に変換して、結果、大規模な真空崩壊を発生させて自滅した世界でした。
「収蔵庫に設置すれば、勤務中にアフタヌーンできるし、お夜食も作り置きできちゃうよぉ!
よぉーし、今こそ、あたしが復活させてみせる、
数年前に無くなっちゃった、『隠しキッチン』!
管理局の『欠けちゃった七不思議』を!あたしが!欠ける前の七不思議に!戻してみせるぅー!」
ふんふんふん、ふんふんふん!
管理局の収蔵部スタッフさん、なにやら嬉しそうな、食いしん坊そうな笑顔をして、
その日収容されてきたばっかりの、滅んでしまった異世界産コンパクトキッチンを、ポンポン。
収蔵庫の隠しストレージに収容して、ちゃんと鍵もかけまして、一時的にばいばい、バイバイ。
またね! 仕事が終わったあとで、ちゃんとしたスペースに設置してあげるね!
なんて心の内で言って、仕事に戻ります。
「欠けちゃった七不思議」とは、何でしょう?
管理局内で今も広まっている、噂話です。
「隠しキッチン」とは、何でしょう?
昔々、だいたい数年くらい前、それを管理局の法務部の、あっちこっちにこっそり隠して展開しておった、特殊即応部門長がおったのです。
彼が亡くなって数ヶ月で、隠しキッチンはすべて摘発されてしまい、
今となっては、隠し冷蔵庫だけが、特殊即応部門長の遺品というか、置き土産というか、
そういうものに、なってしまったのです。
「またね! 待っててねぇ!」
ふんふんふん、ふんふんふん!
管理局の収蔵部スタッフさん、その部門長と会ったこと、ありません。
だけどその部門長が、残していった隠し冷蔵庫を、こっそり受け継いで使っておるのです。
今こそ、隠し冷蔵庫だけでなく、隠しキッチンも復活させるとき!スタッフさんは決意したのです。
隠しキッチンと隠し冷蔵庫をこっそり局内に展開していた、「特殊即応部門長」のおはなし?
それをご紹介するかどうかは、今後、配信されるお題次第。またね、またね。
「最初にプレイしたのは実機のGB版で、1だったか2だったか。多分1だな」
3月7日頃に「風が運ぶもの」、1月に「風のいたずら」と「追い風」のお題が来たらしい。
某所在住物書きは過去のお題を確認しつつ、昔々のレトロゲームBGMをスマホから流している。
「はるかぜとともに」である。
実機の初プレイは19年前。来年で20周年。
「0% 0% 0%」はネタとして懐かしい。
まだ■■歳であった物書きは、ミニゲームで父に一度も勝てなかった。
あの頃の花粉症は今ほど凶悪ではなかったようなイメージだが気のせいであろうか。
「春風。……はるかぜなぁ」
物書きは外を見る。明日は明日の風が吹く。
その明日から、東京は3日、雨だという。
――――――
前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某杉林に隠された秘密の場所、マップアプリにも情報が無い秘境に、
通称「領事館」という、異世界組織による異世界人のための支援機関がありまして、
そこを管理しているのは、「世界多様性機構」という、違法なことをしてでも全部の世界を平等に救いたい系の厨二ふぁんたじー機関。
滅びそうな世界に取り残された異世界の難民を、
たとえば東京に「密航」の形で避難させたり。
そういう異世界から来た難民が、
たとえば言葉の壁、生活の不便、病気の相談なんかにぶつかったとき、こっそり支援したり。
そういうのを「管理局」に隠れてしておるのが、
某杉林に隠された、「領事館」なのでした。
ところでその領事館の館長、
ビジネスネームを「スギ」というのですが、
東京に赴任してきてから重度の杉花粉症持ちで。
「ぶぇっくし! ぐしゅぐしゅ、えぇッくし!!」
春風とともに大軍勢でやってくる「黄色い悪魔」、「疾患の粉霧」、「春の悪しきもの」のせいで、
1日2箱、たまに3箱、大容量ティッシュを使い倒してはお目々の洗浄液をじゃぶじゃぶじゃぶ、
鼻の洗浄液もじゃぶじゃぶじゃぶ!
用法・容量を正しく、厳密に守って、使いまくっておったのでした。
「くそぅッ、今年は特に酷い!!」
そんな領事館の花粉除去を、一手に引き受けておるのが、異世界の技術で魔改造された自動掃除機。
館長の泣けなしの◯◯万で自腹購入した空気清浄機を、自走式のロボット掃除機、ル▽△゛と合体。
館内の花粉やハウスダストを感知しては、
ぐぁーぐぁー、がーがー。
頑張って花粉がある部屋まで自走して、
頑張って空気清浄機のランプを赤くしながら、
春風とともに侵入してきた悪しき花粉どもを、ひとつ残らず捕縛して、ルン△゛のダストボックスにブチ込んでしまうのでした。
名付けて、頑張◯ンバ。
資金不足で領事館用の業務企画な高性能空気清浄機を導入できない「領事館」の花粉症状事情は、
すべて、この頑張ルン◯にかかっておるのでした。
「スギ館長。多様性機構の本部から、新しい避難民の受け入れ要請が来ています」
「待たせろ。明日なら雨で症状がマシになる」
ぐぁーぐぁー、がーがー。
異世界の技術で生み出された頑張ルン◯、館長の執務室を重点的に、頑張って清浄します。
「館長さん。現地住民の病院に潜入してるヒバさんから、緊急の伝言です。『漢方と舌下免疫療法を紹介された』とのことです」
「それで完治してりゃ苦労しねぇわい!」
ぐぁーぐぁー、がーがー。
自走できる空気清浄機の頑張ルン◯、ダストボックスがでパンパンになったので、
異世界の技術で魔改造されたホームポートに自分で戻って、ダストボックスの中身をカパン!
異世界の技術で圧縮して、固形化して、密閉された処分箱にブチ込みます。
「スギ館長」
「なんだ!」
「世界線管理局から『滅亡世界からの違法密航者を10人リークすれば空気清浄機の支援をする』と。
どうしますか。難民たちを、密告しますか」
「……」
ぐぁーぐぁーぐぁー。がーがーがー。
ただならぬ鋭利な空気も、空気清浄機設置の葛藤な雰囲気も、一切気にせず頑張ルン◯は、自分の仕事を黙々と、頑張って、為し続けます。
「密告はしない。ウチは難民支援の領事館だ」
「分かりました。そう伝えます」
春風とともに領事館に、勝手に入ってくる杉花粉。
春の悪しき粉霧どもを、異世界の技術で魔改造された自走式空気清浄機が、
今日も今日とて頑張って、ぐぁーぐぁー。
ダストボックスにブチ込んでおったとさ。