かたいなか

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「最初にプレイしたのは実機のGB版で、1だったか2だったか。多分1だな」
3月7日頃に「風が運ぶもの」、1月に「風のいたずら」と「追い風」のお題が来たらしい。
某所在住物書きは過去のお題を確認しつつ、昔々のレトロゲームBGMをスマホから流している。

「はるかぜとともに」である。
実機の初プレイは19年前。来年で20周年。
「0% 0% 0%」はネタとして懐かしい。
まだ■■歳であった物書きは、ミニゲームで父に一度も勝てなかった。

あの頃の花粉症は今ほど凶悪ではなかったようなイメージだが気のせいであろうか。
「春風。……はるかぜなぁ」
物書きは外を見る。明日は明日の風が吹く。
その明日から、東京は3日、雨だという。

――――――

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某杉林に隠された秘密の場所、マップアプリにも情報が無い秘境に、
通称「領事館」という、異世界組織による異世界人のための支援機関がありまして、
そこを管理しているのは、「世界多様性機構」という、違法なことをしてでも全部の世界を平等に救いたい系の厨二ふぁんたじー機関。

滅びそうな世界に取り残された異世界の難民を、
たとえば東京に「密航」の形で避難させたり。
そういう異世界から来た難民が、
たとえば言葉の壁、生活の不便、病気の相談なんかにぶつかったとき、こっそり支援したり。
そういうのを「管理局」に隠れてしておるのが、
某杉林に隠された、「領事館」なのでした。

ところでその領事館の館長、
ビジネスネームを「スギ」というのですが、
東京に赴任してきてから重度の杉花粉症持ちで。

「ぶぇっくし! ぐしゅぐしゅ、えぇッくし!!」
春風とともに大軍勢でやってくる「黄色い悪魔」、「疾患の粉霧」、「春の悪しきもの」のせいで、
1日2箱、たまに3箱、大容量ティッシュを使い倒してはお目々の洗浄液をじゃぶじゃぶじゃぶ、
鼻の洗浄液もじゃぶじゃぶじゃぶ!
用法・容量を正しく、厳密に守って、使いまくっておったのでした。

「くそぅッ、今年は特に酷い!!」

そんな領事館の花粉除去を、一手に引き受けておるのが、異世界の技術で魔改造された自動掃除機。
館長の泣けなしの◯◯万で自腹購入した空気清浄機を、自走式のロボット掃除機、ル▽△゛と合体。
館内の花粉やハウスダストを感知しては、
ぐぁーぐぁー、がーがー。
頑張って花粉がある部屋まで自走して、
頑張って空気清浄機のランプを赤くしながら、
春風とともに侵入してきた悪しき花粉どもを、ひとつ残らず捕縛して、ルン△゛のダストボックスにブチ込んでしまうのでした。

名付けて、頑張◯ンバ。
資金不足で領事館用の業務企画な高性能空気清浄機を導入できない「領事館」の花粉症状事情は、
すべて、この頑張ルン◯にかかっておるのでした。

「スギ館長。多様性機構の本部から、新しい避難民の受け入れ要請が来ています」
「待たせろ。明日なら雨で症状がマシになる」
ぐぁーぐぁー、がーがー。
異世界の技術で生み出された頑張ルン◯、館長の執務室を重点的に、頑張って清浄します。

「館長さん。現地住民の病院に潜入してるヒバさんから、緊急の伝言です。『漢方と舌下免疫療法を紹介された』とのことです」
「それで完治してりゃ苦労しねぇわい!」
ぐぁーぐぁー、がーがー。
自走できる空気清浄機の頑張ルン◯、ダストボックスがでパンパンになったので、
異世界の技術で魔改造されたホームポートに自分で戻って、ダストボックスの中身をカパン!
異世界の技術で圧縮して、固形化して、密閉された処分箱にブチ込みます。

「スギ館長」
「なんだ!」

「世界線管理局から『滅亡世界からの違法密航者を10人リークすれば空気清浄機の支援をする』と。
どうしますか。難民たちを、密告しますか」
「……」

ぐぁーぐぁーぐぁー。がーがーがー。
ただならぬ鋭利な空気も、空気清浄機設置の葛藤な雰囲気も、一切気にせず頑張ルン◯は、自分の仕事を黙々と、頑張って、為し続けます。

「密告はしない。ウチは難民支援の領事館だ」
「分かりました。そう伝えます」

春風とともに領事館に、勝手に入ってくる杉花粉。
春の悪しき粉霧どもを、異世界の技術で魔改造された自走式空気清浄機が、
今日も今日とて頑張って、ぐぁーぐぁー。
ダストボックスにブチ込んでおったとさ。

3/31/2025, 5:10:55 AM