かたいなか

Open App

「空!エア!エ◯ライド!
3月30日のお題が『はるかぜとともに』!!
なんだよ先月のお題、タイミングがガチャの確定演出か何かも同然だろ!!ふぅぉおおおお」
空っつったらシティードライブだろ!昨日の今日で完全にお祭り状態の某所在住物書きである。

空の高度限界に向かって、飛行特化の機体で飛び続けていたあのゲーム。22年前とのこと。
完全に懐かしく、完全に青春。ワゴンをゆるすな。
「カネ貯めるぅ……」
節約。5万。プラスゲームソフト代。
物書きは今後の質素倹約を空に向かって誓った。

――――――

前回では「ここ」ではないどこかの世界、どこかの厨二ふぁんたじー組織の、当時の部門長さんが、
職場内にこっそり仕込んだ冷蔵庫とキッチンのおはなしをご紹介しました。
今回はお題が「空に向かって」ということで、こんなおはなしをご用意です。

最近最近のおはなしです。
「ここ」ではないどこかの世界に「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの難民シェルターは、滅んだ世界からこぼれ落ちて難民となった異世界人のための、終の住処。
拡張空間の技術でもって、どこまでも広く、どこまでも自然風。人工太陽が正確な運行スケジュールで難民たちを照らし、朝夕を感じさせてくれます。

特に最近は環境整備部空間管理課の電設担当さん、
通称「デンセツのカモシカさん」が、
異世界技術と電気設備を合体させて、5日限定、春夜の空間照明イベントを開催中。
難民シェルターの舗装された夜道を、薄桃色や薄黄色、淡い水色の花びらが、淡く光って空に向かって、ぽつぽつ、ゆらゆら。周囲を照らします。

「きれいだなぁ〜」
難民シェルターは「シェルター」といいながら、
拡張空間の技術でもって、広さは地球3個分。
雨雲から降った雨が山に流れて滝になり、川として流れて海に下り、空に向かって雨雲となります。
「照明イベント見ながらホットココア。
照明イベント見ながらジンジャークッキー。
う〜ん。最高だよぉ」

難民シェルターは管理局の局員にも開放されておりまして、デンセツのカモシカさんの空間照明イベントは、難民にも局員にも好評。
管理局の異世界アイテム収蔵部署、収蔵部収蔵課のビジネスネーム「ドワーフホト」も、難民シェルターに作られた公園で、光のダンスを鑑賞です。

ぽつぽつ、ゆらゆら。 ぽつぽつ、ゆらゆら。
目に痛くない、眩しくない光量の花びらが、ゆっくりゆっくり上がっていく光景は、管理局での仕事の疲れを溶かしてゆきます。
「毎日やってくれても良いのにぃ」
難民シェルター内のカカオ畑で収穫され、加工されたホットココアを飲みながら、
ドワーフホトは眠くなるまで、光の花びらを、

「あれ、」
見ていようと思ったのですが、
「特殊即応部門の部長さんだ」
ところで公園の花畑で、ぐーすぴ、かーすぴ、寝ているドラゴンが1匹おります。
法務部執行課、特殊即応部門の部門長を、先代から受け継いだドラゴンです。ビジネスネームを「ルリビタキ」といいます。

ドラゴンはドワーフホトから少し離れた花畑で、ぐーすぴ、かーすぴ。ぐーすぴ、かーすぴ。
ほのかな、とてもわずかな光を発して寝ています。
ドラゴンから光を受け取った花たちは、
弱った花も、病んだ花も、だんだん元気になってきて、葉っぱをピンと上に向けます。
「ふしぎー」
ドワーフホトがドラゴンの光を観察しておると、ドワーフホトの友人がやってきて言いました。

「アレのおかげであいつ、太らないんだぜ」

「え。どゆことぉ」
「あいつの生態っつーか、習性だよ。
日の光からエネルギーを作り出して、食い物からもエネルギーを作り出して。余剰分が出るだろ」
「ふーん」
「俺等なら余剰分は贅肉になるだろ」
「うん」

「ならねーの」
「んー。 うん?」
「ならねーの。
ああやって寝てる間に、余剰分を草だの花だの、土だの水だのに、分けてやってんの。
だからあいつは太らねぇし、あいつの周囲の土地は肥沃になるし、ゆたかになる」

「ふとらない」
「そ。太らない。ゼッタイ太らない」
「ふとらない……」

「絶対太らない」。ここで最後の「空に向かって」が始まります。だって、絶対太らないのです。

「部長さん!ぶちょーさぁん!
太らない秘密、あたしにも教えてぇ!!」
『うおっ?!なんだ!なんだ!?』
とてとてとて、ぱたぱたぱた!
お手軽ダイエットの究極を自分も手に入れたくて、
ドワーフホト、ドラゴンを起こして交渉です!
美味しいものが大好きなドワーフホトとして、「絶対太らない」は夢なのです!

「おねがい!カンタンに痩せたいぃ!おしえてッ」
『痩せたいなら食うな!動け!俺に頼るな!』
「ぶちょーさぁぁぁん!」

わーわー、ぎゃーぎゃー!
ドラゴンとドワーフホトの追いかけっこは続いて続いて、最終的にドラゴンが、空に向かって逃げまして、大きな大きな木の上に避難して終了。
それから約20時間、ドワーフホトのホットミルクに記憶消去の薬が仕込まれるまで、
ずっと、ずーっと、下に降りてこなかったとさ。

4/3/2025, 3:59:08 AM