かたいなか

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2/16/2025, 6:01:37 AM

「『君の目を見つめると』、『君の奏でる音楽』、『突然の君の訪問』に『君の背中』。
……まだお題になってないのは、あと何だ?
君の仕草と君の書く文章と、君の……料理?」
去年の2月は「君は今」なんてお題を書いた。某所在住物書きは過去投稿分を振り返る。

「君」から始まるお題は、少々のアレンジが可能だ。文字を追加すれば「太郎君の声」にも「主君の声」にも、なんなら「太上老君の声」にもなる。
ところで日本には「君島」や「大君」、「下村君」といった地名も存在する模様。
「志君の声がする」。なんと地域ライクな物語だろう。朝ドラのタイトルにできるかもしれない。
「『君の声』ねぇ……」

――――――

だいたい食い物のハナシやら、厨二ふぁんたじーな物語やらを投稿しているこのアカウントです。
「書く習慣」は恋愛風のお題が多く登場するので(例:「Love you」「イブの夜」「愛言葉」)、
おノロケ執筆不得意な物書きが、ちょっとロマンスなおはなしをご用意しました。

前回投稿分に、繋がらないでもないおはなし。
都内某所のおはなしです。
十数年前の東京には、既に「こっち」の世界のものではない異世界由来の巨大組織が、
少なくとも2個は、確実に潜り込んでおりました。

ひとつは「こっち」の世界の独自性と独立性を保全保護したい「世界線管理局」、
もうひとつは、「こっち」の世界を滅亡世界の難民受け入れ先にしたい「世界多様性機構」といい、
双方が双方、相手の思想信条に対して、そっぽを向いた仕事をしておるので、
特に多様性機構は、管理局に対して、それはそれは敵意むき出しで、威嚇などするのでした。

さて。そろそろお題回収といきましょう。
お題回収役は、前回投稿分でも登場した、付烏月、ツウキという男。
実はこの男、「世界管理局」の局員でして、ビジネスネームを「カラス」といいました。

カラスは当時、管理局に就職してからまだまだ数年の、ひよっこカラス。
相手の表情と仕草を観察して、脳科学の知識でもって、敵から情報を手に入れるスキル1本で、
スゴ腕主任として、活躍しておったのでした。

ひよっこ主任のカラス、管理局に潜入してきたスパイに、目的と仲間の数を聞きます。
「へッ、誰が管理局なんかに情報を渡すかよ」
あぁ、あぁ。スパイさん。君の声がする。
君の左右非対称な平静と恐怖の表情から、「俺、実は新人なんです」と声がする。

ひよっこ主任のカラス、管理局で一緒に仕事をしている裏切り局員にも、計画と本心を聞きます。
「いやいやそんな、裏切りなんて。考えてないよ」
あぁ、あぁ。管理局員さん。君の声がする。
君の首筋をさすったり喉元を触ったりする指から、「僕、すごく不安なんです」と声がする。

表情と仕草の分析が得意なひよっこカラスは、
たちまちのうちに、敵対組織の「世界多様性機構」が、近いうちに「世界線管理局」へ、大規模襲撃を仕掛ける予定であると、情報を掴みました。

ところでそんな、ハイスペックひよっこカラス、
実は都内某所在住の現地住民な女性ひとりに、ポッと一目惚れしておりまして。
どうにもこうにも、無責任にも、恋い焦がれてしまっておったのです。

何故「無責任」って?そりゃもう、少し考えれば簡単なことです。
ひよっこカラスはじめ、世界線管理局の局員は、世界多様性機構から嫌われておるのです。
そんな男性局員が、暴力に対抗する手段も知らない女性に、無責任に恋焦がれてしまったら、
その女性は、かわいそうに、敵対組織から見れば格好の誘拐対象になってしまうのです。

なのに、ひよっこカラスときたら、そんなこと全然考えもせず、対策すらせず、
カァカァクァークァー、愛の歌を鳴くのです。

「今日はあのコに、何をプレゼントしよっかな」
あぁ、あぁ。愛しい人。君の声がする。
記憶の中のあの瞳から、あの唇から、「私、あなたの全部理詰めな行動が少し怖いけど、それを含めて一緒に居たいの」と声がする。
「それとも、どこかで一緒に、お食事がいいかな」
恋に盲目なひよっこカラスは、「この後」に何が待ち受けているかも予想せず、
ただ幸福に、一途に、「君の声」がする方へ、飛んでゆくのでした……

2/15/2025, 9:26:07 AM

「14日投稿分の段階で『よし、15日投稿分はこうしよう』って決めてたのに、
まさかよりによって、18時投稿になるとはな」
12月頃に「ありがとう、さようなら」ってお題を書いたわな。某所在住物書きは時計を見ながら、
次のお題が残り40分で配信される事実に、大きなため息を吐いた。

書いては消し、消しては書いて、メシを食ってアイデアが詰まって消す。
納得いくハナシを投稿したい欲求と、早めに物語を投稿したい堅実さの、折り合いがなかなかつかない。
面倒なことである。

「『ありがとう』ねぇ」
ぶっちゃけ、最近言っていない。
「ありがとうねぇ……」

――――――

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某稲荷神社近くのおでん屋台で、真夜中に野郎1人がちびちびお酒を飲みつつ餅巾着など食っておったところに、

「やっと高葉井を図書館に転職させた理由を吐く気になったか。『付烏月』」
そのお酒ちびちびさんに、「この日のこの時刻、この場所に来て」と呼ばれた別の野郎が、なにやら意味深なことを言いながら、
「店主。こいつと同じものを」
おでん屋の店主さんからお酒を受け取りつつ、隣に座ったのでした。

「自分で予想してみたら?ルリビタキ部長」
「お前の考えなど分からん」
「分からないってことは、まだ無責任ってことだ」

「なんだと」
「ホントだもん。ウソじゃないもーん」

お酒ちびちびさんは名前を付烏月、ツウキといい、
付烏月に呼ばれた方の野郎はビジネスネームをルリビタキといいました。
そうです。前回投稿分の「図書館に現れるというルリビタキ」、実は激似のコスプレイヤーさんではなく、本物の御本人だったのです。

「ゲームに登場する人気キャラ」とは仮の姿。
ルリビタキは「この世界」の影にひそみ、「他の世界」からの密航者に目を光らせて、
その世界の独自性、独立性を乱す者を取り締まる、
「世界線管理局」の職員だったのです。

さてそろそろ、お題回収といきましょう。
「お前に課金してくれる高葉井ちゃんから、愛しの愛しのルリビタキ部長に、お届け物だよん」
前回投稿分で飴を受け取っていた付烏月です。
渡せと言われた本人に、飴が入った袋を渡します。

「飴?」
「『是非実際に会いたいから』ってさ。辛いの好きでしょ?気に入ったら会ってやりなよ。『ルリビタキにすごくよく似たレイヤー』として」
「はぁ」

まぁ、ひとまず、ありがとう。礼は言う。
ルリビタキは付烏月から貰った飴を一粒取り出して、光に当ててみて、ぱくり。
「ふむ」
最初の甘味を通り越すと、徐々に「超鬼殺し」の名前通りの激辛が、ルリビタキの舌をビシビシ刺します。
「うん。良い」
表情には出さずとも、なかなか気に入った様子。
販売元の確認を始めます。

「美味いの?」
あんまりルリビタキが辛そうな顔をしないので、
「実はそんなに、激辛じゃないとか?」
高葉井からルリビタキに飴を渡すように言われた付烏月、興味本位で1個、飴を口に放り込みます。
「ふーん……」

数秒は、甘いのです。
だってそれは、「飴」なのです。
「あっ、ア、ほあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
普通に激辛じゃん!痛いじゃん!
高葉井から「渡せ」と言われた飴を食ってみた付烏月、数秒たって押し寄せてきた「興味本位で食べないでください」の激辛に、
絶叫して、悶絶して、店主から貰ったお水で逆に轟沈しましたとさ。

2/14/2025, 4:01:43 AM

「1月15日配信のお題が『そっと』だった」
まさか来月も13〜15日付近に、「そっと」シリーズが配信されるんじゃないだろうな。
某所在住物書きは過去配信分のお題を確認して、天井を見上げ、ため息を吐いた。
「そっと伝えたい」である。「こそっと伝えたい」だの、「そっと伝えた『いわかん』」だの、アレンジできないこともない。

そっと伝える「違和感」って、なんのこっちゃ。

「そっと。……そっとなぁ」
腕を組み、天井を見上げたままの物書きは、ネタにできそうな記憶を掘り返す。
出てきたのは電話対応中の同僚に対する「お先に」くらいであった。

――――――

来月から私が転職でお世話になる図書館は、
私の推しゲーの聖地で、推しゲー生誕の地で、
私が長年一緒に仕事をしてる先輩の、前々職。
なにより私の元同僚さん情報によれば、
推しゲーの推しカプ、その右側のひとにバチクソ似てるひとが、すごくレアな確率で、来るらしい。

推し生誕の聖図書館で、推しキャラ激似の人とエンカウントできるとか、最高ですか、至高ですか。

しかもその人、推しキャラにドチャクソよく似たスーツを着て御来館なさるそうなので、
きっと、私と同じ推しゲーが推しで、
私と同じ推しキャラが推しの、
日夜、体型維持とお肌の手入れを怠惰しない、神レイヤーさん、なんだと思う。

ぜひお近づきになりたい(機材準備)
ぜひ、私に御姿を見せてただきたい(土産用意)

ということで、藤森先輩の後輩こと、私高葉井は、藤森先輩の友人にして神レイヤーさんの情報元、
「付烏月と書いて『ツウキ』と読む」のひとに、
そっと、こっそり、コンタクトをとったのだ。

ところで私の推しカプの右側さん、ビジネスネームを「ルリビタキ」といいまして。

――「ルリビタキ部長に似てるっていう『その人』に、ぜひ、これを……」
藤森先輩のアパートの、近所の稲荷の茶っ葉屋さんに、お得意様専用の飲食用個室がある。
「新潟のアンテナショップで買ったの。『超鬼殺し』っていう飴ちゃん」
そこに付烏月さんを呼びつけて、長居&接待用のおいしい料理を注文して、
付烏月さんに、小さな紙袋を、そっと渡した。

中に入っているのは、新潟の激辛飴。
それはそれは激辛らしい。
神レイヤーさんが激辛好きかは知らないけど、
少なくとも、神レイヤーさんが似てるというルリビタキ部長には、「心が荒れてくると、激辛を食って気持ちを鎮めようとする」って設定が存在する。
撮影時の小物として、丁度良いと思った。

「『興味本位で食べないでください』だって」
わぁお。すごい。
紙袋の中を見た付烏月さんは、口をぱっくり。パッケージと原材料を、しげしげと見てる。
「あのね。図書館に来るっていう『ルリビタキ』、こういうの好きなんだわ」
ちゃんと渡しておくよ。ヒヒヒ。
付烏月さんは悪い笑顔で、紙袋をしまった。

「あの、そっとね、そぉーっと、伝えてね。
一応、趣味のハナシになるし、声を大にして言って大丈夫かどうか、ちょっとグレーだし」
「はいはい」
「ホンッットに、そっとね。そっと」
「はいはい。万事了解だよん」

付烏月さんに念を押して、「絶対大っぴらに言わないように」とクギをさして、
言いたいことが終わったから、あとはお食事。
神レイヤーさんと私を繋げてくれるであろう付烏月さんに、接待、せったい。
「ガチでよろしくね」
ダメ押しで付烏月さんに、そっとお願いすると、
「オッケー」
付烏月さんは話半分で、まずお肉に箸をつけた。

2/13/2025, 3:55:51 AM

「去年は『10年後からの手紙』とかいうお題とエンカウントした記憶があるわ……」
未来の記憶、きおく?記録じゃなくて?
某所在住物書きは何度もお題を見返して、まばたきして、そして首を傾けた。

ちょうど物書きは去年の暮れから、完全ファンタジーな異世界系の物語投稿を増やしていた。
アカシックレコードを内包した人間でも投下すれば、「未来の記録の記憶」を有するキャラクターのハナシでも書けるのだろう。
あるいは「全世界図書館」のような舞台は「すべての世界が記録されているから、未来の記憶も」のような展開を書けるかもしれない。

「なお実際に登場させて、その後の物語進行に支障が出るか出ないかよな」
物書きは少し考えた。 無難に「去年の記憶が未来の予測に繋がる」のパターンで攻めよう。

――――――

「前世」の記憶、あるいは未来の「記録」は、ネタとして聞いたことがある物書きです。
今回は「未来の記憶」だそうで。こんなおはなしをご用意しました。

最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。今回のお題回収役は、名前を藤森といいまして、雪降り花咲く田舎の出身。
在来種や非改良種を愛し、山野草や山菜も大好き。
自宅のアパート近くに稲荷神社がありまして、
そこがまさに、日本の花の宝庫となっておるので、
近頃はこの稲荷神社に入り浸り、顔を出し始めた「春の先触れ」をスマホで撮っておりました。

稲荷神社は森の中。
一部ぽっかり明るい日だまりの、キレイな庭がありまして、早春の花が顔を出しておるのでした。

「だいぶ、フクジュソウが増えてきた」
風そよぐ神社の庭に、ひざまずくような格好で、
花好きの藤森はスマホのシャッターを押します。
「こっちはセツブンソウか。美しい」
その日の強風は神社の森が抑えてくれるものの、
それでも白だの黄色だのの、キンポウゲ科の花びらはそよそよ、そよそよ。
風のイタズラが時折弱まる数秒一瞬を狙って、藤森はスマホを向け続けました。

ところで藤森が写真を撮っている花畑の向こうで、大人のオスのホンドギツネが、
酔っ払ったようにグデンと寝っ転がって、餅巾着などちゃむちゃむ食っておるようです。
そして藤森の頭の上では、その子供と思しき子狐が、藤森の髪をカジカジ噛んで遊んでおります。
なんでしょうね、「誰」でしょうね、
多分こちらは「前回投稿分の記憶」です。はい。

そろそろお題回収といきましょう。

「よし。今日は、こんなところか」
ひととおり花を撮り終えて、スマホの時間を確認して、藤森は自分がそろそろ帰らなければならないと気付きました。
リモートワークです。午後の部開始なのです。
「キクザキイチゲは、もう少し先かな」

去年の今頃の画像を辿って、藤森は「未来」の開花を予測します。
キクザキイチゲは東京の絶滅危惧種。
藤森の故郷に冬の終わりを知らせる花。
状況して十数年の藤森ですが、今でもそれの第一陣が顔を出すと、心が晴れ渡る心地になるのです。

「早起き組は来週か、再来週か……」
『去年は◯月◯日に咲いた』、『一昨年は◯月◯日だった』。それらの情報は今年にとって、
まさに、「未来の記憶」であったのでした。

2/12/2025, 3:38:35 AM

「『ココ、ロック解除しといたよ』、『ココ、ロースが安いよ』、『ココロングブーツじゃないと雪に足が埋まるよ』。カタカナだから色々できるわな」
そういや牛ロース、最近高くて食ってねぇな。
某所在住物書きは豚こま肉をコトコト、ことこと。茹でながらポツリ、呟いた。

似たお題では、かつて「ココロオドル」が合った。
何故「心」ではなく「ココロ」なのか、しかもそれが2回目なのか、少し首を傾けたが、
まぁ、まぁ。アレンジしやすいお題だから、気にしないし問題無い。要するにココロースなのだ。

「似た名前のグミがあった」
突然ふと思い出す。ココロではなくコ□□である。

――――――

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしております。
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益ゆたかなお餅を作って売って、世界と社会を学んでおったのです。

で、この子狐、前回投稿分で稲荷神社近くに出没するおでん屋台にお餅の営業をかけまして。
その翌日の夜から、おはなしが始まります。

「おっちゃん!おっちゃん!」
コンコン子狐、おでん屋台のスープに合う餅巾着をコンコン5個、作って屋台に持ってきました。
「キツネのおもち、ココロこめてつくったおもち、おっちゃんのやたいに、いれてください!」
おでん屋台のおっちゃん店主さん、さっそく子狐の餅巾着を、他のおでんと一緒に煮込んでみまして、
コンコン5個の餅巾着を、おっちゃんに2個、子狐に2個、皿にとりまして試食です。

「うん。良い味と食感だ」
おっちゃんは餅巾着を、1個は何もつけず、残りは辛子味噌をつけて、丁寧に味の確認をしますと、
ゆっくり、大きく、頷きました。

「ひとまず、1ヶ月に1〜2回、満月の朝に15個仕入れるくらいから始めよう」
自分のお餅が認められて、コンコン子狐、嬉しくて嬉しくてたまりません!
そんな、尻尾を高速回転させてるコンコン子狐に、店主のおっちゃん言いました。
「そこからお客さんの反応を見て、仕入れ頻度を増やすなり仕入れ個数を増やすなり、決めていこう」

明日、またここにおいで。
マージンとか仕入れ時間とか、ハナシを詰めよう。
おでん屋店主のおっちゃん、優しくにっこり笑って子狐に、今日の仕入れ分のお駄賃をチャリチャリ。
子狐の首に下がっているコインケースに、入れてやったのでした。

「やった、やった!」
コンコン子狐は大喜び!
何度かぺこり、お辞儀してお礼を言って、尻尾をぶんぶんビタンビタンして、
お母さん狐に餅売り営業の成果を伝えるべく、おうちの稲荷神社に帰ってゆきました。

ところで餅売り子狐が、お母さん狐に成果報告をしている頃、お父さん狐がおでん屋台に来まして。
「店主さん。今日もお酒、お願いします」

実はお父さん狐、某病院で、漢方医をしています。
稲荷の狐は狐なので、人間の病気にかかりません。
なので、まだまだインフルエンザ等々が暴れまわっている東京で、運悪く感染症を貰ってしまった人間の医療スタッフにかわって、
2徹なり、3徹なり、あるいは7連勤なり、
お父さん狐、頑張っておるのです。

で、その日も地獄の72時間耐久勤務から、ようやく開放されて、2連休を貰いまして。
お父さん狐、口からココロだかタマシイだか、何やら出ちゃいけないものをポワポワしながら、
今までの疲れを、おでん屋台のお酒とおでんで、癒やす魂胆であったのでした。

ここでコンコン子狐の、持ってきた餅巾着の5個のうち、まだ食われていない1個が登場です。

「店主さん、餅巾着なんて私、頼んでいないよ」
さっそくコップ1杯のお酒で胃袋を温めておったお父さん狐に、店主のおっちゃん、餅巾着の最後の1個、プレゼントです。
「おごりだよ。よく味わって食べな」
おでん屋の店主さん、言いました。
「あんたのとこの、末っ子が、ウチに『自分が作った餅を置いてくれ』って営業かけて、
それで、晴れて仕入れ決定になった餅巾着だよ」

それこそ、ココロだかタマシイだか、全部を込めて作った餅巾着だろうさ。美味いよ。
店主のおっちゃん、穏やかに笑って、目が点々状態のお父さん狐に言いました。

「おお、おおお、」
お父さん狐、貰った餅巾着の良い匂いを、よくよく、丹念に確認しました。
「そうか、あの子は、ここまで、」
そして、大事そうに餅巾着のはしっこをかじり、
もちゃもちゃ、もちゃもちゃ、噛みしめると、
「ここまで、成長したんだなぁ」
一気に色々、こみ上げてきてしまって、
こやぁん、こやぁん。うれし涙を流しましたとさ。

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