「『ココ、ロック解除しといたよ』、『ココ、ロースが安いよ』、『ココロングブーツじゃないと雪に足が埋まるよ』。カタカナだから色々できるわな」
そういや牛ロース、最近高くて食ってねぇな。
某所在住物書きは豚こま肉をコトコト、ことこと。茹でながらポツリ、呟いた。
似たお題では、かつて「ココロオドル」が合った。
何故「心」ではなく「ココロ」なのか、しかもそれが2回目なのか、少し首を傾けたが、
まぁ、まぁ。アレンジしやすいお題だから、気にしないし問題無い。要するにココロースなのだ。
「似た名前のグミがあった」
突然ふと思い出す。ココロではなくコ□□である。
――――――
前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしております。
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益ゆたかなお餅を作って売って、世界と社会を学んでおったのです。
で、この子狐、前回投稿分で稲荷神社近くに出没するおでん屋台にお餅の営業をかけまして。
その翌日の夜から、おはなしが始まります。
「おっちゃん!おっちゃん!」
コンコン子狐、おでん屋台のスープに合う餅巾着をコンコン5個、作って屋台に持ってきました。
「キツネのおもち、ココロこめてつくったおもち、おっちゃんのやたいに、いれてください!」
おでん屋台のおっちゃん店主さん、さっそく子狐の餅巾着を、他のおでんと一緒に煮込んでみまして、
コンコン5個の餅巾着を、おっちゃんに2個、子狐に2個、皿にとりまして試食です。
「うん。良い味と食感だ」
おっちゃんは餅巾着を、1個は何もつけず、残りは辛子味噌をつけて、丁寧に味の確認をしますと、
ゆっくり、大きく、頷きました。
「ひとまず、1ヶ月に1〜2回、満月の朝に15個仕入れるくらいから始めよう」
自分のお餅が認められて、コンコン子狐、嬉しくて嬉しくてたまりません!
そんな、尻尾を高速回転させてるコンコン子狐に、店主のおっちゃん言いました。
「そこからお客さんの反応を見て、仕入れ頻度を増やすなり仕入れ個数を増やすなり、決めていこう」
明日、またここにおいで。
マージンとか仕入れ時間とか、ハナシを詰めよう。
おでん屋店主のおっちゃん、優しくにっこり笑って子狐に、今日の仕入れ分のお駄賃をチャリチャリ。
子狐の首に下がっているコインケースに、入れてやったのでした。
「やった、やった!」
コンコン子狐は大喜び!
何度かぺこり、お辞儀してお礼を言って、尻尾をぶんぶんビタンビタンして、
お母さん狐に餅売り営業の成果を伝えるべく、おうちの稲荷神社に帰ってゆきました。
ところで餅売り子狐が、お母さん狐に成果報告をしている頃、お父さん狐がおでん屋台に来まして。
「店主さん。今日もお酒、お願いします」
実はお父さん狐、某病院で、漢方医をしています。
稲荷の狐は狐なので、人間の病気にかかりません。
なので、まだまだインフルエンザ等々が暴れまわっている東京で、運悪く感染症を貰ってしまった人間の医療スタッフにかわって、
2徹なり、3徹なり、あるいは7連勤なり、
お父さん狐、頑張っておるのです。
で、その日も地獄の72時間耐久勤務から、ようやく開放されて、2連休を貰いまして。
お父さん狐、口からココロだかタマシイだか、何やら出ちゃいけないものをポワポワしながら、
今までの疲れを、おでん屋台のお酒とおでんで、癒やす魂胆であったのでした。
ここでコンコン子狐の、持ってきた餅巾着の5個のうち、まだ食われていない1個が登場です。
「店主さん、餅巾着なんて私、頼んでいないよ」
さっそくコップ1杯のお酒で胃袋を温めておったお父さん狐に、店主のおっちゃん、餅巾着の最後の1個、プレゼントです。
「おごりだよ。よく味わって食べな」
おでん屋の店主さん、言いました。
「あんたのとこの、末っ子が、ウチに『自分が作った餅を置いてくれ』って営業かけて、
それで、晴れて仕入れ決定になった餅巾着だよ」
それこそ、ココロだかタマシイだか、全部を込めて作った餅巾着だろうさ。美味いよ。
店主のおっちゃん、穏やかに笑って、目が点々状態のお父さん狐に言いました。
「おお、おおお、」
お父さん狐、貰った餅巾着の良い匂いを、よくよく、丹念に確認しました。
「そうか、あの子は、ここまで、」
そして、大事そうに餅巾着のはしっこをかじり、
もちゃもちゃ、もちゃもちゃ、噛みしめると、
「ここまで、成長したんだなぁ」
一気に色々、こみ上げてきてしまって、
こやぁん、こやぁん。うれし涙を流しましたとさ。
2/12/2025, 3:38:35 AM