「1月15日配信のお題が『そっと』だった」
まさか来月も13〜15日付近に、「そっと」シリーズが配信されるんじゃないだろうな。
某所在住物書きは過去配信分のお題を確認して、天井を見上げ、ため息を吐いた。
「そっと伝えたい」である。「こそっと伝えたい」だの、「そっと伝えた『いわかん』」だの、アレンジできないこともない。
そっと伝える「違和感」って、なんのこっちゃ。
「そっと。……そっとなぁ」
腕を組み、天井を見上げたままの物書きは、ネタにできそうな記憶を掘り返す。
出てきたのは電話対応中の同僚に対する「お先に」くらいであった。
――――――
来月から私が転職でお世話になる図書館は、
私の推しゲーの聖地で、推しゲー生誕の地で、
私が長年一緒に仕事をしてる先輩の、前々職。
なにより私の元同僚さん情報によれば、
推しゲーの推しカプ、その右側のひとにバチクソ似てるひとが、すごくレアな確率で、来るらしい。
推し生誕の聖図書館で、推しキャラ激似の人とエンカウントできるとか、最高ですか、至高ですか。
しかもその人、推しキャラにドチャクソよく似たスーツを着て御来館なさるそうなので、
きっと、私と同じ推しゲーが推しで、
私と同じ推しキャラが推しの、
日夜、体型維持とお肌の手入れを怠惰しない、神レイヤーさん、なんだと思う。
ぜひお近づきになりたい(機材準備)
ぜひ、私に御姿を見せてただきたい(土産用意)
ということで、藤森先輩の後輩こと、私高葉井は、藤森先輩の友人にして神レイヤーさんの情報元、
「付烏月と書いて『ツウキ』と読む」のひとに、
そっと、こっそり、コンタクトをとったのだ。
ところで私の推しカプの右側さん、ビジネスネームを「ルリビタキ」といいまして。
――「ルリビタキ部長に似てるっていう『その人』に、ぜひ、これを……」
藤森先輩のアパートの、近所の稲荷の茶っ葉屋さんに、お得意様専用の飲食用個室がある。
「新潟のアンテナショップで買ったの。『超鬼殺し』っていう飴ちゃん」
そこに付烏月さんを呼びつけて、長居&接待用のおいしい料理を注文して、
付烏月さんに、小さな紙袋を、そっと渡した。
中に入っているのは、新潟の激辛飴。
それはそれは激辛らしい。
神レイヤーさんが激辛好きかは知らないけど、
少なくとも、神レイヤーさんが似てるというルリビタキ部長には、「心が荒れてくると、激辛を食って気持ちを鎮めようとする」って設定が存在する。
撮影時の小物として、丁度良いと思った。
「『興味本位で食べないでください』だって」
わぁお。すごい。
紙袋の中を見た付烏月さんは、口をぱっくり。パッケージと原材料を、しげしげと見てる。
「あのね。図書館に来るっていう『ルリビタキ』、こういうの好きなんだわ」
ちゃんと渡しておくよ。ヒヒヒ。
付烏月さんは悪い笑顔で、紙袋をしまった。
「あの、そっとね、そぉーっと、伝えてね。
一応、趣味のハナシになるし、声を大にして言って大丈夫かどうか、ちょっとグレーだし」
「はいはい」
「ホンッットに、そっとね。そっと」
「はいはい。万事了解だよん」
付烏月さんに念を押して、「絶対大っぴらに言わないように」とクギをさして、
言いたいことが終わったから、あとはお食事。
神レイヤーさんと私を繋げてくれるであろう付烏月さんに、接待、せったい。
「ガチでよろしくね」
ダメ押しで付烏月さんに、そっとお願いすると、
「オッケー」
付烏月さんは話半分で、まずお肉に箸をつけた。
2/14/2025, 4:01:43 AM