かたいなか

Open App
2/6/2025, 4:27:02 AM

「3月27日のお題が『My heart』だった」
ハート・トゥ・ハートは、英語の熟語で、ソリティアの遊び方のひとつ。
某所在住物書きはネット情報を辿って、今回のお題にエモエモネタ以外の活路を見出した。
熟語である。「We had a heart to heart.」で、「我々は腹を割って話をした」となるそうである。

これなら「心と心を通わせて」のようなネタを回避できる――物書きはエモ系、ロマンス系、恋愛系が不得意であった。

「ハートねぇ……」
そういえば、来週はバレンタインである。
今年もハートのチョコが飛び交うのだろうか。
「いや、ハートのチョコ、逆に最近少ない……?」

――――――

「have a heart to heart( talk)」で、「腹を割って話す」の意味になるらしい。
今回ご用意したのは、都内某所某アパートの一室で、部屋の主が、隣に引っ越してくる予定の男に「heart to heart」、腹を割って話すよう要請するはなし。
というのも、越してくる予定のその男、どうにも不思議な点が多いようで。

部屋の主は藤森といい、
3月に藤森の隣に越してくる男は条志と名乗った。

「――そろそろ、本当のことを話してほしい」
アパートの喫煙スペースでタバコをふかしている「お隣予定さん」、条志を、藤森が見つけてシェアディナーに誘った。
「本音で、腹を割って。 つまり、あなたは一体、何者なんだ。何故このアパートに?」
藤森は条志に質問をぶつけた。
条志はともかく謎が多いのだ。

「俺について、何か嗅ぎつけたのか」
うまい、うまい。
真剣に問う藤森と対象的に、豚肉のうまみと七味を効かせた煮込みそうめんをすする条志は平常運転。
条志は藤森の料理をそこそこ気に入っている。
特に海苔茶漬けに少しの柚子胡椒を添えたものや、
鍋の素キューブを流用した肉そば等々が。
「それとも、『お前に一目惚れしたから』とでも言ってほしいのか」

条志は藤森の隣に越してくるにあたって、藤森にひとつ、頼み事をしていた。
『条志についての一切は他言無用。
特に、藤森の後輩には絶対、何も話さないこと』。
何故後輩に条志の情報を流してはいけないのか。
藤森はさっぱり分からない。

「とぼけないでほしい」
条志のジョークに、藤森は顔をしかめた。
「条志さん。要するに私は、あなたが少し、ほんの少しだけ、信用できない。
勿論、あなたが悪い人ではないのは、感覚的に分かる。だが、あなたは分からないことが多過ぎる」

「だろうな」
「他言無用は、必ず守る。あなたが『後輩にはひとつも情報を漏らすな』というなら、そうする。
ただ、隣に越してくる以上、あなたのことを知る権利くらいは、私にもあると思う」

「今日も美味かった。礼はここに置いておく」
「条志さん!話はまだ終わっていない!」

今日という今日は、何事も隠さず、本当のことを。
飲食代を置いて出ていこうとする条志の手を、藤森がつかみ、引き止める。
「時が来れば話す」
それでも条志は、「heart to heart」、腹を割って話そうとせず、全部はぐらかすばかり。
「個人的には、時が『来ない』ことを望むがな」

「どういうことだ」
「黙秘」
「何を企んでいる、条志さん」
「ひとつだけ。『付烏月を信用するのは少し待て』。あいつが何を考えて、お前と後輩を、図書館転職に仕向けたか。真意をただす必要がある」

「ツウキさん……?」

じゃあな。次はワサビモドキ茶漬けを出してくれ。
条志は藤森の手を解き、ドアから出ていく。
「条志さん、」
何故、藤森でも後輩でも、条志でもない名前が出てくるのか。藤森は一切ヒントを得られないまま。
「だから、ワサビモドキじゃなくて、柚子胡椒、」
ただ条志が、練りワサビによく似た色と形の柚子胡椒を、ワサビモドキと勘違いし続けていることだけは、事実であるらしい。

2/5/2025, 4:43:54 AM

「11月1日のお題が『永遠に』だったわ」
花束といえばどうしても、「ミーに感謝するでしゅ」を思い出してしまう某所在住物書きである。
別にその映画を観たワケではないが、情報ならネットでいくらでも拾える。
あのゲームには丁度、「永遠」にまつわるバグがあった。「花束」を得るために暗闇の中を、座標を合わせて上下左右、特定の道具を使って、
一歩間違えば永遠に、謎の場所に縛られるのだ。

「懐かしいなぁ」
ゲームに関しては、プレイ済みの物書きである。
「たしか『あなぬけのヒモ』でセーフだった」
花束バグの永遠も経験済みであった。

――――――

枯れない花束なら知っている物書きです。
それはたとえばドライフラワー、あるいはガラス工芸品、アメ細工もきっと該当するでしょう。
ただ「永遠」かと言われると、少々言葉に詰まる。
仕方がないので無理矢理に、永遠っぽい花束を登場させるおはなしをご用意しました。

最近最近のおはなしです。
「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこは、異世界渡航の申請を受理したり、滅びそうな世界のチートアイテムが他の世界に流れ着かないように回収したり、
あるいは、その世界が「その世界」で在り続けられるよう、別世界からの過剰干渉を取り締まったり。
厨二っぽい仕事を真面目に、世界運行の重要な歯車のように、続けておったのでした。

そんな世界線管理局は、勿論危険で物騒な世界間の紛争調停にも向かいますし、
「世界に必要なのは多彩な交流と多様性だ!」とアンチ管理局を掲げる団体との衝突もあります。
結果として、実働班や戦闘員が命を落としてしまうことも、まぁまぁ複数回。

殉職した局員には、管理局内の「慰霊棟」と呼ばれる建物の中に、ひとつの墓碑が授与されます。
各部署ごとに、この部署は何階、その部署は何階。
そのひとをあらわす言葉や宝物とともに、
静かで、常時一定の暖かさの中で、
「帰還」できた者も、それが叶わなかった者も、それぞれ平等に、偲ぶ場所を与えられるのです。

さて、そろそろお題回収。
新しくみずみずしい、整えてきたばかりの小さな小さな花束を、小さな小さな身体にくくり付けて、
1匹の言葉話すハムスターな管理局員が、ひとつの墓碑の前に来ました。
「はぁ、小さいって、本当に苦労が絶えないなぁ」
ハムスターはビジネスネームを「カナリア」といいました。ハムなのに鳥って、妙なハナシですね。
まぁまぁ、細かいことは気にしてはいけません。

「先代部長。先代ルリビタキ部長。
今週も、花束を取り替えに来たよ」
ハムスターのカナリア、くくり付けていた紐を切って、新しい小さな花束を墓前にそなえて、
古い小さな花束を、むしゃむしゃ、食べました。
墓碑には、それが誰のものかを示す名前と、
生前使っていたビジネスネームと、
それから、このように書かれていました。

『彼を起こさないでください。
この墓碑の前で、空腹を申告しないでください。
我々は彼の、あたたかく優しく仲間思いに溢れたカロリーボムで、これ以上太りたくないのです。
――法務部執行課 実働班特殊即応部門 一同』

その墓碑は、カナリアと同じ課、同じ班、別部門の部長さん、先代の「ルリビタキ」のものでした。
先代のルリビタキに、カナリアは恩がありました。
危機を感じたときに大量の花粉をボフンするカナリアが「世界を崩壊させるリスクを持つ侵略生物」の亜種として駆除されなかったのも、
こうして管理局に仕事を得ることができたのも、
全部ぜんぶ、この墓碑の主のおかげでした。

「また来るよ先代部長。来週は、もっとキレイな花束を持ってくるよ」
そうです。これこそ、「永遠の花束」です。
この花束が枯れる前に、弱る前に、新しい花束を持ってきて、取り替えて、それが枯れ弱る前に更に新しい花束を持ってきて……
そうしてハムスターのカナリアは、自分の恩人の墓前に永遠の花束を、作り出しているのでした。

「じゃあね。先代ルリビタキ部長」
古い花束をむしゃむしゃ、むしゃむしゃ、食べて処理して、仕事に戻るためにカナリアが振り返ると、
「なんだ。お前も来ていたのか」
丁度、先代から「ルリビタキ」のビジネスネームと部長の役職を継いだ今の代のルリビタキ部長が、
こちらも新しい花束を持って、立っておりました。

「小さな体でここまで来るのも苦労だろう。
こいつの墓参りなら、前日でも朝にでも、俺に連絡を入れれば良いだろうに」
「じゃあ、帰りは僕を連れてってよ。その胸ポケットの中で昼寝するから」
ほらほら、僕をのせて。ポケットに入れて。
ハムスターのカナリア、今代部長を、ジェスチャーでちょいちょい急かします。

「ポケットの中で花粉ばらまくなよ」
「それはポケットの寝心地次第かな」
先代部長を偲ぶハムスターと今代部長は、1人と1匹して墓前に「永遠の花束」を作って、それぞれの職場に帰りましたとさ。

2/4/2025, 4:01:56 AM

「5月2日のお題が『優しくしないで』だった」
今回はひらがなだから、「易しくしないで」も「優しく竹刀で」も、「市内で」ともできるな。
某所在住物書きは「優しく」と「易しく」と、それから「矢指区」の可能性をそれぞれ考えて、
結果、ネットで矢指町を見つけた。
神奈川県の地名だという。 物書きが投稿している連載風の部隊は東京だ。ザンネン。

「天候と花粉に関しては、優しく、してほしい」
今日は日本海側が大荒れとのこと。
大積雪の報道もある。 やさしくしてほしい。

――――――

最近最近の都内某所、某アパートの一室、夜。
部屋の主を藤森といい、馴染みの茶葉屋から仕入れてきた冬摘みの台湾烏龍茶を淹れながら、
チラリ、来客者が座っているテーブル式コタツを見遣って、ゆえに客と目が合う。

長いこと一緒に仕事をしてきた後輩の高葉井と、
近所の稲荷神社に住まう子狐である。
「わぁん、コンちゃん、優しくしないで。ヘコんじゃうから優しくしないでぇ……」
子狐は高葉井に遊んでほしいらしく、コタツのテーブルによじ登り、彼女の頬だのアゴだのをベロンベロン、べろんべろん。
「コンちゃん。ああ、モフモフ。エキノと狂犬病の危険性ナシなコンコン、ばんざい……」

なに、エノキ?エノキキノコ?
コンコン子狐、言葉が分かるのか、明確に高葉井の言葉3文字に反応して、尻尾をビタンビタン。
どうやら食いしん坊らしい。
遊び気より食い気とは、よく言ったものである。

「で?何があった」
小さなティーポットとティーカップとをコタツに運んで、まず1杯、高葉井に差し出す藤森。
台湾茶特有の甘香を鼻いっぱいに吸い込んだ高葉井は、大きなため息ひとつ吐いて、ぽつり。
「ガチャ爆死したぁ……」

あー、なるほど、いつもの高葉井だ。
藤森は秒ですべてを理解し、心配することと注意を払うことをやめた。
仕事からの帰宅途中、冬の山野草を撮りたくて寄った稲荷神社で、子狐抱えてヘコんでいる高葉井を見つけたのだ。
あんまりヘコんでいたから、ひとまず暖かい自分のアパートに入れて、心の傷を診てやろうと思った。
結果がコレである。

高葉井には推しのゲームがあった。
「世界線管理局」なる架空の組織が、世界間で発生するトラブル等々に対処し、敵対組織と戦う様子を描く、いわゆる「組織もの」。
最近「過去編」なるキャラの実装が増えてきた。
藤森としてはよく分からない。

「お茶あったかい。あまい」
「台湾茶だ。コレの冷たいタイプが、ペットボトルでコンビニに並んでる」
「何回か、飲ませてもらった記憶ある」

「以前出より、少し高めのものを出した」
「いくら?」
「50で以下略」
「いかりゃく……???」

おかね!しょーばい!
高葉井をベロンベロン舐め倒していた稲荷の子狐、
稲荷の狐らしく、今度は商売繁盛の言葉を感知したようで、藤森の方に尻尾をぶんぶんぶん。
「こら。お前には熱過ぎる」
ポットやカップの匂いを確認しようとしたので、子狐をテーブルから持ち上げ、膝の上に拘束した。

子狐がジタバタ暴れる様子は、完全に食いしん坊だの暴れん坊だの、遊び好きだのの子供のそれ。
腹と頭を撫でてやると、一気に静かになった。

「ガチャは運なんだろう」
途端にヘソ天をキメ込む子狐。小さなモフモフを膝に抱いて、藤森が言った。
「ガチャで悪かった分、私の部屋で少し良い茶が飲めたと思って。機嫌をなおせ」

「うぅぅ。だから、優しくしないでってぇ」
ひーん。腕で目を覆って泣き真似をする高葉井は、それでも少し元気が戻ってきた模様。
藤森の厚意をじっくり堪能して、心と体を温めた。
藤森が淹れた台湾茶の価格が結局いくらだったのかは、最後まで分からないままだったとさ。

2/3/2025, 3:55:31 AM

「『閉ざされた教会』、『閉ざされた日記』、『繋がらないLINE』。なんか分断系お題はこれまで複数回あったみたいだな」
まぁ俺がこのアプリを入れた頃には、「閉ざされた教会」はもう別のお題に差し替えられてたけど。
某所在住物書きは過去を確認しながら、ぽつり。

隠された手紙、だそうである。
「◯◯が隠された!手紙にヒントが書かれてる」とかにすれば、隠す対象を手紙ではなく、別のものにできるかもしれない。
なおそっちのネタを考えた物書きは最終的に諦めた。手紙ではなく、じゃあ、何を隠せというのだ。

「投稿作の誤字は隠したことがある」
白状する物書きは、時折過去投稿分を読み返して、誤字脱字をサイレント修正している。

――――――

隠された、学校からのお知らせのハナシなら、実体験としてネタがある物書きです。
隠された、ゲキムズ実績解除のハナシも、よくよく思い出のある物書きです。
隠された「手紙」のお題ということで、こんなおはなしをご用意しました。

最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家で、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち父狐は都内の病院で、漢方医として勤務して、働いて納税しております。

稲荷の狐は人間の風邪などほぼ引きませんので、
インフルエンザが流行しても、マイコプラズマ肺炎が流行しても、へっちゃら。
感染症で倒れていく他の医療従事者さんの代わりに、診察したり書類書いたり、処方箋を出したり、
朝から晩まで、人間の感染症が流行する時期は特に頑張って、ときには2徹3徹して……

と、いうハナシはまた別の機会。
今回は手紙のおはなしなのです。
というのも最近、魂のニオイがすごく妙な、独特な、不審な患者が、父狐の漢方外来に来るのです。

まるで「こっち」の世界の住人ではないような。
日本人のコスプレをした、異世界人のような。

「異世界」の相談といえば、過去作前々回投稿分に登場した「世界線管理局」の出番。
別の世界から違法に密航してきている人が増えてるんじゃないかと、
管理局の法務部の、特別に他部署の許可も決裁も後回しで即応が許される、特殊即応部門に相談。
調査の結果はお手紙で、こっそり秘密裏に、貰うことになりました。

そうです。
この秘密の手紙が、隠されてしまうのです。
犯人は父狐の子供。愛しい愛しい末っ子でして。

「久しいな。子狐」
世界線管理局の局員さん、調査結果を届けるために、父狐のおうちへ来ましたが、
お仕事中だったらしく、末っ子子狐が対応します。
「この手紙を、お前の父親に渡してくれ」

「おてがみ、おてがみ!」
コンコン子狐、お手紙を持ってきてくれた局員さんが大好き!だって遊んでくれるのです。
「おてがみ、ととさんに、わたす!」
お耳ペタン、尻尾ぶんぶん!
局員さんから受け取った、大事な大事なお手紙の、
香りをかいで、ゴシゴシ体をすりつけて、
お手紙の上に、横っ腹をぺたり!
完全に寝そべって、隠してしまって、その上でお昼寝など始めてしまったのでした。

「頼んだぞ。無くさず、盗られないように」
とられるもんか!コンコン子狐、自信満々。
だって大事な手紙は、子狐のおなかの下。
モフモフ毛皮で見えません。

で、お題回収。
コンコン子狐の下に隠された手紙を、72時間耐久勤務してきた父狐が見つけられないという。

「管理局のひとが、調査結果を持ってきてくれたらしいけど、どこだろう」
人手不足を狐のチカラでサポートしてきた父狐。
緊張の糸がプッツン切れて、頭が全然働きません。
「おかしいな、おかしいな……」
まさか、誰かに調査を気付かれて、盗られてしまったんじゃないか。
まさか、違法渡航を支援してる組織が、神社に来たんじゃないか。
徹夜で考えがまとまらない父狐、それでも不安で不安で、ともかく不安で仕方ありません。

「いちおう、かんりきょくのひとに、れんらく、」
もしもし管理局さん、法務部執行課実動班の、特殊即応部門をお願いします。
そこまで連絡したものの、眠くて、眠くて、かっくりこっくり、ぐぅすぴぃ。
『はい。執行課実動班、特応部門』
連絡したい相手に繋がった頃には、完全に寝落ちてしまっておりました。
『おい、どうした、おい?』

子狐が手紙を隠して昼寝してしまったために、
管理局の局員さん、せっかく局に帰還したのに、また稲荷神社まで来るハメになりまして。
そこから先は、文字数、文字数。
まぁまぁ、色々あったとさ。 おしまい。

2/2/2025, 5:40:54 AM

「最近、13時台更新の目標から、ずぅーっとバイバイし続けてる気はする」
さよならバイバイ、売買バイバイ、倍々バイバイ。
「バイ」といっても色々あるわな。
某所在住物書きが配信されたお題を見ながら呟く。
「昼休憩中に読めるようにって、秋頃までは正午だの13時だのを目がけてたんだけどなぁ」

バイ貝という生物も居た。予測変換では「苺苺」も出てきた。イチゴをバイと読むのならスイーツ系も書けるだろうか。

「まぁ、寒いせいだよ。ぶっちゃけると」
寒さと拝拝、もといバイバイするまで、もう少し。
春には14時以降投稿とも、バイバイしたいところである。

――――――

東京23区含めた関東甲信の平地から、積雪の可能性がさよならバイバイしたとのこと。
ぬっくぬくの室内から出たくない物書きが、こんなおはなしをご用意しました。

最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。
某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く住んでおり、
そのうち末っ子の子狐は、近所の和菓子屋さんの化け子狸と、大の仲良し。
一緒にじゃれて子狐・子狸相撲をしたり、
その結果として土だらけ、砂だらけになったり、
稲荷神社の敷地内にある「たたり白百合の祠」に鎮まっている亡霊に、絵本を読んでもらったり、
元気に、幸せに、遊んでおりました。

今日の子狐と子狸は、雨のせいで外で遊べません。
お母さん狐が作ってくれた美味しいおやつを食べながら、おばあちゃん狐に順番に、
くしくし、クシクシ。
やわらかいグルーミングブラシで、毛づくろいをしてもらいます。

最初は、おとなしい子狸から。
人間に化けたおばあちゃん狐の膝に乗せられて、
ゆったりヘソ天の姿勢でもって、
くしくし、クシクシ。
汚れた毛玉や抜け毛と、ばいばい、バイバイ。
おなかも背中もマッサージしてもらって、ポンポコ子狸、至福のときです。

「待ってるあいだ、僕が、やってあげる」
丁度子狸の近くで子狐が、稲荷寿司をちゃむちゃむちゃむ、食べながら順番を待っていたので、
子狸、首をうーんと伸ばして、
くしくし、クシクシ。
子狐に毛づくろいごっこをしてやります。

「キモチイ、きもちい」
コンコン子狐、おくちの中は稲荷寿司で至福だし、
ほっぺたのあたりは子狸の毛づくろいごっこのマッサージで幸福だし、
もう、言うことナシの極楽状態。
「キツネも、おかえしするぅ」
稲荷寿司を食べたおくちで毛づくろいはアレなので、かわりに子狸のおくちに、美味しい美味しい柿をひときれ、入れてやりました。

おやおや。
子狸のおくちに柿をシュートしてしまうと、
柿の甘味でべっとりなので、コンコン子狐、子狸から毛づくろいしてもらえませんよ。

「おいしいけど、どうするのさ」
「そーだった。やっちゃった」
まぁいいや。美味しいものは、美味しいもん。
コンコン子狐は別に反省も後悔もしないで、
子狸と一緒に柿だの稲荷寿司だのを、ちゃむちゃむ、ちゃむちゃむ。食べました。

毛づくろい&稲荷寿司のダブル天国待遇は、ばいばい、バイバイ。
かわりにおばあちゃん狐の毛づくろいを、それが終わった子狸と代わってもらって、
今度はコンコン子狐が、おばあちゃん狐に毛づくろいをしてもらう番です。

「『バイバイ』?ちがうよ」
ポンポコ子狸、おばあちゃん狐にブラッシングしてもらっている子狐に言いました。
「毛づくろいしてもらいながら、お稲荷さん、食べれば良いんだよ」
子狸は、子狐が自分にそうしてやったように、子狐のおくちに柿を入れてやりました。

「おいしい。おいしい」
ちゃむちゃむちゃむ、ちゃむちゃむちゃむ。
子狐はそれから至福に、幸福に、10分くらいおばあちゃん狐から、グルーミングブラシで毛づくろいしてもらったとさ。

Next