かたいなか

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11/25/2023, 2:24:06 PM

「『太陽の下』って言葉の第一印象が夏なのは、だいたい理由分かるけどさ。
『月の下』って言われても、そういえばいまいち、特定の季節と結びつきづらいよなって」
なんでだろうな。不思議だけど、俺だけかな。某所在住物書きはポツリ呟き、太陽と夏の妙な結びつきを引き剥がそうと、懸命な努力を続けていた。

今は冬である。一部地域は平地で雪が積もった。
東京の3日後が20℃超え予想だろうと、どこかで寝ぼけた桜が狂い咲こうと、今は冬である。
寒空の太陽の下はさぞ、さぞ……どうであろう。
「放射冷却?寒い?それか道路の雪が溶ける?」
ヤバい。分からん。物書きは首を大きく傾けた。

――――――

最近最近のおはなしです。雪国に雪が降った頃、紅葉や銀杏に雪がちょこん、積もる頃のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
その内末っ子の子狐は、東京から一歩も出たことがなくて、「一面真っ白の雪景色」なんて、テレビか絵本でしか、見たことがありません。

今晩は雪国の平地で積雪。夜のニュースの、画面いっぱいに、白をかぶった車やら木やら、いろんなものが、映ります。
「なんだかんだで、冬が来たなぁ」
あんなに暑かったのに。
ねぇ、かかさん。そうですね、ととさん。
一家団らん、美味しい美味しい鶏なんこつと鶏ヤゲンの野菜出汁スープを飲みながら、某病院で漢方医をしている父狐が言いました。
「ほら、見てごらん」
ニュースは雪積もる町の映像から、北海道の美しい雪原に切り替わりました。
「キタキツネだよ。遠い遠い北の国の、私達と少し違って少し同じ狐だよ」

テレビ画面には、黒い靴下模様を足につけた、おしゃれでモフモフな狐が1匹映っておりました。
晴れた雪原をじっと見下ろし、首を傾けて聞き耳をたて、ピョンと飛び跳ね鼻からズボリ!
ランチの哀れな野ネズミくわえて、遠く遠くへ走って消えてしまいました。

「ゆき!キタキツネ!」
おめめをキラキラ輝かせ、コンコン子狐叫びます。
「楽しそう!気持ちよさそう!」
テレビの真似して真っ白な、お茶碗の中のつやつやごはんをじっと見つめ、首を傾けて聞き耳をたて、
鼻先からズボリすると確実に母狐からピシャリ叱られるので、そこは、我慢しておきました。

子狐は思い浮かべます。
東京にも、美しい自然の残る場所があるそうです。
神社の森より深い森。神社の花畑より大きい花畑。
神社の庭より広い、どこまでも続く広い草原。
そこならきっと、このニュースの映像のように、雪が白く白く積もるに違いないのです。
青空と飛行機雲と太陽の下で、モフモフ冬毛をたなびかせ、モフモフ尻尾を振り回し、
光反射する真っ白の中を、どこまでも、どこまでも走り回るのです。
なんと美しく、楽しく、幸福なことでしょう!

でもまずは目の前の、美味しい美味しい晩ごはんを、お肉と軟骨と野菜とお米を胃袋の中へ収めましょう。

ちゃむちゃむちゃむ、ちゃむちゃむちゃむ。
お肉をかじって白米、スープを飲んで白米、母狐と父狐のコンコンおしゃべりを聞きながら白米。
子狐は狐の子供らしく、たっぷりのごはんをペロリたいらげると、なんだか眠くなってしまって、コロン。
幸せにスピスピ、すぐ寝息をたてました。
その夜コンコン子狐は、北海道か別の地域かサッパリ分かりませんが、
ともかくどこかの雪国の、雪原の夢を見ましたとさ。

もの言う子狐が、太陽の下で雪原を駆け回る想像をする、ちょっと苦し紛れなおはなしでした。
おしまい、おしまい。

11/25/2023, 3:49:47 AM

「セーターは、うん、ぶっちゃけ静電気が恐ろしくてここ数十年着てねぇのよ……」
ところでその、セーターを脱ぐ際の静電気、ネット情報によると数千から数万ボルトらしいな。
そもそもクローゼットに今回の題目に合致する衣類を入れていない某所在住物書きである。
仕方がないので、ネット検索から、物語のネタを引っ張ってこようと画策したは良いものの、そもそも何の検索語句と合わせようか想像ができぬ。

「サジェスト検索も、おしゃれとか干し方とか、洗濯とかくらいしか出てこねぇ。……クソダサセーターの物語でも書きゃ良いのか?」
多分俺には少々難しいが?己の提案に己自身でツッコミを入れて、ため息。
今日も相変わらず物書きは途方に暮れる。

――――――

昨日、最高24℃で微妙に溶けてた職場の先輩が、今日はケロッと復活して、
だけどなんだか、夢見が悪かったらしくて、朝からすごく不思議そうな、寂しそうな、なんかエモそうな顔をしてた。

「どしたの?」
本日、先輩の部屋でいただく食費&調理費節約のシェアランチは、私が買ってきた半額豚こま肉と先輩が用意してた半額サラダを使った、コンソメ鍋。
タマネギは勿論だけど、意外とパプリカとかレタスとかからも出汁が出てて、おいしい。
シメはオートミールをブチ込んで、低糖質チーズリゾット風の予定だ。
「言っただろう。夢見が悪かった」
諸事情で今月最初に買い替えた冷蔵庫の鎮座するキッチンから、おいしそうなリンゴと柿と梨と、それからクリームチーズを持ってきた先輩。
夢の内容を聞く私に、ため息ひとつ吐いて言うには、

「セーター脱いでバッチバチの状態で、金属製のドアノブを掴まなければならない夢を見た、とかどうだ」

「顔に『この夢を実際に見たワケではありません』って書いてる」
「コレはコレで、悪い夢見ではあるだろう」
「なんかバチクソ変な夢とか?」
「変といえば、たしかに、変だった」
「怖い怪獣に襲われた?今の歳で?」

「デザートは、私の実家から来た果物に少しチーズを載せるやつで、構わないか」
「出た先輩の伝家の宝刀、話題チェンジ」

さくり、さくり、さくり。
リンゴと柿と梨が、半分の半分の半分の、そのまた半分、8等分のウサギさんか半月みたいに切られて、その上に白いクリームチーズが、ちょこん。
さわやかな、甘い果物の新鮮な香りが、鼻先で咲く。
ランチのお鍋食べてる途中だけど、どうにも待てなくて、勝手に梨チーと柿チーのひと切れをつまんだ。
「あっ。こら。つまみ食い」
甘くて、しょっぱい。
濃ゆいフルーツヨーグルトみたいな清涼感が、豚こま肉とコンソメで幸福だった口の中を、一気にデザートコースに模様替えした。

「分かった」
「ん?」
「先輩の実家から、果物と一緒にセーターも送られてきたけど、クソダサセーターだったって夢だ」
「……それもそれで嫌だな?」

セーターも怪獣も、変な夢も、どうでも良くなってきた私は、しょっぱい豚こま食べてサッパリな果物食べて、ちょっと野菜挟んでまた豚こま食べて。
バチクソに優勝な余韻に、じっくり浸った。
「ミカンもいけるかな。冬はミカンじゃん」
「ミカンは……私はクリームチーズより、カマンベールを合わせたいな。試食の店員がジャムを付けていて、美味かったんだ」
「かまんべーるに、じゃむ……?」

お肉と、野菜と、チーズと果物。それからジャム。
その日のシェアランチは、ワインか甘口ビールあたりが有っても良さそうなメニューと話題で、
だけど真面目な先輩の部屋にお酒のストックなんて無いから、
最終的にノンアルコール、強炭酸水で我慢になった。

11/24/2023, 1:25:58 AM

「6月18日あたりが『落下』ってお題で、農耕行事をネタにして書いたのよ。『泥落とし』とか、『虫送り』とかいうのが、あるらしいじゃん」
題目の配信日、11月23日は、神社で「新嘗祭(にいなめさい)」なる農耕儀礼が開催されるとか。
某所在住物書きは己の過去投稿分を、スワイプで辿ろうとして面倒になって、結局それを諦めた。
「で、11月23日配信が『落ちていく』だもん。これは神社の新嘗祭に絡めて、『昔は神社の高い所から餅を撒き落として、参拝者に配ってた』みたいな話を書いたら、イッパツじゃね?と思ったの」

はぁ。 ため息ひとつ吐き、物書きが呟いた。
「俺の執筆スキルじゃ、ぜってー堅苦しくて読めたもんじゃねぇハナシしか出てこねぇよなっていう」

――――――

「雪国の田舎出身」っていう職場の先輩の、「田舎」までは分からないけど、「雪国」が一体どこだったのか、突然正解が目の前に降ってきた。
それは職場で聞いてたお昼のニュースだった。
お昼休憩が始まると、誰が操作してるとも知らないけど、休憩室のテレビの電源が入る。
別に誰が観てるとも聞いてるとも知らないけど、そのテレビはいっつもニュース番組が映ってる。

いつも通り午前の仕事が終わって、いつも通り先輩と一緒のテーブルで、いつも通りにお弁当広げてコーヒー持ってきて、
今日も面倒な客が来たとか、そういえば昨日近所の神社でニイナメサイという祭りがあってとか、
なんでもない話をしながら、いつも通り、ランチを一緒に食べてたら、
先輩が、ふと、スープジャーを突っつくレンゲスプーンの手をとめて、テレビの方を見た。

映ってたのは、先輩が3日前、11月21日にスマホで私に見せてくれた、「実家の両親が写真を撮って送ってくれたイチョウの木」。
「昔々のイタズラ狐が、自分の犯したイタズラの始末をつけるために、イチョウに化けた」っていうおとぎ話がある、「イタズラ狐の大銀杏」。
これから段々天気が荒れてくる現地で、実質的に昨日が最後の見頃でしたって、
「北国」の樹齢何百年とも知れぬイチョウの木が、紹介されてた。

「おっと」
今まで私に、どこ出身とも教えてくれなかった先輩が、軽いアチャー顔で呟いた。
「とうとうバレたか」
先輩が言ってた「故郷」の話に、段々、オチがついていく。先輩の「故郷の雪国」がオチていく。
テレビの中で「私はただいま、◯◯地区のイチョウの大木の前に来ております」って語ってるレポーターの寒そうな声が、「雪国」に、落ちていく。

先輩は半年以上前、3月の中頃、「最高気温氷点下は3月で終わる」って、「なんなら雪が4月に」って言ってた。
そりゃそうだ。
その翌月、4月の最初あたり、低糖質バイキングの屋外席で、北海道出身っていう店員さんと雪国あるあるで盛り上がってた。
そりゃそうだ。
5月6月の30℃予報でデロンデロンに溶けて、7月はざるラーメンだか、ざる中華だかを教えてくれた。
そりゃ、そうだ。
先輩の故郷は、雪国だったんだ。

「来年連れてって」
テレビのキレイで大きなな黄色を、それを見上げるちっぽけな観光客を見ながら、ポツリ呟いた。
「画像なら3日前見せただろう」
先輩はスープジャーつんつんを再開して、随分そっけないけど、表情がちょっと穏やかだ。
「わざわざ遠い、何も無いあの街まで行く必要など」
先輩は言った。
「それでも行きたいというなら……まぁ、まぁ。
うん。お前が凍るだろう最低体感2桁の、真冬以外であれば。検討してやっても」

11/23/2023, 5:44:27 AM

「『いい夫婦の日』に会わせて、11月22日に『夫婦』のお題、出したんだろうな」
仲睦まじい夫婦、リアル世界で見たことねぇなぁ。
某所在住物書きはため息ひとつ吐きながら、では今日のお題は「いい兄さんの日」だろうかと、外れる確率の方が高い予想をしながら執筆作業を急いだ。
次のお題配信まで、残り4時間と少しである。

「結局、夫婦円満の秘訣って、何なんだろうな?」
いっそ夫婦にならねぇこと?もしくは妥協と諦め?
ガリガリガリ。物書きは頭をかき、首を傾けて……

――――――

11月23日は、勤労「感謝」の日。我々は何を、どのように「感謝」されているのでしょう。
それはさておき、こんなおはなしをご用意しました。

最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
なんと、その内母狐と父狐は、それぞれ茶っ葉屋さんの女店主と某病院の漢方医。戸籍もあって労働もして、きちんと納税までしておるのでした。
今日はコンコン父狐の仕事風景を、ちょっとだけ、覗いてみましょう。

祝日対応な某病院、朝から患者さんがいっぱいです。
『受付番号55番でお待ちの方、55番でお待ちの方。診察室5番へどうぞ』
患者さんのプライバシーを守るため、名前ではなく番号でお呼び出し。
父狐のお部屋はコンコン5番。最初の人間は55番、中年の男のひと。どこかの職場の係長さん。

「最近肩こりが酷くて」
中年係長さんは言いました。
「夢見も悪いんです。体も冷える」
コンコン父狐、話を聞いて頷きました。
父狐にはよくよく、見えていました。この係長さんはゴマスリばっかりで仕事を部下に丸投げする、悪い係長さんでした。
部下からの恨みという恨みが、肩に載って載って、過積載になっておるのです。因果応報なのです。

なんて医療と科学の発達した現代で言えやしない。

「ちょっと診てみましょう」
それっぽく触診しながら、コンコン父狐言いました。
「血の巡りに良いお薬も、ありますので」
ぶっちゃけ血の巡りよりお祓いです。あと心を改めて、弱い部下いじめをやめることです。
そう。そんなこと、現代で言えやしないのです。

診察して説明して処方して。55番の係長さんは……
「簡単に、すぐ体調が良くなる漢方は無いのか」
帰っていって、くれませんでした。

「少し、副作用が気になる薬でも宜しければ、」
「漢方だろう。なんで副作用があるんだ」
「漢方も、薬ですので。飲み合わせもあれば、体に合う合わないもあります。完全に副作用無しとなれば、生活指導という手も」
「面倒だ。いらない」

あーだこーだ、がやがや、コンコン。
係長さんとコンコン父狐の問答は数分続き、
結局、診察料だけ頂いてさようなら、となりました。

「かかさん、私の愛しい愛しいかかさん」
コンコン父狐、どっと疲れが出て、今頃茶っ葉屋さんで子狐を抱き接客中だろう母狐にお電話です。
あるいは自宅の稲荷神社で、おばあちゃん狐やおじいちゃん狐と、にいなめさい、新嘗祭の神事中かしら。
「人間が、にんげんが面倒くさいよ」
額に手を当てて、ため息吐いて、コンコン父狐、長年夫婦で連れ添っている母狐に言いました。
キャウキャウ子狐の甘える声が聞こえる、私物のスマホの向こう側。コンコン母狐、答えました。
『今お得意様の対応中ですので、折り返しますね』

「かかさん……」
ピロン。つー、つー、つー。
コンコン父狐、しょんぼりうなだれて、次の患者さんをお呼びします。
『受付番号58番でお待ちの方、58番でお待ちの方。診察室5番へどうぞ』
こやーん、こやぁぁーん。
次の患者さんも、診察して説明して、処方して。
日がとっぷり暮れるまで、母狐から折り返しのお電話が来ることは、結局ありませんでしたとさ。
おしまい、おしまい。

11/22/2023, 7:38:20 AM

「その日のお題見て、『どうしろってよコレ』ってやつだったら、ひとまず2択だわ。散歩とか家事とかして頭をリセットするか、諦めて寝るか」
夏物片付けて、冬物出して、そしたら今日の最高気温が最高気温で。どうすればいいの。
某所在住物書きはスマホで週間天気を確認しながら、氷入りの清涼飲料を口に含んだ。
もう、良いだろう。もう夏服は大丈夫だろう。
それでも来月夏日が来たら、どうしよう、開き直ろう。

「次回のお題はどうなるだろうねぇ……」
ひとまず、今回のお題はこれで終了。
次の配信は、約2時間半後である。

――――――

早朝の某国騒動、完全に寝ぼけた目で首相官邸のSNS投稿を見たせいで、
「内閣官房長官声明を発出」を
「内閣官房長官  を発射」と空見してしまった件、どうすれば良いのでしょう。放っておきましょう。
そんなこんなの物書きの、以下は苦し紛れで童話風なおはなしです。

最近最近の都内某所。深い森にいつか昔の東京を残す、不思議な不思議な狐の稲荷神社がありまして、
敷地内の一軒家には、人間に化ける妙技を持つ本物の化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
その内末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、稲荷のご利益豊かなお餅を、ぺったん週に1〜2回作って売って、絶賛修行中。
今年になって、ようやくひとりだけ、人間のお得意様ができました。

さて。
今日のコンコン子狐は、この暖かい小春日和だか小夏日和だかな昼下がり、
モミジとイチョウの落ち葉の布団で、ふかふかコンコン、お昼寝しようとしたのですが、
敷地で落ち葉を集めていたら、悪い参拝者が捨てた、カプセルトイがカプセルごと、ひとつ落ちておりました。
ダブったのでしょう。あるいは、目当ての物でなかったのでしょう。
丸くて赤くて透明な、おなじみのカプセルの中には、
キラキラ、レジン素材かアクリル素材か、日光反射して輝く星型のチャームが入っておりました。

ご紹介が遅れました。
この子狐、キラキラ光るものが大好きなのです。

「キラキラだ!」
コンコン子狐、カプセルの中身が欲しくて欲しくて、それはもう欲しくてたまりません!
「おほしさまだ!」
ガチャをやったことがない子狐、カプセルの開け方を知らぬのです。
狐のするどい牙でカジカジ、一生懸命噛みますが、割れもしなければヒビも入らず、
結果、あごが、疲れてしまいました。

「なんで、なんで?」
自慢の前足で、小ちゃな爪で、タシタシタシ。引っ掻いてもみるのですが、
カプセルはツルツル、滑るばかり。
「割れない。なんで?どうすればいいの?」
牙で噛んでも、爪で掻いても、びくともしないガチャのカプセル。
『人間が作ったのだから、人間なら開けられる』
コンコン子狐、いっちょまえに考え、閃きまして、

「おとくいさんに、持っていこう」
夜、たったひとりのお得意様のアパートへ、カプセル持ってエマージェンシーな要請にゆきました……

――「これの中身を、取ってほしい?」
不思議な稲荷神社のご近所、某アパートの一室。
コンコン子狐唯一のお得意様、名前を藤森といいますが、明日のお仕事の準備を黙々ぼっちでしていたら、
コンコン子狐やって来まして、カプセル差し出し「どうすればいいの?」です。

「私しか、頼れなかったのか」
「ととさん、かかさん、お仕事だもん。おじーじとおばーば、参拝者さんのごきとー、ご祈祷だもん」
「『仕事』、」
「ととさん、病院で、かんぽーい。かかさんはお茶っ葉屋さん。ちゃんとのーぜー、してるよ」
「狐が、納税……」

狐が喋っているだけでも随分だが、どうやら妙な物語の世界に迷い込んでしまったらしい。
藤森ため息吐きまして、でも子狐があんまり一生懸命お願いするので、
歯型に爪痕クッキリなカプセルを、一応除菌シートで拭いてから、勿論この子狐がエキノコックスも狂犬病も対策済みなのは知っていましたが、
パカリ、それを開いてやりましたとさ。
おしまい、おしまい。

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