かたいなか

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「その日のお題見て、『どうしろってよコレ』ってやつだったら、ひとまず2択だわ。散歩とか家事とかして頭をリセットするか、諦めて寝るか」
夏物片付けて、冬物出して、そしたら今日の最高気温が最高気温で。どうすればいいの。
某所在住物書きはスマホで週間天気を確認しながら、氷入りの清涼飲料を口に含んだ。
もう、良いだろう。もう夏服は大丈夫だろう。
それでも来月夏日が来たら、どうしよう、開き直ろう。

「次回のお題はどうなるだろうねぇ……」
ひとまず、今回のお題はこれで終了。
次の配信は、約2時間半後である。

――――――

早朝の某国騒動、完全に寝ぼけた目で首相官邸のSNS投稿を見たせいで、
「内閣官房長官声明を発出」を
「内閣官房長官  を発射」と空見してしまった件、どうすれば良いのでしょう。放っておきましょう。
そんなこんなの物書きの、以下は苦し紛れで童話風なおはなしです。

最近最近の都内某所。深い森にいつか昔の東京を残す、不思議な不思議な狐の稲荷神社がありまして、
敷地内の一軒家には、人間に化ける妙技を持つ本物の化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
その内末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、稲荷のご利益豊かなお餅を、ぺったん週に1〜2回作って売って、絶賛修行中。
今年になって、ようやくひとりだけ、人間のお得意様ができました。

さて。
今日のコンコン子狐は、この暖かい小春日和だか小夏日和だかな昼下がり、
モミジとイチョウの落ち葉の布団で、ふかふかコンコン、お昼寝しようとしたのですが、
敷地で落ち葉を集めていたら、悪い参拝者が捨てた、カプセルトイがカプセルごと、ひとつ落ちておりました。
ダブったのでしょう。あるいは、目当ての物でなかったのでしょう。
丸くて赤くて透明な、おなじみのカプセルの中には、
キラキラ、レジン素材かアクリル素材か、日光反射して輝く星型のチャームが入っておりました。

ご紹介が遅れました。
この子狐、キラキラ光るものが大好きなのです。

「キラキラだ!」
コンコン子狐、カプセルの中身が欲しくて欲しくて、それはもう欲しくてたまりません!
「おほしさまだ!」
ガチャをやったことがない子狐、カプセルの開け方を知らぬのです。
狐のするどい牙でカジカジ、一生懸命噛みますが、割れもしなければヒビも入らず、
結果、あごが、疲れてしまいました。

「なんで、なんで?」
自慢の前足で、小ちゃな爪で、タシタシタシ。引っ掻いてもみるのですが、
カプセルはツルツル、滑るばかり。
「割れない。なんで?どうすればいいの?」
牙で噛んでも、爪で掻いても、びくともしないガチャのカプセル。
『人間が作ったのだから、人間なら開けられる』
コンコン子狐、いっちょまえに考え、閃きまして、

「おとくいさんに、持っていこう」
夜、たったひとりのお得意様のアパートへ、カプセル持ってエマージェンシーな要請にゆきました……

――「これの中身を、取ってほしい?」
不思議な稲荷神社のご近所、某アパートの一室。
コンコン子狐唯一のお得意様、名前を藤森といいますが、明日のお仕事の準備を黙々ぼっちでしていたら、
コンコン子狐やって来まして、カプセル差し出し「どうすればいいの?」です。

「私しか、頼れなかったのか」
「ととさん、かかさん、お仕事だもん。おじーじとおばーば、参拝者さんのごきとー、ご祈祷だもん」
「『仕事』、」
「ととさん、病院で、かんぽーい。かかさんはお茶っ葉屋さん。ちゃんとのーぜー、してるよ」
「狐が、納税……」

狐が喋っているだけでも随分だが、どうやら妙な物語の世界に迷い込んでしまったらしい。
藤森ため息吐きまして、でも子狐があんまり一生懸命お願いするので、
歯型に爪痕クッキリなカプセルを、一応除菌シートで拭いてから、勿論この子狐がエキノコックスも狂犬病も対策済みなのは知っていましたが、
パカリ、それを開いてやりましたとさ。
おしまい、おしまい。

11/22/2023, 7:38:20 AM