かたいなか

Open App
10/8/2023, 3:26:41 AM

「物理的な力を込めるか、なんかオマジナイ的な力にするかで、まず変わってくるんだろうな」
あと「声に力を込める」とか言うのもアリか。某所在住物書きは今回の題目の使い方を、あれこれ思案しながらポテチをかじった。

身体、祈願、声量。他には何があるだろう。加齢により固くなった頭では、奇抜なネタは時間がかかる。
「無難が安定かな……」
次の題目配信まで、残り6時間と40分程度。
物書きはネットの海に活路発見を頼り、ひとまず「力を込める」の検索結果を辿った。

――――――

3連休の真ん中。「そばの日」の都内某所、某アパートの一室。
食費および光熱費のシェアと節約を名目に、某ブラックに限りなく近いグレー企業の職員が、その先輩の部屋で、ふたりして昼食の準備をしている。

「キクザキイチゲだ」
「そういう名前だっけ」
「7ヶ月前、3月1日にお前に見せた花のことだろう。それなら、キクザキイチゲ。『追憶』の花だ」

雪国の田舎出身という、部屋の主、藤森。
後輩から花の名前を尋ねられ、答えながら小さめのすりこぎ棒で、同じく小さめのすり鉢をゴリゴリ。
実家から送られてきたソバの実を、力を込めて製粉し、蕎麦粉にしているのだ。
本日のランチは手作りガレット。蕎麦粉と食材は藤森が用意し、材料代の半分とすり鉢とすりこぎ棒を後輩が負担した。

「それめっちゃ疲れそう」
「ストレス解消に最高だぞ」
「ホント?」
「ノルマ反対。打倒悪しき昔のパワハラ。いい加減にしろクソ上司」
「わぁ。蕎麦粉が恨みにまみれてる」

室内は完全に最低限、最小限の家具家電のみ。
感情希薄なフィクションキャラクターの、希薄さを際立たせるために、その人物の居住スペースからベッド以外のオブジェクトをすべて撤去してしまう設定も多々見受けられるが、それに数歩〜十数歩迫る程度。

部屋を引き払おうと藤森が思えば、すぐにでも可能そうである。
事実、藤森はそれを今月末、実行しようと画策中である。
諸事情あってこの藤森、昔々の初恋相手から、8年逃げ続けたは良いものの、最近居住区がバレて、
その初恋相手に、職場に突撃訪問され、住所特定のため探偵まで差し向けられた始末。
『職場にこれ以上迷惑はかけられない』。
藤森は決断し、誰にも相談せず、すべてを心の内に秘めて行動した。
結果が、元々物の少なかった藤森宅の、更に生活感が希薄化した現状だった。

勿論それに気づかぬ後輩ではない。
ただ、藤森が自分からすべてを言い出すまで、後輩のよしみで待ってやっている最中である。

「私も蕎麦粉ゴリゴリしたい」
「お前もなにか、ストレスが?」
「どこぞの誰かさんが、全部自分ひとりで背負い込んで、なんにも私に言ってくれないから」
「なんだって?」
「なんでもないです。なんでもないでーす」

ふぁっきん初恋さん。
ふぁっきんストーカー数歩手前な初恋さん。
ふぁっきん昔先輩の心をズッタズタにしたくせに今更ヨリ戻そうとしてるストーカー数歩手前な初恋さん。
ゴリゴリゴリ。後輩は力を込め、すりこぎ棒を回す。
「……随分溜まってるな?」
気迫か怒気か、ただならぬ心の業火に、藤森は開いた口が塞がらぬ。
ただその業火の先に、よもや自分がいるのではと、静かに戦慄し、目を細めるのであった。

「大丈夫。先輩だけど先輩じゃないから」
「結局私じゃないか」
「だから、先輩だけど、先輩じゃないの」
「つまり私だろう」

「たしかにストレス解消なるね。コレ」
「んん……?」

10/7/2023, 4:39:12 AM

「丁度3月1日、アプリ入れて最初に書いたハナシに出した花の花言葉が、『追憶』だったわ」
犬泪夫藍(たのしいおもいで)、蕎麦(なつかしいおもいで)、それから菊咲一華(ついおく)。
まったく、過ぎたハナシと花言葉は相性が良いねぇ。某所在住物書きはネット検索を辿りながら呟いた。

マイヅルソウなどは「清純な少女の面影」だという。春咲く小さな花に、恋した誰かの「過ぎた日」を想起すれば、これでひとつエモネタが完成であろう。
「反対は『汚れっちまった野郎の行く末』?
……俺じゃねぇよ。誰だ無言で指さしてんの」
アプリのインストールから、はや220日。
過ぎた220日前を思いながら、今日も物書きは苦し紛れにネタを組む。

――――――

三連休初日。東京はこれから段々曇ってきて、連休最後の月曜日には、降水確率が80%って予報。
どこもかしこも、インフルがどうとか、発熱がどうとかで、薬局も薬の在庫が無いって聞いたから、
風邪貰ってきてもイヤだし、たまには部屋でおとなしく、出費節約でもしようと思って、
ひとまず自分の部屋の掃除を、

「あっ、」
しようと思って、積読置き場の本棚の、上を小さなパタパタホウキで叩いたら、
「やだ、懐かしい」
棚の上から、ピラピラ、10cm四方のワックスペーパーが数枚落ちてきた。

花の写真が薄くプリントされた、オリジナルのワックスペーパーだ。
昔々、数ヶ月前、具体的には4月18日、
私の職場の、雪国の田舎出身っていう先輩が、その紙に小さなキューブチョコを、キャンディーみたいに包んで渡してくれた。
チョコは当然、とっくの昔に食べちゃったけど、包み紙の方はどうしても捨てられなくて、
いつかキレイに飾ろうって、折り目を直して、そのまま放ったらかしてた。
「すっかり忘れてた。ここに置いてたんだ」

スミレ、フクジュソウ、カタクリ。それから名前を忘れちゃった黄色とか白とか、ともかく春の花がキレイな包み紙。
先輩は「どこで買ったか忘れた」って、平坦な表情でとぼけてた。
本当はわざわざ、プリントサービスやってる人に頼んで、作ってもらったんだ。
私が「先輩の故郷の花を見たい」とか、「故郷に行ってみたい」とか言ったから。

「……この花、なんて名前だっけ」
カサリ。
随分昔に過ぎちゃった、季節のわりに暑かった春の日を思いながら、懐かしく包み紙の数枚を見てたら、
白いタンポポみたいな、フクジュソウみたいな、名前を思い出せない花が目に入ってきた。

『私の故郷はね』
3月最初、1日に見せてもらった花だ。懐かしい思い出がもうひとつ、頭にふわり浮いてきた。
『雪が酷くて、4月直前にならなければ、クロッカスも咲かなくて』
昼の休憩時間、美味い低糖質ケーキを見つけたから奢ると手を引かれて、外出した先のオープンカフェ。
先輩は虚空を見たまま、故郷の春を語ってくれた。
『今頃はまだ、妖精さんも雪の中だ』

「春の妖精」。春の最初から咲き始めて、夏来る前に土の中に帰る花。数十種類ある内の、そのひとつ。
「追憶」を花言葉に持つ、白と青紫の花畑。
あの頃がなんとなく懐かしくって、プリントされた花を見ながら、ちょっとだけ、しんみりした。
この紙をくれた先輩とは、近々すぐ、会う予定だから、その時「あの花なんだったっけ」って、聞いてみようと思う。

10/6/2023, 1:58:22 AM

某所在住物書きは過去投稿分の題目を確認した。
「星」はこれで5度目、「夜」も含めれば10、「空」も含めれば15。1年365回出題される題目の、5%である。ソシャゲのガチャにおける最高レア排出率よりは高かろう。

「もうだいぶ、ネタ使い尽くしちまったのよな。
池に落ちる雨を夜空の星空に見立てるとか、花畑の黄色い花を星に例えるとか、5枚花弁の桜吹雪は流れ星にしたし。普通に夜空を見上げるネタは昔々とうに文章にしちまったし。そこからの『星座』か」
さて、面白くなってまいりました。物書きは天井を見上げ、途方に暮れる。
「現在の星座とピアノの鍵盤の数が一緒ってのは?……どう書けと?」

――――――

そういえば、冬の星座のオリオン座、ベテルギウスが「そろそろ爆発して無くなるかも?!」とか騒がれていましたが、
ネットによれば、最近、「まだ10万年くらいはどうも安泰かもよ」なんて分析結果が、出ているとか、気のせいとか。
というのは全然関係の無い、大粒の涙を星座に例える、苦し紛れをご用意しました。

法学疫学付け焼き刃なおはなしです。ほぼほぼフィクションでファンタジーなおはなしです。

時期は数ヶ月前、あの暑かった春から夏の頃。
都内某所の某稲荷神社に、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
家族の中には末っ子の、コンコン子狐もおりまして、
子狐は狐ですが、ちゃんと白米と味噌汁と、よく加熱したお肉と野菜と山菜を食べるため、エキノコックスなんかへっちゃらです。
しかし子狐はイヌ科なので、狂犬病予防法第5条、同施行規則第11条の類推適用により、年1回、狂犬病ワクチンのお注射を、受ける必要があるとかないとか。

海外では、狐が狂犬病にかかり、安楽死の処置をされたというニュースがあるそうです。
自分がかからず、人間にうつさず、なにより法律で、そして物書きの「涙→星座」の苦し紛れのせいで、
父狐の「美味しいもの食べに行こう」の口車にのせられて、化け狐の対応もしてくれる動物病院へ、電車に揺られタタンタタン、子狐とうとうやって来ました。

「やだっ!注射やだっ!」
ギャンギャン。注射を準備する化け狸の獣医さんに、小狐は吠えて威嚇し、暴れます。
「ウカサマ、ウカノミタマのオオカミサマ!しもべの声をお聞きください!しもべをいじめる悪いやつを、どうかやっつけてください!」
ギャンギャンギャン。子狐は必死に、チカラいっぱい訴えますが、だーれも助けてくれません。
おお。規則よ。汝、法の名を持つ理不尽よ。
しゃーない。ワンコなら誰しも通る道です。多分。

わんわんわん、ギャンギャンギャン。
子狐があんまり泣くもので、そしてあんまり暴れるもので、大粒の涙が診察台に、パタパタ、ポタポタ、落ちてゆきます。
あっちに一粒落っこちて、こっちに二粒落っこちて、それらが天井のライトで照らされて。
そちらに涙の大三角、それから涙の北斗七星。
診療台に、落涙の星座がいっぱい、いっぱい。あらキレイ。

「ハイ大丈夫ですよー、すぐだからねー、泣かない泣かない頑張るよー」
キャン、キャン。小狐が吠え疲れ、おとなしくなると、とうとう細い銀の針が、小狐のおしりに……

10/5/2023, 8:23:47 AM

「……『探しものは』の歌しか思い浮かばねぇ」
今日のお題、何ですか。難しいお題ですか。
頭の中も、本棚とかも、探したけれどネタが出ないので、「お題無視」は、ダメですか。
某所在住物書きは昔々の歌の、カバー曲を聴きながら、残り2時間を切った文章投稿期限で何を書こうと葛藤していた。
9月の「踊るように」以来の踊りネタである。
ダンス必修化以前、とっくの昔に義務教育を卒業した世代である。「踊りませんか」と言われて、何の知識・経験が役に立とうか。

「今の時期の『踊る』って、盆踊りは終わっちまったし、何だろうな」
踊る、おどる、ねぇ。物書きはスマホをいじり、ネット検索に助言を求めた。

――――――

「ゴマスリが?」
「抑えろ。声がデカい」

10月始まって、はやくも5日。
今日も朝から仕事して、昼になって折り返して、午後からの夕暮れからのちょっと残業で、とっぷり夜になった。
いつも通りのサビ残で、いつも通りに帰宅、
と思ったら、いつも以上に平静な表情の先輩に呼び止められ、ふたりで話をするため、少し遠めのカフェの個室へ。
先輩がヒソヒソ声で語ったのは、ウチの部署の「ゴマスリ係長」の話だった。

先月、つまり9月16日。
ウチの係長、後増利係長が、私と先輩で進めてた仕事の案件を、お客さんとの契約締結直前で、堂々パクっていった。
普通にブチギレ案件だけど、直前で担当が私達からゴマスリ係長に変わったことで、お客さんが大激怒。
私達から手柄をむしり取ろうとした係長は、逆にお客さんにバチクソ怒られた。

で、その「お客様に怒られた後増利係長」のハナシが、お客さんから伝いに伝って、
なんと、ウチの職場のトップ、緒天戸の耳に到達。
「鶴の一声」。「オテント様が見てる」。
厳重注意のもと、場合によっては降格させよと。
そのタレコミなリークを、先輩の友人にして隣部署の主任、宇曽野主任が持ってきたらしい。

「上司にゴマすって、部下の仕事を盗んで」
先輩がコーヒーを飲みながら言った。
「その結末が『降格やむなし』だったと」
悪徳上司がとうとう懲らしめられたワケだ。喜びの舞いでも踊ろうか?
付け足す先輩は少しだけ、ほんの少しだけ、勧善懲悪劇の結果に満足してそうだった。

「4月に左遷させられたオツボネ前係長みたいに、ヒラとして総務課送りになったりしないかな」
「そこまでは聞いていない。が、違うだろうさ」
「ちぇっ」
「ウチの部署の係長職が、二度もお目玉を食らったんだ。会議にかけられないだけマシ、ということにしておけ」

「一応、これで、ハッピーエンドなのかな」
課長にゴマスリばっかりして、自分の仕事を全部部下に押し付けて、全部終わる頃に成果を持ってった係長、後増利。
ちょっとだけ、ざまーみろ、と思う。
「さぁ?」
自称捻くれ者の先輩は、片眉上げて首を傾けるだけ。
「少なくとも、お前がベソかいて私の部屋のコーヒーだの炭酸水だのを飲み干す回数は減るだろうな」
それでも少しだけ、ほんの少しだけ、唇と目が、穏やかに笑っているように、見えなくもなかった。

「ナンノ、話デセウ」
「尾壺根の確認不足。責任転嫁と理不尽な始末書。メタ的な話をすると、4月18日」
「記憶にございません。ございませぇーん」

10/4/2023, 6:31:52 AM

「巡り、『会えたら』っつーより、『会ってしまったら』なら、文章投稿後とかハート送った後とかの、バチクソにセンシティブな広告だわ」
6月後半頃、「君と最後に会った日」なる題目なら一度挑んだらしい。某所在住物書きは過去投稿分を辿り、類似のネタを探してスマホをスワイプしていた。
当時は「ホタルと最後に会った日」を書いたようだ。

「アプリは好きよ。そりゃそうさ。でなけりゃ200日も付き合っちゃいねぇ。……ただ広告の種類がな」
課金で良いから、本当に広告非表示プラン欲しいね。物書きはひとつ、大きなため息を吐いた。
「そういう広告に『巡り会ったら』どうするって?
ブルートゥース機器の接続・切断で強制終了」

――――――

今日もどこかで、某衛星列車が空を横切るとか、横切らないとか。
そんな秋空を、不思議な子狐が見上げるお話です。

最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家には、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしております。
その内の末っ子は餅売りで、お花とお星様が大好き。
「満点の星」とは言えなくとも、晴れた夜はお空を見上げ、アレはきっと何の星、ソレはきっと誰の星と、コンコン、名前をつけて物語を作って、楽しみます。

そんなコンコン子狐が、ある夜6時半を過ぎた頃、神社を包む森の隙間、木々の窓からいつものように、夜空の星を見上げていると、
おやおや、あれは何でしょう。ひとつだけ、まっすぐ、ツーっと窓の右から左へ、横切っていく星がありました。
人工衛星です。太陽の光を一身に受けて、流れ星よりはゆっくりと、悠々堂々、空を飛んでいます。

「おほしさまの船だ!」
当たらずとも遠からず。「人工衛星」を知らないガキんちょ子狐。目を輝かせ、尻尾をぶんぶん!
初めての、動くお星様を、感激の視線で見上げます。
「おとくいさんに、自慢してやろう!」

木々の窓の端まで飛んでって、見えなくなってしまった「お星様の船」。子狐はこの経験を、誰かに話したくてたまりません。
せっかくなので、子狐の商売のお得意様、週に1〜2回お餅を売りに行く人間のアパートへ、ぴょんぴょん、文字通り跳ねてゆきました。

「それは……うん、良かったな」
さて。
都内某所、某アパートの一室。「お星様の船を見たんだよ」と、しっかり人間に化けてお餅を売りに来て、コンコン子狐言いますが、
部屋の主さん、労働し納税する大人なので、それの正体を知っています。
教えてやるべきか否か、猛烈に悩んでいました。

「すごいんだよ、お空のはじっこから、はじっこまで、こうやって、ツゥーって!」
子狐は自分が、いかに素晴らしいものを見たか、身振り手振りの大振りジェスチャーで、説明します。
きっと、子狐は「船」の正体なんて、どうでも良いのです。
ただ美しい物との遭遇を、お得意様と共有して、「すごいね」と羨ましがってほしいのです。
それでも『その珍しいものは「人工衛星」と言うんだよ』と、伝えるべきか、否か、悶々か。

「もし、もう一度、」
散々悩みに悩んだ末に、アパートの部屋の主が無難に、尋ねました。
「『お星様の船』と巡り会えたら、どうする?」

「おとくいさんと、ととさんと、かかさんと、おじーじとおばーばと一緒に見る!」
コンコンコン!
お目々を輝かせる子狐は、部屋の主をまっすぐ見て、幸せそうに答えました。

人工衛星横切る秋空を、子狐が見上げるお話でした。
今日はまさしく、衛星列車が通過するかもしれないそうなので、
都内のどこか、森に鎮まる神社で、狐一家と人間ひとりが、お空を見上げて、いるかも、さすがにフィクションが過ぎるかも。
おしまい、おしまい。

Next