かたいなか

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某所在住物書きは過去投稿分の題目を確認した。
「星」はこれで5度目、「夜」も含めれば10、「空」も含めれば15。1年365回出題される題目の、5%である。ソシャゲのガチャにおける最高レア排出率よりは高かろう。

「もうだいぶ、ネタ使い尽くしちまったのよな。
池に落ちる雨を夜空の星空に見立てるとか、花畑の黄色い花を星に例えるとか、5枚花弁の桜吹雪は流れ星にしたし。普通に夜空を見上げるネタは昔々とうに文章にしちまったし。そこからの『星座』か」
さて、面白くなってまいりました。物書きは天井を見上げ、途方に暮れる。
「現在の星座とピアノの鍵盤の数が一緒ってのは?……どう書けと?」

――――――

そういえば、冬の星座のオリオン座、ベテルギウスが「そろそろ爆発して無くなるかも?!」とか騒がれていましたが、
ネットによれば、最近、「まだ10万年くらいはどうも安泰かもよ」なんて分析結果が、出ているとか、気のせいとか。
というのは全然関係の無い、大粒の涙を星座に例える、苦し紛れをご用意しました。

法学疫学付け焼き刃なおはなしです。ほぼほぼフィクションでファンタジーなおはなしです。

時期は数ヶ月前、あの暑かった春から夏の頃。
都内某所の某稲荷神社に、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
家族の中には末っ子の、コンコン子狐もおりまして、
子狐は狐ですが、ちゃんと白米と味噌汁と、よく加熱したお肉と野菜と山菜を食べるため、エキノコックスなんかへっちゃらです。
しかし子狐はイヌ科なので、狂犬病予防法第5条、同施行規則第11条の類推適用により、年1回、狂犬病ワクチンのお注射を、受ける必要があるとかないとか。

海外では、狐が狂犬病にかかり、安楽死の処置をされたというニュースがあるそうです。
自分がかからず、人間にうつさず、なにより法律で、そして物書きの「涙→星座」の苦し紛れのせいで、
父狐の「美味しいもの食べに行こう」の口車にのせられて、化け狐の対応もしてくれる動物病院へ、電車に揺られタタンタタン、子狐とうとうやって来ました。

「やだっ!注射やだっ!」
ギャンギャン。注射を準備する化け狸の獣医さんに、小狐は吠えて威嚇し、暴れます。
「ウカサマ、ウカノミタマのオオカミサマ!しもべの声をお聞きください!しもべをいじめる悪いやつを、どうかやっつけてください!」
ギャンギャンギャン。子狐は必死に、チカラいっぱい訴えますが、だーれも助けてくれません。
おお。規則よ。汝、法の名を持つ理不尽よ。
しゃーない。ワンコなら誰しも通る道です。多分。

わんわんわん、ギャンギャンギャン。
子狐があんまり泣くもので、そしてあんまり暴れるもので、大粒の涙が診察台に、パタパタ、ポタポタ、落ちてゆきます。
あっちに一粒落っこちて、こっちに二粒落っこちて、それらが天井のライトで照らされて。
そちらに涙の大三角、それから涙の北斗七星。
診療台に、落涙の星座がいっぱい、いっぱい。あらキレイ。

「ハイ大丈夫ですよー、すぐだからねー、泣かない泣かない頑張るよー」
キャン、キャン。小狐が吠え疲れ、おとなしくなると、とうとう細い銀の針が、小狐のおしりに……

10/6/2023, 1:58:22 AM