かたいなか

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9/29/2023, 3:11:05 PM

「6月頃に『狭い部屋』ってお題なら書いたわ」
エモい話を、書けないこともない。某所在住物書きはカキリ小首を鳴らし、ため息を吐いた。
静寂には複数の色が存在する。
痛い、気まずい、穏やかな、あるいは感動的な。
いずれにせよ、夕暮れの部屋を舞台に主人公ひとり、あるいは友人とふたりで、何か酷く悩ませれば良い。
沈黙はスパイスとなるだろう。

「でも不得意なのよ。エモネタ。納得行くハナシ書こうとすると投稿16時17時になっちまうし……」
ぽつり。物書きは弱点を吐露し、物語を組む。

――――――

中秋の名月の東京、都内某所、某アパートの一室。
部屋の主を藤森というが、18時頃は少なくとも月の見えていた窓を背に、
月見の餅を置いたテーブルを挟んで座って、
「げんせーな、シンサの結果、」
向かい側では、不思議な不思議な子狐が、コンコン、言葉を喋っている。
「今年の『狐のお嫁さん』は、おとくいさんに決定となりました」

テーブルの上の餅を、商品として持ってきた子狐は、ご利益豊かな稲荷神社の神使。
善き化け狐、偉大な御狐となるべく、餅を売り、人を学んでいる最中。
藤森はこの不思議な餅売りの、唯一の得意先である。
目の前で狐がものを言う珍事に、藤森はいつの間にか慣れてしまった。
しかしそれでも解せぬのが、今晩の新出単語。
「狐のお嫁さん」とは?

「……」
素っ頓狂な藤森の、開いた口は開きっぱなし。目はパチパチ、まばたきを繰り返す。
藤森の無言が、痛い静寂を部屋に呼び込んだ。

「ユイショ正しい、古くから伝わるギシキなの」
コンコンコン。
子狐の補足は相変わらず、分からない。
「狐のお嫁さんは、ウカノミタマのオオカミサマの化身役なの」
なんなら、下手をすれば本人、本狐もよく理解していないのだ。
小さなメモ帳の、明らかに大人が書いたであろう文字を、目で追いながらのコンコンであったから。
「稲刈りが終わりに近づく、9月最後か10月最初の満月の次の日、十六夜の夜に、キツネのととさんと、ケッコンするフリするの」
藤森の理解と状況把握を置き去りに、子狐はただ、しゃべる、しゃべる。

「稲荷神社で、ケッコンして、誓いのおさけ、イッコン傾けるの。ウカサマの化身役のお嫁さんは、たくさんのお料理と踊りで、オモテナシされるの。
お料理と踊りで満足したお嫁さん、ウカサマ役は、最後に満足して、『来年も、商売繁盛、五穀豊穣』って言うんだよ。
ととさん、ヨシュクゲーノー、『予祝芸能の一種』って言ってた」
理解が迷子。説明が為されているのに脳内が静寂。
藤森はただポカンであった。

「何故私なんだ」
「げんせーな、シンサの結果なの」
「狐の、『お嫁さん』だろう」
「ウカサマ、美人さんなの」

「私のどこが『美人さん』だって?」
「あのね、おとくいさん。
おとくいさんは、3月1日の1作目投稿から今日の最新作まで、たったの1回も『男』と明言されてないし、『女』とも断言されてないし、『彼』とか『彼女』とかも、一切特定されてないんだよ。
だからおとくいさんは、男かもしれないし、女かもしれないんだよ」
「は……?」

駄目だ。理解が追いつかない。
こういう時に振るという◯◯値チェック用のダイスとやらは何処だ。
藤森は完全に頭の中がパンク状態。
満月が雲で隠れている空を背負い、頭を抱えて、大きなため息を吐く。

「……謹んで、辞退させて頂く」
ただ選任拒否を述べ、再度息を吐いて、思考タスクの過負荷で重くなった頭と視線を子狐に向けると、
「じたい……?」
今度は子狐の方が、口をパックリ開け、固まった。
おいしいお料理、いっぱい、食べないの……?
驚愕に見開かれた狐の目が、声無く藤森に訴える。
双方無言が続き、藤森の部屋は再度静寂に包まれた。

9/29/2023, 1:01:13 AM

「5月頃に、『突然の別れ』ってお題は書いたわ」
お題に限らず、現代・日常ネタ、続き物の連載風で文章上げてるから、「別れ」そのものはチラホラ題材として出してるわな。某所在住物書きは録画済みだった某魔改造番組を見直しながら、それでもちょこちょこ、スマホの通知画面を確認している。
今回の題目は「別れ際に」。日常的な別れから、セーブデータ誤削除等による悲劇、恋愛沙汰、人生最大の際まで、執筆可能なネタは幅広い。
広いのだが。
「だって今回、S社参戦だもん……。いつかNも出てきて、リアル大乱闘魔改造兄弟ズとか、しねぇかなぁ」
当分、執筆作業は始まりそうにもない。

――――――

中秋の名月を数時間後に控えた都内某所、某アパートの一室、朝。
部屋の主を藤森というが、昨晩の夕食の余りをサッと加熱調理し直し、サンドイッチとして挟んで、ランチボックスに詰めていた。

ブリ大根の出世前の出世前、イナダ大根。その出汁を存分に吸った鶏の手羽元。アジフライならぬイナダフライ。それから、少しの栗にしめじ。
秋を取り入れたラインナップ、特に魚メニューの豊富さは、ぼっち生活では到底食いきれぬ秘技「一尾買い」によって、大幅なコスト削減を実現。
食費節約と仕事の効率化を理由として、昨晩まで職場の後輩が、藤森の部屋に来ていたのだ。
昨今急速に整えられた非出勤型。社外勤務である。

後輩は5:5の割り勘想定で藤森に現金を渡し、
藤森は金額に見合った昼食と夕食をシェアする。
在宅のリモートワークは、低糖質のスイーツと緑茶を伴い、順調に進んだ。
なにより理不尽な指示を飛ばすクソ上司や、妙な難癖をつけてくる悪しきクレーム客の機嫌取りをしなくて良いのは、非常に大きかった。

(で、……昨晩の「アレ」は、何だったのだろう)

薄くタルタルソースを塗ったパンでイナダフライを挟みながら、藤森は昨晩の後輩を思い返していた。
食後の茶を飲み終え、土産に弁当用の手羽元煮込みを持たせて、その日のリモート業務を終えた後輩。
別れ際に言われた言葉が意味深だったのだ。

『私、先輩がちゃんとハッキリ言ってくれるまで、待ってるから』
「何」を「ハッキリ言う」のだろう。
藤森はひとつ、心当たりがあった。

(バレているのだろうか。私が、この部屋を引き払って、田舎に戻ること)

雪降る田舎出身の藤森。13年前上京して、9年前初めて恋をして、その初恋相手が悪かった。
恋に恋する極度の理想主義者・解釈厨だったのだ。
縁切って8年、ずっと逃げ続けてきた筈が、今年の7月相手に見つかり、8月には職場に突撃訪問。
9月最初など、藤森の現住所特定のため、後輩が探偵に跡をつけられる事案が発生する始末。
自分が居ては、周囲に迷惑がかかる。
藤森はひとり、誰にも相談せず、10月末で離職し、アパートから出て、故郷へ帰る決心をした。
これ以上、初恋相手が己の職場を荒らさぬように。
初恋相手が、己の大事な後輩と友人を害さぬように。

『ハッキリ言ってくれるまで、待ってるから』
別れ際の後輩は、藤森の離職と帰郷について言及したのだろうか。

(そう言われてもなぁ)

初恋相手から縁切り離れる際も、藤森は誰にも言わず、相談せず、己個人の選択と責任のもと、職を辞し居住区を変えた。
今回もそのつもりであったし、今更どのツラで「実はな」と言えば良いのか。

「……はぁ」
仕方無い。 難しい。
藤森はひとり、ため息を吐き、首を小さく振って、サンドイッチを詰めたランチボックスを包んだ。

9/27/2023, 11:48:55 PM

「『雨』もね。これで5例目なのよ……」
どの「雨」が何月何日に出題されたかは、8月27日投稿分「雨に佇む」の上部にまとめてあるから、気になったらどうぞ。某所在住物書きはポツリ、降雨の外を気にしながら言った。
「物語に出てくる『通り雨』も、3月24日あたりの『ところにより雨』に似たところが有る気がする」
つまり、一部地域にしか降らない筈が、まさしくその「一部地域」に、自分が居るシチュエーション。
二番煎じが無難かと、物書きはため息を吐く。

――――――

ネット情報によれば、「通り雨」は気象用語における「時雨」、そして時雨は冬の季語だそうですね。
冬どころか、9月末なのに30℃超えの地域がある昨今ですが、こんなおはなしをご用意しました。

最近最近の都内某所、某アパートに、人間嫌いと寂しがり屋を併発したひねくれ者が住んでおり、名前を藤森といいました。
この藤森の部屋に、何がどうバグって現実ネタ風の物語に忍び込んだか、週に1〜2回、
現実ネタには有るまじく、不思議なお餅を売りに、なんと不思議な子狐が、コンコン、やって来るのです。

コンコン子狐は稲荷の狐。近所の神社のご利益豊かな、ありがたいお餅を売りに来ます。
ひとくち食べれば心に溜まった毒を落としてくれる、心も身体もお財布も喜ぶコスパ抜群なお餅を、コンコン、売りに来るのです。
その日もお題の「通り雨」どおり、通り雨降りしきるなか、子狐が藤森のアパートにやって来ました。

「お月見団子、ごよやく、いかがですか」
葛で編んだカゴの中のお餅と、クレヨンで一生懸命ぐりぐり描いたと思しき手作りパンフレットを、しっかり雨から守った子狐。
だけど自分はぐっしょり濡れて、まるで洗濯直後のぬいぐるみです。
「焼きもち、へそもち、餡かぶり、おはぎもあるよ」
雨に体温を持っていかれて、少しぷるぷる震える子狐は、なんだかんだで根っこの優しい藤森に、タオルで包まれて優しくポンポン、叩き拭かれておりました。

「今予約とって、スケジュールは間に合うのか」
忙しい仕事と、季節感ブレイカーな気温のせいで、すっかり忘れていた藤森。
9月29日は中秋の名月。十五夜です。
「十五夜など、すぐだろう。大丈夫か?」

狐ゆえに、たとえ五穀豊穣を呼び寄せる恵みの雨とて、濡れるのは好かないだろうに。
それでも商売魂たくましく、お餅の予約をとりに来るのは、なんともまた、微笑ましい。
通り雨いまだ止まぬ外を、防音防振設備バッチリな、ほぼ静音の部屋から眺めて、
藤森は子狐を、気遣ってやりました。

「キツネのおとくいさん、おとくいさんひとりしか、いないもん。へーきだよ」
「そのびしょ濡れのせいで、予約とって帰った途端、熱出して、風邪でも引いたらどうする」
「キツネ、人間の風邪ひかないもん」
「そうじゃなくてだな」

「たんと買ってくれるの?いっぱいいっぱい、間に合わないくらい、どっさり買ってくれるの?」
「そうじゃない」
「ごよやく、ありがとうございます!」
「あのな子狐」

3月3日に初めて会ってから、随分稲荷の商売人、商売狐として図太く賢く、成長したものだ。
藤森はため息を吐いて、ポンポン、拭いてるタオルを新しいものに替えてやります。
「……ひとまず、何か、温かいものでも飲むか?」
いまだにプルプル、寒さで震える子狐は、「温かい」の単語に、尻尾をブンブン、振り回しましたとさ。

「あったかいもの!おしるこ!」
「小豆が無い。雑煮なら、可能だが」
「お月見雑煮!
ごよやく、ありがとうございます」
「そうじゃないと言っている」
「おもちはいくつ、ごよーいしましょう」
「子狐。ひとの話を、まず聞きなさい」

「ふぇっ、へっッ、くしゅん!」
「そらみろ。くしゃみが出た……」

9/26/2023, 10:52:01 AM

「『春爛漫』、『夏』に続いて、ダイレクトな季節ネタのお題か」
春はスミレの砂糖漬け、夏は虫刺されの薬とホタル見に行く話書いたっぽいな。某所在住物書きは過去作を辿り、昔々の記事へのアクセスがアプリ内では相当困難になってきていることを再認識した。
インストールが春である。現在秋だ。
4月11日投稿の「春爛漫」など、何度ページを移動する必要があろう。
「で、明後日猛暑の予報がある時期に、何だって?」
ため息ひとつ。秋まだ浅く、過去投稿分は酷く深い。

――――――

秋だ。 秋の筈だ。
東京もようやく、天気予報とかで、最低気温20℃以下を見かけるようになってきた。
10月最初は今のところ、最高23℃予想らしい。
なんなら来週火曜日、最低気温17℃だって。
なのになんで明後日が猛暑、35℃予報なんだろう。

「今のうちに言っておくが、」
職場の昼休憩、休憩室。
「万が一億が一、申請が通らなかったら、きっと私は明後日、熱中症で終日ダウンだ。頼るなよ」
朝イチでリモートワークの申請を出した、雪国出身の暑さ耐性マイナスな先輩が、スープジャーの中身を突っつきながら言った。

熱中症。熱中症だってさ。
秋だよ。9月下旬、もうすぐ10月だよ。
アレなの。たまに呟きックスで見かける「◯◯大量発注しちゃいました」の気温版で、猛暑日の在庫、全然捌ききれてないの。
勘弁してよ。いい加減棚卸しして、ちゃんとシーズンに見合った気温に入れ替えてよ。
季節外品は服とかイベント系とか等々で十分だよ。

なんで明後日が35℃予報なんだろう(重要二度)
なんなら、「秋」って、何だろう(根源的問答)

「大丈夫。私も明日と明後日リモートの予定だから」
9月末の灼熱地獄に、在宅ワークの制度整ったこのご時世で、わざわざ汗水垂らして職場に通勤してやるほどの義理、私無いし。
一足早く承認貰ったリモートワークの申請書をピラピラさせて、私も先輩に言った。
「『明日ワクチン接種なので、明後日、副反応で休みます』ってことにした。先輩明後日、部屋にごはんたかりに行って良い?」

その手があったか。
先輩は口を小さく開けた。

「飯のリクエストは?」
食費と料理代、5:5想定でこっちがお金を出すと、低糖質低塩分の料理を作ってシェアしてくれる。
「何もなければ、多分、最近安いワラサだのカツオだのを使った、タルタルだの、カレー粉だのの何かになると思うが」
お互い、経費節約になるから、べつに恋人同士ってワケでもないのに、先輩宅へ行ったり来たり。
「『秋』が食いたいなら、キノコや栗も考慮する」

明後日は、何が食べられるかな。
「あと何回」、先輩のごはん食べられるかな。
明後日のことだけど、今日からもう、先輩のごはんが気になって、少し顔が綻んだ。

「ワラサ is 何?」
「ブリの前だ。メジロとも言うらしい」
「ブリの前はイナダでしょ?先週水曜日、20日、クリームパスタで食べた」
「そのイナダ、あるいはハマチの次がワラサだ」

「はまちが、ぶり……?」
「なんだその、えぇと、銀河猫顔は」
「うちゅうねこ……」

9/25/2023, 11:30:04 AM

「7月2日に投稿したお題が『窓越しに見えるのは』で、あの日は『狐の窓』の話書いたわ」
さすがにもう、これっきりで「窓」は来ないよな。某所在住物書きは窓越しに、夜の暗い景色を見た。
隣家はカーテンを閉め切り、明かりが漏れている。
時間帯が時間帯である。これといって、物語のネタとなり得る何かは見えなかった。
「車窓、ホテルの窓、学校、自宅に空気窓、等々。シチュエーションは選び放題なんよ。うん」
問題は、それらが書きやすいか、ネタが浮かぶか。
ため息を吐いた物書きは、ただ窓の外を見た。

――――――

最近最近の都内某所。未だ暑さの残る頃。
この物語の主人公、宇曽野というが、
職場の屋上、ヘリポートを兼ねたそこで、秋である筈のところの風に当たりながら昼飯を食おうとして、
ドアを開けて早々、先客がいるのを見つけた。
背もたれ無きベンチに腰掛け、落下防止用のフェンス越しに階下を見ながら、小さめのサンドイッチに口をつける親友。
藤森だ。珍しく、今日は一人らしい。
かたわらには、何か料理を入れていると思しき箱と、スープボトルが置いてある。

「おい」
箱の右隣に腰掛けた宇曽野は、持ち込んだレジ袋を置き、イタズラな笑みをこぼす。
ビル風が少々強いらしく、袋の取っ手がピリピリなびいて、音をたてる。
道路を挟んだ向かい側のビル、1〜2階程度下の大きな窓からは、別業種の誰かと誰か、知らぬ女性と男性が、淡々と仕事をしている景色が見えた。

「よこせ」
なにせ今日は職場近所の800円と、自販機の200円の予定だったのだ。

「昼飯買って来なかっ、……あるだろう、自分の」
宇曽野が推測した通り、箱の中は小さめのサンドイッチ数種類と、数切れのフレッシュで低塩分のナチュラルチーズ。
卵にビーフに野菜、それから少しの甘味と、サンドイッチはラインナップ豊富。
ローストビーフ入りをつまんだ宇曽野は、更にチーズを挟んで、藤森の承諾も待たず口に放り込んだ。

「肉は、美味い」
「そりゃどうも」
こんなもんか。と宇曽野。
チーズがビーフの熱で意図した通りに溶けた、わけではないが、
それでも、柔らかめの食感のそれは、グレイビーソースに控えめに絡み、
チーズ & ビーフの、そこそこ不思議な歯ざわりを生み出した。

「チーズが溶けない」
「そりゃな」

「溶けた方が美味い」
「挟むなら、そうだろうな」

そもそも挟んで食う前提ではなかったんだが。
ため息を吐き、宇曽野のレジ袋を覗く藤森。
中身が職場近くで売られている800円であることに気付き、ため息をついて、ワラサのフィッシュカツサンドを手に取った。
「それ買ってきたのか。よりによって、美味くはないと不評なものを」

それは、「栄養『だけは』豊富」、という総評の大豆ミートパイであった。
都民の偏食と栄養バランスを改善すべく、近所の惣菜屋が、どこぞの栄養コンサルタントやアドバイザーと共同で開発・商品化したもので、
有機野菜由来の栄養素と、申し訳程度の調味に定評があり、
藤森の部署内では、「飲み物無いとパッサパサ過ぎて無理」と酷評であった。
あるいは「これより、同じ店で売られてるいつものベジカレーの方が数千倍美味い」と。

「サンドイッチの礼に、先に1個やるよ」
「毒見狙い、バレてるぞ」
「なら食え」
「断る」

その後宇曽野は、ミートパイの水気の無さに悪戦苦闘しつつも、それを見事に完食せしめたわけだが、
最後の一口を食道へ押し込むまでに、
藤森のサンドイッチ2個とチーズ3切れ、そしてボトルの中の野菜スープの援助を要した。

例の階下の大窓、別業種の誰かが、窓越しに向かい側の職場の屋上を見れば、
昼の景色として、パイに苦戦して胸をトントン叩く宇曽野が見えただろう。

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