『届かぬ思い』
俺は今、とても悩んでいる。
この国最高の高校、大学を出ていたとしても、人間である限り、この問題に直面するだろう。
「う〜ん、悩むな……どうすれば……」
「いや、何時間悩んでんの?」
隣にいる小夜がそんなことを言ってくる。
「は? 悩むだろ。お前馬鹿か?」
「あんたにだけは言われたく無いわ!」
そんな大きな声を出すなよ。迷惑になるだろうが。
「五月蝿いなぁ。少し落ち着けよ」
「マジでぶん殴るよ?!」
小夜が俺に向けて拳を握ってくる。普通に怖いからやめて欲しい。
「まあ待て、なんでそんなに怒っているんだ?」
「あんたが堅あげポテトの塩味とブラックペッパー味で2時間も悩んでるからだよ!」
「は?悩むだろ。塩とブラックペッパーだぞ?人生で1番悩むわ」
「悩まないわ! 悩んだとしても2時間もお菓子コーナーで唸らないわ!」
「?」
「何言ってんだこいつみたいな顔でこっちを見るな!」
「だって決められないんだもん」
「だもん、じゃないわ気持ち悪い! 早く決めて! もう外暗くなってきてるから! あと1分で!」
「え〜無理」
「無理じゃ無い! さっさと決める!」
もうそろそろ殺されそうなので早く決める事にしよう。流石にまだ死にたく無い。
結局その後10分悩み、塩味にして帰った。
『神様へ』
罪と言うのは、一生消えない。
一度犯した罪は、自分の心にも、そして周りの人の心にも残る。一生消えない傷として。
「ねぇ、小夜先輩。目を開けてくださいよ……」
そう、俺が抱き抱えている人に言葉をかける。
先輩のお腹からは大量の血が出ていた。もう助からない、それはわかっている。
でも、そう信じたく無かった。俺の油断で、こんな事になってしまったと言う事実を。
「先輩、お願いします……俺、もっと気をつけますから……だから……」
先輩からの返答は無い。ただ、まだ目を開けている。生きているはずだ。
「煌驥……君」
俺は声がする方、自分の胸へと視線を向ける。
「先輩! 先輩!」
「ごめんね……煌驥君……私がもっと、強ければ良かったんだけど……」
「それは違う! 俺のせいだ! 先輩は何も悪く無い!」
俺の目から、涙が溢れる。自分の弱さに、情けなさに。
「ごめん……ごめんね……煌驥君……」
「先輩?! 先輩! 目を開けてください!」
何故、俺はこんなにも弱いんだ。何故、罪を消せない。後悔を消せないんだ。
なあ、神様。お願いだ。1度だけ、1度だけで良いから。
おれたち
無力な『人間』に、力を下さい。
『快晴』
梅雨が明けるまであとどれくらいだろうか。
今日は晴れていた。梅雨真っ只中なのに、雲一つない快晴だ。明日からまた雨らしいがな。
まあ、快晴だからと言って俺のテンションが上がる事はない訳だが。
1ヶ月ほど前。幼馴染の小夜が引っ越すと言われた。理由はわからない。小夜や小夜の両親にも色々あるんだろう。
そして昨日、小夜達はその引越し先に行ってしまった。出発の少し前に小夜と話せたのはせめてもの救いだ。
俺達は客観的に見てもかなり仲が良かったと思う。彼女の居ないクラスメートが嫉妬の視線を送るくらいには。
だから、悲しい。その出発前の挨拶の時は、小夜の前だから泣かなかった。だが、かなり悲しい。部屋に戻ってから堪えきれなくなってしまって号泣するくらいには。
小夜は泣いていた。小夜のそんな顔は見たく無かった。俺も釣られてしまいそうになるから。
挨拶の時に、言おうと思っていた。愛してるって、ずっと前から好きだったって。でも言えなかった。さよならとしか、言えなかったんだ。愛してるって言えた時には、もう小夜は見えなくなっていた。
そんな事があったのに、空は晴れている。小夜があんなに泣いたのに、俺があんなに泣いたのに。
俺達が泣いたのなんて忘れてしまうくらい、太陽が燦々と輝いていた。
小夜が居なくても、生きなきゃ行けない。俺はまた小夜に会いたいから。
俺はもう吹っ切れた。だから、また出逢えますようにってこの空に願いながら生きていく。
小夜には笑っていて欲しいな。
そうだ。みんなに最後に1つだけ、とっておきの曲を教えてやるよ。今の俺にぴったりな曲だ。
その名前は『快晴』。オレOジスター(本当は片仮名じゃなくて英語だが許してくれ)さんのあの超有名神曲。
是非1度聴いて見てくれ。おすすめだ。
って今文を書いてるKINO?ってやつが脳に語りかけていた。誰だよって?俺が聞きたいわ。でも言わなきゃやばいらしいんだって。文にかなり引用したからって。
このお題を書いたのはその今日を布教する為でもあるらしい。知らんけど。
それじゃ、またな〜。
『遠い空へ』
僕は今、村の近くの山にある神社の鳥居の前にいる。
理由を話そう。最近、僕の村で行方不明になる人が多発している。
その中には僕のかなり仲の良かった幼馴染、小夜も含まれている。仲の良かった僕の親達がずっと小夜たち行方不明者を探しているらしい。
行方不明の原因は不明。村長などは神の祟りだとか言っているが僕はあまり信じていない。
何故なら、この村には言い伝えがある。
逢魔が時と呼ばれる時間。夏ならまだ明るく、冬なら真っ暗になる18時ピッタリ。その時間にこの村の近くにある山の頂上にある神社に行く。そしてその神社の鳥居をくぐる。丁度18時に鳥居をくぐるとこの村とは違う、村から、いや、この世界から遠い所にある違う『世界』に行けるらしい。
僕はそれだと思った。小夜達が行方不明になった原因はこの言い伝えだと。
だから、僕は来た。その件の山の神社に。その言い伝えが真実か確かめる為に。
あと18時まで5秒だ。
5……4……3……2……1……
18時になるのと同時に、僕は怖くて目をつぶり、鳥居をくぐった。
恐る恐る目を開けると、何も変わらない、ただのいつもの神社だ。
「な〜んだ、嘘だったんだ。怖かったぁ〜」
安堵していた。もしも本当に行ったら、どうしようと思っていたから。
そして、後ろを向き、帰ろうとした時。
「貴方も、こっちに来たいの?」
「え?」
思わず振り返ってしまう。神社には僕しかいなかったはず。友達も両親も呼んでない。
誰も居なかったはずなのに、神社には僕と同じくらいの身長の女の子がいた。
その子はもう一度、僕に声をかける。
「貴方もこことは違う世界。『空』に来たいの?」
と。
『春爛漫』
『ねえ! 速く学校行こ! 桜綺麗だよ!』
満開の桜並木を2人で歩いた、高校3年生の春の思い出。
桜を見るたびに、俺の1番好きな人、小夜の事を思い出す。
小夜は春が好きで、よく俺の手を引っ張って外に出て桜を見るような、桜が大好きな子だった。
当時の俺は「ゲームしたいから行きたく無い」みたいな事を言う生意気な小僧だった。だが、正直満更でも無かった事を覚えている。
2人で、桜を見に行った。時にはお花見をしたり、桜並木を歩いたりした。
全て俺と小夜との大切な思い出だ。
「小夜、春が来たぞ。お前の大好きな春、そして桜だ」
目の前の墓に手を合わせた後、俺は言う。
「同期の悠凛は花粉症が酷いってさ。俺は花粉症じゃないからわからないんだけどさ」
少しだけ、世間話をする。世間話、と言っても俺が一方的に話すだけのただの独り言だ。
「お前も一緒に桜を見れたら良かったんだけどな。そうすれば……お前との思い出をまた語れたかもしれん」
少しだけ、目尻が熱くなる。目の前に眠っているであろう人の顔を思い浮かべてしまったから。
「じゃあ、そろそろ行くよ。仕事に行かなきゃ。またこれくらいの時間に来るよ。じゃあな」
小夜の墓に背中を向けて、歩き出す。少しだけ歩くと、桜の花びらがひらひらと降って地面に落ちた。