『遠い空へ』
僕は今、村の近くの山にある神社の鳥居の前にいる。
理由を話そう。最近、僕の村で行方不明になる人が多発している。
その中には僕のかなり仲の良かった幼馴染、小夜も含まれている。仲の良かった僕の親達がずっと小夜たち行方不明者を探しているらしい。
行方不明の原因は不明。村長などは神の祟りだとか言っているが僕はあまり信じていない。
何故なら、この村には言い伝えがある。
逢魔が時と呼ばれる時間。夏ならまだ明るく、冬なら真っ暗になる18時ピッタリ。その時間にこの村の近くにある山の頂上にある神社に行く。そしてその神社の鳥居をくぐる。丁度18時に鳥居をくぐるとこの村とは違う、村から、いや、この世界から遠い所にある違う『世界』に行けるらしい。
僕はそれだと思った。小夜達が行方不明になった原因はこの言い伝えだと。
だから、僕は来た。その件の山の神社に。その言い伝えが真実か確かめる為に。
あと18時まで5秒だ。
5……4……3……2……1……
18時になるのと同時に、僕は怖くて目をつぶり、鳥居をくぐった。
恐る恐る目を開けると、何も変わらない、ただのいつもの神社だ。
「な〜んだ、嘘だったんだ。怖かったぁ〜」
安堵していた。もしも本当に行ったら、どうしようと思っていたから。
そして、後ろを向き、帰ろうとした時。
「貴方も、こっちに来たいの?」
「え?」
思わず振り返ってしまう。神社には僕しかいなかったはず。友達も両親も呼んでない。
誰も居なかったはずなのに、神社には僕と同じくらいの身長の女の子がいた。
その子はもう一度、僕に声をかける。
「貴方もこことは違う世界。『空』に来たいの?」
と。
4/13/2024, 8:43:27 AM