夏の雨

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4/21/2023, 10:35:44 AM

やっぱり寂しかったのかも。
「………」
「ねぇ〜聞いてる?……ん?」
「……なんですか。」
そう聞くと、先輩は慌ててハンカチを渡してきた。
「ちょっ…君泣いてるよ?大丈夫?」
「えっ?」
確かに頬を触ると生暖かい物があった。
「なっなんで…?」
「もしかして気づいて無かった?!」
「は、はい。」
「まじぃ?じゃあなんで泣いてるかも分かんない?」
泣いてる理由…か。…そうだ、
寂しかったんだ…。
「へぇ?寂しかったの?」
「えっ声出てました?」
「うん。めっちゃ。」
…恥ず。
「………忘れて下さい。」
「忘れられるわけないじゃん?」
へらりと笑っているが、目は少し申し訳無さそうに泳がせている。
「すみません…」
「怒ってはないよ。でも寂しかったら言ってくれれば良かったのに…」
「そんなの恥ずかしくて言えないですよ。」
「ツンデレかよwww」
「違いますっ!」
話してるうちに、涙も止み、心のもやもやが晴れてきた気がした。
「…今日は一日中歩くんで覚悟して下さい。」
「なに仕返し?残念だけど俺体力あるんだよね〜」
「………はぁ。」
思わずため息が漏れる。
「疲れた?休む?」
「少し歩いただけで疲れないですよ。ずっと歩いてたんで。」
「そう?ならいいけど、無理しないでね。」
「分かりました。」
「それと…」
「絶対に寂しかったら言うこと!何かあったら言う!」
「っ!」
先輩を見ると、緑色の瞳が俺を見据えていた、
「いい?」
「は、い」
「絶対だよ!」
「は、はい!」
何度も頷くと、先輩は満足そうに微笑み前を向いた。
「旅の再開だ!」


#雫
前回の続きです。
雫って漢字なんかかっこいいよね!涙よりも雫の方がかっこよく感じてしまう……

4/20/2023, 12:06:26 PM

「ふぅ…」
旅にでる準備が終わり、ため息をつく。そしてもう一回部屋をぐるりと見回す。今日でこの家とはさよならだ。別に寂しい訳ではない。これはいつもの事だ。
今までずっとこうしてきた。色々な所に転々としてきた。だから、寂しくはない。決して。
「…寂しくはない。俺は友人なんかいらない。家なんかいらない。愛なんていらない。何もいらない。」
そう自分に言い聞かせながら俺はドアを開けた。

「あ、居た」
「……あ。」
ドアを閉めようと思ったがもう遅い。少し背の高い緑色の目の彼が、目の前に居た。
「…なんすか。」
「だって引っ越すんでしょ?だから来たの。」
「…そうですか。それじゃあ」
彼の隙間を通り抜けて行こうとしたが、「だーめ」
と言いながら俺の手を掴んだ。
「あのさ、…最後にお願いなんだけど。」
「はぁ…なんですか?」
悪態をつきながら言うと、口角をあげて、
「俺も連れてってよ。」
と言った。……オレモツレテッテヨ?おれもつれてってよ?
「……はぁっ?!いやいや無理ですよ!」
「無理〜。先輩の言うことは絶対!」
「もう辞めたんでそれは通用しないですっ!」
「だーーめ!行く!」
俺達は数分間ごたごたと揉め合いをしていたが、ふと自分のしていた事に呆れ、笑ってしまった。
「あ、笑った!」
「っ…そうですね」
「ねぇーえー?初めて笑ったよね?」
「そうっすね」
「連れてって?」
「だからなんでそうなるんですか!!」
……はぁ…。もういいや、連れてこ。いつか飽きるだろ。
「分かりました…着いてきて下さい。」
「え!ほんと!?」
「足引っ張んないで下さい。」
「分かってるよ〜」
朝日が登る中、俺達は旅に出た。


…………やっぱり寂しかったのかも。

#何もいらない
この人達も誰かと会わせたいなぁ…。
主人公は、色々な所に旅をしている旅人。
先輩は、主人公がアルバイトをしていた店の先輩。
という感じです!

4/19/2023, 10:28:45 AM

ドクンドクン…と徐々に鼓動が速くなっていく。
もしも…もしも…未来が見えるのなら…。
どうかこの恋が…実るのかが知りたい。
でもそんな事は出来ない。だから例え叶わなくても…いつも通りに振る舞おう。
ガタガタッと少し錆びているような音がした。
ドアに彼が立っていた。
「………返事の事、なんだけど」
そう言いながらドアを閉める。
「「…………」」
沈黙が続く。今は鼓動の音と呼吸の音、そして外で喋っている声だけが聞こえる。



その沈黙を破ったのは、大好きな彼の声だった。
「その、ありがとう。これからよろしくっ…」
「っ?!!」
一瞬時が止まったのかと思う。夢なのかな、とも思い頬をつねるが痛みがはしる。
本当なんだ。夢じゃないんだ…!
「よかった…」
「それじゃあ、一緒に…帰ろっか。」
「ん、」と彼が手を出す。私は彼の手を取った。
未来は…やっぱり見なくてよかった。
夕焼けを背に、私達は帰った。

#もしも未来が見れるなら
お題が毎回凄い考えさせられるなぁ…

4/18/2023, 10:31:57 AM

「今日は空を描いてください」
「「「はーい」」」
空、かぁ…空はえーっと…水色だよね。
「…水色ってどれだろ。」
私は色が分からない。世界が白黒で見えている。
無色の世界はなんだか1人違う世界にいるみたいで寂しい。
元々は見えていた。でも突然見えなくなったからどんな色なのかは一応分かる。でも判別出来ないから、先生に聞いて絵を描く。正直楽しくなんてない。クラスメイトも誰も声をかけてくれない。先生も本当は嫌なんだと思う。
「………」
無言のまま“空”が出来上がる。でもやっぱり色はなくて、…私の心情みたいだ。無色の空。
「先生、どうですか?」
「……素敵よ。でもちょっと色が違うね。葉っぱは普通緑か茶色、黄色や赤よ。」
『普通』か…
「…はい。すみませ」
「いいんじゃないかしら」
おっとりとした声がしたと思えば、先生アシスタントになった若い女の人が私の絵を見ていた。
「紫に、ピンクに水色。とってもいいと思うわ。」
「でも普通は…」
「普通なんて関係ない。絵は自由よ。決めつける物では無いわ。」
『普通』なんて関係ない…自由…
「……」
「っ…好きにして。」
先生はそう言うと、去っていった。
「あの、ありがとうございます…」
「いいのよお礼なんて。それじゃあなにか困ったことがあったら言ってね。いつでも来て大丈夫よ。」
「は、はい…」
優しい人だな…
チラッとその人の目を見ると、一瞬綺麗な水色の瞳が見えた気がした。

その日から私は学校に行くのも楽しくなった。
あの人が待ってくれているから。
無色の世界から開放された気がした。

#無色の世界
書くものがない!以上!

4/17/2023, 10:52:06 AM

初めての通り道を通り、校門を潜った時だった。
どこからかちらほらため息が聞こえた。
「はぁ…なんでよりによって散っちゃったんだろ…」
「せっかくの入学式なのにね…」
周りを見渡すと、桜はとっくに散ってしまっていた
「………」
その時俺の目はある人を捉えた。いや、知らなかったのだが確かにあの人は儚げな顔をしている。
「どうしたんですか?」
試しに声をかけて見ると、彼はビクッと体を動かし、振り向いた。
美形な顔で、漆黒の様な瞳が俺を見る。
「え、あ…なんですか?」
「特に用事はないんですけど…ちょっと悲しそうな顔をしていたので。」
「悲しそうな顔してました?!」
「はい。めっちゃ。」
「…気にしてないつもりだったんですけどね」
「?なにかあったんですか?」
「………最近、好きだった人が死んでしまって。…本当は…桜の木の下で…告白するつもりだったんですけど……笑顔でいようって思ったんですけどどうしても桜の木を見ると…思い出しちゃって。」
そう言って、桜を見る。
「…そう、だったんですか…その、実は俺、振られたんですよね…」
「えっ…」
「つい最近だったんですけど…あっでも死んではないんですけど…」
「…ありがとうございます。お互い、頑張りましょうね!」
「っ!はい!…それなら敬語もなしにしない?」
「そうだね。これからよろしく」
「よろしく!」
俺達は、散った桜の木の下で握手をした。
でも彼は、桜が満開になった様な顔をしていた。

#桜散る
「ここではない、どこかで」に出てきた子と、
「春爛漫」に出てきた子を登場させて見ました!
いつか名前付けたい…

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